PRESSRELEASE プレスリリース
■ポリウレタン原料の世界市場 2,899万トン(24.9%増)
~新興国を中心に住宅や家具、衣類向けなどが増加~
●ポリウレタン系ディスパージョン(PUD)市場 26万トン(23.8%増)
~環境対応のため脱溶剤ニーズが高まり採用機会が拡大~
●硬質ウレタンフォーム市場 932万トン(23.6%増)
~省エネ推進により高断熱住宅の需要が増加し、断熱材向けが伸びる~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、新型コロナウイルス感染症流行による経済活動の停滞から回復し、今後は新興国の経済発展による応用製品の需要増加や環境対応ニーズの高まりで活性化が期待されるポリウレタンに関連する原料や応用製品の世界市場を調査した。その結果を「2022 ポリウレタン原料・製品の世界市場と将来展望」にまとめた。
この調査ではポリウレタン原料(ポリオール、イソシアネートおよび各種上流材料)29品目、副原料として触媒、添加剤5品目、中間製品2品目、応用製品13品目の市場動向を提示した。また、新型コロナ流行の影響、原材料の需給、カーボンニュートラルへの対応に重点を置いて、品目ごとに最新動向をまとめた。
◆調査結果の概要
■ポリウレタン原料(ポリオール7品目、イソシアネート10品目)の世界市場
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2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
ポリオール |
1,269万トン |
103.4% |
1,501万トン |
122.3% |
イソシアネート |
1,135万トン |
103.7% |
1,398万トン |
127.8% |
合 計 |
2,404万トン |
103.6% |
2,899万トン |
124.9% |
ポリウレタンの原料であるポリオールとイソシアネートは、新型コロナ流行の影響により需要が2020年に減少した。2021年は経済活動の回復に伴って需要が増加し、2019年の水準を上回った。また世界経済の復調や資源価格の高騰、物流のひっ迫によってポリオール、イソシアネートともに価格が大幅に上昇した。
2022年も需要は堅調であるが、供給不足のため品目によっては伸びが抑制されるとみられる。2023年以降にタイトな需給バランスが緩和されるため、価格は低下していくとみられる。
ポリオールはPPG(ポリプロピレングリコール)、PEP(ポリエステルポリオール)、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)で全体の99%を占める。PPGやPEPはウレタンフォームが主な用途であり、先進国を中心に省エネ推進で住宅の断熱ニーズが高まり、断熱材向けの需要が増加している。PTMGはスパンデックス用途が主体であり、スポーツウェアなどの需要増加により2020年の減少は僅かであった。
イソシアネートはMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とTDI(トルエンジイソシアネート)が主体であり、ともにウレタンフォームが主な用途である。2021年は経済活動の再開に伴って大幅に需要が増えたことから前年比約10%増となった。2022年は原料不足や物流のひっ迫により伸びが抑制されるため、前年比3.4%増が見込まれる。今後、MDIは各国での新築住宅着工件数の増加や断熱材の使用量が多い省エネルギー住宅の普及など、TDIは新興国の経済成長や生活用品の欧米化などで使用量が増加し、市場をけん引していくとみられる。
◆注目市場
●ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)【ポリオール】
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
92万トン |
104.5% |
115万トン |
130.7% |
PTMGはスパンデックスとエラストマーが主な用途であり、伸縮性のあるインナーウェアやスポーツウェア向けに利用されている。参入企業や最終ユーザーが多い中国が最大の需要地であり、2020年は新型コロナ流行の影響を受けたが、中国は他国に先駆けて経済活動を再開したため、市場は微減に留まった。また在宅時間の増加による運動不足解消を目的にスポーツウェアの需要が増えたため、素材であるスパンデックス向けが大きく伸長した。
2021年はスポーツウェアの需要が落ち着いたが、各国の経済活動の活発化で熱可塑性ポリウレタンなどの需要が増加したため市場は拡大が続いた。2022年は中国において新型コロナ対策が断続的に行われていることから伸びは鈍化するものの、前年比4.5%増が見込まれる。今後も新興国を中心に衣類の需要が増加し市場は拡大すると予想される。
原料価格の高騰や輸送費の上昇に伴って価格が高騰しており、2021年、2022年ともに金額ベースでは大幅な増加が見込まれる。なお、PTMGの価格高騰を受けて応用製品のスパンデックスの価格も過去10年で最も高い水準にある。
●ポリウレタン系ディスパージョン(PUD)【中間製品】
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
22万トン |
104.8% |
26万トン |
123.8% |
