PRESSRELEASE プレスリリース
次世代パワー半導体の世界市場を調査
SiCパワー半導体世界市場2,270億円(8.3倍)
GaNパワー半導体世界市場1,300億円(72.2倍)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、低消費電力・高効率化の実現に向け量産化の動きが進んでいる次世代パワー半導体や開発競争が本格化してきている次々世代パワー半導体の世界市場を調査した。その結果を「2018年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では次世代、次々世代を含めたパワー半導体15品目、また、パワー半導体構成部材16品目とパワー半導体製造装置20品目、さらにパワーエレクトロニクス機器30品目の市場について現状を分析し、将来を予測した。
◆注目市場
1.SiCパワー半導体の世界市場
SiCパワー半導体市場は2017年、275億円となった。市場は堅調に拡大しており、情報通信機器分野やエネルギー分野が拡大をけん引している。今後は、電鉄車両や自動車・電装分野の伸びが期待される。市場の内訳はSiC-SBDが225億円である。一部のメーカーによって市場が形成されていたが、参入メーカーが増え、各社ともに実績を伸ばし、拡大した。今後もエネルギー分野が市場をけん引し、拡大していくと予想される。SiC-FETは、エネルギーや産業、自動車・電装分野が伸び、2017年は50億円となった。今後は、太陽光や風力発電用などのパワーコンディショナ向けが増加し、エネルギー分野が拡大をけん引すると予想される。
用途分野別にみると2017年は、情報通信機器分野の需要が一番大きく、サーバ用電源で採用されている。今後も堅調に拡大するが、他の用途分野も伸びるため市場構成比は徐々に下がっていくとみられる。自動車・電装分野は急速充電、車載充電器で採用されており、今後も拡大が期待される。エネルギー分野は、パワーコンディショナで採用が進み需要は増加していくとみられる。
2.GaNパワー半導体の世界市場
2017年の市場は18億円となった。GaNパワー半導体市場は、200V帯の低耐圧領域向けと600V帯以上の中耐圧領域向けで形成されており、近年、中耐圧領域向けでは参入メーカーが製品ラインアップの拡充を図っている。市場規模は着実に拡大しており、本格的な需要の増加は2019年以降になると予想される。今後は様々な用途分野で採用が進むとみられ、2030年には1,300億円(2017年比72.2倍)が予測される。
用途分野別にみると2017年は、情報通信機器分野の需要が一番大きく、POLコンバータやサーバのDC-DCコンバータで採用されている。今後も情報通信機器分野の需要が中心となるが、2020年以降は他の用途分野で採用が進むとみられ、市場構成比は徐々に下がっていくと予想される。エネルギー分野は、太陽光発電用パワーコンディショナ向けが増えている。今後は、工作機械や医療機器など高周波パルスが必要な電源回路で需要増加が期待される。自動車・電装分野は今後の伸びが最も期待されており、DC-DCコンバータやオンボードチャージャーで採用の動きが活発化している。
3.酸化ガリウム系パワー半導体の世界市場
2017年 |
2030年予測 |
2017年比比 |
|
市場規模 |
僅少 |
1,450億円 |
− |
酸化ガリウム系パワー半導体は、2018年後半からSBD(ショットキー・バリア・ダイオード)の量産が始まる予定であり、本格的に市場が立ち上がると予想される。量産開始直後は、民生機器分野や情報通信機器分野の電源などで採用が進むとみられる。今後は、様々な用途への展開が有望視されており、なかでも、自動車・電装分野への展開が期待される。
◆調査結果の概要
1.パワー半導体の世界市場
2017年 |
2030年予測 |
2017年比比 |
|
Siパワー半導体 |
2兆6,899億円 |
4兆1,778億円 |
155.3% |
次世代(SiC/GaN) |
293億円 |
3,570億円 |
12.2倍 |
次々世代(酸化ガリウム系) |
僅少 |
1,450億円 |
− |
合 計 |
2兆7,192億円 |
4兆6,798億円 |
172.1% |
