PRESSRELEASE プレスリリース
養液栽培プラント市場196億円(2.2倍)企業の遊休地を活用した農業への参入が増加
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、生産、流通、販売に至る過程において異業種からの参入が相次いでいる国内アグリビジネスの関連市場(日系の海外実績も含むが、現状は僅少である)について調査を行った。その結果を報告書「アグリビジネスの現状と将来展望 2015」にまとめた。この報告書では、栽培ビジネスを行う企業の事業実態を明らかにするとともに、農作物の流通、販売などに携わる注目企業を取り上げることで、今後のアグリビジネスの動向も捉えた。
日本の農業は高齢化や、離農などによる従事者の減少という問題を抱えている。この問題を解決するため、政府は強い農業づくりを目指し、農地を集約・大規模化して競争力の強化を図る様々な規制改革・緩和を検討・実施すると同時に、高収量化/高品質化/栽培可能な作物・品種の増加などの取り組みに対し、補助金を交付している。また、養液栽培プラントの輸出推進、食への安全意識向上に伴うトレーサビリティの強化などにより、養液栽培プラントおよび装置・機器・資材、IT・ネットワーク技術、環境負荷低減型アグリ資材の市場は今後成長が期待される。
◆調査結果の概要
2014年 |
前年比 |
2020年予測 |
2014年比 |
|
| 養液栽培プラント | 88億円 |
104.8% |
196億円 |
2.2倍 |
| 栽培装置・機器・資材 | 471億円 |
109.0% |
604億円 |
128.2% |
| 栽培IT・ネットワーク技術 | 17億円 |
113.3% |
21億円 |
123.5% |
| 環境負荷低減型アグリ資材 | 24億円 |
104.3% |
25億円 |
104.2% |
合計 |
600億円 |
108.1% |
846億円 |
141.0% |
2014年のアグリビジネス市場は、前年比8.1%増の600億円となった。各分類の構成比は、栽培装置・機器・資材が全体の78.5%を占め、次いで養液栽培プラントが14.7%、環境負荷低減型アグリ資材が4.0%、栽培IT・ネットワーク技術が2.8%となった。
2月の関東地方の雪害からの復興特需は、一部の市場の拡大に大きく影響した。しかし、2015年以降は、その特需が落ち着き始め、市場の伸びは鈍化すると予想される。今後は農地集約に伴う大規模化や、異業種参入などによる農業の工業化への取り組みが市場を拡大させると予想される。
1.養液栽培プラント
2014年 |
前年比 |
2020年予測 |
2014年比 |
|
| 植物工場 | 55億円 |
134.1% |
155億円 |
2.8倍 |
| 湛液型栽培プラント | 8億円 |
88.9% |
8億円 |
100.0% |
| NFT栽培プラント | 6億円 |
85.7% |
8億円 |
133.3% |
| 固形培地栽培プラント | 20億円 |
71.4% |
26億円 |
130.0% |
合計 |
88億円 |
104.8% |
196億円 |
2.2倍 |
完全人工光型の植物工場(以下、植物工場)、太陽光利用型の湛液型栽培プラント、NFT栽培プラント、固形培地栽培プラントを対象とする。植物工場の市場には、採用される各種栽培プラント(湛液型、NFT、固形培地)、栽培装置・機器、IT技術の他、建屋の材料費用や工事費用なども含まれる。
2014年の植物工場は、企業の遊休地を活用した案件の増加、大学や研究機関、福祉施設向けの小規模プラントやユニット型の導入案件の増加、高齢者雇用や障害者雇用に伴う各種助成金を活用した案件の増加などにより、前年比34.1%増の55億円となった。一方、比較的大規模な震災復興の案件が一巡したことで、太陽光利用型の伸びが前年より鈍化した。
2.植物工場
植物工場では、これまで小規模プラントやユニット型を導入して試験栽培を実施してきた企業が、事業収益性の追求へと転換し、増設による大規模化を進めている。また、植物工場の海外展開の加速、高収量化/高品質化/栽培可能な作物・品種の増加による栽培事業への新規参入が期待されるため、今後も拡大が予想される。
