PRESSRELEASE プレスリリース

第23069号

住宅リフォームと住生活関連サービスの市場を調査
■住宅リフォーム市場 2030年度予測:9兆3,250億円(2022年度見込比29.4%増)
事業者の業態別にリフォームメニューの棲み分けが進む
●買取再販ビジネス市場 2030年予測:1兆1,437億円(2022年比45.0%増)
新築住宅価格の高騰によりリノベーション済み物件の需要増。大手ハウスメーカーが注力

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、住宅設備機器・資材の高騰で消費者の新築住宅の購買意欲が低下する中、注目が集まる住宅リフォームと、消費者の生活様式の変化に伴ってバリエーションが広がる住生活関連サービスの国内市場を調査した。その結果を「2023 住宅リフォーム/住生活関連サービス市場の実態と将来展望」にまとめた。

この調査では住宅リフォーム9業態、住生活関連サービス24品目の市場を調査し最新の動向をまとめ将来を展望した。住宅リフォーム編では省エネリフォームや住生活関連サービスの取り組み状況、住生活関連サービス編ではサービス利用者の特性についてもまとめた。

◆調査結果の概要

●住宅リフォームの国内市場

2022年度見込

前年度比

2030年度予測

2022年度見込比

7兆2,070億円

106.0%

9兆3,250億円

129.4%

人口減少による住宅需要の減退に加え、新型コロナウイルス感染症の流行やロシアのウクライナ侵攻の影響で住宅設備機器や資材の価格が高騰し、新築住宅の価格が上昇したことにより消費者の購買意欲が低下しているとみられ、リフォームへの注目度が高まっている。住宅設備などの交換を主とする小規模なリフォームに留まらず、リノベーションのような大規模リフォームが増加している。

家電量販店やホームセンター、インターネット事業者など住宅事業を主体としない企業が設備交換リフォーム(小規模リフォーム)を中心に取り扱い、ハウスメーカーやゼネコン・デベロッパーといった企業は、リノベーションや買取再販ビジネス(大規模リフォーム)へとシフトするなどの棲み分けもみられる。

2022年度の市場は前年度比6.0%増の7兆2,070億円が見込まれる。規模の大きい地場ビルダー・独立系工務店・リフォーム専業者は堅調であり、家電量販店やエネルギー事業者、インターネット事業者などが大きく伸びている。家電量販店の成長率が最も高く、近年住宅リフォーム事業への注力度を高めたことや、店舗の住宅リフォーム関連コーナーの充実化や住設メーカーとタイアップした商品の販売に取り組んできたことにより住宅リフォームのイメージが定着してきたとみられる。

今後も新築住宅価格の高止まりでリフォームによって既存の住宅に住み続ける消費者が増加することや、中古住宅市場の注目度が高まることに加え、政府による省エネリフォーム関連の補助金などが追い風となり、2030年度の市場は9兆3,250億円が予測される。

●サブスク型住宅サービスの注目市場

 

2022年

前年比

2030年予測

2022年比

家具・家電サービス

43億円

165.4%

483億円

11.2倍

多拠点生活サービス

82億円

190.7%

320億円

3.9倍

家具・家電サービスは2010年代後半に市場が本格的に立ち上がり、認知度向上に伴い市場が拡大している。元々はサービスベンダーがメーカーから商品を調達して展開していたが、近年は家電メーカーや家具メーカーなどが自社製品で定額利用サービスを開始している。消費者認知の向上に加え、メーカーの理解が進み、商品を提供するメーカーが増加していることは好材料であり、今後はサービスを認知したユーザーを利用に繋げていくことでさらなる成長が期待できる。

多拠点生活サービスは参入企業が保有、提携する複数拠点の住居や宿泊施設を定額料金で利用できるサービスである。2019年ごろからサービスが開始され、市場は黎明期にある。ワーケーションやデュアルライフ、アドレスホッパーといったトレンドワードが登場するなど、消費者の住まいに関する意識が変化しており、サービスの認知度向上により市場はさらに伸長するとみられる。参入企業では料金プランやサービスモデルの見直しなど、ユーザーが利用しやすい仕組み作りを進めている。

【サブスク型住宅サービス市場の動向】

この調査ではサブスク型住宅サービスのうち住宅修理サービス、家具・家電サービス、住宅設備サービス、多拠点生活サービス、住宅維持管理サービス及びマイカーリース、宅配収納サービス、定額制マンションIoT管理サービスを取り上げた。

サブスク型サービスは定額で提供するため、安定した運営にはユーザー数の増加が重要となる。現状ユーザー数が多いのはマイカーリースや家具・家電サービスといったモノを提供するサービスであり、参入企業の積極的なプロモーションよる認知度向上に加え、モノを「保有から利用」する消費者の意識変化が起こったことが市場成長を後押ししている。

サブスク型は新たな概念のサービスであり、まだ認知度が低いことや、消費者の理解が進んでいないことが共通の課題となっている。従来の住生活の概念と異なる生活スタイルの提案は高いハードルであり、認知度の向上に加えサービス利用のメリットを周知させることが必要と考えられる。多くのサービスはまだ黎明期にあるため、参入企業は認知度向上に向けた取り組みを進めていくとみられる。あらゆるモノの価格が高騰していることが追い風になり市場は拡大していくと予想される

