PRESSRELEASE プレスリリース
爪白癬治療剤、脱毛症・睫毛貧毛症治療剤、関節リウマチ治療剤など
皮膚科領域、整形外科領域の治療剤市場を調査
爪白癬治療剤543億円(2.0倍)、脱毛症・睫毛貧毛症治療剤217億円(13.6%増)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、ジェネリック医薬品台頭の影響を受けるも新薬の発売によって好調である皮膚科領域、整形外科領域の医療用医薬品市場を調査した。その結果を「2018‐2019 医療用医薬品データブック No.3」にまとめた。
今回の調査では、皮膚科領域(9品目)、整形外科領域(5品目)のほか、薬価改定やジェネリック医薬品の台頭によって伸びが鈍化している免疫抑制剤(2品目)、甲状腺機能低下症の第一選択薬として推奨されている製品が伸びている甲状腺機能障害治療剤、品質の差別化が難しく新製品の発売もないため伸び悩んでいる栄養補助剤・輸液製剤、また、新製品の発売や疾病啓発の取り組みにより伸びている希少疾患領域(7品目)の市場を調査した。
◆注目市場
1.爪白癬治療剤(皮膚科領域)
※爪白癬症を適応としている外用抗菌剤を対象とする。また、経口剤は対象外であるが、爪白癬のみに適応する経口剤は対象とし2018年7月発売の「ネイリン」(佐藤製薬)も含む。
爪白癬治療剤は、2014年9月に国内で初めて爪白癬を適用とした外用剤である「クレナフィン」(科研製薬)が発売されたことで市場が形成された。潜在患者の掘り起こしや、ハケと一体型のボトルが評価され経口剤(本市場対象外)からの切り替えが進んだ。2016年4月にはワンプッシュ式で利便性の高い「ルコナック」(佐藤製薬、ポーラファルマ)が発売され、「クレナフィン」との差別化を図ったプロモーションを行うなど市場は活況を呈している。2018年は、佐藤製薬から20年ぶりの爪白癬治療剤の経口剤である「ネイリン」が発売され、注目度が高いこともあり伸びている。「ネイリン」の発売によって患者の選択肢が増えたことや、参入企業のプロモーションや疾患啓発活動により、今後、更なる市場の拡大が期待される。
2.脱毛症・睫毛貧毛症治療剤(皮膚科領域)
2018年見込 |
2017年比 |
2026年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
200億円 |
104.7% |
217億円 |
113.6% |
脱毛症・睫毛貧毛症治療剤は、脱毛症治療剤が市場の9割以上を占める。脱毛症治療剤は、2005年に脱毛症治療剤(男性型)「プロペシア」(MSD)の発売により本格的に市場が形成され、クリニックを中心に市場は拡大してきたが、2015年にジェネリック医薬品が相次いで発売されたことや一般用医薬品との競合により、一時縮小した。しかし、2016年に脱毛症治療剤(男性型)としては初めての5α還元酵素1型/2型阻害剤「ザガーロ」(グラクソ・スミスクライン)が発売されたことにより、再び拡大している。今後は、「ザガーロ」がけん引し、市場拡大が予想される。睫毛貧毛症治療剤は、まつげ美容液などの医薬品以外の製品との競合があり市場は縮小している。
3.関節リウマチ治療剤(整形外科領域)
2018年見込 |
2017年比 |
2026年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
2,663億円 |
103.0% |
2,980億円 |
115.2% |
関節リウマチ治療剤は、生物学的製剤が市場の8割を占めており拡大をけん引している。生物学的製剤は、市場の中心であった「レミケード」(田辺三菱製薬)、「エンブレル」(ファイザー、武田薬品工業)が、バイオシミラーの台頭によって減少している。しかし、両剤が効きにくい患者を中心に、「アクテムラ」(中外製薬)や「ヒュミラ」(エーザイ)などが好調なため市場は拡大している。免疫抑制剤はジェネリック医薬品の台頭で大きな影響を受けているが、JAK阻害剤の「ゼルヤンツ」(ファイザー・武田薬品工業)は伸びている。今後は、生物学的製剤、免疫抑制剤ともに既存の薬剤はバイオシミラー、ジェネリック医薬品によって減少するとみられるが、新薬によって市場は緩やかに拡大していくとみられる。特に、免疫抑制剤では、開発中のJAK阻害剤が多く市場拡大への寄与が期待される。
◆調査結果の概要
1.整形外科領域