PUDは水系ウレタン樹脂とも呼称され、VOC(揮発性有機化合物)削減などの脱溶剤ニーズの高まりを背景に、接着剤や塗料・コーティング剤で使用する水系原料として需要が増加している。
2020年は新型コロナ流行の影響で市場は前年を下回ったが、2021年には経済活動の再開によりコロナ前を上回る水準となった。今後も各国の経済成長に加え、脱溶剤への関心が高まることにより市場は拡大が続くとみられる。
エリア別では北米や欧州での需要が先行していたが、近年は中国で環境規制が強化されていることから、中国が最大の需要地となっている。日本では溶剤系塗料やコーティングの需要が大きいことから、市場は緩やかな伸びとなっている。PUDは環境対応を目的に使用されるが、物性は溶剤系が優れる場合も多いため、普及促進に向けては物性の向上が課題の一つとなっており、改善の試みが続いている。
●ウレタンフォーム【応用製品】
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2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
硬質ウレタンフォーム |
778万トン |
103.2% |
932万トン |
123.6% |
軟質ウレタンフォーム |
620万トン |
103.3% |
713万トン |
118.8% |
合 計 |
1,398万トン |
103.2% |
1,646万トン |
121.6% |
※市場データは四捨五入している
硬質ウレタンフォームは軽量性、断熱性、絶縁性、耐薬品性に優れており、大半が建築物の断熱材として用いられる。軟質ウレタンフォームは柔軟性、断熱性、絶縁性、耐薬品性に優れた軽量な発泡体であり、自動車内装材や家具が主な用途である。
硬質ウレタンフォームは、世界的な省エネ意識の高まりや高断熱住宅への政策支援を背景に、断熱材の厚みが増していることが市場拡大を後押ししている。日本や北米に加え欧州も同様であり、今後も市場は拡大が続くとみられる。日本では新築住宅着工件数は今後減少していくものの、新築住宅では省エネ基準適合最適化の動きがあり、高断熱化が進むことで今後も硬質ウレタンフォームの需要が増加していくとみられる。
軟質ウレタンフォームは、新型コロナ流行の影響で自動車内装材向けが苦戦したことから2020年の市場は縮小したが、2021年は自動車生産の回復や、家具の需要が堅調であることから市場は回復した。新興国において生活様式の欧米化が進んだことで、軟質ウレタンフォームを用いた家具や寝具の使用が広がっており、今後も東南アジアやアフリカなどで経済発展に伴い需要が増加していくと予想される。また高齢化が進む国々では病床数が増えることも軟質ウレタンフォームの需要増加につながるとみられる。
◆調査対象
ポリオール |
・PPG |
・PEP |
・PCD |
・ひまし油由来ポリオール |
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・PTMG |
・PCL |
・PBP |
・CO₂由来ポリオール |
イソシア |
・MDI |
・IPDI |
・H6XDI |
・PDI |
ネート |
・TDI |
・H12MDI |
・TMDI |
・TODI |
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・HDI |
・XDI |
・NDI |
・CO2由来イソシアネート |
ポリオール |
・1,4-BD |
・NPG |
・MPD |
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原料 |
・1,6-HD |
・TMP |
・ND |
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イソシアネート原料 |
・HMDA |
・IPDA |
・MXDA |
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副原料(触媒 |
・アミン触媒 |
・シリコーン整泡剤 |
・硬化剤 |
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、添加剤) |
・発泡剤 |
・難燃剤 |
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中間製品 |
・PUD |
・ウレタンアクリレート |
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ポリウレタン |
・硬質ウレタンフォーム |
・ウレタン系接着剤 |
・熱可塑性ポリウレタン |
・電子基板用注型材 |
応用製品 |
・軟質ウレタンフォーム |
・ウレタン系シーリング材 |
・合成皮革 |
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・ウレタン系塗料 |
・CMPパッド |
・人工皮革 |
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・グラビアインキ |
・スパンデックス |
・ウレタンビーズ |
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※ひまし油由来ポリオールは日本市場のみを提示した
※網掛けの品目は市場規模を提示していない