MARKET マーケット情報
バイオガス化(メタン発酵)食品廃棄物を対象としたプラントの需要が増加288億円(30.9%増)
藻類利用製品 東京五輪に合わせてバイオジェット燃料を出荷予定156億円(22.8%増)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、2017年4月に改正FIT法が施行され、一部バイオマス発電の調達価格が見直されたことで、注目が集まっているバイオマス利活用装置・プラント、製品の国内市場※を調査した。その結果を報告書「2017年版 バイオマス利活用技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。
この報告書ではバイオマス利活用装置・プラント9市場、バイオマス由来製品6市場を調査・分析し、海外動向や注目技術動向などを捉えることでバイオマス利活用の技術・製品市場の将来を展望した。なお各市場は国内市場+日系メーカーの海外実績で捉えた。
◆調査結果の概要
1.バイオマス利活用の技術・製品市場
FIT需要が市場をけん引 2,000kW以上の発電設備が本格的に運転を開始し市場拡大
2016年度のバイオマス利活用装置・プラント市場はFIT需要が引き続きけん引し、バイオマス直接燃焼ボイラの需要を中心に大幅に拡大した。2016年度は後半にFIT価格改定が発表され、木質バイオマス発電のうち、製材過程で出る端材やオイルパーム残渣などを利用した一般木質・農作物残渣を燃料とする、2,000kW以上の発電設備において、2017年9月より買取価格の引き下げが決定しており、それに伴い引き下げ前の駆け込みで新規認定件数が急増した。今後これらの案件が2020年にかけて本格的に運転を開始することからバイオマス発電設備としてバイオマスボイラ用蒸気タービンの需要も増加するとみられる。また、買取価格が高い間伐材など未利用木質を使用した2,000kW未満の需要も増加している。エネルギー効率が良いバイオマスガス化発電が注目されており、近年では、欧州のバイオマスガス化技術のサプライヤーが商社やプラントメーカーを通じて日本市場に参入している。
燃料需要が発電設備の運転開始に向けて急増 日本は燃料の有望市場として海外から注目
バイオマス由来製品は木質バイオマス発電の増加に伴い、固体バイオ燃料需要が増加しており市場をけん引している。固体バイオ燃料では、製材残渣や建築廃材を原料とした国産のチップのほか、オイルパーム残渣であるPKSや、木質ペレットの輸入が大幅に増加するとみられ、日本は燃料の有望市場としてこれまでの輸入国とは異なる国からのアプローチが活発化している。木質バイオマスを活用するウッドケミカルスでは、セルロースナノファイバーへの注目度が高まっており、現在サンプル出荷段階から商用化へと進みつつある。量産体制が整備されることにより、2020年度に本格的な市場が立ち上がるとみられる。
◆注目市場
1.バイオマスガス化 【バイオマス利活用装置・プラント】
バイオマスガス化は木質バイオマスや稲わらなどの農業残渣を乾燥させ、高温で熱分解することでCOやH2などの合成ガスの製造を行う技術であり、発電設備などを含んだバイオマスガス化設備を対象とする。
FITの影響で、2,000kW未満の発電設備での需要が増加しており、バイオマス直接燃焼ボイラではなく、小型高効率なバイオマスガス化技術の導入が進んでいる。熱電併給により、さらに高効率なエネルギー供給が可能であるため、農業用ハウスや、きのこ栽培向け加温などで熱の有効利活用を行う事業者が増加している。2016年度は大型受注があったため、市場は急激に拡大した。バイオマスガス化の主な需要用途としてはFIT活用による電力事業が中心であるが、今後は地方自治体や木材事業者などによる熱をうまく活用するシステムの普及が考えられる。安定した運転が確認できれば、公共施設や第三セクターなどでの需要拡大が期待される。
2.バイオガス化(メタン発酵)【バイオマス利活用装置・プラント】
2016年度 |
2020年度予測 |
2016年度比 |
|
市場規模 |
220億円 |
288億円 |
130.9% |
原料となるバイオマス(食品残渣、生ごみ、畜産排せつ物、し尿、有機性汚泥など)の有機成分を嫌気条件下でメタン発酵させ、バイオガスを発生させる設備を対象とする。FIT開始以降、食品残渣などの産業廃棄物や畜産廃棄物などを利用した案件が増加しつつある。食品残渣では産業廃棄物処理企業がバイオガス化に取り組む事例がみられる。畜産排せつ物ではこれまでは、消化液を液肥として利用しやすい北海道での需要が中心であったが、近年肉牛や養豚、ブロイラー業が盛んな南九州でもバイオガス化プラントの需要が増加しつつあり、市場は堅調に拡大するとみられる。
3.藻類利用製品【バイオマス由来製品】
2016年度 |
2020年度予測 |
2016年度比 |
|
市場規模 |
127億円 |
156億円 |
122.8% |
微細藻類を人工的に培養し、抽出した機能性物質や油分などの製品を対象とする。藻類利用製品は食品・飲料用途が大半であり、健康志向の高まりや機能性食品の認知度向上に伴い、ユーグレナやクロレラ、スピルリナなどの藻類から得た機能性関与成分が入った食品やサプリメントの需要が増加しており、今後も堅調に拡大するとみられる。また藻類由来のバイオジェット燃料は2020年の東京五輪開催に合わせて、出荷が予定されている。現在、燃料としてのASTM規格や輸送サプライチェーンの確立に向け調整検討が進められている。
◆調査対象
バイオマス利活用装置・プラント | バイオマス直接燃焼ボイラ、バイオマスボイラ用蒸気タービン、バイオガス化(メタン発酵)、バイオマスガス化、バイオ燃料発電機、液体バイオ燃料化、藻類利用技術、ペレットボイラ、炭化・バイオマス固形燃料化 |
バイオマス由来製品 | 液体バイオ燃料、固体バイオ燃料(木質ペレット、オイルパーム残渣等)、バイオガス、藻類利用製品、バイオマスプラスチック、ウッドケミカルス(セルロースナノファイバー、リグニン) |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。