PRESSRELEASE プレスリリース

第24085号

太陽電池と周辺機器・ビジネスの市場を調査
― 市場予測 ―
■2040年の太陽電池世界市場(2023年比)
金額:21兆8,261億円(44.9%増)出力:1,118GW(2.3倍)
世界的な需要増を背景に1TW規模、20兆円超の市場規模に到達
■2040年度の太陽電池国内市場(2023年度比)
金額:2,124億円(24.4%減)出力:8,660MW(11.6%増)
出力ベースでは拡大するも、生産拡大による単価下落で金額ベースでは縮小

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、カーボンニュートラル需要の高まりなどから導入拡大が続くとともに、BIPVや垂直設置型の需要増加など新しい動きがみられる太陽電池と関連市場を調査した。その結果を「2024年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。

 この調査では、太陽電池と周辺機器やアプリケーション、関連ビジネス、製造技術、セル/モジュール部材などの関連市場について最新の動向をまとめ、将来を展望した。

◆調査結果の概要

■太陽電池の世界市場(年次:1月~12月)

太陽電池の世界市場(年次:1月~12月)

市場は近年急速に太陽電池の生産量が増えたことで供給過剰に陥り、販売価格が急落したため、金額ベースでは2023年に伸び率が鈍化し、2024年は前年を下回るとみられる。一方出力ベースは好調であり、2022年以降前年比40%以上の成長が続いている。生産能力の急拡大に伴う供給過剰により、短期的には需給バランスの不安定や価格下落、さらには大企業を中心とする業界再編が起こるとみられるが、今後も需要は増加し市場拡大が続くとみられる。

各国では生産の中国依存を脱却し、自国生産に切り替える動きがみられる。米国では2022年8月のIRA(インフレ規制法)成立を契機に生産設備投資が活発化しているほか、欧州でも自国生産が推進されている。中長期的には中国以外で生産された製品の割合増加や、中国メーカーの淘汰・集約が進むことで販売価格の上昇が予想される。

種類別では、結晶シリコン系と薄膜系に大別され、2023年時点では金額ベースで9割以上が結晶シリコン系であった。今後も結晶シリコン系が市場の主体とみられるが、PSC(ペロブスカイト太陽電池)を中心とした薄膜系も2030年以降本格的に市場が形成され、2040年には市場の2割程度に成長するとみられる。

結晶シリコン系は、近年P型c-Si(結晶シリコン)からN型c-Siへの移行が急速に進んだ。2022年まではP型(N型以外の結晶シリコン系も含む)が金額ベースで約8割を占めていたが、2024年はN型が7割程度になるとみられる。N型は変換効率の良さに加え、高温になった際の発電量の損失が少ない事や、低照度下での発電量が多いことが利点となっており、大手中国メーカーなどがN型への生産移行を急速に進めている。P型との価格差もほぼなくなっており、今後P型は僅少になるとみられる。

薄膜系は、将来的にPSCが太陽電池市場全体の1割強(金額ベース)となり、伸びをけん引するとみられる。BIPV(建材一体型太陽電池)のほか、車載用途やIoT機器用途への採用が予想され、特にPSCとc-Siのタンデム型太陽電池による変換効率30%超の商用モジュールの開発に期待が高まっている。

■太陽電池の国内市場(年度:4月~3月)

太陽電池の国内市場(年度:4月~3月)

2024年度の市場は、住宅用は成長が続くとみられるものの、非住宅用が特に出力500kW以上の発電事業向けを中心に苦戦しており、金額ベース・出力ベース共に前年度を下回るとみられる。

2020年代後半に向けて非住宅向けの減少が続き、住宅向けも金額ベースでは2026年度ごろから減少に転じるため、市場は今後も縮小していくと予想される。長期的には住宅用が将来的に頭打ちとなる一方、非住宅用は出荷が増え、2040年度に向けて市場は拡大していくとみられる。

住宅用は、電気料金高騰による需要増加に加え、ZEHや蓄電システムとのセット販売の増加、PPAサービスの普及などが市場を後押し、2024年度も拡大するとみられる。2025年4月からは東京都で新築住宅(延床面積2,000㎡未満の中小規模新築建物)への太陽光パネルの設置が義務化されるなど、地方自治体の普及促進策が広がりつつあり、普及の追い風になると期待される。しかし、長期的には人口減少で新築住宅の着工件数が減少することに伴い市場は縮小していくと予想される。

非住宅用は、2024年度はFIT受注残案件や新規獲得案件が減少し、500kW以上の発電事業用で太陽光パネルの出荷が低迷している。市場は金額ベース、出力ベースともに2026年度ごろまで縮小が続くとみられるが、将来的には生産量増加による単価下落で導入が進むことや、電気料金上昇とカーボンニュートラル対応ニーズの高まりを背景に、市場は拡大していくとみられる。

新型・次世代太陽電池は、色素増感太陽電池(DSC)、有機薄膜太陽電池(OPV)、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を対象とする。2024年度時点では、DSCやOPVの試験販売や一部で商用化がみられる。PSCは2025年度以降に商用化が予定されている。PSCは耐久性向上や生産技術確立が課題であるが、BIPV/BAPV(建物据付型太陽電池)などでの既存太陽電池の代替や、c-Siとのタンデム型の量産に成功すれば、急激な市場拡大が期待できる。

◆注目市場 ※全て国内市場、年度(4月~3月)

