PRESSRELEASE プレスリリース
AI搭載機器、AI活用サービスの国内市場を調査
スマートスピーカー(AI搭載)は2017年度見込比9.2倍の165億円
製品投入の本格化、用途の広がりによるユーザーのすそ野拡大などによる
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、官民挙げてAI技術の発展と普及に向けた動きが加速する中、今後拡大するとみられる住宅分野、業務分野、エネルギー分野におけるAI技術を搭載した機器やAI技術を活用したサービスの国内市場を調査した。その結果を報告書「住宅・業務・エネルギー分野向け人工知能(AI)・IoT導入実態/市場規模予測調査 2017」にまとめた。
この報告書では、機器本体に専用のAIチップを搭載し、音声認識、自然言語処理、画像認識、映像認識、データ解析などによる機械学習や推論機能をもつ住宅・業務・エネルギー分野向けの機器15品目と、クラウドサービスもしくはローカルシステムにおいて、AIチップ及びAIプラットフォームを利用し、機械学習や推論機能を活用して提供するサービス5品目の市場について調査し、その動向を分析した。機器についてはIoT対応の動向も分析した。また、国内・海外の住宅、業務施設、電力・ガス会社向けのAI・IoTサービス・システムの事例についても分析した。
◆注目市場
1.スマートスピーカー(AI搭載)
注:市場は年度で算出している
市場は2017年度より立ち上がる。海外企業ではGoogleやAmazon、国内企業ではLINEが発売しており、そのほかにも年内の発売を予定している企業もみられる。製品投入が本格化していることから市場は20万台、18億円が見込まれる。2018年度以降も電機メーカーやオーディオ機器メーカーによる製品開発と市場投入が積極的に進むとみられ、市場拡大が期待される。
従来のオーディオ機器としての利用に加え、家電操作やオンラインサービスなどの機能が利用可能になることから、ユーザーのすそ野拡大が期待される。オーディオ機器としては、これまでスマートフォンとアクティブスピーカーをワイヤレス接続して音楽鑑賞に利用していたユーザーからの切り替えも進むとみられる。
2.業務用コミュニケーションロボット(AI搭載)
2017年見込 |
2025年予測 |
2017年見込比 |
|
市場規模 |
8億円 |
270億円 |
33.8倍 |
業務用コミュニケーションロボットのほとんどはWi-Fiなどでインターネットに接続できるIoT対応機である。現状ではAI機能はクラウド側にもたせる製品が大半であり、AI搭載機は一部である。現状のAI搭載機は処理する情報の内容や量によってクラウド側のAIと分担して処理している。簡易な内容への即応には機器本体のAIでの処理が求められるため、今後はAIの搭載が進んでいくとみられる。
業務用コミュニケーションロボットは受付・案内用途や介護用途などで需要が増加している。店舗を持つ小売業や金融業などでは、接客・案内など実際の業務に取り入れることで、省人化や集客効果を得ている。ロボットとの会話は利用者の心理的ハードルを下げるため、情報収集が容易になる点も導入メリットであり、マーケティングやサービス開発への利活用も期待される。常に新たな利用方法が模索されている製品であり、ビジネスシーンにおけるプレゼンテーションや教育用途など、様々な実証実験が進められている。介護福祉施設は有望用途の一つであり、慢性的な人手不足対策としてだけでなく、コミュニケーションによる利用者のトレーニングや精神的ケアの一端を担うことも期待されている。
3.業務・産業向け省エネサービス(AI活用)
2017年見込 |
2025年予測 |
2017年見込比 |
|
市場規模 |
1億円 |
81億円 |
81.0倍 |
業務・産業施設向けに提供される電力を中心としたエネルギー使用量の見える化、及び、省エネを図るためのデータ分析や運用改善コンサルティングを提供するサービスを対象としている。市場はサービス利用に関わる通信費用やシステム維持費用、運用改善コンサルティング費用などのランニングコストとし、導入費用(イニシャルコスト)は対象外としている。
