PRESSRELEASE プレスリリース

第22055号

医療ビッグデータビジネス関連の国内市場を調査
―2035年予測(2021年比)―
●ゲノム医療支援システム/サービスの国内市場      80億円(7.3倍)
ゲノム解析のコスト削減や、分析・解析の時間短縮が可能となり、普及が進む
●治療用アプリ(管理・モニタリング)の国内市場  2,850億円(2,850.0倍)
処方が長期にわたる疾患で採用が進むほか、対応する疾患の範囲も広がる
■医療ビッグデータビジネス関連の国内市場     7,191億円(3.5倍)
デジタル治療システムや医療向けプロモーション支援サービスが大幅に伸びる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、目覚ましい技術革新に加え、法整備とともに市場の立ち上がりが本格化しつつある医療AIや医療ビッグデータ関連のシステムやサービスの市場を調査した。その結果を「2022年 医療AI・医療ビッグデータ関連市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、医療ビッグデータ分析サービス4品目、AI活用型画像診断システム5品目、AI/医療情報総合活用型システム4品目、デジタル治療システム2品目、遠隔/IoT活用支援システム3品目、創薬支援システム1品目、医薬品開発支援システム8品目、医療向けプロモーション支援サービス9品目を対象に市場の将来を展望した。

◆注目市場

●ゲノム医療支援システム/サービス【AI/医療情報総合活用型システム】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

17億円

154.5%

80億円

7.3倍

患者に合わせた個別化医療としてがん細胞の性質を検査するがんクリニカルシーケンスにおいて、データ解析やアノテーション(臨床的意義付け)、エキスパートパネル支援(医師支援システム)などを行う専用システム/サービスを対象とする。

2019年に、遺伝子パネル検査が保険適用され、市場が本格的に立ち上がった。2021年は、血液から最適な抗がん剤を選択する検査(リキッドバイオプシー)が保険適用されたことを受け、市場が拡大している。

現在、世界的にゲノムプロジェクトが進んでおり、今後10年でゲノム分野における技術進歩や社会実装が加速するとみられる。従来、ゲノム解析はコストが高く、分析・解析の時間もかかっていたが、ゲノム医療支援システム/サービスの普及で、コストの大幅な削減や、分析・解析の時間短縮が可能になるとみられる。また、保険適用範囲や点数の改定、法改正などによりさらに普及が進むとみられることから、2035年の市場は2021年比7.3倍が予測される。

●治療用アプリ(管理・モニタリング)【デジタル治療システム】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

2億円

2.0倍

2,850億円

2,850.0倍

スマートフォンやウェアラブルデバイスなどから得た個人の健康情報を、医学的知見を搭載したアルゴリズムで解析し、治療へ向けたガイダンスを行う製品のうち、保険適用されたものを対象とする。

2020年に、禁煙治療プログラムを提供する「CureApp SC」(CureApp)が医療機器として承認され、市場が立ち上がった。5~6年で開発から製品化が可能であり、医薬品開発期間の半分程度の期間で済むことや、開発費が抑えられることから、製薬企業が本格的に参入しており、2022年の市場は前年比2.0倍が見込まれる。

今後、高血圧症や糖尿病など処方が長期にわたる疾患で採用が進むとみられるほか、不眠症や小児ADHDなど対応疾患も増えることで市場拡大するとみられる。

●医療向けe-プロモーション【医療向けプロモーション支援サービス】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

610億円

116.0%

1,000億円

190.1%

医薬品や疾患情報の提供など、製薬企業のMRがインターネットを活用して行うプロモーションを支援するサービスを対象とする。なお、歯科領域をメインとするサービスは対象外とする。

現在、製薬企業のプロモーションは、Webを活用したマーケティングの重要性が増しており、継続利用が多数を占める。医療機関での働き方改革や感染対策に伴う面会時間の制約や新型コロナ感染予防による訪問規制などを受け、需要はさらに増加しており、2022年の市場は前年比16.0%増の610億円が見込まれる。