関節リウマチ治療剤が生物学的製剤の新薬の発売によって伸びている。また、若年性特発性関節炎治療剤は免疫抑制剤が効きにくい、難治性の患者へ生物学的製剤の普及が進み好調である。一方、骨粗鬆症治療剤や変形性関節症治療剤がジェネリック医薬品への切り替えや薬価改定の影響を受け縮小するとみられ、2018年の市場は5,650億円(2017年比99.9%)が見込まれる。今後は、関節リウマチ治療剤が引き続き伸びるとみられるが、骨粗鬆症治療剤や変形性関節症治療剤は高齢化による患者数の増加の一方で、ジェネリック医薬品台頭の影響を引き続き受けるとみられる。2026年の市場は6,369億円(同112.7%)と予測される。
2.皮膚科領域
2014年に新薬の発売によって市場が形成された爪白癬治療剤が大幅に伸びている。また、脱毛症・睫毛貧毛症治療剤と乾癬治療剤は新薬が好調で伸びている。皮脂欠乏症治療剤・皮膚軟化剤では長期収載品のトップブランドが好調であり、2018年の市場は2,205億円(2017年比104.1%)が見込まれる。今後は、爪白癬治療剤とアトピー性皮膚炎治療剤が市場拡大をけん引し、2026年の市場は3,171億円(同149.6%)と予測される。特にアトピー性皮膚炎治療剤は、JAK阻害剤を中心に新薬の投入が進み伸びるとみられる。
3.免疫抑制剤領域
市場の9割以上を占める免疫抑制剤の移植処方分が移植件数の増加に伴い、市場拡大してきた。しかし、近年は「プログラフ」(アステラス製薬)や「ネオーラル」(ノバルティス ファーマ)といった上位製品にジェネリック医薬品が発売されたことから伸びは鈍化しており、2018年の市場は794億円(2017年比101.4%)が見込まれる。今後は、有力な開発品が見当たらないことから当面は既存の薬剤を中心に展開され、また、薬価改定の影響を受けるため、市場は横ばいと予想される。2026年の市場は、795億円(同101.5%)と予測される。
4.甲状腺機能障害治療剤
市場の7割以上を占める「チラーヂン S」(あすか製薬)が甲状腺機能低下症の第一選択薬として推奨されていることで処方数が増加し伸びており、2018年の市場は72億円(2017年比102.9%)が見込まれる。今後は、新薬の発売や開発は限られるものの、甲状腺疾患は治療をしていない潜在患者もまだ多く、参入企業の疾患啓発活動の強化により受診率が向上し、市場の拡大が期待される。2026年の市場は、77億円(同110.0%)と予測される。
5.栄養補助剤・輸液製剤
輸液製剤、経腸栄養剤、ビタミン剤で構成されている。経腸栄養剤は、医薬品に分類される成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤に加え、食品の消化態栄養剤と天然濃厚流動食(総合栄養食品)も対象とする。食品の経腸栄養剤は、価格設定が自由であることから伸びている。一方、輸液製剤、医薬品の経腸栄養剤、ビタミン剤は、薬価引き下げや品質の差別化が難しいこと、新薬の発売が見当たらないことから縮小しており、2018年の市場は2,333億円(2017年比98.3%)が見込まれる。今後は、食品の経腸栄養剤は高齢者施設など医療機関以外でもニーズがあり、高齢化の進展に伴い使用者が増加し伸びが期待される。しかし、輸液製剤は薬価の改定、ビタミン剤は食品・健康食品との競合によって縮小するとみられ、2026年の市場は2,199億円(同92.7%)と予測される。
6.希少疾患領域
対象とする7疾患のうちニューロパチー治療剤、中枢性尿崩症治療剤、ライソゾーム病治療剤が新薬の発売によって伸びている。また、疾患啓発などの取り組みもあり、2018年の市場は509億円(2017年比117.0%)と拡大が予想される。今後は、開発中のニューロパチー治療剤、筋ジストロフィー治療剤、視神経脊髄炎治療剤、ライソゾーム病治療剤の新薬が2019年から2020年頃に発売予定で、希少疾患治療剤に注力する企業は増えているため、2026年の市場は1,018億円(同2.3倍)と拡大が予測される。
◆調査対象
整形外科領域 | 関節リウマチ治療剤、骨粗鬆症治療剤、強直性脊髄炎治療剤、変形性関節症治療剤、若年性特発性関節炎治療剤 |
皮膚科領域 | 外用抗菌剤(にきび、爪白癬処方分は除く)、皮脂欠乏症治療剤・皮膚軟化剤、にきび治療剤、皮膚潰瘍治療剤(熱傷含む)、褥瘡治療剤、爪白癬治療剤、脱毛症・睫毛貧毛症治療剤、アトピー性皮膚炎治療剤・その他皮膚炎治療剤(外用ステロイド剤含む)、乾癬治療剤、その他皮膚治療剤(鎮痒剤、痔疾患治療剤等) |
免疫抑制剤領域 | 免疫抑制剤(移植処方分)、免疫抑制剤(ネフローゼ症候群・エリテマトーデス・ループス腎炎処方分) |
甲状腺機能障害治療剤 | ― |
栄養補助剤・輸液製剤 | ― |
希少疾患領域 | ニューロパチー治療剤、ハンチントン病治療剤、筋ジストロフィー治療剤、中枢性尿崩症治療剤、重症筋無力症治療剤、ライソゾーム病治療剤、視神経脊髄炎治療剤 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。