マーケット情報


IoTとAI・5Gなどの連携・活用によりサービス化やビジネス化の進展が期待される
リモートモニタリング市場を調査

−2030年市場予測−
ファシリティ分野の有償サービスは5,729億円
法人向け機械警備、空調設備がけん引


総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、対象となる設備機器の運用効率化だけでなく、人手不足など社会問題の解決・改善策として注目されるリモートモニタリング(遠隔監視)の国内市場について調査した。その結果を「2019年版 リモートモニタリング関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、ベンダーが有償で提供するリモートモニタリングサービスを顕在市場、ベンダーが無償で提供するリモートモニタリング※やユーザー内で完結するモニタリングを今後有償のリモートモニタリングサービスが採用される可能性のある潜在市場と定義し、合算することでリモートモニタリング市場全体のポテンシャルの把握に努めた。また、「注目ビジネスモデル事例編」では市場に参入する企業20社の事例をまとめた。※リモートモニタリングにかかるサービスコストをアフターサービス料金などに内包し単独でのサービス提供がないものも含む

リモートモニタリングはエレベーター、ボイラ、受変電設備などの定期的なメンテナンスや安全管理を必要とする機器や設備では、以前より行われているが、今後はIoTとAI・5Gなどの連携・活用により設備の運用効率化だけでなく幅広い分野での人手不足、災害対策、予防保全などの社会問題を解決・改善する手段としても注目されている。

ベンダーにおいては有償・無償サービスを問わず、リモートモニタリングから得られたデータの活用や保守・メンテナンス・運用・効率化などのトータルソリューションとして、サブスクリプションサービスや製品の売切りではなく機能を提供するアズ・ア・サービス(as a Service)としてなどビジネスモデルの多様化が進んでいる。現時点でネットワークに接続されていない設備においても何らかの形で接続されるようになり、すでに接続されている設備においてもサービスの多様化や高度化によりビジネス化が進展することで無償サービスから有償サービスへの移行が進むと予想される。

◆注目分野

1.ファシリティ分野におけるモニタリング市場



※潜在市場はモニタリングデータ収集の量や頻度を基に内部コストを推計し算出

ファシリティ分野におけるモニタリングは、設備メーカーのアフターサービス、もしくは保守管理業務を手掛ける事業者のサービスメニューの一つとして提供される。設備保全や警備業務における人手不足が顕在化しており、省人化対応が喫緊の課題であることから、設備の予兆監視や予防保全用途でのリモートモニタリングサービスの採用増加が期待され、市場は拡大が予想される。

市場は有償サービスの比率が高く、その規模は5,000億円に近い。現状では法人向け機械警備サービスが中心であるが、2030年には法人向け機械警備サービスに加え空調設備での採用が増え、市場は5,729億円が予測される。

設備機器のIoT対応も進んでおり、リプレイスに合わせたリモートモニタリングサービスの提案が進んでいくとみられる。一方で、設備投資コストや費用対効果の面から保守メンテナンス契約や設備更新に消極的な中小規模ユーザーも多いことから、設備の最適運用による管理コストの低減や、データ収集・運用による新たなビジネス提案などユーザーメリットのあるサービス提供が市場拡大の鍵になるとみられる。

2.ファシリティ分野におけるモニタリング活用状況 (対象設備ストックベース)



設備ストック数を母数とし、リモートモニタリング(有償・無償)やユーザー完結のモニタリングを活用している設備の比率を示した。

エレベーター、受変電設備:リモートモニタリングサービスの活用が多い

エレベーターでは設備保守の一環として75%以上がリモートモニタリングを採用しており、そのほとんどがベンダーによる無償サービスである。設備ストック数は緩やかに増加する一方で、リプレイスによってモニタリングを採用しない設備が減少していき、採用率は90%近くまで上昇するとみられる。受変電設備では有償サービスの比率が高く、サービスは電気保安会社が提供している。点検などの保安を行う電気主任技術者の人手不足が顕著であり、法定点検の緩和が受けられる絶縁監視装置による監視ニーズの増加により、リモートモニタリングの割合が高まるとみられる。

空調設備:有償サービスが伸びる

空調設備では設備ストック573万台(2018年見込)の 99%以上でモニタリングされていない。現状では設備メーカーによる顧客の囲い込み、高付加価値化を目的としてリモートモニタリングサービスが展開されており、今後は設備の故障予知や、自動制御による省エネ価値と金銭的なメリットの創出などサービスのビジネス化が進むとみられる。2030年においても採用率は低いもののビジネス化の進展により有償サービス市場で700億円が予測される。

ボイラ:ユーザー完結が大きく伸びる

ボイラは工場の生産工程で使用されることが多く、故障や停止などの異常をいち早く検知する目的で、モニタリングのニーズが比較的高い。また、設備メーカーは部品交換や薬品など消耗品の購買につなげることを目的に、メンテナンス契約とセットでリモートモニタリングサービスを展開していることから、無償サービスが多い。ユーザーからはほかの生産設備と一括したモニタリングの希望も多いが、ボイラの故障予防診断を行うには専門的なノウハウも必要なため、現状ではユーザー完結のモニタリングは難しい。しかし、今後ビッグデータとAIの活用によりボイラの監視と解析が行えるようになることで、ユーザー完結の増加が予想される。

