PRESSRELEASE プレスリリース

第16078号

燃料電池車市場の本格化で拡大が加速する
世界の燃料電池システム市場を調査
−30年度の燃料電池車出荷台数は78.7万台−
20年以降、世界各国主要自動車メーカーの燃料電池車が出揃い市場が拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、地球温暖化への危機感が高まる中、実証から実用・普及への進展、また新たな用途開拓も待たれる燃料電池システムの世界市場を調査した。その結果を報告書「2016年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめた。

この報告書では燃料電池システムの世界市場を用途分野別、タイプ別、需要エリア別に調査・分析、将来を予測した。併せて、PEFC、SOFCといった2つのタイプの主要スタック部品市場についても調査・分析した。

◆調査結果の概要

燃料電池システムの世界市場

2015年度の市場は、1,064億円となった。産業・業務用と家庭用の2大用途分野が市場の8割を占める。2013年度と比較すると産業・業務用が3割以上減少したが、その他の用途分野がカバーし、全体的には横ばいとなっている。日本の家庭用燃料電池も出荷台数が大きくは伸びていない。しかし、2016年度以降はその他の用途分野に含まれるフォークリフトやバスなどの駆動向けが実証段階から実用・普及段階へ移行して北米から欧州に広がり、燃料電池車市場も徐々に本格化し、日本では家庭用燃料電池の普及が進むことで市場は拡大し、2030年度には2015年度比46.1倍の4兆9,063億円が予測される。

産業・業務用は、商業施設、ビル、工場などに設置される自家発電タイプから、売電を目的とした燃料電池発電所までを対象としている。北米や韓国における大規模な燃料電池発電所プロジェクトが一服したことから、市場は特に2015年度に大きく落ち込んだが、2016年度は回復に向かい、各国におけるRPS(Renewable Portfolio Standard)制度や固定価格買取制度、各種補助金などの政策効果から、2017年度以降は再び拡大推移するとみられる。 この市場は、売電を目的とした大規模な燃料電池発電所プロジェクトが主流となっており、一つのプロジェクトが複数年にわたって取り組まれるケースも多い。今後設置や稼働予定の大規模案件があり、これらが市場拡大に寄与するとみられる。産業・業務用を手掛けるアメリカのClearEdge Powerと家庭用を手掛ける韓国のFuel Cell Powerを買収し設立されたDoosan Fuel Cell Americaが2015年以降、北米と韓国で積極的に事業を展開している。小規模な自家発電タイプから大規模な燃料電池発電所まで手掛け、今後はシェア上位メーカーと比肩する存在感を示してくる可能性が高まっている。

家庭用は、住宅に電力を供給するための燃料電池システムであり、日常的に利用されるものを対象としている。普及は日本が最も進んでおり、市場の94%(金額ベース)を日本が占める(2015年度)。日本では2016年度以降も導入補助金が継続されることになり、同時に水素・燃料電池戦略ロードマップが改訂(2016年3月)され、目標普及台数として掲げられている2020年に140万台、2030年に530万台を実現するため、PEFCは2019年までに80万円、SOFCは2021年までに100万円(いずれも設置工事費込)といった明確な目標価格(普及価格)が示された。目標価格が達成されれば、普及が大きく進むとみられる。海外では欧州、アジアは実績があるが、北米は無い。欧州ではドイツが先行するとみられる。ガスと電力の価格差が大きいほど導入メリットが大きいが、ドイツはその価格差が大きい。イギリスも価格差が大きく市場拡大が期待される。

燃料電池車は、2020年度の世界累計出荷台数が約4万台、以降は日本、北米、欧州、アジアの主要自動車メーカーの燃料電池車がラインアップし、年間数万台のペースで出荷が拡大するとみられる。出荷拡大の時期は、やや遅れ気味ではあるが、2025年から2030年頃になるとみられる。パリ協定の影響によりCO2削減の取り組み強化が急激に進む可能性もあり、その場合は市場が一気に拡大する。

その他は、駆動用、ポータブル/バックアップ用、携帯機器用である。駆動用は、フォークリフト向けが市場拡大し、バス向けが実証段階から初期の普及段階に移行する。フォークリフトは北米から徐々に欧州にも広がり、バスは欧州、日本、中国で導入が進む。ポータブル/バックアップ用は、災害時や非常時、停電対策用、アウトドア用など、非日常用途が中心で、需要は限定的となっている。携帯機器用は、欧州を中心とした海外で実績があるものの、リチウムイオン電池を利用したバッテリーとの競合などもあり、市場形成が進んでいない。欧州では複数企業で開発が進められており、今後新商品が販売されるが、日本ではスマートフォンの充電環境が整備されつつあることから需要が限定的とみられる。

