PRESSRELEASE プレスリリース

第24078号

ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場を調査
― 2040年世界市場予測(2023年比) ―
■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池 11兆5,224億円(3.4倍)
再生可能エネルギーの急増と出力抑制を背景に、系統・再エネ併設分野が大きく伸びる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、脱炭素やカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの導入が進む中、電力の自家消費、レジリエンス性の向上に加え、電力の需給調整市場や卸電力市場などで活用が進むESS(エネルギー貯蔵システム)・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場を調査した。その結果を「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2024 ESS・定置用蓄電池分野編」にまとめた。

この調査では、住宅分野1品目、業務産業分野2品目、系統・再エネ併設分野3品目、UPS/基地局分野2品目、その他3品目に分け、ESS・定置用蓄電システム向け二次電池市場の現状を明らかにし、将来を展望した。また、使用済み車載電池の定置用蓄電システム向けリユース動向についても現状を整理した。

※直流電源装置(100V系)、小型蓄電システム(非系統連系タイプ)、ポータブル電源は日本市場のみを対象とする。

◆調査結果の概要

■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

エネルギー価格の上昇や電力需給のひっ迫などに加え、導入補助政策の整備によって、電力の自家消費や需給調整力電源としてESS・定置用蓄電システムの需要が高まっており、市場は拡大している。

中期的には、カーボンニュートラル実現に向け温室効果ガスの排出量を削減するため、各種電力取引市場で蓄電システムの活用が本格化するとみられる。長期的には、EVの普及に伴って、EVで使用した電池をESSへリユースする動きが予想されるほか、電池の低価格化などで普及が進むとみられる。特に、再生可能エネルギーの急増と出力抑制を背景に、電力系統の需給バランスを改善する系統・再エネ併設分野は大きく伸び、2040年に向けて市場拡大に貢献するとみられる。

エリア別では、中国と北米合わせて2024年の市場の50%以上を占める(金額・容量)。一方、日本は、全体の4%程度にとどまる(金額・容量)。今後も中国と北米が市場拡大をけん引するとみられるほか、欧州が大きく伸長すると予想される。日本も堅調な需要増加が期待される。

■主要分野別ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

主要分野別ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

住宅分野は、電気料金の上昇や自家消費の増加、メーカー側からの販促活動の本格的な再開、手厚い補助政策などを背景に導入が増加している。今後、米国や日本での太陽光発電システムの設置義務化とともに蓄電システムの導入が増えるとみられる。エネルギーリソースとしての蓄電システム活用や販売形態の多様化も期待されることから、2040年の市場は2023年比2.4倍の1兆2,733億円が予測される。

業務・産業分野は、自家消費利用に加えBCP対策として導入が増加しているほか、PPAを活用し低コストでの導入が可能となっていることから市場が拡大している。長期的には、DR/VPPサービスなど運用モデルが確立されることから、2040年の市場は2023年比5.4倍が予測される。

系統/再エネ併設分野は、日本では電力市場制度の整備で蓄電システムの運用機会が増加している。欧州をはじめとする海外では電力会社の蓄電システム設置義務化が進んでいるため、市場が拡大している。長期的には、再生可能エネルギーの普及によって調整力需要が高まることや電力市場の取引活発化に伴う運用増加によって、市場拡大が予想される。

UPS/基地局分野は、クラウドサービスやデジタル化の進展、5Gネットワークの構築などに伴い、データセンター向けUPSの需要が堅調に推移している。長期的には5G、6G基地局の増加とともに、それらのバックアップ電源も伸びるとみられ、市場拡大に貢献するとみられる。

◆注目市場

●系統用蓄電システム向け二次電池

系統用蓄電システム向け二次電池

リチウムイオン二次電池が主流であるが、今後、長周期や大型システム向けでNAS電池やレドックスフロー電池の需要も増えるとみられる。

市場の約1割を占める日本では、近年、蓄電所の充放電により市場で電力を取引、運用して収益を獲得する蓄電所ビジネスが盛り上がりを見せつつあり、システム導入数が増加している。蓄電所ビジネスの伸長は、需給調整市場や卸電力市場、容量市場などの各種電力市場の制度設計が進められたことや2022年頃から経済産業省などによって大型の補助事業が進められたことなどに起因している。特に、2024年4月から供給力収入として20年間固定収入が得られる長期脱炭素電源オークションなどによって蓄電需要が増加している。2020年代後半からは、経済産業省や東京都による各種補助事業や長期脱炭素電源オークションで導入される蓄電システムの稼働が本格化することから市場は大きく拡大する。

最大の需要地となっている中国では、「第14次五ヶ年計画」(2021ー2025年)において、国家主導のエネルギー貯蓄の目標が定められ、太陽光や風力の発電所開設時に蓄電システムを設置することを義務付けるエリアが多いことから伸長が予想される。

中国に続いて市場規模が大きい米国では、バイデン政権下で行われたインフレ抑制法(IRA)における気候変動対策への大型歳出により、中国と並んで伸びが加速している。

市場の4分の1程度を占める欧州は、多くのエリアで高い再エネ導入目標を掲げるほか、火力発電所の廃炉や縮小を目標としている地域が多く、電力安定供給のために蓄電池の重要性が高まっており伸びている。

◆調査対象

蓄電池
・鉛電池
・リチウムイオン電池
・電気二重層キャパシタ
・リチウムイオンキャパシタ
・NAS電池
・レドックスフロー電池

蓄電システム
住宅分野
・住宅用蓄電システム
業務・産業分野
・業務・産業用蓄電システム(300kWh未満/300kWh以上)
系統・再エネ併設分野
・系統用蓄電システム
・風力発電用蓄電システム
・太陽光発電用蓄電システム
UPS/基地局分野
・中・大容量UPS
・無線基地局用バックアップ電源
その他
・直流電源装置(100V系)
・小型蓄電システム(非系統連系タイプ)
・ポータブル電源
※直流電源装置(100V系)、小型蓄電システム(非系統連系タイプ)、ポータブル電源は国内市場のみ


2024/8/23
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