PRESSRELEASE プレスリリース
■クレジット取引の世界市場 29兆2,811億円(5.1倍)
クレジットの高品質化により単価が上昇し、拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けCO2排出量削減の取り組みが進められる中、利活用の需要が高まっているCO2・環境価値取引関連市場を調査した。その結果を「CO2・環境価値取引関連市場の現状と将来展望 2023」にまとめた。
この調査では、環境価値証書や排出量取引、民間クレジットなど主要CO2・環境価値取引関連市場を推計したほか、カーボンニュートラルに関連する各国の政策や制度、CO2排出量の計測・算定、目標設定やソリューション提供などの各種コンサルティングサービスを行う主要参入企業の動向などを捉えた。
クレジット: | カーボン・クレジット。再エネ設備の設置や燃料転換、植林などプロジェクトの実施により削減または吸収されたCO2を取引できるように認証化したもの(例:J-クレジット) |
環境価値取引: | 再エネ設備由来の電力・熱を対象に証書化することで環境価値として取引できるようにしたもの(例:グリーン電力証書、非化石証書) |
◆調査結果の概要
●CO2・環境価値取引関連の世界市場
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2022年 |
2030年予測 |
2050年予測 |
クレジット取引 |
5兆6,913億円 |
12兆3,419億円 |
29兆2,811億円 |
環境価値取引 |
1兆 419億円 |
1兆4,252億円 |
― |
クレジット取引5品目、環境価値取引4品目の取引金額を対象とする。なお、環境価値取引については、制度の継続性という観点から見通しにくいため、予測は2030年までとした。
2050年に向けさまざまなCO2排出量削減技術の開発が進められているが、実用化に時間を要することから、現状のカーボンニュートラル対策としてクレジットおよび環境価値証書の需要が増加している。2022年の市場は、天然ガスの価格上昇に伴う石炭への回帰がみられたことで需給がひっ迫し、クレジットおよび環境価値証書の価格が上昇したことで、大幅に拡大した。
クレジット取引においては、CCS(CO2回収・貯留)のクレジット化や植林などによるクレジット創出といった供給側の取り組みが重要になるため、現在は排出したCO2を吸収する吸収系クレジットの整備が進められている。また、現状ではクレジットの品質にばらつきがあることから、価値の高いクレジットの要件を整理し、高品質クレジットの新基準策定が進んでいる。高品質化が進むことで、クレジット価格の上昇も予想される。
環境価値取引は、再生可能エネルギー利用を志向する需要家の増加により市場拡大している。また、環境性・追加性(新たにCO2削減・吸収する効果があるもの)といった観点による、環境価値が認められる範囲の厳格化に伴い、証書の価格が高騰している。
グローバル企業では、カーボンニュートラルへの取り組みの遅れが、取引先の消失や投融資の敬遠など事業上のリスクになると捉えられており、重要な経営課題の一つとなっていることから、今後も市場は拡大が予想される。長期的には、CO2排出源の減少と排出規模の縮小、クレジット調達によるみなし削減から、設備などへの直接投資による排出量自体の削減へと進むことで、取引量では2040年頃をピークに減少するとみられる。しかし、クレジットの高品質化などにより単価が上昇し、市場は拡大が続くと予想される。
◆炭素会計システム市場
●CO2排出量可視化プラットフォーム/算定支援サービスの国内市場
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2022年度 |
2030年度予測 |
2022年度比 |
可視化プラットフォーム |
12億円 |
66億円 |
5.5倍 |
算定支援サービス |
36億円 |
60億円 |
166.7% |
企業が事業活動をする上で排出するGHG(温室効果ガス)を算定・可視化するプラットフォームと算定を支援するサービスを対象とする。
可視化プラットフォームは、会計ソフトウェアのような形でパッケージ化されており、クラウドサービスによる提供が主流である。2022年度から東証プライム上場企業では取引先も含めGHG排出量を把握する必要が出てきたことから、上場企業のサプライチェーン各社でも導入され、市場が大きく拡大している。2030年度には大手企業の大部分、中堅企業の3割程度で導入が進むとみられる。また、金融機関が投融資先のGHG排出量を把握するために利用するケースも多い。
算定支援サービスは、プラットフォームを単体で使いこなすことが難しい企業のために、コンサルティング会社などが行うサービスである。旺盛な需要に対して専門人材の育成が追いついておらず、サービスの提供が不足しており、可視化プラットフォームと比較し、伸びは緩やかである。導入は東証プライム上場の大手企業が中心であり、中堅企業は可視化プラットフォームの導入にとどまっている場合が多い。
●カーボン・クレジット取引市場プラットフォームの世界市場
2022年 |
2030年予測 |
2022年比 |
9,300億円 |
3兆1,000億円 |
3.3倍 |
世界のカーボン・クレジット取引市場プラットフォームにおけるCO2クレジットの取引金額を対象とする。
従来クレジットは相対取引が中心であったが、欧米を中心に取引市場が形成されており、日本では2022年に東京証券取引所で実証が行われ、2023年10月にGX-ETSが開始予定である。
欧州EEXにおける単価上昇により取引金額が拡大している。プラットフォームで取引されるクレジットについては、品質が担保されていることもプラットフォームで取引を行うメリットになっている。
シンガポールのCIXなど新たな市場が開設されることで今後の拡大が予想され、欧米の先進国だけでなく、アジア、南米、中東などでも取引市場の広がりが期待される。
◆調査対象
CO2・環境価値取引関連市場 |
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クレジット取引 |
・64クレジット |
・VCS |
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・EU-ETS |
(Verified Carbon Standard) |
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(EU Emissions Trading System) |
・GS(Gold Standard) |
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・J-クレジット |
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環境価値取引 |
・グリーン電力証書 |
・RECs |
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・非化石証書 |
(Renewable Energy Certificates) |
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・GO(Guarantee of Origin) |
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その他 |
・GX-ETS |
・インターナルカーボンプライシング |
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(GX Emissions Trading System) |
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炭素会計システム市場 |
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・CO2排出量可視化プラットフォーム |
・カーボン・クレジット取引市場プラットフォーム |
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・CO2排出量算定支援サービス |
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国・地域別動向 |
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・日本 |
・韓国 |
・東南アジア |
・EU |
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・中国 |
・インド |
・米国 |
・中東 |
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