◆注目市場

●買取再販ビジネス【資産管理・運用サービス】

2022年

前年比

2030年予測

2022年比

7,885億円

110.3%

1兆1,437億円

145.0%

個人や不動産会社から中古住宅を買取り、リフォーム・リノベーションを行うことで付加価値の高い住宅として販売するビジネスを対象とする。専業の事業者が存在するが、近年はハウスメーカーやデベロッパーの参入が増加している。大手ハウスメーカーは買取再販のブランドを立ち上げ、グループ企業の不動産流通会社と連携して戸建住宅の買取再販ビジネスを育成している。

新築住宅の販売価格高騰に伴って、リノベーション済みの安価な中古住宅の需要が高まっており、2022年の市場は前年比10.3%増の7,885億円となった。

首都圏を中心に新築住宅と中古住宅の価格差が広がるとみられることから底堅い需要が予想される。また、大手ハウスメーカーやデベロッパーの参入により競合は激化しているため、差別化を図るためにデザイン性や品質の高い物件の供給が増加しており、消費者の認知度が高まるとともに、中古住宅への認識にもポジティブな変化がみられる。消費者意識の変化に伴って買取再販物件に注力する企業も増加しているため市場は拡大が続き、2030年は1兆1,437億円が予測される。

●家電クラウド連携サービス【住設・家電サービス】

2022年

前年比

2030年予測

2022年比

僅少

-

5億円

-

家電メーカーが提供するアプリケーションをユーザーが操作することで家電の一括操作を可能とするサービスを対象とする。市場は展開するプラットフォームサービスの売上から算出している。BtoCでは家電メーカーが自社製品のバンドル販売を目的に展開している事業であるため現状サービス利用料は無償であるが、BtoBでは介護施設などで空調の集中管理を行うサービスが有償で提供されている。またBtoCでも電気料金割引などの付加価値を付けて、アプリケーションの有料プレミアム会員の獲得を検討しているメーカーがある。

IoT家電の普及に連動して市場は拡大し、2030年は5億円が予測される。サービスの広がりとしては、IoT冷蔵庫の在庫情報に基づいた食材発注や、IoT洗濯機による洗剤などの自動発注が予想される。また、経済産業省は2050年のカーボンニュートラル宣言を背景として、2025年から次世代スマートメーターの運用開始を打ち出している。可視化された電力情報を節電に活用することが増え、それに伴ってエアコンなど家電製品のクラウド連携が加速するとみられる。

●パーソナルデータストア【データビジネスサービス】

2022年

前年比

2030年予測

2022年比

5億円

166.7%

26億円

5.2倍

パーソナルデータストア(PDS)とは、個人の意思でテータの提供可否を決定することができるプラットフォームを指す。現状はBtoBのビジネスであり、民間企業や地方自治体が需要家である。PDSを通じて、エンドユーザーはパーソナルデータ(氏名などの個人情報、ウェアラブルデバイスなどから得られるデータ、匿名加工されたデータなどを含む)をシステムベンダーに預託し、地方自治体や民間企業は、システムベンダーが提供するシステムを利用して、パーソナルデータに基づいたサービスを提供することが可能となる。地方自治体は、スマートシティなどの都市計画や都市運営における個人のWell-being(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)の実現を目的としてサービスを導入しており、民間企業ではマーケティング活動のデジタル化やエリア価値の付与を目的に導入するケースがみられる。

地方自治体や民間企業によるパーソナライズな製品・サービスの提案が増えていく中で、パーソナルデータの取り扱いや情報漏えいリスクなどに対応するためのコスト増に対応するため、パーソナルデータの共通利用のニーズが高まっている。PDSを活用することで事業の垂直立ち上げへの貢献や精度の高いマーケティングが可能となるため、2030年の市場は2022年比5.2倍の26億円が予測される。将来的には家電クラウド連携サービスやスマートホームサービスなどの家電製品・住宅設備のライフログデータと連携していくことが想定される。

◆調査対象

住宅リフォーム

・ハウスメーカー

・エネルギー事業者

・ホームセンター

・ゼネコン・デベロッパー

・地場ビルダー・独立系工務店・

・インターネット事業者

・賃貸リフォーム事業者

リフォーム専業者

 

・住設建材メーカー

・家電量販店

 

住生活関連サービス

くらしサービス

 

 

・家事代行サービス

・サブスク型住宅修理サービス

 

・宅配収納サービス

・駆けつけサービス

 

住設・家電サービス

 

 

・サブスク型家具・家電サービス

・調理家電×宅配食品サービス

・家電クラウド連携サービス

・サブスク型住宅設備サービス

・スマートホームサービス

 

資産管理・運用サービス

 

 

・空き家管理サービス

・定額制マンションIoT管理

・サブスク型多拠点生活サービス

・買取再販ビジネス

サービス

・サブスク型住宅維持管理サービス

セキュリティサービス

 

 

・スマートロック

・ホームセキュリティサービス

 

モビリティサービス

 

 

・マイカーリース(車のサブスク)

・カーシェアリングサービス

 

データビジネスサービス

 

 

・オンライン診療サービス

・ヘルスケアサービス

・都市OS

・ドローン配送サービス

・パーソナルデータストア

・住生活マッチングプラットフォーム


2023/06/19
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。