PRESSRELEASE プレスリリース
■CO 2 固定化量 3億2,468万t-CO 2 (84.9%増)/2兆8,860億円(5.3倍)
脱炭素の取り組みや固定化コスト低減により、CO 2 利活用ビジネスが活性化し拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、CO 2 排出量削減を目的としたCO 2 の貯留・利用といった固定化、クレジットの活用による相殺など、排出したCO 2 の利活用ビジネスの世界市場を調査した。この結果を 「CO2利活用ビジネスにおけるグローバル市場の現状と将来展望 2021」 にまとめた。
この調査では、国・地域におけるCO 2 削減政策や取引市場の概要、主要プロジェクトの把握、関連イニシアティブの概要、関連クレジットのスキームや流通量、さらにはCO 2 関連の技術/製品の開発や生産販売などを行うプレーヤーやコンソーシアムなど計100社・団体の動向を整理した。
世界的な地球温暖化対策として「パリ協定」が2020年から施行されており、120以上の国が2050年までに温室効果ガスの排出を“実質ゼロ"とする目標を掲げている。地球温暖化対策の一つであるCO 2 排出量削減の手法として、省エネルギー化に加え、近年ではCO 2 を排出しない再生エネルギーの活用も進んでいる。さらに、排出したCO 2 を分離回収し貯留・利用する固定化、排出した分のクレジットを購入することで相殺するカーボンオフセットなど、排出したCO 2 の利活用が注目されている。
世界的な規制の厳格化は、企業へコスト負担を強いることになるが、一方で新しい技術や製品開発を後押しする好機となり、CO 2 排出削減・固定化を“環境価値"として取り扱うなど新たなビジネスの展開が期待される。
・CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)
CO2を回収・輸送し、地中・海底などに貯留する技術である。このうち、枯渇した油田にCO2を注入し残留している原油を押し出して再び原油を採掘するものをEORとする。
・CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)CO2が持つ特性に着目して、直接利用、もしくは有益な形へ変換し利用する技術である。液化炭酸ガス、尿素化、ポリカーボネート、ミネラル化などがある。
◆調査結果の概要
■CO2固定化量の世界市場
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2020年 |
2035年予測 |
2020年比 |
固定化量 |
1億7,561万t-CO2 |
3億2,468万t-CO2 |
184.9% |
排出権換算価値 |
5,480億円 |
2兆8,860億円 |
5.3倍 |
2020年のCO2固定化量は1億7,561万t-CO2 となった。新型コロナウイルス感染症の影響によって経済活動またエネルギー需要が停滞し、CO2 排出量が減少したことにより、CO2 固定化量は前年と比べて減少した。しかし、2021年以降は中国・アジアの経済活動の回復より再びCO 2 排出量が増加し、世界的な脱炭素への取り組みや固定化コストの低減が進むことでCO 2 固定化量は拡大し、2035年には3億2,468万t-CO 2 が予測される。
CO 2 市場価格を基に算出した排出権換算価値は、2020年に5,480億円となった。CO 2 市場価格が上昇していることから、これまで採算性が低かったCCSやCCUビジネスにも注目が集まり、多様な技術の開発とコスト低減により、CO 2 利活用ビジネスが活性化し、2035年には2兆8,860億円へ大幅に拡大するとみられる。
■技術別CO2固定化量の世界市場
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2020年 |
2035年予測 |
2020年比 |
CCS(貯留) |
2,506万t-CO2 |
6,900万t-CO2 |
2.8倍 |
CCU(利用) |
1億5,055万t-CO2 |
2億5,568万t-CO2 |
169.8% |
CCSは大規模なCO2 の固定化が可能であり、欧州を中心にプロジェクトが進められている。2020年は7つの実証プロジェクトが商用規模に移行した。今後も複数の商用規模のプロジェクトが稼働する予定であり、CCSによる固定化量は増加していくとみられる。なお、産業施設から分離回収したCO 2 を利用したEORのプロジェクトが米国で増加しており、近年は中国、カナダでもプロジェクトが実施されているほか、今後は産油国である中東エリアでの拡大も期待される。
CCUは、液化炭酸ガスや尿素化といった既存用途の割合が高く、これらの需要に応じて市場が変動している。液化炭酸ガスは今後も安定的な需要が続き、CO 2 とアンモニアから製造した尿素の需要は世界的な人口増加に伴う化学肥料の増加により伸びるとみられる。
中長期的には、既存用途の増加に加えてCO 2 を原料としたポリマーであるポリカーボネートや、ミネラル化によるセメントやコンクリートなど土木・建築資材での活用など、現在開発・実証中のフェーズにある技術が実用化されていくことで、市場が伸びるとみられる。
◆注目市場
■J-クレジットの国内市場
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2020年度 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
数量 |
60万t-CO2 |
210万t-CO2 |
3.5倍 |
金額 |
11億円 |
53億円 |
4.8倍 |
日本における排出量取引として、J-クレジット、グリーン電力証書、非化石証書が運用されている。このうち、カーボンオフセットに利用されるJ-クレジットを対象とした。
近年温室効果ガス排出量削減、ESG投資といった観点からJ-クレジットのニーズは高まっている。RE100や大手事業者を対象とした環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」などでJ-クレジットの活用が可能であり、大手事業者の需要増加が想定される。また、小売電気事業者がJ-クレジットを活用してCO2 排出係数をゼロにしたグリーン電力を販売する動きもある。
中長期的には、地域イベントやスポーツ大会でのカーボンオフセットの活用など、利用の裾野が広がることで、市場は拡大していくとみられる。
◆調査対象
CO2利活用ビジネス |
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・CO2分離回収:化学吸収、物理吸収、物理吸着、膜分離、DAC |
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・CO2利活用 :CCS(貯留)、CCU(利用) |
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国・地域別動向(12ヵ国・地域) |
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・米国 |
・ブラジル |
・英国 |
・フランス |
・中国 |
・日本 |
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・カナダ |
・EU |
・ドイツ |
・ノルウェー |
・韓国 |
・オーストラリア |
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イニシアティブ(11件) |
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・SDGs |
・SASB |
・CDP |
・RE100 |
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・GRI |
・CDSB |
・GHGプロトコル |
・JCI |
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・IIRC |
・TCFD |
・SBT |
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クレジット(7件) |
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・GO |
・Green-e |
・グリーン電力証書 |
・非化石証書 |
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・RECs |
・I-REC |
・J-クレジット |
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プレーヤー(100社) |
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・CCS31社 |
・CCU49社 |
・サービス11社 |
・コンソーシアム9社 |
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