PRESSRELEASE プレスリリース

第24074号

カーボンネガティブコンクリート、プレキャストコンクリートなど
脱炭素や人手不足解消に寄与するコンクリート、関連資材の国内市場を調査
― 2029年国内市場予測 ―
■カーボンネガティブコンクリート 600万トン
材料であるCO2を固定化した炭酸カルシウムの量産設備が立ち上がり、27年頃から急拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、カーボンニュートラルと人手不足という二つの社会課題に対応した製品のニーズが高まっている土木建築資材の国内市場を調査した。その結果を「2024 脱炭素化とインフラメンテナンスに貢献する土木建築材料市場・技術の将来展望」にまとめた。

この調査では、環境対応型コンクリートや人手不足解消に寄与するプレキャストコンクリートなどコンクリート7品目、コンクリート用資材、補修材・補強材、舗装用資材、木質用資材といった資材計25品目の市場の現状と将来を明らかにした。

◆調査結果の概要

■環境対応型コンクリート6品目の国内市場

環境対応型コンクリート6品目の国内市場

カーボンネガティブコンクリート、自己治癒コンクリート、環境活性コンクリート、ジオポリマーコンクリート、リグニン混合コンクリート、リサイクルコンクリートを対象とした。現在は試験的な採用が中心のため市場規模は小さいものの、製造時のCO2排出量削減やコンクリートの長寿命化によるメンテナンスコスト削減といった課題の解消を目的に採用が広がり、市場は拡大していくとみられる。

最も高い伸びが期待され、市場拡大をけん引するとみられるのは、材料および製造工程におけるCO2収支が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートである。セメントの一部を高炉スラグ微粉末などに置き換えた低炭素型コンクリートにCO2を固定化した炭酸カルシウム(CO2由来炭酸カルシウム)や、成長過程でCO2を吸収したバイオ炭を混合する、もしくは炭酸化混和材により炭酸化養生を行うことでCO2を固定化させたものがある。

現状ではスポット的な採用にとどまるが、2027年頃に材料の一つであるCO2由来炭酸カルシウムの量産が始まり、以降、市場が拡大するとみられる。また、今後の需要増加を見据え、官民一体となって本格的な普及に向けた量産体制の構築が進められており、炭素税の導入やJIS規格化、自治体の建設案件における“CO2固定コンクリートの利用"の入札要件への追加など、制度面の整備も期待される。

環境対応型コンクリートには、CO2の削減や固定化、リサイクルなど脱炭素を観点としたものが多いが、機能性を付与したコンクリートもある。自己治癒コンクリートはひび割れを自己修復することでコンクリートの寿命を100年まで伸ばすことができるため、老朽化したインフラメンテナンス工事での活用が期待される。また、環境活性コンクリートは藻の発生を促すことで水域環境の保全が期待でき、河川や海岸に敷設されたコンクリート構造物などへの活用が広がるとみられる。

■プレキャストコンクリートの国内市場

プレキャストコンクリートの国内市場

施工現場ではなく、工場であらかじめ製造した製品であり、現場では組み立てのみになることから、工期の短縮が可能となる。また、組み立て時に特殊技能者や熟練工を必要としないことから、技能者不足にも対応できる。

近年は、建設需要の低下によってコンクリート全体の需要が減少しており、2023年のプレキャストコンクリート市場も縮小した。特に需要の中心である小型製品で苦戦している。

国土交通省が利用を促進しており、NEXCOの高速道路リニューアル工事ではプレキャスト製品が指定されるケースもみられた。今後、人手不足が深刻化する中で、生産性向上を目的とした採用増加が予想される。建設需要の低下もあり大きな伸びは期待できないものの、生コンクリートからの置き換えが進むことで市場が拡大していくとみられる。2029年にはコンクリート市場の2割弱を占めると予想される。

なお、プレキャストコンクリートの採用により工期は概ね半減する一方、工費が増加する。そのため、メーカーのみならず、施工事業者などが、さまざまな手法を凝らしてコストダウンに注力している。