引き続き、MRによるITを活用した情報提供が浸透し、継続利用や利用頻度が向上することで、2035年の市場は2021年比90.1%増の1,000億円が予測される。

●Web講演会サービス【医療向けプロモーション支援サービス】

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

188億円

116.0%

192億円

118.5%

治療法や医薬品などの医療情報に関するWeb講演会の企画・運営やコンテンツを作成・配信するサービスを対象とする。

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年にリアル講演からWeb講演に切り替わったことで、市場は拡大している。また、近年では製薬企業の支店が企画する地域限定などの中・小規模なWeb講演の需要が高まっており、これらに対応したサービスプランの新設・強化を行う動きがみられる。

新型コロナ終息後も、Web講演とリアル講演を講演内容や規模に合わせて選択、併用していくとみられ、今後も堅調な需要を確保すると予想される。

◆調査結果の概要

■医療ビッグデータビジネス関連の国内市場

 

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

医療ビッグデータ分析サービス

350億円

112.5%

746億円

2.4倍

AI活用型画像診断システム

9億円

150.0%

110億円

18.3倍

AI/医療情報総合活用型システム

21億円

150.0%

454億円

32.4倍

デジタル治療システム

3億円

3.0倍

2,863億円

2,863.0倍

遠隔/IoT活用支援システム

64億円

120.8%

168億円

3.2倍

創薬支援システム

185億円

103.9%

300億円

168.5%

医薬品開発支援システム

248億円

109.3%

281億円

123.8%

医療向けプロモーション支援サービス

1,412億円

113.1%

2,271億円

182.0%

合 計

2,291億円

112.4%

7,191億円

3.5倍

※市場データは四捨五入している。

医療ビッグデータ分析サービス市場は、医療関連業界向け医療ビッグデータ分析と保険者向けデータ分析が大きく伸びている。主要ユーザーである大手製薬企業に加え、生命保険や損害保険会社、金融機関など多様な業種で医療ビッグデータの活用が始まっている。

今後は、医療ビッグデータの利活用に関する環境整備が進み、データベースの充実化や利活用を促す政策によって市場が拡大するとみられる。

AI活用型画像診断システム市場は、2019年から2020年に市場が立ち上がったシステムが多く、2022年の市場は前年比50.0%増の9億円が見込まれる。

今後は、がん診断をはじめとして最も利用範囲が広いと考えられる病理画像診断システムが、法整備や保険点数の改定により伸びるとみられる。また、診断のために撮影される胸部X線画像は枚数が多く、人的診断には限界があったが、AIを活用することで効率的に処理できるため導入が増え、市場拡大に寄与すると予想される。

AI/医療情報総合活用型システム市場では、世界的なゲノムプロジェクトの件数増加に伴って、ゲノム医療支援システム/サービスが伸びている。また、AI活用型精神疾患診断支援システムは、センサーを使用して多様なデータを取得するセンシング技術の向上により、取得したデータを精神疾患の診断に結びつけられるとして注目が集まっている。

今後は、センシングやAIの技術革新と非専門医による診断ニーズの増加などで導入が進み、AI活用型精神疾患診断支援システムが急伸するほか、ゲノム医療支援システム/サービスはAIによって膨大な情報量を効率的に分析できるため需要が増加し、引き続き伸長すると予想される。

デジタル治療システム市場は、立ち上がったばかりであり、VRデジタルセラピューティクス(DTx)が不安障害への曝露療法に対する活用が始まっている。

DTxは、スタートアップ企業を中心に参入が増えており、ソーシャルスキルトレーニングやリハビリテーションなど医療や介護分野で伸びるとみられる。また、治療用アプリ(管理・モニタリング)は大手製薬企業や大手医療機器メーカーも開発を進めており、企業が多岐にわたる疾患向けアプリの投入により急伸するとみられ、2035年の市場は、2021年比2,863.0倍が予測される。

