PRESSRELEASE プレスリリース

第22117号

汎用エンプラ、スーパーエンプラの世界市場を調査
―2027年予測(2021年比)―
■汎用エンプラ・スーパーエンプラの世界市場  1,237万トン(15.7%増)
各国の経済成長により自動車部品や電気電子部品向けで拡大
●液晶ポリマー(LCP)市場  6万7,160トン(18.0%増)
5G通信の進展による電子部品の高密度化や、スマートフォンカメラの多眼化で需要が増加
●ポリブチレンテレフタレート(PBT)市場  125万4,900トン(17.5%増)
自動車生産台数の増加に加えEV化や自動車電装化が進むため使用量が増える

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、各国の経済状況や原料需給に影響される汎用エンプラ、EV化の進展や電気電子機器の高性能化に後押しされるスーパーエンプラ、および原料の世界市場を調査した。その結果を「2023年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 上巻」にまとめた。この調査では、汎用エンプラ7品目、スーパーエンプラ12品目、原料8品目の市場規模、用途動向、企業動向などについて最新の情報を網羅した。また近年の状況を踏まえ、需給動向、価格動向、環境対応についても整理した。なお、「(同)下巻」において特殊エンプラ、機能性樹脂および原料の市場を調査し、今回の調査結果とあわせて、エンプラ市場の全体像をまとめる予定である。

調査結果の概要

■汎用エンプラ、スーパーエンプラの世界市場

 

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

汎用エンプラ

1,000万トン

98.0%

1,172万トン

114.9%

スーパーエンプラ

51万トン

104.1%

65万トン

132.7%

合 計

1,052万トン

98.4%

1,237万トン

115.7%

※市場データは四捨五入している

エンプラはエンジニアリングプラスチックの略称であり、強度や耐熱性に優れるプラスチックを指す。近年経済成長や自動車の電装化・軽量化による需要増加で市場は拡大してきたが、2020年は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて低迷した。2021年は米国を中心とした経済活性化策の効果もあり、大きく回復した。

2022年は最大の需要地である中国の経済低迷や自動車減産の影響を受け、汎用エンプラが苦戦していることから、市場は前年を下回るとみられる。2023年は主要国でインフレ抑制を目的とした利上げが行われた影響で経済成長が抑えられることから、市場も小幅な伸びが予想される。2027年に向けては景気回復が期待されるとともに、半導体などの部品不足が解消され自動車生産なども堅調に伸びるとみられ、エンプラの需要が増加していくと予想される。

汎用エンプラは自動車や電気電子機器/産業機器などで幅広く用いられる。新型コロナの影響やウクライナ危機によって需給が不安定になっており、市場は増減を繰り返している。2022年は半導体不足により自動車生産台数が伸び悩んでいるため、市場は縮小するとみられるが、2023年以降にサプライチェーンが正常化し、長期的には経済成長に伴って拡大が予想される。

スーパーエンプラは汎用エンプラを上回る耐熱性を持ち、製品によっては耐電圧や低誘電率などの特性を活かした用途開拓が進められている。用途が特殊であることが多く、景気動向よりも採用動向によって市場が左右される。2021年に新型コロナの流行により抑えられていた経済活動が再開したことで主要な用途である自動車の生産が回復に向かい、市場は拡大した。2022年も同様の傾向であり、今後は自動車部品の金属代替や小型軽量化に加え、スマートフォンの高機能化、航空機需要の回復などによりスーパーエンプラの需要は増加していくとみられ。市場は2027年までは毎年5%程度の拡大が予想される。

◆注目市場

●液晶ポリマー(LCP)【スーパーエンプラ】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

5万7,710トン

101.4%

6万7,160トン

118.0%

主にSMTコネクタをはじめとした電気電子機器で採用されており、スマートフォンの生産台数が市場に影響を与えている。2022年前半はスマートフォン生産台数が前年を下回っており、通年でも減少する可能性がある。しかし端末の高機能化によって、1台当たりのLCPの使用量が増加しているため、市場は拡大が続くとみられる。

2023年以降もスマートフォンの5G通信対応の進展により電子部品の高密度化や内部基盤の多層化が進んでいることに加え、スマートフォンカメラの多眼化や高性能化でLCPの需要が増加していくと予想される。また自動車のEV化や電装化の進展も、コネクタなど各種部品でのLCPの需要増加に繋がることから、市場は拡大が続くとみられる。

