PRESSRELEASE プレスリリース
先端医療関連市場1兆8,546億円(31.7%増)
ライフサイエンス研究関連市場1,479億円(30.4%増)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、先端医療として注目度の高い先端の医薬品、治療製品、診断薬/システムや遺伝子/ゲノム、細胞、タンパクといったレベルでのライフサイエンス研究に用いる装置・試薬の国内市場を調査した。その結果を報告書「2017年 先端医療・ライフサイエンス研究市場データブック」にまとめた。
この報告書では、先端医療関連として先端医薬品(4品目)、先端治療製品(3品目)、先端診断薬/システム(6品目)の3区分で合計13品目を取り上げた。またライフサイエンス研究関連として遺伝子/ゲノム、タンパク、細胞などから21品目を取り上げ、調査・分析した。
政府の成長戦略において先端医療・ライフサイエンス関連の産業化の推進が掲げられている。特に2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」においてゲノム技術や細胞技術を活用した医療の質向上および効率化が具体的な施策として示されており、国内における先端医療・ライフサイエンス研究関連市場への注目が高まっている。
◆調査結果の概要
先端医療・ライフサイエンス研究関連市場
※先端医療関連の市場は、注目度の高い先端医薬品、先端治療製品、先端診断薬/システムの合算
2016年の先端医療関連市場は、1兆4,080億円となった。今後は、細胞加工・細胞培養技術の発展によりバイオ医薬品の生産性の向上が期待される。市場はほぼ先端医薬品が占める。品目別にみると抗体製剤市場は、PD‐1抗体の抗がん剤「オプジーボ」(小野薬品工業)が非小細胞肺がんに適応拡大し、伸長した。今後も、PD‐1/PD-L1抗体関連の発売製品の実績拡大や新薬の開発が進むことで処方対象患者数も増加するとみられ、市場拡大が予想される。核酸医薬市場は、2017年に脊髄性筋萎縮症治療剤「スピンラザ」(バイオジェン・ジャパン)が発売されるとみられ、拡大が予想される。また、バイオ医薬品創薬強化の政策として健康・医療戦略や医療分野研究開発推進計画が進められており、市場の拡大に寄与するとみられる。
先端治療製品市場は2016年、前年比2.3倍の18億円となった。品目別にみると再生医療製品市場は、1回の治療で1千万円を超える保険償還価格が設定されていることから市場は伸長した。今後は、細胞培養関連技術の向上などにより、加齢黄斑変性症など進行の抑制や対症療法などが治療の中心となっている疾患に対して、再生医療製品が出てくることにより市場の拡大が予想される。遺伝子治療薬市場は、現在国内での発売はなく市場はまだ形成されていないが、法整備により臨床研究や治験が活発化している。今後は、厚生労働省がゲノム編集技術を応用した遺伝子治療薬の研究開発が可能となるように2017年内に遺伝子治療等臨床研究に関する指針を改正する方針を示しており、遺伝子治療薬の更なる研究・開発の進展が期待される。
先端診断薬/システム市場は2016年、前年比20.8%増の29億円となった。今後は、ゲノム遺伝子の解析技術の発展や分子標的薬の発展が期待される。品目別にみるとコンパニオン診断薬市場は、抗体製剤市場の活況に伴い拡大した。今後は抗体製剤やペプチド医薬のニーズの高まりにより市場は拡大するとみられる。
2016年のライフサイエンス研究関連市場は、1,134億円となった。今後は、バイオ医薬品の品質管理や食品の異物混入のリスク管理など、様々な分野で高度な成分分析のニーズが高まり需要が増加し、市場は拡大していくとみられる。品目別にみるとゲノム編集ツール市場は、2013年初めに次世代型ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9が登場し、低価格でより容易に遺伝子を切断・編集可能となったことで研究が進み注目を集め2016年も伸長を維持した。今後は、ヒトに対するゲノム編集が可能となれば治療が困難な疾患に対する新規治療法として期待がかかる一方で、倫理的な課題も大きいとみられる。