2017年の市場は2兆7,192億円となった。中国で需要が増加しており拡大した。今後は、民生機器、自動車・電装、産業分野が市場をけん引していくとみられる。特に自動車・電装分野では、自動運転技術の進展による需要増加が期待されており、2030年には4兆6,798億円が予測される。
Siパワー半導体は、成長分野である自動車・電装分野で需要が増加している。現状は、日系メーカーや欧米メーカーが市場の中心となっているが中国や台湾のメーカーも競争力を高めている。今後も市場は拡大していくとみられる。
次世代パワー半導体のSiCパワー半導体は、情報通信機器、エネルギー分野が市場をけん引している。今後は、自動車・電装、電鉄車両分野で需要増加が期待される。また、GaNパワー半導体は、自動車・電装分野で注目度が高く需要の増加が期待される。
次々世代パワー半導体は、酸化ガリウム系パワー半導体が民生機器分野で実用化が進んでおり、今後拡大が期待される。
2.パワー半導体構成部材の世界市場(生産ベース)
2017年 |
2030年予測 |
2017年比比 |
|
市場規模 |
1,860億円 |
4,249億円 |
2.3倍 |
2017年の市場は1,860億円となった。パワー半導体市場が好調だったことから構成部材市場も拡大した。今後は、産業機器、民生機器、自動車・電装分野で需要増加が期待される。また、SiCパワー半導体の量産化が進むとみられ、シンタリング接合材、エポキシ系封止材料、Si3N4回路基板などの需要増加が予想されることから2030年には4,249億円(2017年比2.3倍)が予測される。
3.パワー半導体製造装置の世界市場
2017年 |
2030年予測 |
2017年比比 |
|
市場規模 |
1,761億円 |
3,953億円 |
2.2倍 |
2017年の市場は1,761億円となった。SiCパワー半導体向けの設備投資が本格化したことから市場は拡大した。今後も、SiCパワー半導体向けを中心に設備投資が継続するとみられていることから、拡大は続くと予想される。GaNパワー半導体向けは、2020年頃からGaNパワー半導体の量産が開始される予定であり、それに向けた設備投資が行われるとみられる。
◆調査対象
パワーデバイス | 整流ダイオード、SBD(ショットキー・バリア・ダイオード)、パワーデバイスFRD(ファースト・リカバリー・ダイオード)、バイポーラパワートランジスタ、低耐圧パワーMOSFET、高耐圧パワーMOSFET、IGBTディスクリート、サイリスタ・トライアック、パワーモジュール、パワーIC、SiC-SBD、SiC-FET、GaNパワーデバイス、酸化ガリウム系パワーデバイス、ダイヤモンド系パワーデバイス |
パワーデバイス構成部材 | SiCウェーハ、GaNウェーハ、半導体レジスト、バッファーコート膜、CMPパッド、CMPスラリー、ダイボンディングペースト、はんだ、シンタリング接合材、リードフレーム用条材、ボンディングワイヤ、封止材料、セラミック基板、金属放熱基板、放熱シート、放熱グリース |
パワーデバイス製造装置 | エピ膜成長装置、GaN向けMOCVD、CMP装置、プラズマCVD、コータ/デベロッパ、露光装置、イオン注入装置、熱処理装置、レーザーアニール装置、ドライエッチング装置、スパッタリング装置、バックグラインダ、ダイシング装置、ダイボンダ、ワイヤボンダ、モールディング装置、ウェーハ外観検査装置、チップ外観検査装置、ハンドラ、電気テスタ装置 |
パワーエレクトロニクス機器 | 冷蔵庫、洗濯機、ルームエアコン、IHクッキングヒーター、炊飯器、電子レンジ、LED照明器具、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末、液晶テレビ、サーバ、UPS(中・大容量)、電動自動車駆動用インバータ、電動自動車用DC-DCコンバータ、ステアリング制御システム、アイドリングストップ/回生エネルギーシステム、ボディ統合制御システム、車載用充電器、急速充電器、普通充電器、鉄道車両、太陽光発電用パワーコンディショナ、風力発電システム、家庭用燃料電池、電力貯蔵システム(需要家設置)、汎用インバータ、サーボアンプ、スポット溶接ロボット、マトリクスコンバータ |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。