法人向け機械警備サービス、冷凍・冷蔵ショーケース:有償サービス、またはそれが中心

法人向け機械警備サービスでは、現状では70%近くがモニタリングを未採用である。今後は警備員などの人手不足などによる需要増加が予想されるほか、カメラやセンサーなどの情報をAIで分析することにより犯罪の予兆検知や、迷子や体調不良者など異常検知といったサービスの高付加価値化による新規ユーザーの取り込みが期待され、有償サービスの市場は2030年に4,750億円が予測される。

冷凍・冷蔵ショーケースでは90%以上が未採用である。しかし、ショーケースの温度管理は冷凍・冷蔵品の品質に直結するため、全国展開する総合スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど大手小売事業者からのニーズが高く、有償サービスが提供されている。冷媒規制に伴う設備更新需要が2020年以降増加し、通信対応設備へのリプレイスが進むことや、冷媒管理厳格化に伴う冷媒漏洩モニタリングニーズの高まりなどで、リモートモニタリングの採用増加が期待される。

生産設備(工作機械、UPS):ユーザー完結が中心

生産設備(工作機械)では70%近くが未採用である。一部工作機械メーカーがクラウドサービスを活用したリモートモニタリングサービスを展開しているが、工作機械は生産管理システムと連携するケースが多く、生産情報漏洩への懸念からユーザー完結が中心である。UPSでは設備ストック数が4万件程度であり、状態監視も現場の専門技術者が行っているケースが多い。85%近くが未採用で、モニタリングする場合もユーザー完結が中心である。ベンダーもデータの有効な活用方法を見いだせておらず、大きな変化はないとみられる。

◆調査結果の概要

リモートモニタリングの有償サービス市場

2018年見込
2017年比
2030年予測
2017年比
ファシリティ
4,907億円
101.4%
5,729億円
118.4%
住居
1251億円
104.6%
1,852億円
154.8%
生活インフラ
187億円
101.6%
252億円
137.0%
商業・オフィス
191億円
106.7%
299億円
167.0%
モビリティ
67億円
108.1%
223億円
3.6倍
農業・畜産
10億円
142.9%
117億円
16.7倍
エネルギー
16億円
160.0%
91億円
9.1倍
環境インフラ
3億円
75.0%
42億円
10.5倍
医療・福祉
8億円
114.3%
35億円
5.0倍
合 計
6,641億円
102.3%
8,640億円
133.1%

市場は、設備保全や安全管理を目的としたサービス展開が中心で、安全管理ではホームセキュリティや法人向け機械警備サービス、設備保全では受変電設備やボイラ向けサービスの規模が大きい。

今後は人手不足に伴う設備機器・インフラ関連の最適制御など業務の自動化・省力化の加速と、ビッグデータ・AI活用によるデータの高付加価値化や利用の高度化により新たな価値の創造が進み、リモートモニタリングサービスの活用が増加していき、2030年には8,640億円が予測される。

分野別には、設備の運用・維持管理・保守の効率化が求められるファシリティ分野の規模が最も大きく、次に住居分野が続く。住居分野はホームセキュリティが中心である。一般消費者からサービス料金の徴収は難しいとみられているが、IoTの進展で大量のデータの収集が可能となっており、家庭向けサービスの展開を検討しているプレーヤーも多く、無償サービス(ここの市場では対象外)での展開が期待される。

そのほかの分野については規模が限定的であるが、環境インフラ分野や農業・畜産分野は人手不足から機械化の進展と、それに伴うリモートモニタリングサービスの活用が予想される。特に農業・畜産分野では国や地方自治体主導で、ITを取り入れた農業や農機メーカーによる精密農業への対応などの取り組みが積極的に行われており、リモートモニタリングの重要性は高まっていくとみられる。また、医療・福祉分野では、動作が停止すると影響の大きい機器も多くアフターサービスの観点からリモートモニタリングサービスの提供が多い。

一方、生活インフラ分野、商業・オフィス分野などはベンダーにおける事業効率化や既存事業の高付加価値化などを目的として展開する無償サービスが多いため、市場は小さい。

◆調査対象

ファシリティ エレベーター、空調設備、受変電設備、ボイラ、UPS、法人向け機械警備サービス、冷凍・冷蔵ショーケース、生産設備(工作機械)
エネルギー 太陽光発電システム、風力発電機、定置用蓄電池、自家発電設備、産業ガス
生活インフラ 産業排水、電力スマートメーター、ガスメーター、水道メーター、浄水・下水処理施設
環境インフラ 河川(水位計)、斜面、雷、水質、橋梁
商業・オフィス デジタルサイネージ管理、複合機、ゴミ箱、飲料自動販売機、駐車場、物流パレット
モビリティ 自動車位置情報(カーナビ・IVI)、タクシー配車、トラック運行、カーシェアリング運用、サイクルシェアリング運用、建設機械
医療・福祉 MRI、血液検査装置、AED、服薬支援、医療ガス供給設備、在宅医療
住居 住宅設備、住宅建材/エクステリア、家電、ホームセキュリティサービス、ウォーターサーバー、宅配ボックス
農業・畜産 農作物・栽培環境、農業機械、家畜(牛の分娩・出産)

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。


2019/07/09
       
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は弊社グループ広報部(TEL 03-3664-5697)までご連絡をお願いいたします。