複数拠点の一元管理が容易に行えることから、物販店舗や飲食店舗を展開する事業者でサービスを利用するケースが見られる。クラウドサーバー上でのエネルギー見える化や省エネコンサルティングだけでなく、コンサルタントによる電力コスト削減のアドバイスや従業員などの意識改革を図るセミナーの実施など、エネルギー使用状況に合わせた省エネ提案によって、顧客層が広がっている。
近年は新電力がサービス主体となり、サービス利用による電力コストの運用改善を同時に提案することで、電力小売サービスの差別化と他社への切り替え防止を図る動きがみられる。中短期的には様々な分野の高圧小口需要家を中心に採用が進むと予想される。
AIを活用したサービスについては、まずは設備構成や稼働パターンが近いオフィスビルや物販/飲食/金融店舗など、中小規模の業務施設に普及するとみられる。同一施設の経年変化や類似施設との比較分析に機械学習を用いることで、専門知識を有する省エネコンサルタントによる訪問診断などにかかる費用を大幅に削減できる可能性がある。中長期的には従来のASP型省エネサービスの付加価値としてこうした機能が徐々に標準化されていくと予想される。
一方、産業施設では、2017年時点では自社工場向けの実証導入にとどまっているケースが多い。産業施設は中小業務施設と異なり、生産設備が多様化していることや、頻繁に生産ライン/生産品目/生産量等の変更が行われるため、AIを活用して学習した運用パターンや省エネ制御のノウハウをほかの施設に応用することが難しく、また、個別施設の運用パターンを学習すること自体、数年程度を要することが多い。従って、汎用サービスとして本格的に商用化されるのは2020年以降で、導入施設も限定的になるとみられる。
◆調査結果の概要
AI搭載機器、AI活用サービスの国内市場
2017年見込 |
2025年予測 |
2017年見込比 |
|
AI搭載機器 |
27億円 |
1,861億円 |
68.9倍 |
AI活用サービス |
1億円 |
169億円 |
169.0倍 |
注:一部品目は市場を年度で算出しているが、ここではそのまま年次の品目とともに集計している
AI搭載機器の市場は2017年に27億円と見込まれる。IoT対応機は標準化が進展しており、今回対象とした住宅・業務・エネルギー分野向け機器市場の5割以上を占めているものの、AI搭載機はまだ一部である。今後は、AI搭載のルームエアコンや家庭用掃除ロボット、住宅用蓄電池などが普及していき、特に、住宅分野向け機器ではスマートスピーカーやHEMS、業務分野向け機器では業務用コミュニケーションロボットでAI搭載機の市場投入が進み、2025年に市場は2017年見込比68.9倍が予測される。
AI活用サービスは、2016年時点では多くが開発や実証実験段階であり、2017年から業務・産業向け省エネサービスや太陽光発電O&Mサービスの一部で商用化されている。サービス事業者にとっては競合サービスとの差別化や高付加価値化が訴求でき、また、ユーザーにとってはデータ解析の自動化や省力化による業務効率化や人的コスト削減が図れることから、中長期的にAI技術は様々なサービスで導入されていくとみられる。AIを活用した業務・産業向け省エネサービスや太陽光発電O&Mサービスを中心に採用率が高まり、市場は2025年には2017年見込比169.0倍が予測される。
◆調査対象
住宅・業務・エネルギー分野向け機器 | ルームエアコン、家庭用掃除ロボット、スマートスピーカー、テレビドアホン、家庭用屋内監視カメラ、HEMS、住宅用太陽光発電システム、住宅用蓄電池、エネファーム、パッケージエアコン、業務用コミュニケーションロボット、業務用監視カメラ、BEMS、非住宅用太陽光発電システム、非住宅用蓄電池 |
住宅・業務・エネルギー分野向けサービス | 家庭向け省エネサービス、業務・産業向け省エネサービス、VPP/DRサービス、ホームセキュリティサービス、太陽光発電O&Mサービス |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。