PRESSRELEASE プレスリリース
眼科・耳鼻咽喉科疾患治療剤、皮膚科領域などの調査に加え
今後は抗がん剤などが拡大をけん引する医療用医薬品の国内市場を総括分析
医療用医薬品 9兆5,528億円(5.9%増)
眼科・耳鼻咽喉科疾患治療剤3,779億円(20.8%増)、皮膚科領域2,920億円(43.8%増)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、2016年5月から、医師の診断に基づいて処方される医療用医薬品について、国内市場の動向を調査した。このたび第7回(全7回)として、眼科・耳鼻咽喉科疾患治療剤5分類、ライソゾーム病、皮膚科領域10分類、希少疾患治療剤6分類の市場を調査するとともに、第1回から第7回までの調査結果をもとに医療用医薬品全体市場を総括分析した。その結果を報告書「2017 医療用医薬品データブック No.7」にまとめた。
◆調査結果の概要
医療用医薬品の国内市場
市場は2016年まで拡大を続けたが、2017年はウイルス性肝炎治療剤が大型医薬品の大幅な薬価引き下げや待機患者の治療が一巡したことにより縮小したことなどから、前年比2.8%減の8兆7,709億円となるとみられる。
ジェネリック医薬品の浸透による影響はあるものの、市場拡大に寄与するとみられる新薬の登場により、2018年の市場は前年比1.3%増の8兆8,831億円が予測される。今後は、ジェネリック医薬品の切替え率80%の達成や大型新薬への市場拡大再算定など医療費抑制施策により低い伸長率が続くものの、2019年以降も拡大が続き、2024年の市場は2016年比5.9%増の9兆5,528億円が予測される。
薬効領域別にみると、2000年代後半から2010年代前半までは、生活習慣病領域、特に高血圧症治療剤、糖尿病治療剤などが市場拡大をけん引してきた。しかし、生活習慣病領域はジェネリック医薬品の普及や薬価改定の影響により、2016年は前年比で縮小している。特に、高血圧症治療剤の上位ブランドがジェネリック医薬品普及の影響を受けたことが大きな要因となっており、今後も特許切れを控えている大型医薬品も多いため、2017年以降も縮小傾向が予想される。
今後、医療用医薬品の市場拡大を担うのは抗がん剤およびその関連用剤とみられる。抗がん剤は、抗PD-1抗体など新規の作用機序を有する薬剤が新たな需要を創出しており、今後も大きな伸びが期待される。
その他の領域で2024年にかけて伸びが期待されるのは、その他循環器疾患治療剤、中枢神経領域、整形外科領域などである。その他循環器疾患治療剤は抗凝固剤や利尿剤の新製品が伸びており、着実な成長が予想される。中枢神経領域治療剤は、剤患者数の増加と新薬の発売により伸びるとみられる抗パーキンソン病治療剤や、大幅な伸びが続くADHD治療剤などがけん引して、2022年頃まで堅調な伸びが予想される。整形外科領域は、関節リウマチ治療剤や骨粗鬆症治療剤の伸びが大きい。
一方、消化器科疾患治療剤は、大型ブランドのジェネリック医薬品が発売され市場の成長が急激に鈍化しており、ジェネリック医薬品の影響により2024年の市場規模は2016年を下回るとみられる。
眼科、耳鼻咽喉科疾患治療剤、ライソゾーム病治療剤、皮膚科領域、希少疾患治療剤の国内市場
2016年 |
前年比 |
2024年予測 |
2016年比 |
|
眼科・耳鼻咽喉科疾患治療剤 |
3,128億円 |
100.6% |
3,779億円 |
120.8% |
皮膚科領域 |
2,030億円 |
109.6% |
2,920億円 |
143.8% |
ライソゾーム病治療剤 |
330億円 |
105.8% |
345億円 |
104.5% |
希少疾患治療剤 |
76億円 |
122.6% |
603億円 |
7.9倍 |