3.栽培装置・機器・資材
灌水/給液管理装置、栽培用空調機器、植物育成用光源、固形培地、ガラス/フィルムハウス、養液栽培用肥料を対象とする。
栽培用空調機器は、重油などを燃料としたボイラと電気を動力としたヒートポンプエアコンがある。燃料ボイラはリプレースが中心となっており、機器寿命が長いことから、市場は縮小するとみられる。一方、重油価格の高騰を受けて2012年度より農林水産省が燃油価格高騰緊急対策などのヒートポンプエアコン導入に対する補助事業を開始しており、ヒートポンプエアコンは拡大している。暖房能力が高いため燃料ボイラを継続して利用する農家も一定数いるが、今後も補助事業が継続する可能性が高く、拡大が予想される。
植物育成用光源は、植物工場の増加により拡大している。これまではイニシャルコストが安価との理由から蛍光灯を光源とした植物工場が多かったが、2013年以降は低価格化や、高収量化/高品質化に向けた栽培研究が進んだこと、昨今の電気料金の高騰による栽培コスト低減に寄与する装置や機器・資材への需要の拡大などを受け、LEDを光源とするケースが増加しつつある。
ガラス/フィルムハウスは震災復興特需に、関東地方の雪害からの復興特需が重なり2014年は拡大した。2015年以降は、これらの復興特需の落ち着きから、一度縮小するが、中長期的には施設栽培需要の拡大に伴い、緩やかな伸びが期待できる。
4.栽培IT・ネットワーク技術
環境制御装置、栽培管理・モニタリングシステムを対象とする。環境制御装置は震災復興特需に、関東地方の雪害からの復興特需が重なり、2014年は前年比で二桁増となった。今後は、農地集約による大規模化や、企業の農業参入に伴う栽培の高効率化要求の高まりにより、中長期的にも拡大が期待できる。
栽培管理・モニタリングシステムは、組合が導入し組合員がそのシステムを活用する自己導入型と、ベンダーが提供するクラウドサーバーを活用したSaaS型に分類される。これまでは栽培の高効率化を目指した栽培履歴管理や栽培環境のモニタリングのために導入されたが、近年は政府による農業施策の影響もあり、加工や流通までを含めた管理の効率化を目的とした導入が増加している。
5.環境負荷低減型アグリ資材
天敵農薬、微生物農薬を対象とする。天敵農薬は管理が難しく、即効性に乏しい、高価などのデメリットはあるものの、有機農法でも使用が可能なため、昨今の食の「安全・安心」に対する要求の高まりや、IPM(Integrated Pest Management)の推進などにより、僅かながら増加している。
微生物農薬は糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を有効成分としたものであり、殺虫剤としてはBT水和剤(バチルス・チューリンゲンシス製剤)、殺菌剤としてはバチルス・ズブチリスが最も普及している。特定の微生物にしか効果が無い、使用環境によって効果にばらつきがある、即効性に乏しいなどが理由で、需要は緩やかに減少しており、これらの課題に対して改善が図られない限り、今後もこの傾向は続くとみられる。
◆調査対象
| 養液栽培プラント | 植物工場(完全人工光型)<プラント型/ユニット型>、湛液型栽培プラント、NFT栽培プラント、固形培地栽培プラント |
| 栽培装置・機器・資材 | 灌水/給液管理装置、栽培用空調機器、植物育成用光源、固形培地、ガラス/フィルムハウス、養液栽培用肥料 |
| 栽培IT・ネットワーク技術 | 環境制御装置、栽培管理・モニタリングシステム |
| 環境負荷低減型アグリ資材 | 天敵農薬、微生物農薬 |
| 栽培ビジネス動向 | 植物工場や露地栽培など、農業を行う企業事例 |
| 注目アグリビジネス動向 | 種苗、農産物の加工・流通、販売などに携わる企業事例 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。
