PRESSRELEASE プレスリリース

第22114号

再生可能エネルギー発電システム・サービスの国内市場を調査
―2035年度予測―
■再生可能エネルギー発電システム市場 1兆5,915億円
・・・風力発電が大幅に伸長し、太陽光発電システム以外が市場の6割に
◆風力発電システム 6,778億円(うち洋上風力 5,640億円)
・・・大型洋上案件が増加し、陸上から洋上風力中心の市場へ
◆第三者所有モデル(PPA、リース) 2,553億円
・・・新築戸建住宅で普及・定着が進むほか、非住宅用途ではオフサイトPPAの増加も期待

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、再生可能エネルギー電力の「主力電源化」に向けて、その動向が注目される再生可能エネルギー発電システムとその利活用を活性化させるサービス/ソリューションの市場を調査した。その結果を「再生可能エネルギー発電システム・サービス市場/参入企業実態調査 2022」にまとめた。

この調査では、太陽光/風力/水力/バイオマス/地熱発電システムに特化し、機器メーカー/サービス事業者などの関連プレイヤー、また関連サービスを調査することで市場の全体像と将来動向を明らかにした。

◆調査結果の概要

■再生可能エネルギー発電システム市場

※運転開始時をベースとした機器を含む材工込みの設置コストを市場として捉えた

2022年度の再生可能エネルギー発電システム市場は2兆405億円が見込まれる。太陽光発電システムは縮小しているものの、市場の6割弱を占めている。次いで市場規模が大きいバイオマス発電システムは一般木質・農作物残さで大型案件の稼働が相次いでいるほか、風力発電システムは大型風力が伸びをけん引し、洋上風力の運転開始が予定されるなど好調である。

長期的には、太陽光発電システムはNon-FIT(FIP)の自家消費/PPA/自己託送/売電事業などによる導入が中心となって容量ベースでは増加するが、システムの量産拡大により価格が下落し、縮小が続くとみられる。風力発電システムは洋上システムの導入が本格化することで、急伸長し、太陽光発電システムの縮小分をカバーするとみられる。2035年度の再生可能エネルギー発電システム市場は2021年度比7.4%減の1兆5,915億円が予測され、太陽光発電システム以外が市場の6割を占めるとみられる。

【太陽光発電システム】

2022年度は前年度比マイナスになるとみられる。Non-FITでの自家消費を目的としたオンサイト案件が活況となっており、2023年度は容量ベースではプラスが予想されるものの、市場は引き続き縮小が予想される。長期的にも市場縮小が続くが、自家消費用途や再生可能エネルギー電力の売電事業を目的とした導入が中心となり、新規導入量は徐々に回復すると予想される。

【風力発電システム】

2022年度は2021年度の運転開始がずれ込んだ案件が稼働することから、市場は大幅に拡大するとみられる。洋上システムでは2022年度から2023年度にかけて100MW級の運転開始が続く予定である。2020年代後半まで大型陸上システムが新設導入をけん引し、洋上システムは2025年度より、港湾法によって海域占有許可を得た数百MW規模の洋上風力ファームから順次開始が予定され、市場拡大は続くとみられる。

【水力発電システム】

市場は2021年度より短中期的に微増が続くとみられる。2025年度から2028年度には5~30MW未満のシステムの運転開始がピークを迎えると予想される。2030年度までにFIT案件は全て導入が終わり、大型案件から設備を更新し発電量を増加させるリパワリングが進んでいくとみられる。

【バイオマス発電システム】

2022年度は輸入材利用の50~112MW規模の専焼/混焼システムの運転開始がピークを迎えるとみられる。2020年代前半は2018年度以前の認定済案件の稼働がピークを迎えるが、市場の中心である一般木質・農作物残さで、大規模案件の新規事業認定が減少しているため、2022年度以降は縮小が予想される。Non-FIT売電事業を検討する事業者が増えつつあり、2025年度以降は年間数件程度の大型案件が顕在化するとみられる。

【地熱発電システム】

2022年度に中尾(2MW・新設)、南茅部(6.5MW・新設)、2023年度に鬼首(14.9MW・更新)、森町(2MW・新設)などで運転開始が予定されている。今後は、バイナリー発電は小規模施設の導入が鈍化する一方、環境アセスメント義務がない7.5MW未満の案件は10年に1~2件のペースでの導入、水蒸気発電プラントは5年に5件程度(1~15MW/件)の導入が進むとみられる。

■再生可能エネルギー発電システムの累計導入容量

 

2021年度

2035年度予測

2021年度比

全 体

9,222万kW

1億7,676万kW

191.7%

 

