PRESSRELEASE プレスリリース

第20035号

炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査
―2035年市場予測(2018年比)―
<調査結果の概要>
■CFRP 3兆8,548億円(2.7倍)
~ 風力発電ブレード、自動車用途で需要が増加し市場拡大 ~
<注目用途市場>
■風力発電ブレード 4,913億円(2.2倍)
~ さらなる 大型ブレードの開発・商用化が計画されておりCFRP使用量が増加 ~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、軽量・高強度材としての有用性の高さから、自動車、航空機、スポーツ・レジャーなど幅広い産業分野で採用が増加している炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査した。その結果を「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2020」にまとめた。

この調査では、炭素繊維、中間基材、接着剤などのキーマテリアル/関連部品・装置の市場動向に加えて、用途別市場や主要企業の動向を調査・分析した。また、CFRP/CFRTP関連マテリアル、CFRP/CFRTP関連装置市場の主要参入企業延べ1,026社を一覧表でまとめている。

◆調査結果の概要

■炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)

 

2019年見込

2018年比

2035年予測

2018年比

CFRP

1兆4,999億円

104.8%

3兆8,548億円

2.7倍

CFRTP

546億円

105.2%

3,703億円

7.1倍

炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて成形加工した炭素繊維複合材料(CFRP)の成型加工品とマトリクス樹脂に熱可塑性樹脂を使用した炭素繊維複合材料(CFRTP)の成形加工品を対象とする。

2019年のCFRP市場は1兆4,999億円(2018年比4.8%増)が見込まれる。航空機、風力発電ブレード、自動車用途を中心に採用されており、中でも風力発電ブレード用途で需要が増加している。また、2025年前後からは自動車用途においても需要が増加するとみられ、今後の市場拡大が予想される。

用途別では、風力発電ブレード用途は、欧州やアジアにおいて洋上風力発電プロジェクトが進行しており、洋上風力発電機で用いられる5MWから10MWクラスの大型ブレードの軽量化を図るためにCFRPの採用が有力視されているため、今後の伸びが期待される。航空機用途は、計画生産体制が組まれているため安定的な需要がある。2025年前後には、生産数が多いAirbus「A320」などの機種において、CFRPの使用量を増加させた次世代機の生産が想定され伸びるとみられる。自動車用途は自動車メーカー各社がCFRP利用技術の研究開発を進めている。近年は、EVシフトの影響から電池ケース向けの研究開発が活発化しており今後の採用が期待される。

2019年のCFRTP市場は546億円(2018年比5.2%増)が見込まれる。CFRPで課題となっている成形加工時間を大幅に短縮することが可能であり注目度が高まっている。

CFRTPは短/長繊維の加工品と連続繊維の加工品がある。短/長繊維の加工品は現状では、ATMなどの自動機器やギアなどの静電・摺動部品を中心に射出成形部品が採用されている。今後は車載カメラやレーダー、センサーにおける誤作動防止のための電磁波シールド用部品への採用が増加するとみられる。また、センサー搭載家電の増加に伴い家電分野においても電磁波シールド用部品への採用が期待される。連続繊維の加工品は、現状では航空機用途での限定的な需要となっているが、2025年から2030年にかけて自動車用途における骨格・構造部品での採用が本格的に進むとみられる。

■端材利用CFRP/CFRTP

2019年見込

2018年比

2035年予測

2018年比

164億円

103.8%

922億円

5.8倍

加工時に発生する端材を活用した成形加工品を対象とする。

現状は静電対策用ICトレーや自動車用途で採用されている。自動車用途ではCFRP採用拡大に向けてリサイクル技術の確立が必須条件とみられており、リサイクル繊維を利用した成形加工品の品質安定化に向けた技術開発が行われている。航空機用途ではAirbusが2025年にかけて、航空機の各種加工工程において発生した端材の95%をリサイクル市場へ流通させ、内5%を航空機部品で再利用する目標を掲げている。

◆注目用途市場

 

2019年見込

2018年比

2035年予測

2018年比

自動車

1,011億円

101.9%

6,681億円

6.7倍

風力発電ブレード

2,385億円

107.8%

4,913億円

2.2倍

スポーツ・レジャー

1,373億円

99.9%

2,115億円

153.8%

建築・土木

1,935億円

96.9%

9,304億円

4.7倍

自動車用途は、自動車業界の近年の開発トレンドが自動運転関連技術に向いていることからCFRP/CFRTPの採用計画は先延ばしとなっている。採用が増加するのは、CFRP/CFRTPの特性を踏まえた設計技術や使いこなし技術が蓄積され利用技術が向上する2025年頃とみられる。自動車メーカーでは開発コスト削減のため車体プラットフォームを共通化させており、採用が開始されれば急激な需要増加が予想される。また、電池パックの軽量化対策としてEV用電池パック向けでの開発が活発化している。開発はCFRP/CFRTPの双方で進展しており、欧州や中国において今後の採用が期待される。

