PRESSRELEASE プレスリリース

第26008号

カーボンニュートラル(CN)燃料の世界市場を調査
― 2050年世界市場予測(2024年比) ―
■カーボンニュートラル燃料 276.8兆円(8.1倍)
バイオディーゼルやバイオジェット燃料、e-Fuelなどの液体燃料がけん引
熱量ベースで自動車と航空機用途で5割を占める。船舶用途も急伸
●バイオジェット燃料 51兆2,610億円(145.7倍)
短期的には欧州の需要がけん引。米国や日本などでも徐々に使用が増加

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 代表取締役 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、カーボンニュートラル(CN)燃料として注目される、木質系の材料や廃棄物、植物油や動物油を原料とするバイオマス由来燃料と、再生可能エネルギーからの変換や、既存の燃料製造プロセスにCCUS(CO2回収・利用・貯留技術)を組み合わせることでCO2排出量を削減する水素由来燃料の世界市場を調査した。その結果を「カーボンニュートラル燃料の現状と将来展望 2026」にまとめた。

この調査では、バイオマス由来と水素由来のCN燃料市場を種類別(液体、固体、気体)に捉え、現状を把握し、将来を予想した。また、CN燃料普及に向けた課題や、各需要分野での既存燃料(化石燃料)との競合に関して整理した。

◆調査結果の概要

■燃料(カーボンニュートラル燃料、化石燃料)の世界市場
※化石燃料は石油系燃料(ガソリン、軽油、重油など)や石炭、天然ガスなどを対象とする

各種応用製品の電化、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及などに伴い、化石燃料の需要減少が想定されており、燃料市場全体は長期的に縮小するとみられる。非電化製品の継続利用や、電化に伴うコスト負担などへの対応で燃料需要は継続するが、CO2排出量削減が重要視されるため、化石燃料からカーボンニュートラル燃料へのシフトが進むとみられる。

カーボンニュートラル燃料は、液体、固体、気体に大別され、液体を中心に今後の利用増加が期待される。
液体は、自動車用燃料を中心に今後の大幅な伸びが予想される。現状はバイオディーゼルとバイオエタノールが市場をけん引している。2030年以降、船舶や航空機分野でのCO2排出量の規制強化により、バイオジェット燃料やe-Fuel(FT合成燃料)、バイオメタノール、e-メタノールの需要が増えると予想される。2050年に向けて各品目が大きく伸長し、特にバイオマス由来のバイオディーゼルやバイオジェット燃料、長期的には、水素由来燃料でモビリティ用途の伸長が期待されるe-Fuelなどが市場拡大をけん引するとみられる。

固体は、木質ペレットや木材チップ、PKS(パームカーネルシェル)を対象とする。発電や産業用燃料を中心に堅調な伸びが予想される。現状、欧州と日本、韓国が需要の中心であるが、今後は中国や東南アジアなどでもバイオマス発電の増加や、産業分野でのバイオマス燃料の使用が増えることから伸長が期待される。

気体は、低炭素メタン(バイオ/e-メタン)、低炭素水素(ブルー/グリーン)、低炭素アンモニア(ブルー/グリーン)、グリーンLPGを対象とする。低炭素メタンや低炭素水素は、発電や産業用燃料用途が中心である。現状はバイオメタンが主軸であり、今後も各国でのガス導管への混合目標の設定などを背景に大きく伸びるとみられる。e-メタンは、日本企業が中心となって取り組んでおり、日本が最大の需要地である。低炭素水素は2030年頃から活用が進み、特に発電や産業用燃料用途の伸びが注目される。また、FCVの普及に伴うモビリティ向けの増加も期待される。低炭素アンモニアは、2030年頃から石炭火力発電所での混焼による需要形成が進むとみられる。2040年頃からは、アンモニア専焼プラントが建設され、利用増加も予想される。船舶用燃料としての利用も、2040年頃から本格化するとみられる。グリーンLPGは欧州や日本などを中心に、産業用燃料用途で伸長する。

■用途別のカーボンニュートラル燃料構成比(熱量ベース、2050年予測)

自動車と航空機用途が合計で5割を占めると予想される。2024年時点と比較した伸び率などで特に注目されるのは、自動車と船舶用途である。

自動車用途はバイオディーゼル、バイオエタノール、e-Fuelなどが使用される。環境規制やガソリン・軽油との混合義務引き上げにより、バイオディーゼルやバイオエタノールの利用が増える。また、e-Fuelは欧州向けで伸長するとみられる。自動車用途のCN燃料の使用率は2024年の4.5%から2050年の28.4%に拡大するとみられる。

船舶用途はバイオディーゼル、バイオエタノール、e-Fuel、低炭素メタノール、低炭素メタン、低炭素アンモニアなどが使用される。既存の仕様を変更せずに使用できるドロップイン燃料であるバイオディーゼルは安定して需要が増えるとみられる。また、船舶の燃料転換としてLNGからの転換がしやすい低炭素メタンが大きく伸びると予想される。また、低炭素メタノールや低炭素アンモニアは供給拠点の整備に伴い成長が期待される。2024年では、船舶用途のCN燃料の使用は一部にとどまるが、将来的には大きく拡大していくものと想定される。

