PRESSRELEASE プレスリリース

第20061号

コネクテッドカー(つながる車)の世界市場を調査
―2035年市場予測―
■コネクテッドカーの新車販売台数 9,420万台(2019年比3.0倍)
~中国が拡大をけん引。欧米も堅調。日本は小幅な伸びにとどまる
■通信形態別  車載セルラー 7,340万台  モバイル連携 5,100万台
~車載セルラー、モバイル連携が大きく伸びる。車載DSRCは一部の需要を獲得
●3D地図(ダイナミックマップ) 256万台
~自動運転の普及に伴い、欧州や中国、北米を中心に需要が増加

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、ハード・ソフトの両面でさらなる発展が予想されるコネクテッドカーの世界市場を調査した。その結果を「コネクテッドカー・V2X・自動運転関連市場の将来展望 2020」にまとめた。

コネクテッドカーの普及進展による常時接続機能の標準化を背景に、自動車が1つのIoTになり、車同士や人、社会インフラがシームレスにつながることで、安心・安全な交通社会の実現や様々な新サービスの開発が活発化すると期待される。

この調査では、コネクテッドカーのエリア別市場に加えて、コネクテッドカー関連サービス9品目、コネクテッドカー関連機器・システム9品目、コネクテッドカー関連デバイス5品目、V2X関連機器・インフラ4品目、ADAS・自動運転関連機器・技術7品目、EV電源ソリューション2品目の現状を調査し、将来を予想した。加えて、主要自動車メーカーのコネクテッドカー戦略について整理した。

◆調査結果の概要

■コネクテッドカーの新車販売台数(乗用車、商用車)

 

2019年

2035年予測

2019年比

日本

340万台

380万台

111.8%

北米

980万台

1,730万台

176.5%

欧州

780万台

2,020万台

2.6倍

中国

560万台

2,690万台

4.8倍

その他

460万台

2,600万台

5.7倍

合 計

3,120万台

9,420万台

3.0倍

2019年の市場は2018年比17.7%増の3,120万台となった。近年、中国をはじめ世界的に自動車市場の低迷が続いており、また、2020年には新型コロナウイルスに起因する自動車生産設備の稼働停止や一部サプライチェーンの寸断など市場へのマイナス要因もみられる。しかし、自動車メーカーをはじめとしてCASE関連への投資は活発であるため、市場は今後大幅に拡大し、2035年には2019年比3.0倍の9,420万台が予測される。

乗用車が市場拡大をけん引している。自動車メーカー各社の積極的な取り組みにより、乗用車の新車販売台数に占めるコネクテッドカーの比率は今後も高まり、2019年の34%から2035年には80%に上昇するとみられる。商用車においても2035年には75%に上昇すると予想される。

地域別では、現状、北米や欧州がけん引しており、今後も通信形態として車載セルラーを採用した車両を中心とした伸びが予想される。長期的に市場拡大をけん引するとみられる中国は、車載セルラーとモバイル連携採用車両の順調な伸びにより、2035年には2019年比4.8倍の2,690万台が予測される。中国では国レベルで車載セルラーによるコネクテッドカーを推進しているため、車載DSRC採用車両の普及は難しいとみられる。日本は、現時点で乗用車の新車販売台数におけるコネクテッドカー比率が75%を超えており、また、新車販売台数そのものが縮小するため、大幅な伸びは期待できない。現状はモバイル連携の採用が先行しているが、将来的には車載セルラーの採用が伸びるとみられる。また、車載DSRCの採用は少ないものの堅調な需要が予想される。その他では、東南アジア、ブラジル、インドなどの伸びが期待される。新興国を中心に、低コストで利用できるモバイル連携採用車両が市場をけん引するとみられる。

◆通信形態別

 

2019年

2035年予測

2019年比

車載セルラー

1,890万台

7,340万台

3.9倍

モバイル連携

1,730万台

5,100万台

2.9倍

車載DSRC

10万台

800万台

80.0倍

※複数の通信形態を採用するケースがあるためコネクテッドカーの新車販売台数合計とは一致しない

通信形態別では、車両側にセルラー通信用のモジュールを装備する車載セルラーが増えており、2019年でコネクテッドカー販売台数の60%以上に採用されている。5G通信利用の本格開始に伴い2022年の採用率は75%を超えると予想される。

スマートフォン端末などの通信機能を用いるモバイル連携は、「CarPlay」や「Android Auto」などミラーリンク対応車載プラットフォームの普及により、採用が増えている。モバイル連携は、車載セルラーに比べ通信技術・規格の進展やユーザーニーズに対応した柔軟なサービス提供が可能になるメリットがある。また、ユーザーは低コストで導入できるため、新興国での採用増加が期待され、今後も堅調に伸びると予想される。