風力発電ブレード用途は、洋上風力発電の増加やブレードの大型化に伴い、採用が増加している。風力発電ブレードは大型部品であるため、軽量で高強度なCFRPの採用が一般的である。CFRTPは100kw未満の超小型ブレードの一部が射出成形品などで開発されているが、市場規模は僅少となっている。今後、洋上風力発電の容量増加に向け、さらなる大型ブレードの開発および商用化が計画されており、CFRP使用量の増加が期待される。

なお、風力発電市場は欧州や中国を中心に拡大している。欧州は英国やデンマークを中心に洋上風力発電の比率が高い。また、大手風力発電メーカーSiemensのCFRP採用開始や北米も含めた風力発電プロジェクトの進展とともに、ブレードの大型化かつCFRPの採用比率が高まり、市場は拡大するとみられる。

スポーツ・レジャー用途は、現状ではゴルフクラブ、ラケット、自転車、釣竿が中心である。CFRP/CFRTPを採用したゴルフクラブ、自転車、テニスやバドミントンのラケット、釣竿の歴史が長く、素材としては定着している。ゴルフやテニスは競技人口が多いため、今後もゴルフクラブやラケット向けが市場をけん引するとみられる。その他では、マリンスポーツ(レジャーボートやカヌー、サーフボード、レーシング艇)、ランニング用シューズ、パラスポーツ用品(競技用義足や車いすの部品)などでCFRP/CFRTPを採用する製品が増加しており、今後使用量の伸びが期待される。

建築・土木用途は、コンクリートや鉄筋などの骨格構造の強度を増強する補修・補強材として採用されることが多い。価格が高いため骨格構造本体に採用される場合は少なく、新築建造物での採用は限定的となっており一部のデザイン性の高い建築物にみられる程度となっている。

市場は、日本では道路やトンネル、橋脚、マンホールの補修・補強における需要が増加している。欧米では日本と同様に老朽化したインフラや、耐震補強に対する規制強化に伴って需要が増加している。また、新築建造物で採用が増加しており博物館などの屋根材としての需要が増加している。今後は老朽化インフラの補修・補強需要が増加する中国や新興国、デザイン性の高い新築建造物向け建築資材での需要が増加するとみられる欧米を中心に市場は拡大するとみられる。

◆注目キーマテリアル/関連部品・装置の世界市場

■CFRP/CFRTP成形加工装置

 

2019年見込

2018年比

2035年予測

2018年比

CFRP用

112億円

70.9%

307億円

194.3%

CFRTP用

86億円

98.9%

366億円

4.2倍

CFRPやCFRTPを成形加工する装置を対象とする。

2019年のCFRP用成形加工装置市場は、航空機における設備投資が落ち着いたことから縮小するとみられる。2020年以降は自動車の部品生産を目的に、RTM装置などの大型装置の導入が進むとみられる。また、航空機は2025年以降にリージョナル/ビジネスジェットの需要増加に伴い大型装置の導入増加が予想され市場の拡大が期待される。

CFRTP用成型加工装置市場は、射出成形機が大半を占めておりプレス機やF/W装置が導入されている。2020年前後から自動車でラミネート成形加工に向けた装置の導入が本格化するとみられ市場の拡大が予想される。

◆調査対象

品目

・PAN系炭素繊維(レギュラートウ、ラージトウ)

・ウォータージェット

・マトリクス樹脂/添加剤(PES)

・ドリル・エンドミル

・中間基材(プリプレグ、ペレット/シート、ラミネート)

・非破壊検査装置

・CFRP

・CFRTP加熱装置

・CFRTP

・異種材接合

・接着剤

・コア材

・工程紙・フィルム

・ピッチ系炭素繊維

・リサイクル炭素繊維/

・ガラス繊維複合材料(連続繊維)

端材利用CFRP/CFRTP

・セルロースナノファイバー

・自動積層装置

・バサルト繊維

・TFP(Tailored Fiber Placement)装置

・アラミド繊維

・CFRP/CFRTP成形加工装置

・異種繊維複合材料

・3Dプリンタ/付加製造装置

 

用途

・自動車

・その他注目用途

(車両骨格・構造部品/外板・外装部品他)

船舶

・航空機

油田採掘・搬送

・圧力容器

ドローン

(高圧水素タンク/CNGタンク)

鉄道

・風力発電ブレード

医療機器

・建築・土木

治具

・スポーツ・レジャー

家電・OA製品

・静電部品・摺動部品

eVTOL(エアタクシー等)

企業事例

・ユーザー(自動車メーカー)

・ユーザー(航空機メーカー)


2020/04/13
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