PRESSRELEASE プレスリリース
■農業・水産業・畜産業におけるカーボンクレジットの国内市場 50億円(50.0倍)
農業分野が大部分を占める。水産業・畜産業も徐々に伸びる
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2050年のカーボンニュートラル実現や持続可能な1次産業の発展に向けて注目が集まる農水畜産業のカーボンクレジット市場を調査した。その結果を「農業・水産業・畜産業におけるカーボンクレジット市場のトレンドと創出・取引拡大に向けた取り組み実態調査」にまとめた。
この調査では、農業、水産業、畜産業の分野別にカーボンクレジットの創出量や取引量、取引金額を明らかにし、農水畜産業のカーボンクレジット市場の現状と将来を展望した。また、カーボンクレジットを創出する企業・団体や、それらを支援する事業者などの動向を調査した。
◆調査結果の概要
■農業・水産業・畜産業におけるカーボンクレジットの国内市場
市場はカーボンクレジットの取引金額を対象とする。
現在は、農業と水産業分野で市場が形成されつつあり、2024年の市場は1億円が見込まれる。
中長期的には、農業分野におけるカーボンクレジットが「AG-005:水稲栽培における中干し期間の延長」を中心に大きく伸びる。また、水産業や畜産業分野も徐々に市場が形成され、2030年の市場は2024年見込比50.0倍の50億円が予測される。
加えて、新規方法論を適用したクレジット市場やクレジット市場の海外展開に加え、クレジットの方法論に伴い使用される機器、資材、サービス、また、農水産物自体などの関連市場も拡大が期待される。
農業は、J-クレジット制度の「AG-003:茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料の施肥」、「AG-004:バイオ炭の農地施用」、「AG-005:水稲栽培における中干し期間の延長」の方法論に基づくクレジット市場を対象とする。
現状、バイオ炭の農地施用に取り組む「AG-004」と水稲栽培における中干し期間の延長に取り組む「AG-005」に動きがみられる。「AG-004」は、バイオ炭のクレジット価格は50,000円/t-CO2と高価であり、現状の創出・取引量は限定的である。しかし、J-クレジットの中でも希少な吸収・除去系のクレジットであることや、高機能バイオ炭を中心に土壌改良資材としての効果も期待できるため、今後の伸長が予想される。「AG-005」は、生産者が取り組みやすく、ベンチャーや大手企業による多様なプロジェクトが進んでいることから、現状で農・水・畜産業におけるカーボンクレジットの5割弱を占めている。認証対象期間が8年と限定的であるほか、優良農地・地域をめぐる競争激化が予想されるものの、今後も大幅な伸びが期待され、市場をけん引するとみられる。
秋耕や乾田直播によるCH4削減、緑肥作物の栽培による炭素貯留などの新規方法論を適用したクレジット市場などの伸びも、今後期待される。
水産業は、Jブルークレジットで認証されたクレジット市場を対象とする。
創出量が少なく取引価格も70,000円ー80,000円/t-CO2と非常に高価であるが、ブルーカーボンはCO2の吸収率が高いことや長期にわたる貯留が可能であることから、注目度は高い。現在、制度の改善・向上に向けた研究が進んでおり、今後は、創出量の増加とコストダウンを背景に伸びが期待される。
今後、淡水域や陸上養殖でのブルーカーボン創出の取り組みも想定され、藻場の回復による水産資源の回復・増加、水産物の品質向上などへの波及が期待される。
畜産業は、J-クレジット制度の「AG-001:牛・豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌」、「AG-002:家畜排せつ物管理方法の変更」、「AG-006:肉用牛へのバイパスアミノ酸の給餌」の方法論に基づくクレジット市場を対象とする。現時点では、家畜排せつ物管理方法の変更に取り組む「AG-002」でクレジット創出・取引がみられる。畜産業由来のGHG排出量は削減の余地が大きく、「AG-001」や「AG-006」の適用に向けた取り組みが進むことなどから伸長が予想される。
将来的には、消化管発酵(げっぷ)由来CH4の発生を抑制する飼料などの新規方法論を適用したクレジット市場の認証やそれに伴う飼料添加物市場などへの波及も期待される。
◆調査対象
分野別カーボンクレジット・農業
・水産業
・畜産業
参入企業事例
・農業21社
・水産業93社
・畜産業4社