太陽光発電システム

7,187万kW

1億3,077万kW

182.0%

 

風力発電システム

467万kW

2,166万kW

4.6倍

※太陽光発電システム、風力発電システムは全体の内数

太陽光発電システムは、FIT制度が開始されて以降は導入容量が急増し、2021年度までに7,187万kWとなり、累計導入容量全体の77.9%を占めている。

風力発電システムは大型陸上システムの導入が2025年度に向けて加速するため、累計導入容量全体における構成比の上昇が予想される。2025年度から洋上システムの導入が本格化することも、構成比の上昇に貢献するとみられる。

水力発電システムはリプレースが中心であるため、累計導入容量は微増推移が予想される。

バイオマス発電システムはFIT案件の導入で累計導入容量および構成比が上昇したが、2022年度から2023年度頃に新規導入はピークアウトするため、以降の構成比は停滞するとみられる。

地熱発電システムは大規模システムの適地が少なく、開発に時間がかかるため、長期的にも累計導入容量全体における構成比は縮小が続くと予想される。

◆注目市場

◆第三者所有モデル(PPA、リース)

2022年度見込

2035年度予測

2021年度比

454億円

2,553億円

8.7倍

顧客が初期投資なしで事業者の太陽光発電システムを屋根などに設置し、事業者が顧客と電力購入契約を結ぶPPA(Power Purchase Agreement)と自家消費型太陽光発電システムを定額で利用するリースを対象とする。

住宅(10kW未満)用途では、新築戸建住宅向けが8割を占める。ZEH推進の観点からも太陽光発電システム提案におけるPPAの標準化が進んでおり、今後はサービスの認知度向上により、新築戸建住宅における太陽光発電システム導入形態の一つとして定着していくとみられる。2022年度から2023年度にかけて、東京都をはじめ京都府京都市、群馬県、神奈川県川崎市などで、中小規模建築物の新設・増設時に太陽光発電システムの設置を義務付ける制度の導入、もしくは導入が検討されている。中長期的には実施自治体の増加と義務化対象の拡大が予想され、PPAの普及・定着が進むとみられる。

非住宅(10kW以上)用途では、FIT開始後、全量売電可能な大規模案件の多くは既に太陽光発電システムの設置/検討が済んでいることから、中小規模案件が多い。低圧では中小規模の商業施設や文教施設、医療・福祉施設、公共施設などが多く、高圧では工場や冷凍・冷蔵倉庫などが多い。短期的には、低圧/高圧施設向けの数十から数百kW規模の屋根設置案件が中心となる。中長期的には太陽光発電システム自体のコスト削減と電気料金上昇に伴い、野立案件によるオフサイトPPAが増加していくと予想される。

◆風力発電システム

 

2022年度見込

2035年度予測

2021年度比

全 体

2,342億円

6,778億円

6.7倍

 

洋上風力

667億円

5,640億円

※洋上風力は風力発電システム全体の内数

FIT制度を前提とした小型システムがNK認証停止や事業者の事業中断・撤退などで縮小するものの、大型陸上システムで2021年度に予定されていた案件が2022年度に開始するとみられ、2022年度の市場は大幅に拡大するとみられる。

短中期的には、大型陸上システムでは事業計画認定取得済みの大半の案件が計画通りに運転開始すると想定され、市場拡大をけん引するとみられる。2023年度以降はウインドファーム適地の減少から、新設導入容量が減少していくため、大型陸上システムは縮小が予想される。

洋上システムでは2022年度から小規模なファームが運転開始を予定している。2025年度には港湾法によって海域占有許可を得た数百MW規模のファームで運転開始が予定されており、2030年度以降は市場拡大をけん引していくと予想される。

◆調査対象

調査対象システム

調査品目

関連機器

関連サービス

太陽光発電システム

・太陽光発電パネル

・パワーコンディショナ

・高圧/特別高圧送受変電設備

・太陽光発電併設蓄電システム

・第三者所有モデル(PPA、リース)

・太陽光発電遠隔監視サービス

・日射量予測/太陽光発電量予測サービス

・太陽光発電セカンダリーマーケット

風力発電システム

・小型風力発電機

・大型陸上風力発電機

・洋上風力発電機

・風力発電併設蓄電システム

・風力発電量予測サービス

水力発電システム

・水力発電機

バイオマス発電システム

・バイオガス発電機

・バイオマス直接燃焼ボイラ

地熱発電システム

・水蒸気発電プラント

・バイナリー発電機

その他注目システム

・サービス

・グリーン電力小売サービス

・グリーン水素/グリーンアンモニア

・カーボンフリー蓄電システム


2022/11/01
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。