PRESSRELEASE プレスリリース

第21069号

炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査
カーボンニュートラルなど、世界的な環境意識の向上により注目が集まる
―2035年市場予測(2020年比)―
■炭素繊維複合材料(CFRP) 3兆4,958億円(2.8倍)
~航空機用途の回復や風力発電ブレード用途の伸長に加え、自動車用途の需要増加により市場拡大~
■炭素繊維複合材料 自動車用途 5,660億円(8.9倍)
~2030年に厳格化される燃費規制への対応として車体軽量化開発が活発化し、需要増加~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、2020年は需要が落ち込んだものの、今後は航空機や風力発電ブレード、自動車など様々な用途で採用増加が期待される炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査した。その結果を 「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2021」 にまとめた。

この調査では、炭素繊維、中間基材、接着剤などのキーマテリアル/関連部品・装置の市場動向に加えて、用途別市場や主要企業の動向を調査・分析した。また、CFRP/CFRTP関連マテリアル、CFRP/CFRTP関連装置市場の主要参入企業を一覧表でまとめている。

◆調査結果の概要

■炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)

 

2020年

2019年比

2035年予測

2020年比

CFRP

1兆2,464億円

78.2%

3兆4,958億円

2.8倍

CFRTP

410億円

78.2%

3,524億円

8.6倍

CFRPは炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料の成形加工品を対象とする。

航空機や風力発電ブレードが二大用途であり、近年は風力発電ブレード用途の需要が増加している。次いで自動車や圧力容器、スポーツ・レジャー用途での使用が多い。2020年の市場は新型コロナウイルス感染症の影響により高単価な航空機用途などが大幅に縮小したことから2019年比21.8%減の1兆2,464億円となった。2021年以降、新型コロナ流行の影響が落ち着きつつあることから需要は徐々に回復するとみられる。2025年頃から自動車用途の需要増加が期待され、航空機や風力発電ブレード用途も好調に推移することから2035年の市場は2020年比2.8倍の3兆4,958億円が予測される。

CFRTPはマトリクス樹脂に熱可塑性樹脂を使用した成形加工品を対象とする。

CFRPで課題となっている成形加工時間を大幅に短縮することが可能なため注目されている。短/長繊維と連続繊維の加工品があり、現状では短/長繊維の加工品はATMなどの自動機器やギア、モーターなどの静電・摺動部品、エアコンや掃除機などの家電OA製品を中心に広く採用が進んでいる。一方、連続繊維の加工品は航空機用途で限定的な需要にとどまっている。2019年以降、需要先における設備投資抑制の影響から市場は低迷しており、2020年の市場は新型コロナ流行の影響から2019年比21.8%減の410億円となった。2021年以降、各産業における設備投資の回復により需要が増加し、2025年の市場は2019年を上回るとみられる。2030年にかけてマルチマテリアル成形技術の蓄積や低コスト開発が進展し、自動車用途を中心に市場は拡大すると予想される。

・用途別市場動向

 

2020年

2019年比

2035年予測

2020年比

航空機

4,247億円

60.9%

1兆1,648億円

2.7倍

風力発電ブレード

2,671億円

96.2%

5,337億円

199.8%

自動車

634億円

64.5%

5,660億円

8.9倍

航空機用途は、大型機体の計画キャンセルや大手航空機メーカーのシステムトラブルなどによる生産停止、新型コロナによる受注のキャンセルの影響を受けて2020年の市場は縮小したものの、世界的なリージョナルジェットやシングルアイル機体などの増産に伴う需要増加により、2025年頃には2019年の市場を上回るとみられる。今後は脱オートクレーブ成形加工技術の確立に伴い、量産機体への採用が増えるとみられる。

風力発電ブレード用途は、洋上風力発電の増加およびブレードの大型化に伴い、高強度・高剛性となる炭素繊維複合材料の採用が増えている。新型コロナ流行の影響による生産工場の稼働停止などが一部でみられたが、影響は限定的であった。今後もカーボンニュートラルといった世界的な環境意識の向上は続くとみられ、市場拡大が期待される。

自動車用途は、軽量素材採用ニーズが高いEV向けが中心である。主要採用車種がモデル末期となったため販売が減少していることや、新型コロナ流行の影響による自動車生産台数の減少により、2020年は大幅な縮小となった。現状、量産車開発はコストを優先するため既存技術を採用しているものの、試験的な先行車開発では金属部品とのハイブリッド成形などマルチマテリアル化技術と低コスト化開発が進行している。2025年頃から開発される量産車で、2030年に厳格化される燃費規制への対応として車体軽量化開発が活発化するとみられ、蓄積してきたマルチマテリアル技術の採用開始が有望視されることから炭素繊維複合材料の需要が増加すると予想される。

