PRESSRELEASE プレスリリース
■CO 2 分離・カーボンリサイクル関連の世界市場は5兆6,928億円(17.2%増)へ拡大
■CO 2 分離量は各分離技術の進展により、8億9,242万t‐CO 2 (16.9%増)へ拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、大幅なCO2削減が求められ、注目度が高まり、開発が進むCO2分離・カーボンリサイクル関連の世界市場を調査した。その結果を「カーボンリサイクル CO2削減関連技術・材料市場の現状と将来展望 2020」にまとめた。
この調査では、CO2分離技術5品目、CO2分離材料5品目、CO2利活用13品目、CO2原料ソース7品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。
◆調査結果の概要
■CO2分離・カーボンリサイクル関連の世界市場 注:市場データは四捨五入している
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2019年 |
2030年予測 |
2019年比 |
CO2分離技術 |
579億円 |
654億円 |
113.0% |
CO2分離材料 |
1,985億円 |
2,165億円 |
109.1% |
CO2利活用プラント※ |
1,336億円 |
1,858億円 |
139.1% |
CO2利活用製品※※ |
4兆4,669億円 |
5兆2,250億円 |
117.0% |
合 計 |
4兆8,569億円 |
5兆6,928億円 |
117.2% |
※プラント:CCS、EOR、合成ガス化、メタネーション、メタノール化、ポリカーボネート、人工光合成
※※製品:尿素化、ミネラル化
2019年の市場は、4兆8,569億円となった。今後も拡大を続け2030年には5兆6,928億円(2019年比17.2%増)と予測される。
CO2分離技術は、CO2を分離する技術を用いた装置やプラントを対象とする。市場は、化学吸収(CO2吸収液の化学反応を利用して分離する技術)と物理吸収(CO2を大量に溶解できる液体中に取り込む技術)が80%以上を占めており、主に天然ガスや水素を製造する際に発生するCO2の除去で利用されている。近年は、温室効果ガス削減対策やCO2原料確保のため、排ガスからのCO2回収での利用も増加し、伸びている。
CO2分離材料は、化学吸収や物理吸収などの分離技術に用いられる材料である。2019年は、物理吸収液や高分子膜が伸びている。
CO2利活用プラントは、現状はCCS貯留プラントとEORプラントが大半であるがカーボンリサイクルの推進に向けてCO2利用化学品やE‐Fuel(カーボンフリー水素やCO2を反応させて作る合成燃料)を製造するための実証プラントが相次ぎ稼働しており、2030年以降の実用化に向けて技術開発が進められている。
CO2利活用製品は、CO2を原料とする製品で尿素化が大半を占めており、新興国を中心に伸びている。2025年以降はミネラル化でCO2利用が進むとみられる。
■CO2分離量(世界)
分離技術 |
2019年 |
2030年予測 |
2019年比 |
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全体 |
7億6,314万t‐CO2 |
8億9,242万t‐CO2 |
116.9% |
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化学吸収 |
4億6,980万t‐CO2 |
5億2,250万t‐CO2 |
111.2% |
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物理吸収 |
1億9,420万t‐CO2 |
2億3,740万t‐CO2 |
122.2% |
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物理吸着 |
7,873万t‐CO2 |
8,662万t‐CO2 |
110.0% |
※化学吸収、物理吸収、物理吸着は全体の内数
世界のCO2分離量は、2019年に7億6,314万t‐CO2となった。分離技術は、化学吸収によるのが61.6%と最も多いが、物理吸収、物理吸着も一定量利用されている。物理吸収は天然ガス、物理吸着は石油精製分野の利用が多い。今後は、各分離技術の進展により分離量は増加していくとみられ2030年は8億9,242万t‐CO2と予測される。
■CO2発生量(世界)
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2019年 |
2030年予測 |
2019年比 |
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全体 |
331億9,053万t‐CO2 |
336億4,151万t‐CO2 |
101.4% |
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発電所 |
136億 400万t‐CO2 |
135億8,600万t‐CO2 |
99.9% |
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輸送分野 |
95億5,000万t‐CO2 |
98億4,500万t‐CO2 |
103.1% |
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製鉄・セメント分野 |
52億4,800万t‐CO2 |
51億9,400万t‐CO2 |
99.0% |
※発電所、輸送、製鉄・セメントは全体の内数
世界のCO2発生量は、2019年の331億9,053万t‐CO2から2030年には336億4,151万t‐CO2へ増加が予想される。なお、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に落ち込むとみられる。