眼科、耳鼻咽喉科疾患治療剤は、緑内障治療剤と黄斑変性症治療剤を中心に市場が拡大している。緑内障治療剤は、プロスタグランジン製剤でジェネリック医薬品の影響があるものの、配合剤の発売などにより、伸びている。黄斑変性症治療剤は、「ルセンティス」(アルコン ファーマ、ノバルティス ファーマ)、「アイリーア」(参天製薬)が発売されるとともに、次々と適応疾患を拡大させ急速に普及したことにより伸びている。
皮膚科領域は、市場の約25%を占める皮脂欠乏症治療剤・皮膚軟化剤が、高齢化の進展に伴う老人性皮脂欠乏症の増加により伸びており、市場拡大をけん引している。また、にきび治療剤は「ベピオ」(マルホ)、「デュアック」(ポーラファルマ)、「エピデュオ」(マルホ)の配合剤、爪白癬治療剤は「ルコナック」(佐藤製薬、ポーラファルマ)、脱毛症治療剤・睫毛貧毛症治療剤は「ザガーロ」(グラクソ・スミスクライン)、乾癬治療剤は「ドボベット」(協和発酵キリン)の発売など、新製品の実績増加により伸びていることから、市場は拡大を続けている。
今後も皮脂欠乏症治療剤・皮膚軟化剤、にきび治療剤、爪白癬治療剤、脱毛症治療剤・睫毛貧毛症治療剤、乾癬治療剤の伸びにより市場拡大が期待される。一方、外用抗菌剤、鎮痒剤等その他治療剤、痔疾患治療剤は薬価引き下げやジェネリック医薬品への移行により低迷が続くとみられる。
ライソゾーム病(ライソゾーム内の遺伝子欠損により様々な症状を呈する疾患群)治療剤は、治療患者が増加しているため、市場は堅調に拡大している。疾患ごとに治療薬があるが、ファブリー病治療剤の構成比が最も大きい。
希少疾患治療剤は、ニューロパチー治療剤、筋ジストロフィー治療剤、重症筋無力症治療剤、視神経脊髄炎治療剤、ハンチントン病治療剤、中枢性尿崩症治療剤を対象とした。症状を緩和する医薬品が中心であり、今後、疾患啓発による認知度向上に伴う治療患者の増加が予想される。重症筋無力症治療剤の今後の伸びや、筋ジストロフィー治療剤や視神経脊髄炎治療剤などの市場が形成されるとみられる。
◆注目市場
黄斑変性症治療剤
2016年 |
前年比 |
2024年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
639億円 |
100.6% |
1,182億円 |
185.0% |
VEGF阻害剤と光線力学的療法用製剤を対象とする。2008年に国内初のVEGF阻害剤である「マクジェン」(ボシュロム・ジャパン)が発売され、市場は急激に活発化した。2012年に発売された「アイリーア」(参天製薬)は、眼科製品に特化したプロモーション力や投与間隔などの製品特性により競合製品との差別化が図られており好調である。また、2017年に「マキュエイド」(わかもと製薬)がテノン嚢下投与の投与経路において適応が追加されたことにより、糖尿病黄斑浮腫治療剤の需要が微増している。
黄斑変性症は、加齢が最大の原因となる疾患であるため、団塊世代が高齢化してくることによる罹患率の上昇および罹患患者の重症化に伴い患者数が増加するとみられ、2023年には1,000億円を超える市場規模が予測される。
◆調査対象
眼科・耳鼻咽喉科疾患治療剤 | 緑内障治療剤、角結膜上皮障害治療剤・ドライアイ治療剤、黄斑変性症治療剤、その他眼科疾患治療剤(ぶどう膜炎等)、点鼻・点耳剤 |
ライソゾーム病治療剤 | − |
皮膚科領域 | 外用抗菌剤(にきび、爪白癬処方分は除く)、にきび治療剤、爪白癬治療剤、アトピー性皮膚炎治療剤・その他皮膚炎治療剤(外用ステロイド剤含む)、皮脂欠乏症治療剤・皮膚軟化剤、鎮痒剤等その他皮膚治療剤、皮膚潰瘍治療剤(熱傷含む)、脱毛症・睫毛貧毛症治療剤、痔疾患治療剤、乾癬治療剤 |
希少疾患系治療剤 | ニューロパチー治療剤、筋ジストロフィー治療剤、重症筋無力症治療剤、視神経脊髄炎治療剤、ハンチントン病治療剤、中枢性尿崩症治療剤 |
※2016年は一部見込値を含みます。一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。