PRESSRELEASE プレスリリース

第23066号

再生医療等製品及びペプチド医薬品などの新医薬モダリティの国内市場を調査
―2030年予測(2022年比)―
■再生医療等製品の国内市場  723億円(4.8倍)
CAR-T細胞治療薬などが拡大。アンメットメディカルニーズを満たす分野として注目される
●CAR-T・CAR-NK・TCR-T細胞治療薬市場  330億円(4.9倍)
新しい治療薬の発売、既存治療薬の適応拡大、投与条件の緩和などで市場が拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、希少疾患領域などアンメットメディカルニーズ(治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)を満たす新時代の治療法として期待される再生医療等製品と新医薬モダリティの市場を調査した。その結果を「再生医療・新医薬モダリティ関連市場の現状と将来展望 2023」にまとめた。

この調査では再生医療等製品は細胞シート、培養軟骨、細胞製剤、CAR-T・CAR-NK、TCR-T細胞治療薬、遺伝子治療用製品の5品目、新医薬モダリティはペプチド医薬品や核酸医薬品、第2世代抗体医薬品、mRNA治療薬・ワクチンの4品目を対象とし、市場を調査・分析した。また、これらの研究開発に不可欠な製品・サービスである、サポーティングインダストリー27品目の市場を取りまとめた。

◆調査結果の概要

●再生医療等製品・新医薬モダリティ市場

 

2022年

2021年比

2030年予測

2022年比

再生医療等製品

152億円

107.0%

723億円

4.8倍

新医薬モダリティ

7,858億円

96.7%

7,255億円

92.3%

合 計

8,011億円

96.9%

7,978億円

99.6%

※市場データは四捨五入している

再生医療等製品は未だ治療法がない領域や再発性・難治性疾患に対応した製品が多く、アンメットメディカルニーズを満たす分野として今後の医療界で重要な役割を果たすことが期待されている。2021年以降、新規承認された新しい細胞シートや細胞製剤、CAR-T細胞治療薬、遺伝子治療用製品による市場開拓が進んでおり、対象患者数は限られるが、既存の治療薬よりも高薬価であることも市場拡大の要因となっている。

現在多くの開発中の製品があり、これらが発売されることで今後も市場が拡大していくと予想される。特に細胞製剤、CAR-T・CAR-NK・TCR-T細胞治療薬、遺伝子治療用製品は新製品の発売によって大きく伸長するとみられる。

新医薬モダリティはmRNA治療薬・ワクチンが2021年に新型コロナウイルス感染症の流行に対応して特例承認されたため急伸したが、2022年は特需が落ち着いたため減少した。2023年もmRNA治療薬・ワクチンの縮小が続くため、市場縮小が予想される。

ペプチド医薬品、核酸医薬品、第2世代抗体医薬品(次世代抗体医薬品)は参入企業が研究開発の注力度を高めていることから伸びている。ペプチド医薬品や第2世代抗体医薬品は薬価引き下げの影響が懸念されるものの、開発中の製品の発売や既存薬からの処方切り替えによって拡大が続くとみられる。

●サポーティングインダストリー市場

 

2022年

2021年比

2030年予測

2022年比

細胞・試薬・セルカルチャーウェア

293億円

103.5%

337億円

115.0%

ライフサイエンス機器・検査機器

427億円

104.9%

547億円

128.1%

保管・実験環境機器

156億円

66.1%

183億円

117.3%

原料・受託製造サービス

239億円

118.3%

493億円

2.1倍

合 計

1,115億円

98.9%

1,558億円

139.7%

※市場データは四捨五入している

市場は、2022年に新型コロナのワクチン接種に関連した保管・実験環境機器の需要が減少したことから前年を下回った。その他の機器やサービスはペプチド医薬品や核酸医薬品、再生医療・遺伝子治療の開発需要が増加して拡大した。

細胞・試薬・セルカルチャーウェアは、新型コロナの影響による研究開発の停滞の影響を受けていたが、2022年は再生医療やバイオ医薬品関連の開発が進展したことで前年を上回った。ヒト細胞やiPS細胞が創薬スクリーニング目的で使用機会が増えているほか、細胞培養液体培地は医薬品のみならず、培養肉の研究開発、製造の需要を獲得しており、新規用途として今後の成長が期待される。

ライフサイエンス機器・検査機器は新型コロナの影響が落ち着き、研究活動が再開したことで機器のリプレイス需要が高まったことや、再生医療の基礎研究への投資拡大で2022年は前年比4.9%増となった。製品の機能強化が進んだことや、ユーザーの投資が活発であることから、フローサイトメーターや細胞計数分析装置、セルイメージングシステムなどが伸びている。今後もCAR-T細胞治療薬の実用化が進むことで需要増加が予想される。

保管・実験環境機器は2021年に新型コロナワクチンの保管目的で超低温フリーザー/メディカルフリーザーなどの需要が急増した。2022年には需要が一巡し市場は大幅に縮小したが、今後は次のパンデミックに備えたワクチン開発や再生医療・新医薬モダリティに関する研究開発の活発化に後押しされ、市場は新型コロナの流行前よりも大きい規模で推移するとみられる。

原料・受託製造サービスは今後の需要増加を見越して、参入企業では受託製造設備を増強・拡張する動きがみられる。2022年は細胞培養・加工受託サービスがインバウンドによる医療ツーリズム需要が回復し、ウイルスベクター作製・プラスミドDNA精製受託サービスは近年の遺伝子治療の活発化により大きく伸びた。

ウイルスベクター作製・プラスミドDNA精製受託サービスは今後も大幅な伸びが続くとみられるほか、ペプチド医薬品や核酸医薬品の研究開発が活発に行われていることを受けて、関連する原料・受託サービスが伸びていくとみられる。