●ソーラーカーポート

ソーラーカーポート

カーポートの屋根部分に太陽光パネルを設置した発電設備であり、住宅用、非住宅用ともに対象とする。

2024年度は、市場の約8割を占める非住宅用が伸び、前年度比4.3%増の360億円が見込まれる。今後も非住宅用が市場をけん引し、2040年度の市場は962億円と予測される。

住宅用は、主に戸建住宅に設置され、現状カーポート設置台数の2%程度がソーラーカーポートとみられる。競争激化の中で価格が下落しているため、市場は短期的には縮小するとみられるが、将来的にはソーラーカーポートからEVに直接充電するなどの用途拡大が期待され、設置台数はカーポート台数の約10%にまで拡大していくと予想される。

非住宅用は、2021年度からの建築確認申請の簡略化など各種規制緩和によって本格的に市場が立ち上がった。設置場所は郊外型の大型商業施設の駐車場や大規模事業所などが多い。電気料金高騰の影響もあって、2023年度から2024年度にかけては自家消費を中心としたPPA(第三者所有モデル)による導入が増加した。

CO2排出削減に向けた企業の取り組みの一環として、企業や地方自治体などによるソーラーカーポートの導入が活発化しており、環境省「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」の一環として政策的な支援も進められているため、市場は今後も拡大が続くと予想される。駐車場敷地内でのソーラーカーポートと、屋根設置や垂直設置型太陽光発電を組み合わせて大規模化が進むことも期待される。

●建材一体型太陽電池(BIPV)

建材一体型太陽電池(BIPV)

屋根や窓ガラスなどの建材に組み込まれた太陽電池を対象とする。2025年度以降に市場が立ち上がるとみられるフィルム基板系BIPVは含まない。

日本では世界に先行して住宅用の導入が進んでいる。2021年度ごろから大手ハウスメーカーが大容量BIPVと蓄電システムを標準搭載した新築戸建住宅の販売を増やし、市場は拡大してきた。建材別では新築住宅向けの屋根材一体型BIPVが大勢を占め、その他は、実証実験など限定された量に留まる。

政府は、2030年までに新築住宅における太陽光発電設備搭載率を、現状の2割程度から6割へ引き上げることを目標としている。設置促進に向け、特に搭載率の低い狭小住宅で、BIPVを含めた太陽光発電設備の導入が進むとみられる。2025年4月からは東京都で新築住宅における太陽光発電設備の設置義務化が開始されるなど、地方自治体による普及促進政策が広がりつつあるため、市場は拡大基調で推移するとみられる。

一般的な据置型の太陽光発電システムより高価であり、価格の問題でBIPVの取り扱いに消極的な事業者も多く、事業者によって温度差がみられる。

非住宅用は欧州が先行しており、日本では一部の先進的な建築物で導入されているものの、現状、市場への影響は限定的である。政策目標では新築公共建築物等のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化について言及されており、中長期的には公共施設からBIPV導入が浸透し、脱炭素対策ニーズの高い大手企業などの民間施設へ広がると期待される。

●垂直設置型太陽光発電

垂直設置型太陽光発電

従来型の太陽光発電システムが太陽の南中高度に合わせて太陽光パネルを設置する(傾斜型)のに対し、東西向きに設置することで、太陽高度が低い朝夕の時間帯を発電量のピークとすることが可能な上、設置に必要な単位面積が非常に少ないことや、積雪による過重の影響を受けにくいことなどが利点となっている。

実証実験が進められ、2022年度頃に両面発電型太陽電池の価格が片面発電型と同等まで下がったことで市場導入が活発化し、今まで太陽光発電システムの設置不適地とされてきた積雪地域などから設置が始まった。

現状は実証実験に近い小規模案件が多いが、今後設置可能な土地開発が進んでいくと予想される。EPC(設計・調達・施工)やPPAサービス事業者の参入や、案件の大規模化も進み始めており、大幅な市場拡大が期待される。

◆調査対象

国内市場
太陽電池・周辺機器
 ・太陽電池
 ・新型・次世代太陽電池
 ・パワーコンディショナ
 ・遠隔監視システム
 ・架台
 ・蓄電システム

太陽光発電システム
 ・住宅用太陽光発電システム
 ・非住宅用太陽光発電システム

設置形態別・アプリケーション
 ・第三者所有モデル(PPAモデル、リース)
 ・営農型(ソーラーシェアリング)
 ・ソーラーカーポート
 ・水上太陽光発電
 ・建材一体型太陽電池(BIPV)
 ・垂直設置型太陽光発電

ストック向け注目ビジネス
 ・O&Mサービス
 ・リユース・リサイクル・適正処理
 ・太陽光発電セカンダリーマーケット
 ・保険サービス

世界市場
太陽電池
 ・太陽電池(結晶シリコン系(P型、N型、薄膜)、薄膜系(CIS/CIGS、CdTe、a-Si、色素増感、有機薄膜、ペロブスカイトなど)、高付加価値・特殊型太陽電池(タンデム型(PSC/c-Si)、両面発電型、ダブルガラス、フレキシブル、建材一体型(BIPV))

インゴット/ウエハー製造技術
 ・シリコンインゴット/ウエハー
 ・炭素材料
 ・ダイヤモンドワイヤ
 ・製造装置(ワイヤーソーなど)
セル/モジュール部材
 ・バックシート
 ・封止材
 ・電極ペースト(銀ペースト)
 ・ペロブスカイト太陽電池部材(TCO基板、ペロブスカイト材、正孔輸送材、電子輸送材、対極材、封止材)


2024/9/13
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