2019年のCO2発生量は発電所が最も多く、全体の40%以上を占める136億400万t‐CO2であった。石炭火力発電の減少および再生可能エネルギーの普及により、今後は2022年頃をピークに減少していくと予想される。
次にCO2発生量が多いのは輸送分野であり、2019年は全体の30%弱を占める95億5,000万t‐CO2であった。自動車の燃費向上により、先進国のCO2発生量は減少しているものの、新興国の自動車保有台数増加とともに増えており、今後もCO2発生量は増加していくとみられる。
続いて製鉄・セメント分野が多く、2019年は全体の16%を占める52億4,800万t‐CO2であった。製鉄・セメントメーカーはコスト競争が激しく、CO2排出量削減に向けた投資余力が少ない。新型コロナウイルス感染症の影響により2020年は減少するとみられるが、以降は、2030年まで増加が続くと予想される。
◆注目市場
●EOR
2019年 |
2030年予測 |
2019年比 |
958億円 |
1,458億円 |
152.2% |
EORとは原油増進回収法のことで、原油の三次採取法の一種である。今回はCO2を用いた炭酸ガス圧入法を対象とする。市場はプラントの材工一式価格を捉えた。
世界で170件以上のCO2利用EORプロジェクトが稼働しており、そのうち80%以上が米国に集中している。米国では国内の原油生産量の減少を受け、1980年代から税控除によってEORを推進している。原油価格の変動によって市場は増減が生じる可能性があるものの、米国以外の中国やカナダ、中東への広がりが予想されることから今後も拡大を続けていくとみられる。特に、中国は原油を輸入していることから原油増産につながるEORの需要は高く、EORの活用は進むとみられる。
●化学吸収
2019年 |
2030年予測 |
2019年比 |
230億円 |
220億円 |
95.7% |
化学吸収は酸性ガス(CO2や硫化水素等)成分の除去を目的に開発され、実用化が進んだ技術であり、CO2分離技術のなかで最も普及している。世界的には天然ガス・LNG、アンモニア、日本ではアンモニア、石油精製水素製造プラントの脱炭酸工程で導入されている。また、化学吸収を用いたCCS(CO2を回収・輸送し、地中・海底などに貯留する技術)/CCU(CO2が持つ特性に着目して、有益な形へ化学変換・生物変換・物理利用する技術)も徐々に増えている。世界で稼働した主要なCCSプロジェクトは、2017年のアメリカ・Illinois CCSがあげられる。また、日本で稼働した主要なプロジェクトは、2017年の日本液炭の炭酸ガスプラント(岡山県)、2018年の住友共同電力のCCUプラント(愛媛県)があげられる。
今後は、小規模なガス井で安価な膜分離の採用が進んでいることや、東南アジアを中心に分布する高濃度にCO2が含まれCO2分圧が高いガス井で、物理吸収(高分圧ガスからCO2を分離・回収するのに適している)の採用が進むとみられ市場は縮小していくとみられる。
●ミネラル化
2019年 |
2030年予測 |
2019年比 |
389億円 |
380億円 |
97.7% |
ミネラル化とは、CO2を炭酸塩として固定化する方法である。現状は、工業用途としての裾野が広い炭酸塩化(炭酸カルシウム)、また、大規模なCO2削減が可能であるコンクリート用途が主となっており、既に商用プラントが稼働しているほか、様々な実証試験が行われている。しかし、コストが従来製品に比べ割高であることや、セメントとして使用する場合は建設現場の近くで生産を可能とするためのCO2サプライチェーンの構築、および生産設備の改修が必要となる点が課題となっている。また、コンクリートの場合はCO2を取り込むことでアルカリ性から中性となるため、内部が酸化しやすくなり鉄筋コンクリートとして使用できない点なども課題となっており、今後、大幅な市場の拡大は期待できないと予想される。
◆調査対象
CO2分離技術 |
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・化学吸収 |
・物理吸収 |
・物理吸着 |
・膜分離 |
・DAC(Direct Air Capture) |
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CO2分離材料 |
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・アミン吸収液 |
・物理吸収液 |
・活性炭 |
・ゼオライト吸着剤 |
・高分子膜 |
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CO2利活用 |
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プラント |
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・超臨界CO2化 |
・EOR |
・合成ガス化 |
・メタノール化 |
・人工光合成 |
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・CCS |
・温室栽培 |
・メタネーション |
・ポリカーボネート |
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製品 |
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・液化炭酸ガス |
・ドライアイス |
・尿素化 |
・ミネラル化 |
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CO2原料ソース |
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・発電所 |
・製鉄・セメント |
・天然ガス |
・石油精製 |
・アンモニア |
・バイオガス |
・輸送 |
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※網掛け部分は日本市場のみを対象とする。