遠隔/IoT活用支援システム市場では、身体に貼付した小型センサーで持続的にグルコース値を測定するCGM(持続血糖測定)とFGM(フラッシュグルコースモニタリング)が中心である。新型コロナの流行に伴い、対面診療が減少し、オンライン診療時の判断材料の一つとして長期的なグルコース値のモニタリングデータが活用されている。2022年は診療報酬の改定でFGMがインスリン療法の全患者に適用されたため、市場拡大が予想される。

CGM/FGMやカプセル内視鏡、IoT聴診器は、従来機器と競合関係にあり、いかにデジタルのメリットを打ち出せるかがキーポイントである。診療報酬の改定に伴ってCGM/FGMの普及が進み、導入施設数の増加が期待されることから、CGM/FGMの伸びが市場をけん引していくとみられる。

創薬支援システム市場は、コンピューター上で医薬品の設計、薬効および副作用の解析・予測を行うインシリコ創薬・創薬支援システム(AI創薬含む)を対象とする。システムを使いこなせる研究者が少ないため、受託サービスの需要が高まっている。政府が医療ビッグデータやAIを用いた創薬に対する支援を強めており、研究成果が製品に実装されるケースも増えていることから、市場は堅調に拡大している。

AIを活用した製品はそれぞれアルゴリズムが異なるため、競合が起きづらく、各国アカデミアや開発企業による新製品の投入が活発であることから、今後も市場は拡大するとみられる。

医薬品開発支援システム市場は、2020年に新型コロナの影響で臨床試験の減少で縮小したものの、2021年以降臨床試験数が増加しており、2022年は臨床試験支援システムやEDCシステムが伸びていることから、248億円が見込まれる。

長期的には、医療ビッグデータ活用開発支援サービスを始めとする新規ビジネスの拡充によって、その他開発支援システム/サービスが伸びるとみられる。

医療向けプロモーション支援サービス市場では、医療向けe-プロモーションやドクター向けポータルサイト/SNS、Web講演会サービスが伸びており、2022年は1,412億円が見込まれる。

今後もサービスの拡充や新薬企業を中心としたWebマーケティングの需要増加を受けて伸長し、2035年の市場は2021年比82.0%増の2,271億円が予測される。

◆調査対象

医療ビッグデータ分析サービス

・医療関連業界向け医療ビッグデータ分析

・保険者向けデータ分析

・病院向けDPCデータウェアハウス・

・医用画像プラットフォームサービス

病院経営分析サービス

 

AI活用型画像診断システム

・病理画像診断システム

・胸部画像診断システム

・内視鏡画像診断システム

・眼底画像診断システム

・頭部・脳画像診断システム

AI/医療情報総合活用型システム

AI/医療情報総合活用型システム

・AI活用型精神疾患診断支援システム

・AI活用型心血管イベントリスク予測システム

・AI活用型自動問診システム/診断bot

・ゲノム医療支援システム/サービス

デジタル治療システム

・VRデジタルセラピューティクス(DTx)(医療・介護向けデジタルゲーミフィケーションを含む)

・治療用アプリ(管理・モニタリング)

 

遠隔/IoT活用支援システム

・CGM(持続血糖測定)/FGM(フラッシュグルコースモニタリング)

・カプセル内視鏡

・IoT聴診器

創薬支援システム

・インシリコ創薬・創薬支援システム(AI創薬含む)

医薬品開発支援システム

・臨床試験支援システム

・被験者日誌システム(ePRO)

・EDCシステム

・リモートSDVシステム

・電子的原データ収集システム(eSource)

・安全性情報管理システム

・その他開発支援システム/サービス

・製造販売後調査支援システム

(医療ビッグデータ活用開発支援サービス、バーチャル治験システム/サービス含む)

医療向けプロモーション支援サービス

・医療向けe-プロモーション

・リモートディテール支援システム

・ドクター向けポータルサイト/SNS

・医師・薬剤師データベース

・Web講演会サービス

・製薬企業向けコールセンター/問い合わせ支援システム

・製薬企業向け営業支援システム

・医薬品流通データサービス

・ディテール支援システム

 


2022/05/26
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