PRESSRELEASE プレスリリース
中枢神経、がん、感染症などの領域を調査
■認知症・MCI治療剤 2,823億円(7.0倍)
「レケンビ」「ケサンラ」がけん引、中長期的には新たな抗体医薬の発売にも期待
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 代表取締役 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2025年1月より国内の医療用医薬品市場を網羅する調査を行っている。調査は4回に分けて実施し、第三弾となる今回は、中枢神経、がん、感染症・ワクチン・DICの3領域における医療用医薬品市場を調査した。その結果を「2025年版 医療用医薬品フォーキャストデータ No.3」にまとめた。
この調査では、3領域の医療用医薬品市場について、薬効分類別、医薬品区分別に現状を把握し、開発品や政策の動向、パテントクリフなどを加味して2040年まで展望した。
◆注目市場
1.認知症・MCI治療剤

認知症・MCI治療剤は、コリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体拮抗剤、分子標的治療剤・その他に大別される。コリンエステラーゼ阻害剤「アリセプト」(エーザイ)やNMDA受容体拮抗剤「メマリー」(第一三共)にジェネリック医薬品が発売された影響により市場は縮小が続いていたが、2023年12月に分子標的治療剤「レケンビ」(エーザイ)が発売されたことにより2024年以降拡大に転じている。2024年11月には同「ケサンラ」(日本イーライリリー)が発売され、2025年も市場拡大が予想される。種類別市場構成は、2023年に61.7%を占めたコリンエステラーゼ阻害剤が2025年には31.9%に、29.7%のNMDA受容体拮抗剤が18.8%に、8.6%の分子標的治療剤・その他が49.3%になるとみられる。
今後も「レケンビ」「ケサンラ」の処方が進み、皮下注射などの新剤形も発売されるとみられ、当面はこの2剤がけん引し市場拡大すると予想される。中長期的には、この2剤に続く新たな抗体医薬の発売も期待されることから市場拡大は続くと予想される。
2.睡眠障害治療剤

睡眠障害治療剤は、オレキシン受容体拮抗薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン製剤・その他に大別される。「デエビゴ」(エーザイ)の処方浸透により、市場は拡大している。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬からオレキシン受容体拮抗薬への処方シフトが進んでいる。
オレキシン受容体拮抗薬は、2024年12月に「クービビック」(塩野義製薬)が発売され、2025年8月には「ボルズィ」(大正製薬)が承認されており、今後もこれらの実績増により市場拡大が続くと予想される。種類別市場構成は、2023年に60.0%を占めたオレキシン受容体拮抗薬が2025年には68.2%に、11.3%のベンゾジアゼピン系睡眠薬が9.2%になるとみられる。
睡眠障害の潜在患者は多く、そのうち治療を必要とする中等症以上の患者も少なくない。中長期的には、市場をけん引している「デエビゴ」の特許が切れるが、今後発売される新薬への処方シフト、新薬による潜在患者の掘り起こしが進むとみられ、市場は引き続き拡大すると予想される。
3.白血病治療剤

市場は、分子標的治療剤が90%前後を占める。分子標的治療剤ではTKI阻害剤「スプリセル」(ブリストル マイヤーズ スクイブ)、「タシグナ」や「グリベック」(いずれもノバルティス ファーマ)がジェネリック医薬品の発売や薬価引き下げによって実績が縮小しているが、二重特異性抗体「ビーリンサイト」(アステラス製薬)、STAMP阻害剤「セムブリックス」(ノバルティス ファーマ)などは伸びており、市場拡大をけん引している。
今後短期的には、引き続き「ビーリンサイト」や「セムブリックス」など分子標的治療剤が市場をけん引していくとみられる。「ビーリンサイト」は、急性リンパ性白血病の2次治療において有効性が評価されているが、1次治療への適応拡大がフェーズⅢ段階にあり、承認されれば急激に処方が増加すると予想される。「セムブリックス」は、慢性骨髄性白血病の2次治療における使用にとどまっているが、2025年5月に1次治療の承認を取得しており、今後は1次治療の標準治療薬になると期待される。
中長期的には現状の主要な分子標的治療剤の伸長はピークアウトする可能性があるが、新薬候補は豊富であることから市場は拡大が続くと予想される。特に、二重特異性抗体が急性リンパ性白血病治療において期待度が高く、今後さらに処方が広がっていくとみられるほか、急性骨髄性白血病においてはFLT3阻害剤やIDH阻害剤の有効性が海外で既に評価されており、今後処方が増加していくとみられる。
4.悪性リンパ腫治療剤