V2X(車車間・路車間無線通信)用に、セルラー通信との競合技術であるDSRCを利用した車載DSRCは、現状は10万台の市場規模にとどまっている。これまでは日本のITS Connect対応車種が中心であったが、2020年からVolks Wagenが「Golf」への採用を開始しており、本格的な市場形成が期待される。中国が国レベルで車載セルラーの支持を打ち出すなど、車載DSRCを取り巻く環境は厳しいものの、DSRCとセルラー通信に対応するハイブリッド型車載器の開発も進んでおり、一定の需要が期待される。

◆注目市場

●2D地図(ナビゲーション地図)、3D地図(ダイナミックマップ)

 

2019年

2035年予測

2019年比

2D地図

2,110万台

4,030万台

191.0%

3D地図

1万台

256万台

256.0倍

2D地図は、IVIシステム、スマートフォン連携車載器、サードパーティナビに付帯されるナビゲーション地図を対象とする。ナビゲーション機能やストリートビューなどの情報を活用しており、コネクテッドカーの重要な構成要素として位置づけられる。

IVIシステムやナビゲーションシステム搭載の車載器の伸びに連動して市場は拡大が続いている。

地域別にみると、現状は北米や欧州の需要が高いが、長期的には新車販売台数が増加する中国での需要増加が予想される。中国では、安価なディスプレイオーディオをスマートフォンと連携し、ナビゲーションにスマートフォン地図を使用するケースが増えているものの、自動車メーカーがIVIシステム搭載による車種のブランディングに取り組み、精度の高いナビゲーションシステムを展開していることから、2D地図の需要も高まると予想される。欧米では、自動車メーカーがIVIシステムの開発・普及に注力しているため、連動して2D地図も伸びるとみられる。日本は、2D地図が搭載されたナビゲーションシステムが広く普及しており、今後も安定した需要が期待される。

ナビゲーションにスマートフォン地図を利用する安価なディスプレイオーディオの普及は、2D地図市場の拡大阻害要因として懸念されるが、音質や地図、各種ソフトウェアなどの使いやすさから2D地図搭載のナビゲーションシステムの需要は高いため、市場は堅調な拡大が予想される。

3D地図(ダイナミックマップ)は、自動運転で活用が期待される3D高度化地図を対象とする。現状、全方位レンジファインダを用いるリアルタイム3D地図化方式と、事前に作成した地図情報をクラウド上に蓄積するクラウド/ビッグデータ活用による地図化方式の二通りがある。

2018年よりGMが北米向け、2019年には日産自動車が日本向けに採用を開始した。2社ともに自動運転レベル2程度の車種で採用しており、主に高速道路の走行で活用されている。短期的にはフラッグシップモデルなど一部の車種への搭載となるため、当面、市場は緩やかに拡大するとみられる。

3D地図を利用しなくてもレベル2程度の自動運転は可能なため、自動車メーカーの意向や自動運転レベル、国・地域によって採用の有無は分かれるが、国土が広く高速道路での長時間走行が多い中国や北米、欧州などでは需要増加が予想される。また、自動運転レベル3以上では3D地図の採用が増えるとみられ、2035年以降の市場拡大が期待される。

◆調査対象

コネクテッドカー関連

サービス

・自動車向けデータ通信、

・盗難車両追跡(SVT/SVR)

・テレマティクス(OEテレマティクス)

・リモート故障診断/OBD

・フリートテレマティクス

・OTAソリューション

・テレマティクス自動車保険

・車載eコマース

・緊急通報(eCall)

 

コネクテッドカー関連機器・システム

・カーナビゲーション/IVI

・音声認識インターフェース

・ディスプレイオーディオ(DA)

・ジェスチャーインターフェース

・2D地図(ナビゲーション地図)

・ドライバーモニターシステム

・テレマティクスコントロールユニット(TCU)

・ドライブレコーダー

・ヘッドアップディスプレイ(HUD)

 

コネクテッドカー関連デバイス

 運転席前方ディスプレイ

・車載GPS/GNSS

・車載通信モジュール

・セキュアマイコン

・車載短距離無線技術

 

V2X関連機器・

インフラ

・V2X車載器(DSRC)

・V2X用アンテナ

・V2X車載器(C-V2X)

・V2X路側機(RSU)

ADAS・自動運転関連機器・技術

・車載カメラ

・画像処理プロセッサー(SoC/GPU)

・ミリ波レーダー

・バックアップ電源

・LiDAR

・自動駐車システム

・3D地図(ダイナミックマップ)

 

EV電源ソリューション

・V2H/V2B

・VPP・V2G


2020/06/09
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