MARKET マーケット情報


認知症や睡眠障害など、CNS疾患の医薬品・医療デバイスの国内市場を調査
―2030年市場予測(2020年比)―
●認知症・MCI治療剤 4,227億円 (4.5倍)
~抗体医薬品の発売により、2023年以降大きく拡大~
●睡眠導入アプリ 200億円
~2022年に立ち上がり、医薬品との併用により需要増加~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、抗体医薬品の登場に加え、ベンチャー企業の参入により治療アプリの開発などが活発化している中枢神経領域(CNS)疾患の医療用医薬品と注目の医療デバイスの国内市場を調査した。その結果を「2021 注目CNS疾患ドラッグ&デバイス市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、医療用医薬品12品目、治療機器11品目、診断・検査機器4品目、診断・検査薬3品目の市場の現状と将来性を捉えた。

◆注目市場

●認知症・MCI(軽度認知障害:Mild Cognitive Impairment)関連

認知症は高齢化の進展により患者が増加していくと予想される。また、MCIなど患者とされる対象が広がることで患者数の増加も想定されることから、医療用医薬品や医療デバイスの市場は拡大していくとみられる。

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

認知症・MCI治療剤

719億円

75.9%

4,227億円

4.5倍

認知症アプリ

12億円

バイオマーカー検査

2億円

2.0倍

901億円

901.0倍

(βアミロイド、tau蛋白)

認知症・MCI治療剤は、認知症治療剤、健常者と認知症の中間段階とされるプレクリニカル期やMCIの治療剤を対象とする。

ジェネリック医薬品の普及により2015年以降市場は縮小が続いており、特に2020年は2011年に発売された主要製品のジェネリック医薬品が相次いで発売されたため、大幅に落ち込んだ。今後は、アルツハイマー型認知症を適応としたアデュカヌマブの発売をはじめ、2023年頃より高薬価な抗体医薬品などが発売されることで、市場は急拡大し、2030年には2020年比4.5倍が予測される。

認知症アプリは、認知症やその周辺症状の治療・症状改善を目的に医療機器として保険適用されたスマートフォン用アプリを対象とする。

市場はまだ立ち上がっていないが、医薬品以外のアプローチとして、製薬企業による研究・開発が進められている。2024年頃に市場が形成され、アルツハイマー型認知症や軽度認知症患者の重症化予防を目的に、利用が増えていくとみられる。

バイオマーカーは、アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症で特異的に蓄積する異常タンパク質であるβアミロイド、アルツハイマー型認知症などの鑑別診断に有用とみられるtau蛋白を測定する検査薬を対象とする。

βアミロイドは、2020年に血液で測定可能な検査薬が発売され、認知症の検査体制が整い始めている。今後は、人間ドックのオプションで受けられるようになるとみられることから、伸びていくとみられる。

tau蛋白は、血中のp-tauを測定することで認知症の早期発見に繋がるとして実用化に向けた開発が行われている。2020年10月にtauPET薬剤が開発され、アルツハイマー型認知症治療剤のアデュカヌマブが発売される2023年以降に実用化されるとみられる。認知症の鑑別診断や、コンパニオン診断薬としてのニーズが高まり、伸びると予想される。

●睡眠障害関連

睡眠障害とは、過眠や不眠などの睡眠異常である。近年では新型コロナウイルス感染症の流行によるストレスやライフスタイルの変化などから不眠症の患者数の増加が想定されている。また、ナルコレプシーは睡眠発作と情動脱力発作が主な症状であり、日中に過度の眠気が生じることから社会生活やQOLへの影響が大きく、治療が必要とされている。

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

睡眠障害治療剤

838億円

106.2%

940億円

119.1%

睡眠導入アプリ

200億円

CPAP装置

480億円

104.1%

680億円

147.5%

睡眠障害治療剤は不眠症治療剤、ナルコレプシー治療剤、睡眠時無呼吸症候群治療剤を対象とする。

不眠症治療剤を中心とした市場であり、2015年に発売された製品がけん引している。不眠症はうつ病や不安障害、社会適応障害などほかの精神疾患や心身症と併発するケースも多く、併発した疾患の治療剤や副作用などとの兼ね合いなどから医薬品が選択される。また、多数の不眠症治療剤を処方すると診療報酬が引き下げられることから、効果が高いもしくは副作用の少ない医薬品に処方が集中している。

2020年7月にオレキシン受容体拮抗薬「デエビゴ」(エーザイ)が発売され、うつ病などに併発する不眠症への有効性が示されていることから、需要を獲得しており、市場が拡大している。今後も不眠症治療剤がけん引し、市場は拡大するとみられる。また、現在は装置による治療が中心の睡眠時無呼吸症候群で治療剤の開発が進んでおり、発売による拡大も期待される。

睡眠導入アプリは医療機器として保険適用された、認知行動療法により睡眠の改善を図るスマートフォン用アプリを対象とする。

不眠症の治療用アプリは臨床試験が2016年から始まっており、現在フェーズⅢまで開発が進んでいる。現在は医薬品による治療が主体であるが、医薬品以外によるアプローチへの期待は高く、2022年に市場が立ち上がるとみられる。治療の選択肢が増えることに加え、医薬品との併用により市場は拡大し、2030年には200億円が予測される。

CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)装置は、一定圧を加えた空気を鼻から送り込むことで無呼吸状態を回避する睡眠時無呼吸症候群の装置である。1998年に保険が適用され、市場が立ち上がった。

睡眠時無呼吸症候群は有用な治療剤がまだないことから、CPAPが第一選択となっている。新型コロナの影響により受診控えや入院患者の減少がみられるが、クリニックの増加や疾患に対する認知度の向上で未治療患者の受診が増加していることから、市場は拡大している。医療用医薬品の発売により、製薬企業による疾患啓発などが活発化することで、さらなる治療患者の増加と市場拡大が期待される。

◆調査結果の概要

●中枢神経領域疾患の医薬品・医療用デバイスの国内市場

 

2021年見込

2020年比

2030年予測

2020年比

医療用医薬品

9,753億円

93.9%

1兆3,296億円

128.1%

治療機器

498億円

104.2%

931億円

194.8%

診断・検査機器

114億円

100.0%

142億円

124.6%

診断・検査薬

2億円

2.0倍

901億円

901.0倍

合 計

1兆 366億円

94.4%

1兆5,271億円

139.1%

※市場データは四捨五入している

高齢化によりアルツハイマー型認知症の患者数は増加しているほか、新型コロナは収束に向かうと予想されるものの経済活動などの社会不安からうつ病や睡眠障害患者の増加が懸念されている。患者数の増加に加え、高薬価の医薬品、治療機器や診断・検査機器、診断・検査薬の新たな製品の発売により、市場は拡大していくとみられる。

医療用医薬品市場は、ジェネリック医薬品の普及や大型品のジェネリック医薬品の発売により、2017年以降縮小が続いている。特に2020年に認知症・MCI治療剤の主要製品でジェネリック医薬品の発売が相次いだことから、2020年に続き、2021年も市場は大きく縮小するとみられる。今後も、ジェネリック医薬品の影響などにより抗うつ剤や統合失調症治療剤などは大幅な伸びは期待できないが、認知症・MCI治療剤は抗体医薬品が市場をけん引していくとみられる。また、認知症治療剤以外でも、片頭痛治療剤や慢性疼痛治療剤でも抗体医薬品の発売が期待される。

治療機器市場は、CPAP装置が中心である。新型コロナ流行を受けた受診控えの影響は大きいものの、治療患者数の増加により伸びている。治療アプリは禁煙補助アプリが保険適用されているが、まだ認知度が低いことから、医師および患者への啓発活動が進んでいくとみられる。また、今後はうつ病や認知症、ADHDといった疾患の治療アプリ発売が予想され、市場をけん引するとみられる。

診断・検査機器や診断・検査薬の市場は、脳磁計、脊磁計が中心であり、横ばいである。CNS疾患の診断は問診が中心で、定量化による診断ニーズの高さから、バイオマーカーやAIの研究が進んでいる。臨床で使用可能な段階に近づいていることから、今後の市場拡大をけん引していくことが期待される。特に早期診断の難しい認知症・MCI治療剤で抗体医薬品の処方を契機に、スクリーニングするためのバイオマーカー検査が必須となる可能性があるため、大幅な伸びが予想される。

◆調査対象

医療用医薬品

 

・抗うつ剤

・認知症・MCI治療剤

(抗不安剤、アルコール依存症治療剤含む)

・多発性硬化症治療剤・視神経脊髄炎スペクトラム治療剤

・統合失調症治療剤(双極性障害治療剤含む)

・神経変性疾患・その他中枢神経治療剤

・睡眠障害治療剤

・外用消炎治療剤、NSAIDs・解熱鎮痛剤、

・抗パーキンソン病治療剤・

ステロイド系消炎鎮痛剤

レストレスレッグス症候群治療剤

・慢性疼痛治療剤

・ADHD治療剤

・片頭痛治療剤

・抗てんかん剤

 

治療機器

 

・禁煙補助アプリ

・ニューロモデュレーション-ECT(精神科電気けいれん療法)

・CNS疾患アプリ-うつ病(うつ病アプリ)

・ニューロモデュレーション-SCS(脊髄刺激療法)

・CNS疾患アプリ-睡眠導入(睡眠導入アプリ)

・ニューロモデュレーション-DBS(脳深部刺激療法)

・CNS疾患アプリ-認知症(認知症アプリ)

・ニューロモデュレーション-TMS(経頭蓋磁気刺激療法)

・CNS疾患アプリ-ADHD、疼痛他

・ニューロモデュレーション-tDCS

・CPAP (経鼻的持続陽圧呼吸療法) 装置

(経頭蓋直流電気刺激療法)

診断・検査機器

 

・てんかん発作予知

・AI診断-音声・テキストデータ(うつ、認知症、統合失調症等)

・脳磁計、脊磁計

・AI診断-画像(うつ、認知症、統合失調症等)

診断・検査薬

 

・バイオマーカー検査-βアミロイド

・バイオマーカー検査-その他CNS疾患向けバイオマーカー

・バイオマーカー検査-tau蛋白

 


2021/12/20
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。