◆注目市場

●CAR-T・CAR-NK・TCR-T細胞治療薬【再生医療等製品】

2022年

2021年比

2030年予測

2022年比

68億円

178.9%

330億円

4.9倍

患者などから採取した免疫細胞を遺伝子医療技術によりがん細胞を攻撃できるように加工し、注射を行う免疫療法の一種であるCAR-T・CAR-NK細胞療法に使用される治療薬を対象とする。またTCR-T細胞治療薬も対象とし、再生医療等製品として保険償還されている製品を対象とする。2023年4月時点で5製品が存在し、再発性や難治性など、他の治療法で有効性が期待できない血液がん患者に実施するラストライン的な治療選択肢となっている。

2022年は「キムリア」(ノバルティスファーマ)の適応範囲に濾胞性リンパ腫が加わったほか、新たに再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした新薬が承認されるなど、治療範囲の広がりがみられ、市場は前年比78.9%増の68億円となった。

他に代替可能な治療法がみられないことや、固形がんなどを対象とする新しい治療薬の発売、既存治療薬の適応拡大、投与条件の緩和などにより、今後も市場は拡大していくとみられる。特に次世代CAR-T細胞治療薬やiPS細胞由来のCAR-T細胞治療薬、CAR-NK細胞治療薬は、治療効果の長期化や製造コストの低下、適応範囲の拡大などが期待されゲームチェンジャーとして注目される。

●核酸医薬品【新医薬モダリティ】

2022年

2021年比

2030年予測

2022年比

150億円

124.0%

515億円

3.4倍

アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシルなどの核酸が直鎖状に結合したオリゴ核酸(オリゴヌクレオチド)を薬効の主体として含む医薬品を対象とする。希少疾患向けを中心に開発が進んでおり、既に承認済みの製品は、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーやデュシェンヌ型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症などの領域で用いられている。

市場は2021年、2022年に相次いで新薬が承認されたことにより大きく拡大した。2023年にも申請中の新薬が承認される見通しであり、アンメットメディカルニーズの高い領域の開発品が多く、既存製品の動向から高薬価になることが予想される。核酸原料やDDS(ドラッグデリバリーシステム)製剤化、CDMO(医薬品受託製造)など関連した受託ビジネスの登場により、創薬から発売までのスピード感も高まっているため、製品数も増加して2030年の市場は2022年比3.4倍の515億円が予測される。

核酸は細胞内に取り込まれにくいことや分解されやすいことから、臓器や組織への送達が課題となっており、大手製薬企業ではバイオベンチャー企業との提携や買収により、DDSの確立に向けた技術開発・導入を目指している。

●ウイルスベクター作製・プラスミドDNA精製受託サービス【原料・受託製造サービス】

2022年

2021年比

2030年予測

2022年比

26億円

136.8%

90億円

3.5倍

製薬企業や大学・研究機関、医療機関などから依頼を受けて、ウイルスベクターの作製を行う受託サービスおよびプラスミドDNA精製を行う受託サービスを対象としている。製剤および遺伝子治療用製品の原材料となるプラスミドDNAの精製受託が中心である。

市場は2010年代後半から本格化し、遺伝子治療に関する研究の発展に従って拡大してきた。新型コロナの流行によって研究者の在宅勤務が増え、ウイルスベクター作製のアウトソーシング需要が増加した。出社が増えた後も外部委託により研究活動に専念できることや、技術の進展で委託コストが下がったことから利用が定着しつつある。今後も遺伝子治療に関する研究開発が積極的に進められ、プラスミドDNA精製の需要が増加していくとみられる。参入企業では旺盛な需要に対応するべく製造設備の増強・拡張が行われている。

課題としては原材料の安定供給やコストコントロール、受託サービスに関わる人材の育成などが挙げられる。また日本は海外と比較して遺伝子治療の臨床試験数が少ないことなども課題となっている。

◆調査対象

再生医療等製品・新医薬モダリティ

再生医療等製品

・細胞シート

・CAR-T細胞治療薬・

・遺伝子治療用製品

・培養軟骨

CAR-NK細胞治療薬・

 

・細胞製剤

TCR-T細胞治療薬

 

新医薬モダリティ

 

 

・ペプチド医薬品

・第2世代抗体医薬品

・mRNA治療薬・

・核酸医薬品

(次世代抗体医薬品)

mRNAワクチン

サポーティングインタストリー

細胞・試薬・セルカルチャーウェア

・ヒト細胞

・細胞凍結保存液

・細胞培養用シャーレ/

・iPS細胞/ES細胞

・セルシグナル試薬

プレート/フラスコ

・細胞培養用液体培地

・ゲノム編集ツール

・チューブ(遠沈管)/ピペット

・細胞培養用血清

 

 

ライフサイエンス機器・検査機器

・フローサイトメーター

・遠心分離機

・質量分析装置

・細胞計数分析装置

・CO2インキュベータ

・DNAチップ/DNA解析装置

・セルイメージングシステム

・細胞濃縮・洗浄装置

 

保管・実験環境機器

・超低温フリーザー

・凍結保存容器

・細胞培養加工センター(CPC)

/メディカルフリーザー

/ドライシッパー

 

・薬用冷蔵ショーケース/薬用保冷庫

・安全キャビネット

 

原料・受託製造サービス

・細胞培養・加工受託サービス

・ペプチド原料・受託サービス

 

・ウイルスベクター作製・プラス

・核酸医薬原料・受託サービス

 

ミドDNA精製受託サービス

・DDS用リポソーム受託サービス

 


2023/06/09
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。