◆注目材料市場

●炭酸化混和材【環境対応型コンクリートの材料】

炭酸化混和材【環境対応型コンクリートの材料】市場規模

セメントやコンクリートに混和することで、コンクリート養生時にCO2を吸収し、固定化する炭酸化混和材を対象とする。なお、炭酸化反応によりコンクリートにさまざまな機能を付与することができ、高強度・高耐久化や耐塩害抵抗性、環境親和性の向上も可能となる。

現時点ではCO2を固定したコンクリートの需要が限定的であることから、市場は小さい。CO2固定コンクリートについては、経済産業省が国や地方自治体による公共調達の拡大と、2030年までの既存コンクリートと同程度までの価格低減を目標として掲げており、これに応じて炭酸化混和材の量産化に向けた設備投資の検討が進められている。

●CO2由来炭酸カルシウム【環境対応型コンクリートの材料】

CO2由来炭酸カルシウム【環境対応型コンクリートの材料】市場規模

廃棄物由来のカルシウムと排ガスなどのCO2を反応させて、CO2を固定化させた炭酸カルシウムである。セメントや骨材を代替することで、カーボンネガティブコンクリートの材料として注目される。

現状では、研究や実証実験レベルが中心であり、それらを使用したコンクリートも試験的な採用にとどまっている。2027年頃に商用プラントが立ち上がる予定であり、市場拡大が進むとみられる。

材料切り替えの対応が容易であること、また、製品として環境対応という付加価値が提供しやすいといった理由からプレキャストコンクリートでの採用が中心になるとみられる。セメントや骨材の代替として使用されるためには価格低減が求められているため、参入メーカー各社は量産体制の確立や生産の効率化などによるコスト削減に取り組んでいる。

●木質耐火部材【環境負荷低減を図れる木質化材料】

木質耐火部材【環境負荷低減を図れる木質化材料】市場規模

木材を心材とし、心材周辺に難燃処理木材さらに外部に化粧板などを形成、もしくは石膏板や耐火シートなどの無機材料を心材に被覆して耐火被覆層を形成し、「燃え止まり設計(火災により倒壊しない設計)」に適応した木質耐火部材を対象とする。なお、住宅向けは対象外とする。

2021年の木材利用促進法改正以降、林野庁や国土交通省を中心に建築物の木造・木質化への補助事業制度が活発になっている。また、2023年には耐火性能基準が改正、規制緩和されたことで、低中層建築物を中心に木造化が進んでいる。

脱炭素社会の実現や利用者の快適性向上を背景に、大手ゼネコン各社では年間数件程度の中大規模木造建築物を受注、建設していることから、木質耐火部材の需要も増加していくと予想される。

◆調査対象

コンクリート
・プレキャストコンクリート
・カーボンネガティブコンクリート
・自己治癒コンクリート
・環境活性コンクリート
・ジオポリマーコンクリート
・リグニン混合コンクリート
・リサイクルコンクリート
コンクリート用資材
・コンクリート混和剤
・コンクリート混和材
・炭酸化混和材
・コンクリート養生剤
・CO2由来炭酸カルシウム
・CO2吸収促進コンクリート塗布剤
補修材・補強材
・エポキシ系補修材・接着剤
・アクリル系補修材・接着剤
・無収縮モルタル(補修材・接合材)
・コンクリート断面修復材
・コンクリート表面含浸材
・コンクリート表面被覆塗料
・水中硬化型塗料
・炭素繊維シート
・アラミド繊維シート
・建築用シーリング材
舗装用資材
・舗装用補修材
・舗装用クラック防止材
・再生用添加剤
・橋梁床版用防水材
・合成炭酸塩配合アスファルト合材
木質用資材
・木質耐火部材
・耐力面材
・木材保存剤
・木材保護塗料
設計支援・省力化技術
・3Dプリンター

2024/8/8
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