●ポリアリルエーテルケトン(PAEK)【スーパーエンプラ】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

9,500トン

109.8%

1万4,550トン

168.2%

自動車や航空機部品などの輸送機器、電気電子機器、産業機器など幅広く使用される。2021年は新型コロナ流行の影響で後ろ倒しになった需要を取り込んだことに加え、半導体製造装置向けや自動車向けが増加したことから市場は大きく拡大した。2022年も引き続き半導体製造装置向けが好調であるほか、石油や天然ガスの価格高騰や調達リスクの増大を受けて、シェールガス・オイルの掘削部品向けが回復しつつあり、市場はさらに拡大するとみられる。

今後は、米国を中心に新型コロナ流行の影響で低迷していた航空機部品向けの需要が回復していくとみられ、既存部品に加え、構造材マトリクス樹脂での需要増加が予想される。また自動車でもPAEK製部品の採用が増えており、自動車生産台数が増加することで市場は拡大が続くとみられる。

●ポリブチレンテレフタレート(PBT)【汎用エンプラ】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

102万4,500トン

96.0%

125万4,900トン

117.5%

自動車向けでは電装部品や外装部品、機構部品、電気電子機器ではコネクタを中心に使用されている。2021年は経済活動の再開に加え、巣ごもり需要や先行き不安から在庫確保の動きがあり、コネクタメーカー向けが増加したことで市場は拡大した。2022年は半導体不足などによる自動車生産台数の伸び悩みや、中国でのゼロコロナ政策による経済活動の停滞を受け、市場は前年を下回るとみられる。

2023年以降は自動車生産台数の増加に加え、EV化や自動車電装化の進展に伴って拡大が予想される。電装部品は統合化や小型化が進む一方で、自動車1台あたりの使用数量が増加するため、PBTの需要増加に繋がるとみられる。

●ポリアミド66(PA66)【汎用エンプラ】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

129万5,600トン

99.9%

148万8,300トン

114.7%

主な用途は自動車であり、中でもエンジンルーム部品向けが主体である。2021年は経済活動の再開により自動車分野を中心に需要が急回復した。一方で同年は北米の寒波の影響で原料であるADN、およびADNから製造されるHMDAの不足により、需給がひっ迫する事態も起こった。2022年は中国のロックダウンの影響などから自動車生産台数が抑制されているため、市場は前年をわずかに下回るとみられる。なお、大幅な需要の増加がなかったことや、ADNの生産状況改善により前年よりも需給バランスは緩和している。

今後も自動車生産台数の増加が市場拡大に大きく影響するとみられる。EV化の進展により、エンジンルーム部品向けは減少することが懸念されるが、バッテリーや制御関連の部位で需要が増加し、軽量化ニーズも一層高まると予想される。市場は自動車向けを中心に拡大し、2027年は2021年比14.7%増が予測される。ただし、PA66は従来から原料不足によって需給がひっ迫しやすく、安定供給のため他の樹脂への切り替えが起こる懸念もある。

◆調査対象

汎用エンプラ(7品目)

 

・ポリカーボネート(PC)

・ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート

・変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)

(GF-PET)

・ポリアセタール(POM)

・ポリアミド6(PA6)

・ポリブチレンテレフタレート(PBT)

・ポリアミド66(PA66)

スーパーエンプラ(12品目)

 

・ポリアミド46(PA46)

・ポリアミド10T・ポリアミド11T

・ポリアミド11・ポリアミド12(PA11・PA12)

(PA10T・PA11T)

・ポリアミド610・ポリアミド612

・ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)

(PA610・PA612)

・シンジオタクチックポリスチレン(SPS)

・ポリアミドMXD6(PAMXD6)

・ポリフェニレンサルファイド(PPS)

・ポリアミド6T(PA6T)

・液晶ポリマー(LCP)

・ポリアミド9T(PA9T)

・ポリアリルエーテルケトン(PAEK)

原料(8品目)

 

・テレフタル酸(TPA)

・ビスフェノールA(BPA)

・アジピン酸(ADA)

・1,4-ブタンジオール(BDO)

・ヘキサメチレンジアミン(HMDA)

・パラジクロロベンゼン(p-DCB)

・カプロラクタム(CPL)

・パラヒドロキシ安息香酸(p-HBA)

※ポリアミド10T・ポリアミド11Tは市場規模を算出していない


2022/11/08
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