◆注目市場

1.燃料電池車の地域別市場

2016年度見込
2015年度比
2030年度予測
2015年度比
日 本
800台
190.5%
220,000台
523.8倍
北 米
1,670台
5.1倍
233,000台
706.1倍
欧 州
370台
176.2%
320,000台
1,523.8倍
アジア
30台
150.0%
14,000台
700.0倍
合 計
2,870台
2.9倍
787,000台
803.1倍

日本ではトヨタ自動車や本田技研工業といったリーディングカンパニーが政府・自治体による補助金や購入支援、水素ステーションの設置・運営支援を追い風に、市場拡大をけん引している。当面は世界市場拡大の一翼を担う。

北米ではアメリカでZEV(Zero Emission Vehicle)規制が広がる動きが見られ、2014年にはカリフォルニア、オレゴン、ニューヨーク、マサチューセッツ、コネチカット、メリーランド、バーモント、ロードアイランドの8州がZEV規制の普及・拡大を目指すために「Multi-State ZEV Action Plan」を策定し、行動を共にしている。これらの州では規制強化の動きが見られる一方、燃料電池車の普及に欠かせない水素ステーションの設置も急がれている。

欧州ではドイツが先行して水素ステーションの整備を行っており、実証プロジェクトとして2016年中にドイツ国内に50箇所の水素ステーションを設置する目標を掲げている。また2016年以降の水素ステーションの普及・展開を図る組織「H2 Mobility」(2009年発足)が2023年までに400箇所の水素ステーションを設置する目標を掲げている。イギリスでは2012年に「H2 Mobility UK」が発足し、2015年から2020年までに65箇所、2020年から2025年までに330箇所、2025年から2030年までに1,150箇所の水素ステーションを設置する目標を掲げている。フランス、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどの国々においても官民を挙げて水素ステーションの整備を進めており、インフラ整備は着実に進みつつある。一方、燃料電池車については、トヨタ自動車「MIRAI」が2015年9月に欧州で発売されて以降、各国に納車が始まっている。欧州の自動車メーカーではDaimler、その後BMWやAudiが燃料電池車を発売するとみられる。

アジアでは中国で、特に沿岸部の大都市部における大気汚染対策としてNEV(New Energy Vehicle)規制を施行し、燃料電池車を含む次世代環境車の普及を進める動きがあるが、水素ステーションの設置に積極的な動きが見られないことから、燃料電池車への注力度は低いとみられる。一方、韓国では現代自動車が燃料電池車「Tucson Fuel Cell」の普及促進のため、生産拠点である蔚山市(Ulsan)の水素ステーションを12箇所にする投資計画を発表した。また韓国政府としても2020年までに80箇所の水素ステーションを設置する計画を掲げ、官民挙げての燃料電池車普及に注力している。

2.主要スタック部品の世界市場

2016年度見込
2015年度比
2030年度予測
2015年度比
PEFC
110億円
118.3%
2,464億円
26.5倍
SOFC
77億円
145.3%
481億円
9.1倍
合 計
187億円
128.1%
2,945億円
20.2倍

2015年度のPEFCスタック部品市場は、燃料電池車向けが約三分の一を占め最も多い。燃料電池車が市販されたが、燃料電池車向けが市場を押し上げるほどの力はまだない。市場への影響力が高まるのは燃料電池車市場が本格化し始める2020年頃からとみられる。

燃料電池車のスタックは、技術的にかなりに進んでおり、現状でエンジン並みのスタックサイズを実現しているが、今後さらに小型化が進むとみられる。スタックサイズの小型化は、MEA(Membrane Electrode Assembly: 膜電極接合体)の高性能化が進むことで実現される。これに伴い、スタック部品の出力当りの使用量はさらに減少するとみられる。現在の高性能化開発に並行して、MEAの生産性向上が重視されており、高速生産に適応できる生産技術のノウハウ蓄積が進められている。

SOFCは、商品化している企業が日本、北米にそれぞれ1社であり、まだ限定的な市場である。2017年には日本で産業・業務用燃料電池が市販予定であり、ドイツでは家庭用燃料電池の実証が新たな枠組みで開始される。産業・業務用、家庭用などの定置型常用運転向けが中心となり、PEFCよりも市場は限定されている。日本企業による海外展開も進められるとみられる。

◆調査対象

用途分野 産業・業務用、家庭用、燃料電池車、駆動用、ポータブル/バックアップ用、携帯機器用
タイプ PAFC、MCFC、SOFC、PEFC、DMFC
需要エリア 日本、北米、欧州、アジア
主要スタック部品 【PEFC】電極材、電解質、セパレータ、GDL(Gas Diffusion Layer)
【SOFC】電極材(アノード)、電極材(カソード)、電解質、金属インターコネクタ

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。


2016/09/23
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