PRESSRELEASE プレスリリース
■分散型エネルギーリソースの創出価値ポテンシャル 1兆4,002億円 (3.3倍)
EV(乗用車・商用車)の普及に伴い、EVリソースのポテンシャルが増大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、カーボンニュートラル実現やBCP対応の一環として活用が推進されている分散型エネルギーリソース(DER)のポテンシャルとそれを活用したビジネスの国内市場を調査した。その結果を「分散型エネルギーリソース関連市場の現状と将来展望 2024」にまとめた。
この調査では、発電、蓄電/蓄エネ、EVなどのDERのストック数をベースにした容量・電力量のポテンシャルやそれらから創出される価値について試算した。またDERを活用したビジネス4品目、DER活用に必要となるプラットフォームや支援サービス、計測・需給調整システム10品目の市場を捉えた。
◆調査結果の概要
■分散型エネルギーリソース(DER)のポテンシャル
これまでDERは、太陽光発電システム由来電力の自家消費や売電、その電力を充電した蓄電システムによる非常時の電力供給など、各需要家での利用を目的として導入が進んできた。災害レジリエンスや再エネ導入拡大、脱炭素化への期待などからDERの導入が増える中、そのエネルギーを有効活用しようとする機運が高まっている。
カーボンニュートラル実現を目的とした政策支援などから、DERの普及が進むことにより、供出される容量や電力量のポテンシャルは増大していくとみられる。特に2026年度以降、需給調整市場での低圧リソースの参入や、ローカルフレキシビリティ※3などの分散型エネルギーインフラに関する取り組みなど、関連する制度・施策の進展を背景に、一層の普及が想定される。
DERのストック数をベースに、エネルギーを全て制御可能とした場合(制御率100%)、2035年度には活用可能な容量ポテンシャルは262GW、電力量ポテンシャルは417TWhが予測される。
※3 ローカル・配電系統における混雑緩和などを目的に、DERの活用などによって、
発電量・需要量を柔軟に調整する技術や調整力そのものの総称
■DERの創出価値ポテンシャル市場
市場は容量(kW)、電力量(kWh)のポテンシャルを市場取引(kW価値、kWh価値、ΔkW※4価値)した場合に期待できる金銭価値を対象とした。
※4 ΔkW:短期間に需給調整できる調整力
市場は2035年度に1兆4,002億円が予測され、kW価値が大きくなるとみられる。
kW価値は、住宅用蓄電システムや住宅用ヒートポンプ給湯器のストック数の多さから、2024年度時点では蓄電・蓄エネリソースの比率が高い。
kWh価値は、太陽光発電システム(住宅用・非住宅用)、コージェネレーションシステムのストック数の多さから、2024年度時点では発電リソースの比率が高い。
ΔkW価値は、コージェネレーションシステムのストック数の多さから、2024年度時点では発電リソースの比率が高い。
全ての創出価値で共通して、長期的にはEV(乗用車・商用車)の普及に伴い、EVリソースの比率が上昇するとみられる。EVの活用にはモビリティ用途との両立(一定の充電量の維持や充放電による電池の性能劣化の抑制)、制御指令が発動された際の離脱率の改善、それらを踏まえたアグリゲーションコストの低減といった課題解決が必要になる。
※なお、リソースの特性や活用シーンを考慮すると実現困難と想定される用途についても、仮定のポテンシャルとして算出した。
変動電源である太陽光発電システムは、kW価値およびΔkW価値の創出が不可能なため、両ポテンシャルから除外した。
また、EVについては充電器や商用系統への逆潮流を可能にするV2Xとの連携を前提とした。
◆分散型エネルギーリソース活用ビジネスの注目市場
電力システムの合理化に向けて市場取引を通じた電力の需給調整を目指す動きがみられることやIoT技術の発展によって需要家側に設置された機器の運用・管理が可能となったこともあり、需要家側に設置されたDERもエネルギー源として捉え、電力の需給調整に活用するビジネスが注目されている。
●フィジカルPPA
初期費用の負担なしに太陽光発電システムを導入可能なPPAのうち、電力供給を含んだ太陽光発電PPAサービスを対象とした。
電気料金の高騰やエネルギーコスト削減、電力価格変動対策として住宅・非住宅ともに導入が増えている。住宅向けは新築戸建住宅における太陽光発電システム搭載率やZEH比率の目標達成に向けた普及推進施策の後押しもあり、堅調に伸びるとみられる。法人向けは、費用対効果の高い容量300kW以上の適地が少なくなっており、容量100kW以下の小規模案件にシフトしていくとみられるが、引き続き拡大が予想される。
なお、蓄電システムと組み合わせた導入もみられ、現状では自家消費の最大化やBCPを目的とした採用が主であるが、将来的には下げDRのリソース(蓄電システムの放電による系統電力購入量の削減、もしくは逆潮流)としての活用が想定される。
◆プラットフォーム、支援サービス、計測・需給調整システムの注目市場
●DR・VPPプラットフォーム
DR・VPPを実施する事業者向けに、主にSaaSで提供されるプラットフォームを対象とした。
経済産業省「バーチャルパワープラント構築実証事業」などの結果を踏まえて開発が進められ、容量市場や需給調整市場の創設に伴い、2020年前後より商用化が進んだ。
需給調整市場への対応、太陽光発電システムの発電量予測や自己託送管理、DER(EV充電器、蓄電システム、V2X、空調など)の管理・制御などに活用されており、直近では系統用蓄電システムの運用に向けた管理・制御用途が増えている。
今後は、需給調整市場の高精度・高速な応動が求められる電力取引用途の増加を背景に、市場拡大が予想される。
◆調査対象
【分散型エネルギーリソース活用ビジネス】・DR・VPP
・フィジカルPPA
・バーチャルPPA
・環境価値取引
【プラットフォーム、支援サービス、計測・需給調整システム】
プラットフォーム
・DR・VPPプラットフォーム
・環境価値創出プラットフォーム
支援サービス
・需給管理支援サービス(小売・発電)
・EV/EV充電器導入・運用サービス
・CO2算定・可視化サービス
計測・需給調整システム
・需要家EMS
・広域EMS
・電力スマートメーター
・EV車両管理システム
・EV充放電管理・制御システム
【分散型エネルギーリソースストック】
発電機器・システム
・住宅用太陽光発電システム
・非住宅用太陽光発電システム
・住宅用燃料電池システム
・非住宅用燃料電池システム
・コージェネレーションシステム
蓄電/蓄エネ機器・システム
・住宅用蓄電システム
・非住宅用蓄電システム
・住宅用ヒートポンプ給湯器
・非住宅用ヒートポンプ給湯器
EV関連機器・システム
・EV(乗用車)
・EV(商用車)
・普通充電器・急速充電器・V2X