◆注目市場
1.ペプチド医薬(先端医薬品)
2016年 |
2017年見込 |
2025年予測 |
|
市場規模 |
2,525億円 |
2,614億円 |
2,800億円 |
1)市場動向
近年は「リュープリン」(武田薬品工業)、「フォルテオ」(日本イーライリリー)、「テリボン」(旭化成ファーマ)が市場をけん引してきた。2016年は、ジェネリック医薬品の発売によって「リュープリン」の実績が縮小したことや「フォルテオ」の薬価引き下げの影響が大きく、2016年の市場は前年比2.3%減の2,525億円となった。今後は、2021年以降人工合成ペプチドなどの革新的なペプチド医薬の発売により拡大するとみられる。
2)ライフサイエンス研究との関連性
ライフサイエンス研究では、古くから天然ペプチド由来の製品が開発されてきたが、人工合成ペプチドはその合成に時間やコストが掛かることが課題であった。近年では技術開発が進み完全な化学合成による製造が可能となったため、非天然アミノ酸が組み込まれたペプチドの開発が増加し、ペプチド医薬市場の拡大に寄与すると考えられる。
2.iPS細胞、Muse細胞(ライフサイエンス研究関連)
2016年 |
2017年見込 |
2025年予測 |
|
市場規模 |
4億円 |
4億円 |
115億円 |
1)市場動向
現在Muse細胞は発売されていないため、iPS細胞市場のみとなっている。iPS細胞関連の研究は活発に行われており、研究予算も付き易いため2016年の市場は4億円となった。iPS細胞は毒性試験や創薬・スクリーニングなどで採用されており、特に心筋細胞や神経細胞のニーズが高くなっている。今後もiPS細胞関連は国策として多くの方針が打ち立てられており、民間企業や大学・研究機関での研究も増えていくと考えられる。また毒性試験のガイドラインが整備されiPS細胞を使用した実験を経てからでないと人への臨床試験が行えない可能性があり、今後市場拡大の大きな要因となると予想される。
Muse細胞は4種類で開発が行われており、開発が終了し次第順次、発売されるとみられる。2020年までに4種類すべての発売となれば2025年のMuse細胞市場は100億円規模になると予想される。
2)先端医療との関連性
血小板、赤血球、白血球などの血液成分の生産にも活用されるiPS細胞は創薬と再生医療の面で活発に研究が進み今後医療への応用が期待される。またiPS細胞を利用した先端医療製品の研究・開発が活発に行われている。
◆調査対象
先端医療関連 | 先端医薬品 | 抗体製剤、、細胞培養技術応用医薬品(抗体製剤・ペプチド医薬を除く)、ペプチド医薬(中分子薬)、核酸医薬 |
先端治療製品 | 再生医療製品、細胞性医薬品、遺伝子治療薬 | |
先端診断薬/システム | コンパニオン診断薬、リキッド・バイオプシー(1)マイクロRNA診断サービス、(2)セルフリーDNA、(3)血中循環腫瘍細胞検査、プレシジョン、メディシン、マイクロアレイ血液検査(受託) | |
ライフサイエンス研究関連 | ゲノム編集ツール、リアルタイムPCR・デジタルPCR、次世代シーケンサー・キャピラリーDNAシーケンサー、DNAチップ・解析装置、ラブオンチップ、DNA・RNA抽出試薬・装置、糖鎖固定化アレイ・糖脂質糖鎖固定化アレイ、質量分析装置、プロテオーム解析受託(プロテオミクス)、プロテインAアフィニティ担体、細胞分離試薬、セルシグナル試薬、フローサイトメーター、ハイコンテントスクリーニングシステム、iPS細胞、Muse細胞、ヒト細胞、細胞培養受託、細胞培養培地・血清、画像判定細胞評価システム、自動細胞培養装置、バイオ3Dプリンター(3次元細胞立体配置装置) |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。