悪性リンパ腫治療剤は、分子標的治療剤、CAR-T療法、免疫チェックポイント阻害剤、その他抗がん剤に大別される。市場は、分子標的治療剤が75%程度を占める。近年、分子標的治療剤である抗CD79b抗体薬物複合体「ポライビー」(中外製薬)、抗CD30抗体薬物複合体「アドセトリス」(武田薬品工業)、BTK阻害剤「ベレキシブル」(小野薬品工業)が市場をけん引している。2024年は、「ポライビー」と「アドセトリス」などの市場拡大再算定の対象となった分子標的治療剤をはじめ、CAR-T療法、免疫チェックポイント阻害剤、その他抗がん剤の全てが前年比減少となり、市場が縮小した。2025年は、「ポライビー」が実績を回復させるほか、2023年以降に発売された新製品の伸長が寄与し、市場は拡大するとみられる。
今後短期的には「ポライビー」やその他近年発売された分子標的治療剤、CAR-T療法がけん引し、市場は拡大推移を維持するとみられる。特に、2023年11月に発売された抗CD20/CD3抗体「エプキンリ」(ジェンマブ)が濾胞性リンパ腫の2次治療で処方を伸ばしており、濾胞性リンパ腫やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1次治療においてもフェーズⅢ段階にある。
中長期的には「ポライビー」「アドセトリス」「ベレキシブル」の伸長がピークアウトする可能性があるが、悪性リンパ腫の患者数および治療患者数は高齢化や診断技術の向上によって増加しているうえ、新薬の発売も活発であり、新薬候補も豊富であることからそれらの発売によって市場は拡大が続くと予想される。新薬候補は二重特異性抗体とCAR-T療法に多く、両剤への期待度は以前よりも高まっていることから、将来的には従来の化学療法剤がこれらへとシフトするとみられる。
◆調査結果の概要

中枢神経領域の市場は、抗うつ剤、統合失調症治療剤、抗パーキンソン病治療剤・レストレスレッグス症候群治療剤は新薬の発売が少なく、ジェネリック医薬品へのシフトが進んでいるが、認知症・MCI治療剤は「レケンビ」と「ケサンラ」、睡眠障害治療剤は「クービビック」や「デエビゴ」の発売により伸びている。中長期的にも認知症・MCI治療剤の伸びにより、市場拡大が予想される。
がん領域の市場は、「キイトルーダ」(MSD)や「オプジーボ」(小野薬品工業)などの免疫チェックポイント阻害剤と分子標的治療剤がけん引している。分子標的治療剤では抗体薬物複合体や二重特異性抗体を中心に開発や発売が活発であり、2030年以降は大型製品の伸長ピークアウト、ジェネリック医薬品やバイオシミラーの発売も予想され、これらにより、市場は中長期的に拡大するとみられる。
感染症・ワクチン・DIC領域の市場は、感染症治療剤は新型コロナの鎮静化により需要が減少している品目があるほか、ジェネリック医薬品へシフトしている品目も多い。感染症の流行にも左右されるが、多くの品目が中長期的に市場縮小もしくは横ばいと予想される。ワクチンも新型コロナの鎮静化により需要が減少している品目がある。子宮頸がんや帯状疱疹のワクチンなどは、キャッチアップ接種による需要増加がみられるが、中長期的には市場縮小するとみられる。DIC(病気播種性血管内凝固症候群)治療剤は、原疾患の治療を優先し、治療をしない症例が増加していることから、処方が減少している。
◆調査対象
中枢神経・抗うつ剤(抗不安剤・アルコール依存症治療剤含む)
・統合失調症治療剤(双極性障害治療剤含む)
・抗パーキンソン病治療剤・レストレスレッグス症候群治療剤
・ADHD治療剤
・抗てんかん剤
・認知症・MCI治療剤
・睡眠障害治療剤
がん
・肺がん治療剤
・胃・食道がん治療剤
・大腸がん治療剤
・乳がん治療剤
・子宮がん・卵巣がん・その他女性関連がん治療剤
・前立腺がん治療剤
・肝がん治療剤
・頭頸部がん治療剤
・腎がん治療剤
・悪性脳腫瘍治療剤
・皮膚がん治療剤
・その他固形がん治療剤(甲状腺、膵臓、尿路上皮ほか)
・白血病治療剤
・悪性リンパ腫治療剤
・多発性骨髄腫治療剤
・骨髄異形成症候群・その他血液がん治療剤
・抗がん剤関連用剤(CSF・制吐剤・がん疼痛)
感染症・ワクチン・DIC
・抗生物質(外用剤は除く)
・抗真菌剤(外用剤、爪白癬処方分は除く)
・抗ウイルス治療剤(新型コロナウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、RSウイルス)
・その他抗ウイルス治療剤・抗肝炎治療剤(外用剤は除く)
・ワクチン
・DIC治療剤
