PRESSRELEASE プレスリリース
●PVC(ポリ塩化ビニル) レザー 5,123 億円(35.7%増)
コスト性や耐久性などのメリットから採用増。本革やファブリックからのシフトで成長。
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、環境対応、装飾性や触感の要求、高級感の演出などに対応する自動車内装表皮材の世界市場を調査した。その結果を「2025 自動車内装表皮材の最新市場動向と将来展望」にまとめた。
この調査では、自動車内装に用いられるプラスチック系表皮材4品目、皮革系表皮材4品目、繊維系表皮材2品目の市場をまとめ、将来を展望した。
◆調査結果の概要
■自動車内装表皮材の世界市場
市場は自動車の生産台数に連動して微増が続き、その中で成型方法や表皮材の種類の変化が起こっていくとみられる。また、カーボンニュートラル達成に向けたCO2の排出削減や欧州ELV指令案(自動車設計・廃車管理における持続可能性要件に関する規則案)への対応で、環境に配慮した動きが活発化しており、リサイクル対応・モノマテリアル化としてプラスチック表皮材の素材切り替えや、天然由来・植物由来レザーの開発などが進められている。
プラスチック系は、PVCとTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)の規模が大きい。原材料費の高騰や人件費の上昇を価格に転嫁しているため、2023年の市場は前年比10%以上伸び、2024年も拡大が続くとみられる。今後も市場は堅調に推移するとみられるが、一部は皮革系にシフトすると予想され、2030年の市場はピーク時を下回り2023年比9.3%増の3,151億円と予測される。
リサイクル対応・モノマテリアル化として、PU(ポリウレタン)からTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)やPVCへの切り替えが進んでいる。トリムの基材やクッション層にPP(ポリプロピレン)が用いられることから、モノマテリアル化(オールオレフィン)によりリサイクルが容易になるTPO表皮のニーズが大きい。大手自動車メーカーでもTPO表皮の採用が検討されており、中長期的に表皮材のTPOシフトが進展していくとみられる。
皮革系は、シームレスや高級感といった内装デザインのトレンドもあり人工皮革、合成皮革、PVCレザーが伸びている。2024年時点では、単価の高い本革の構成比が大きいが、近年は動物愛護などの観点やコスト面からその他へシフトしている。特にPVCレザーはコストに優れ、品質面でも合成皮革と遜色ないことから全体をけん引している。なお、環境対応では、分別コストがかかる点などがリサイクル進展の壁になるとみられる。
繊維系のうち、ファブリックはシートでの採用が多く、不織布はルーフ表皮材に用いられる。ファブリックは皮革系表皮材に比べて低単価であるため、大衆車を中心に需要を獲得している。しかし、安価なPVCレザーへのシフトが進んでいるため市場は縮小しており、今後もこの傾向が続くとみられる。環境対応では、ファブリックでPETボトル由来のペレットを原料にした製品が増加している。
◆注目市場
●PVC(ポリ塩化ビニル)レザー【皮革系】
シートやドアトリム、インパネ、ステアリング、コンソールなどに用いられる。環境配慮のため、欧州では表面処理剤は溶剤から水系への移行が完了している。また、一部の製品では接着層も溶剤不使用のPVC接着剤が採用されている。
近年のヴィーガン志向や動物愛護の観点から本革に代わる皮革系表皮材が求められる中、合成皮革よりも安価で耐久性があり、メンテナンスも容易であることから採用が増えている。今後も本革やファブリックの代替として需要が増加し、2020年代後半には本革と規模が逆転するとみられる。なお安価のため数量ベースではすでに皮革系の70%強を占め、今後も構成比は高まるとみられる。
◆調査対象
プラスチック系表皮材・TPO
・PVC
・TPU
・SEBS
皮革系表皮材
・本革
・人工皮革
・合成皮革
・PVCレザー
繊維系表皮材
・ファブリック
・不織布