PRESSRELEASE プレスリリース

第15016号

HEMS・MEMSの国内市場を調査
−2020年度予測(2013年度比)−
HEMS累計導入戸数160万戸(10.0倍)総戸数に対する普及率は3%に  
MEMS単年度導入戸数309,000戸(8.8倍)既築集合住宅を中心に導入が進む

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、政府のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)政策・普及支援策やスマートメーターの普及、家庭向け電力小売事業の自由化などを受けて導入の加速が期待されるHEMS・MEMS市場について調査した。その結果を「低炭素化/ゼロ・エネルギー住宅の普及に向けたHEMS・MEMS市場の将来展望」にまとめた。この報告書では、HEMS、MEMSの市場、また、関連機器10品目の市場の現状を分析し今後を予測した。加えて、家庭向けサービス事業者、EMS事業者、サブユーザーの動向についても捉えた。

◆調査結果の概要

1.HEMSの累計導入戸数

2014年度見込
2013年度比
2020年度予測
2013年度比
戸 数
26万戸
162.5%
160万戸
10.0倍

2013年度末のHEMS累計導入戸数は16万戸で、総戸数に対する普及率は0.3%である。2020年度末には160万戸となり、普及率は3%に達すると予測される。

今後は、これまでの個人導入だけでなく、電力供給事業や関連サービス事業でHEMSを低価格もしくは無料提供するビジネスモデルが考えられる。機能を限定した低価格の「普及型」HEMSの開発が進み、このビジネスモデルが実現することで、今後急速に導入が進む可能性もある。

2.HEMSの単年度導入戸数

2014年度見込
2013年度比
2020年度予測
2013年度比
戸 数
100,500戸
98.0%
379,500戸
3.7倍
金 額
111億円
98.2%
263億円
2.3倍

スマートハウスへの取り組みや太陽光発電システム(PV)設置住宅の増加、補助金制度の後押しを受け、2012年度から2013年度にかけて導入戸数が増加した。2014年度は、経済産業省の「大規模HEMS情報基盤整備事業」の準備による特需が期待されるが、新設住宅着工戸数の低迷やHEMS補助金の見直し、「住宅用太陽光発電導入支援補助金(太陽光発電システム補助金)」の終了などにより、2013年度と比べて導入戸数は減少する見込みである。

今後は、2015年度実施予定の「大規模HEMS情報基盤整備事業」の実証結果を経て、電力小売自由化やスマートメーターの普及といった外部環境の変化を背景に、2016年度以降は導入が加速すると予想される。

導入戸数の増加をけん引するのはこれまでのハウスメーカーに加え、特定規模電気事業者(新電力:PPS)、アグリゲータなどである。エネルギーの需給管理や顧客開拓・囲い込みの有用な手段としてHEMSの活用が進むとみられる。

戸建住宅への販売は、新築向けはハウスメーカーが中心で、2013年度は全体の75%を占めた。ハウスメーカーは、2014年度は新設住宅着工戸数の低迷が大きく影響し苦戦している。2015年度以降はスマートハウスへの取り組みが強化されるとみられ、伸長が予想される。また、スマートハウスに続く提案として、ZEHへの取り組みも進んでおり、エネルギー最適制御のための省エネツールとして採用の増加が期待される。

PV販売・施工事業者は、HEMS補助金と「住宅用太陽光発電導入支援補助金」の二つの補助金制度の相乗効果によるPVの導入増加に伴い、2012年度から2013年度にかけて新築、既築ともに大きく実績を伸ばした。2014年度以降はPVの補助金終了の影響で当面は縮小するとみられるが、将来的には電力小売自由化に伴う一般電気事業者による新料金プランやDR(デマンドレスポンス)サービスの提供により、日中のPV電力の自家消費需要の増加が期待されるため、PVと蓄電池、HEMSのセット提案が活発化するとみられる。

エネルギー事業者は、2013年度時点の実績は僅少であるが、 電力小売自由化を契機に、PPSを中心にエネルギーの需給管理や需要予測、DRサービスなどを提供する端末として、HEMSの販売を増やすと予想される。一般電気事業者や既存ガス会社でも、包括サービスの提供や囲い込みのツールとしての利用が期待される。

ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)は、通信・放送サービスとのセットにより、低価格の「普及型」HEMSの個人への直接販売を今後増やすとみられる。

集合住宅への販売は、管理会社が一括受電サービス事業者やMEMSアグリゲータとして、既築向けで管理組合への省エネ提案を進める動きが活発である。電力小売自由化以降は、入居者向けのDRサービスや付加サービス提供の必要性が高まり、対応したHEMSの需要が増加すると予想される。また、新築向けでも一括受電サービスとMEMSの導入が先行した物件に対して、管理会社が後付でHEMS導入を提案する動きも増えると予想される。

エネルギー事業者は、2013年度時点の実績は僅少であるが、戸建住宅と同様に電力小売自由化を契機に、PPSなどの積極的な展開が想定される。ただし、一括受電サービスの長期契約による顧客囲い込みが進んでいることもあり、戸建住宅に比べるとPPSの参入余地は小さいとみられる。

3.MEMSの単年度導入戸数

2014年度見込
2013年度比
2020年度予測
2013年度比
戸 数
186,000戸
5.3倍
309,000戸
8.8倍
金 額
324億円
6.1倍
474億円
8.9倍

市場はMEMSが導入されている集合住宅の戸数を捉えた。2013年度に「スマートマンション導入加速化推進事業」の補助金がスタートしたことで市場が形成された。2013年度は、既築に対する一括受電サービスと組み合わせた提案により導入が進んでいる。新築に対する提案は、企画から竣工まで1年半から2年程度を要するため、実績は2014年度に顕在化するとみられる。

新築では、タワーマンションなどの大規模物件から導入され、徐々に普及が進むと予想される。MEMSを導入したスマートマンションの知名度が向上することで、採用が増えるとみられる。

既築では、電力料金の値上げがマンション管理会社において深刻な問題となっており、コスト削減のため一括受電サービスの需要が高い。MEMSアグリゲータが既築への積極的な提案を進めているため、当面はハイペースで導入が進むとみられる。

エリア別では、一定規模以上のマンションが集中する関東と関西での導入が9割以上を占める。既築の一括受電サービスを含む提案に際しては、電力契約の切り替えには全戸の同意を得る必要があるため、事業者が営業効率の面からエリアを絞っている側面もある。


◆調査対象

 
関連機器 創エネ機器 住宅用太陽光発電システム、エネファーム(PEFC)、エネファーム(SOFC)、エコウィル
蓄エネ機器・xEV 住宅用蓄電池、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)
その他機器 電力スマートメーター、エコキュート、ルームエアコン
家庭向けサービス事業者 エネルギーサービス 高圧一括受電サービス事業者、太陽光プレミアム買取サービス事業者
住生活サービス ホームセキュリティサービス事業者、見守りサービス事業者、ヘルスケアサービス事業者、宅配サービス事業者、通信販売事業者、家庭向け教育サービス事業者
EMS事業者 パナソニック、日本電気、因幡電機産業、トヨタメディアサービス、東日本電信電話、西日本電信電話、日新システムズ、NTTスマイルエナジー、エナリス、エプコ
サブユーザー
ハウスメーカー 積水ハウス、積水化学工業、大和ハウス工業、ミサワホーム、タマホーム
デベロッパー 野村不動産、三井不動産レジデンシャル、東急不動産
リフォーム事業者 住友不動産、住友林業ホームテック、三井不動産リフォーム
建材卸事業者 丸紅建材、ナイス

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。

 


2015/02/18
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