PRESSRELEASE プレスリリース
CO2・環境価値取引制度の世界市場を調査
■CO2・環境価値取引制度の世界市場 3兆8,474億円(57.1%)
カーボンニュートラル実現へのつなぎの手法として需要が高く、市場は2030年頃にピーク
長期的には、再生可能エネルギー普及やETSの取引可能上限が下がり、徐々に需要が縮小
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 代表取締役 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたつなぎの手法として、注目されているカーボンクレジット、環境価値証書、ETSなどのCO2・環境価値取引制度の世界市場を調査した。その結果を「CO2・環境価値取引関連市場の現状と将来展望 2025」にまとめた。
この調査では、カーボンクレジット7品目、環境価値証書3品目、GX-ETSなどETS・その他4品目を対象に環境価値取引市場の現状を明らかにし、将来を展望した。また、世界を9エリアに区分して事業化検討の前提となる主要各国の政策・制度、カーボンプライシング、電源構成などを整理した。
◆調査結果の概要
■CO2・環境価値取引制度の世界市場

CO2・環境価値取引制度は、ETS・その他が中心である。EU ETSにおけるEUでの排出量の上限が制限されていることなどから2025年の市場は縮小が予想される。ただし、排出量に対して需要が超過するため、取引単価の上昇が予想され、2026年以降再び伸び、市場拡大に繋がるとみられる。長期的には、再生可能エネルギー導入の進展などを背景に、証書制度の需要が落ち込むとみられる。
カーボンクレジットは、企業の脱炭素化が進む中で取引が活発化しており、2025年の市場は前年比3.8%増が見込まれる。
今後、日本では海洋・農業などでの吸収系が主流となり、海外ではCCSやDACなど技術除去系が伸長するほか、GX-ETSの本格稼働で市場は拡大するとみられる。また、2040年頃の直接排出量ネットゼロを掲げる企業では、カーボンクレジットでのオフセットが唯一の手段であるため2030年以降、需要がさらに高まることから、取引価格が上昇し、2050年の市場は1兆4,881億円が予測される。
環境価値証書は、再生可能エネルギーの導入拡大を背景に堅調である。日本ではFIT非化石証書が中心で、海外では風力由来の再エネ証書が主力を占めている。
今後も、日本は引き続きFIT非化石証書が中心であるほか、海外では太陽光の比率が上昇し、電源種の多様化が予想される。長期的には、非化石エネルギーの利用割合が高まることで、証書制度自体の需要が落ち込むとみられる。
ETS・その他は、ETSの占める割合が多い。ETSは、温室効果ガスの排出量を削減するため、政府が全体の排出量の上限を定めた上で、企業や組織、施設など対象者からの排出量に対して排出枠を分配し、実排出量が排出枠を超過した場合、排出枠以上に抑えた対象者から超過分の排出枠を売買する仕組みである。
現状、EU ETSの取引規模が大きい。今後、ETSの導入国が増加するとみられる。日本では2027年秋頃に経済産業省が所管するGX-ETSの取引開始が本格化し、2030年頃まで市場は拡大が予想される。ただし、長期的には、再生可能エネルギー導入の進展や排出量の上限が制限されることに伴い、市場は縮小が予想される。
◆注目市場
●J-クレジット

2025年の市場は、企業による脱炭素の動きが加速し、取引単価が上昇しているため、前年比15.5%増が見込まれる。特に、森林保全などによってCO2を減らす取り組みが増えている。また、GX-ETSの導入を見据えた早期の買いが集中した結果、需要が供給を上回り、価格は高止まりしている。一方、制度開始後の価格動向を見極めたい企業は買い控えに転じており、取引量は一時的に落ち着く見込みである。
2026年以降は、GX-ETSの本格稼働により、適格クレジットであるJ-クレジットの需要が再び伸びるとみられ、2050年の市場は2024年比4.1倍の399億円が予測される。
●VCS(Verified Carbon Standard)

世界最大のボランタリークレジット制度である。米国の非営利団体Verraが運営し、企業や団体が自発的に行うCO2削減・吸収活動を国際的に認証する仕組みである。市場はUSドルベースで算出し、1USドル=148.15円で円換算した。
2023年以降、クレジットの品質低下への懸念を受けて、取引量の減少が続いているものの、一定の需要を維持している。
Verraによる認証基準の見直しが進んでおり、品質が向上することにより、中長期的には市場の信頼が回復し、取引量の再拡大が予想される。特に、新興国では、炭素税の代替手段や自主的な炭素取引制度として採用する動きが広がっており、新たな需要増加が期待される。現状では再生可能エネルギーなどの削減系クレジットが主流であるが、今後はCO2を吸収・除去するプロジェクトが主流になるとみられる。2050年の市場は2024年比19.1倍が予測される。
●ART-TREES Credit

ART-TREES Creditは、途上国において温室効果ガスの排出量削減や吸収量増加を促進させることに対して、先進国が経済的インセンティブを与える「REDD+」の信頼性を高めるため、2018年に設立された国際的な認証制度である。独立した非営利組織が運営し、森林保全を通じたCO2削減を公正に評価・取引する仕組みである。市場はUSドルベースで算出し、1USドル=148.15円で円換算した。
2025年は、グリーンウォッシュへの懸念が広がり、森林クレジット全体への信頼が低下しているため、需要は伸び悩んでいる。ただし、ART-TREES Creditは透明性と中立性を重視した制度であり、信頼回復の要とされているほか、信頼性の高い森林保全型クレジットに対して企業や政府からの関心は根強い。
2026年以降は、国際的な認知度の向上とともに、再び市場拡大へと向かうとみられる。特に、ガイアナやコスタリカなどで発行された先行プロジェクトが評価を得ており、森林保全によるCO2削減の実効性と透明性が再評価されつつある。国際的な1.5℃目標と整合する価格帯(50~250ドル/t-CO2)を背景に、価格の上昇余地も大きいほか、大手企業による大口契約が作用することで市場は緩やかに拡大するとみられる。今後は、自然由来の除去技術である自然ベースCDRと連動した取引増加も予想され、長期的にも市場は拡大するとみられる。
◆調査対象
CO2・環境価値取引制度カーボンクレジット
・J-クレジット
・JCMクレジット
・Jブルークレジット
・VCS(Verified Carbon Standard)
・GS(Gold Standard)
・CCER(China Certified Emission Reduce)
・ART-TREES Credit
環境価値証書
・非化石証書
・I-REC(International Renewable Energy Certificate)
・GO(Guarantee of Origin)
ETS・その他
・GX-ETS
・EU ETS
・Viet Nam ETS
・インターナルカーボンプライシング
エリア
・日本
・韓国
・中国
・インド
・その他アジア
・米国
・EU
・中東
・その他(オセアニア、その他北米、その他欧州、中南米、アフリカ)