◆注目キーマテリアル/関連部品・装置の世界市場

●PAN系炭素繊維

2020年

2019年比

2035年予測

2020年比

2,299億円

100.9%

5,503億円

2.4倍

航空機や風力発電ブレード用途などで採用されるCFRP向けが中心となっており、今後もCFRP向けが市場をけん引するとみられる。2020年の市場は新型コロナ流行の影響により数量ベースでは縮小したものの、平均単価の高いCFRP向けの比率がやや高まったこともあり、金額ベースでは微増となった。2030年にかけて量産加工性やリサイクル性に優れたCFRTP向けが自動車用途において採用が増えるとみられる。

●端材利用CFRP/CFRTP

2020年

2019年比

2035年予測

2020年比

142億円

86.1%

804億円

5.7倍

加工時に発生する端材を活用した成形加工品を対象とする。

現状は、CFRPの各種加工工程で発生した端材を利用した成形加工品が静電部品や家電部品、自動車部品などさまざまな用途で採用されている。自動車分野ではCFRP/CFRTPの採用増加にはリサイクル技術の確立が必須条件とされ、リサイクル繊維加工品の品質安定化に向けた技術開発が行われている。また、航空機分野ではAirbusが2025年にかけて、航空機の各種加工工程において発生した端材の95%をリサイクル市場へ流通させ、そのうち5%を航空機部品で再利用する目標を掲げていることから今後自動車と航空機用途で需要増加が期待される。短期的にはCFRPの工程端材が市場の中心となるが、中長期的にはリサイクル性に優れたCFRTPの工程端材の利用が本格化するとみられる。

●CFRP/CFRTP成形加工装置

 

2020年

2019年比

2035年予測

2020年比

CFRP用

89億円

73.0%

335億円

3.8倍

CFRTP用

75億円

86.2%

358億円

4.8倍

CFRPやCFRTPを成形加工する装置を対象とする。

2020年のCFRP用成形加工装置市場は、新型コロナ流行の影響による生産遅延や設備投資の見直しなどにより大きく縮小した。2021年以降、感染症の影響緩和を期待した設備投資の回復や、自動車分野におけるRTM(樹脂注入含浸成形)やWCM(ウェットコンプレッション成形)などによる部品生産の本格化に伴う需要増加から、市場は回復に向かうとみられる。また、建築・土木分野ではパイプ状建材の生産拡大に伴い、F/W(フィラメントワインディング)装置の導入が増加するとみられる。2025年以降、航空機分野ではビジネス/リージョナルジェットなどの次世代機においてCFRP採用が増えることから、今後の伸びが期待される。

CFRTP用成形加工装置市場は射出成形機が市場の大半を占め、自動車分野などで採用される端材利用CFRTP向けがけん引している。2025年頃には自動車分野におけるラミネート成形加工の採用増加に向けて、プレス機などの装置の導入が本格化するとみられ、市場は拡大していくと予想される。

◆調査対象

キーマテリアル/関連部品・装置

・PAN系炭素繊維(レギュラートウ、ラージトウ)

・TFP(Tailored Fiber Placement)装置

・マトリクス樹脂/添加剤(PES)

・CFRP/CFRTP成形加工装置

・中間基材

・3Dプリンター/付加製造装置

(プリプレグ、ペレット/シート、ラミネート)

・非破壊検査装置

・CFRP

・CFRTP加熱装置

・CFRTP

・異種材接合

・接着剤

・コア材

・工程紙・フィルム

・ピッチ系炭素繊維

・リサイクル炭素繊維/端材利用CFRP/CFRTP

・C/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)

・自動積層装置

 

用途

・自動車(車両骨格・構造部品/外板・外装部品他)

・船舶

・航空機

・油田掘削・搬送

・圧力容器(高圧水素タンク/CNGタンク)

・ドローン

・風力発電ブレード

・家電・OA製品

・建築・土木

・空飛ぶクルマ・フライングカー(eVTOLなど)

・スポーツ・レジャー

・鉄道車両

・静電部品・摺動部品

・医療機器

 

・治具


2021/07/15
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