◆注目市場

●バイオジェット燃料

バイオジェット燃料市場規模

大豆油などの植物油や廃食油、セルロースなどを原料として生成したバイオ燃料のうち、「ASTM D7566」などで認証された変換プロセスにより製造される、水素化処理エステル脂肪酸やバイオエタノールなどから生成される合成パラフィンケロシンなどの燃料を対象とする。普及が期待されるSAF(持続可能な航空燃料)の一つである。

欧州では、2023年にEUにおける航空燃料のグリーン化に関する法規制を発表し、2025年に全燃料搭載量の2%、2050年に70%をSAFに代替することを義務化している。また、EUはSAF使用量に応じて市場売却可能なクレジットを割り当てられる優遇措置や、既存燃料との価格差を補填する支援を行っている。現在、SAF利用促進に向けた法規制は欧州が先行している。米国では、2030年のSAFの供給量を年間30億ガロン(米国のジェット燃料消費量1割相当)に、2050年までに航空機用の燃料をSAFに代替する目標を掲げている。トランプ政権ではクリーンエネルギー普及進展に慎重な姿勢をとっているため、バイオジェット燃料を含むグリーン燃料の生産事業に対する税額控除は継続されているものの、今後の動向が注目される。中国では、将来的に民間航空機の利用が世界最大になるとみられ、2060年のカーボンニュートラル実現に向けて航空分野のSAF利用が重要視されており、複数のエネルギー事業者が生産に取り組んでいる。

日本では、2024年に国土交通省「SAF利用可視化ガイドライン」により、GHG(温室効果ガス)排出量と削減効果が可視化されたことにより、SAFの普及拡大につながると期待されている。「エネルギー供給構造高度化法」ではSAF供給目標量の義務化に向けた議論も進んでいる。石油元売り各社は、比較的製造技術が成熟している国内の廃食油での燃料製造や、国内外からのバイオエタノールなどを用いたATJ法によるバイオジェット燃料製造の準備を進めている。国際便ではICAO(国際民間航空機関)によるオフセット義務も設定されており、一定のSAF利用が進むと予想される。

●バイオエタノール

バイオエタノール市場規模

ガソリン添加・代替、ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)に利用されるバイオエタノールを対象とする。サトウキビなどの糖質、とうもろこしなどのでんぷん質、稲わらなどの草本類、廃棄木材などのセルロース、それらを含む都市ごみなどの原料を発酵し、蒸留して精製されたエタノールである。

自動車用途が大部分を占める。ガソリン代替で利用され、ブラジルや米国ではガソリンへの混合比率に関する法的義務が設けられており、こうした政策や規制が市場の基盤となっている。近年は、世界的にガソリンへの混合目標を設定する動きが拡大しており、米国など供給量の多い国では輸出量の増加を図る動きが強まっている。ほかには、産業用燃料用途で小型貫流ボイラーの燃料や、農業機械のガソリン代替燃料の採用が増えるとみられる。

米国が世界最大の生産国であり、すべての自動車が混合率10%(E10)に対応している。生産量の1割程度はカナダや欧州、インドなどに輸出されている。ブラジルは、米国に次ぐ生産国である。自動車用途で混合ガソリンの利用が進められてきたが、2025年には、新たな法令で混合率義務が30%(E30)に引き上げられ、2030年までには最大35%(E35)まで引き上げる方針である。欧州でも、積極的な取り組みがみられる。近年は域外からの輸入増加に伴い、欧州生産のシェアが減少しているため、欧州委員会は輸入に関して慎重な姿勢を強めている。

日本では、自動車用途を軸に徐々に利用が拡大している。普及施策を背景に伸びが期待され、2050年の市場は4,000億円を超えるとみられる。現状は輸入依存が大きいが、2030年の「エネルギー供給構造高度化法」の第三次告示で非可食原料由来バイオエタノールの供給目標が設定されたことから、技術・設備を有する製紙会社などが取り組みを加速させている。また、資源エネルギー庁主導で2030年以降にE10ガソリンの本格導入が進められるとみられる。首都圏や中部圏が先行し段階的に全国へと拡大、以降も混合比率が高まると予想される。

◆調査対象

燃料

液体燃料
・バイオディーゼル
・バイオエタノール
・バイオジェット燃料
・低炭素メタノール(バイオメタノール/e-メタノール)
・e-Fuel(FT合成燃料)
・e-ガソリン

固体燃料
・固体燃料(木質ペレット、木材チップ、PKS)

気体燃料
・低炭素メタン(バイオメタン/e-メタン)
・低炭素水素(ブルー/グリーン)
・低炭素アンモニア(ブルー/グリーン)
・グリーンLPG

用途

・自動車
・船舶
・航空機
・発電用燃料分野
・産業用燃料分野
・その他分野

2026/1/26
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