PRESSRELEASE プレスリリース
バイオマス利活用市場を調査
2013年度がピークも、FIT買取価格引き上げで中小規模発電プラントに期待
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、FIT特需を受けたバイオマス発電プラントをはじめとするバイオマス利活用装置・プラント、バイオマス由来電力やバイオエタノールなどバイオマス由来製品の国内市場※を調査した。その結果を報告書「2015年版 バイオマス利活用技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。※基本は国内市場を対象としているが、発電プラントは国内に日系企業の海外実績を加えた市場とする。
◆調査結果の概要
2002年度に策定されたバイオマス・ニッポン総合戦略で一躍注目を集めたバイオマスは、好・不調の波がありながらも利活用技術の実証事業が行われ導入が進んできた。東日本大震災と電力危機により、エネルギー政策の見直しが急務となり、特に再生可能エネルギーや分散型エネルギーインフラなど安全で信頼性の高いエネルギー源の確保に対する関心が高まった。
2012年7月から開始した再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)では、売電収入を得られることから、これまで採算性などから集約が困難であった林地残材や間伐材、草本類などの活用が進み、発電プラント市場が急拡大した。
2014年度以降、FITによる発電プラント需要は大規模案件が一巡したことで市場に陰りが見え始めている。また、大規模発電プラントの本格稼働による原料不足も懸念されており、今後は中小規模案件が中心になるとみられる。2015年度のFITの買取価格では、これまで一律だった未利用木材燃料発電で2MW未満という区分が新たに加わり、買取価格が引き上げられる予定であることから、中小規模案件への追い風になるとみられる。
バイオマス発電プラントの新規案件の減少が予想される一方で、発電プラントの稼働開始によりバイオマス由来電力の供給量は急増するとみられる。また、バイオマスプラスチックも普及期に突入しており、バイオマス利活用市場はバイオマス由来製品がけん引していくとみられる。
1.バイオマス発電プラント市場 (受注ベース)

バイオマス直接燃焼ボイラは、FITの恩恵を最も受けた市場で、2012年度から5MW〜数10MWの大規模案件の受注が相次いだ。しかし、2014年度は、大量の木質原料を収集・確保できる立地の減少や大規模案件の需要が一巡したことで、縮小に転じるとみられる。国内は中小規模案件が中心となり縮小が想定される一方で、2015年度はFITの買取価格引き上げによる需要も期待される。また、長期的には東南アジアを中心とした海外の大規模案件の獲得が進むことで、2020年度には400億円まで回復すると予想される。
バイオガス化(メタン発酵)は、食品廃棄物や下水汚泥などを発酵させ、発生するメタンガス(バイオガス)を燃料として発電する。需要地はメタンが発生する場所に限られており、原料確保の点で好条件な立地や事業者では既に導入しているケースも多い。しかし、FITで売電収入による投資回収がしやすくなり、小規模案件や原料の収集コストが必要となる案件にも市場のすそ野が広がった。
バイオマスガス化は、バイオマス原料を高温で熱分解させ合成ガスを生成し、これを燃料として利用し発電する。直接燃焼よりも発電効率が良いことや、小規模でも高効率であることから、活用可能なバイオマス原料の少ない地域でも導入しやすい利点がある。しかし、イニシャルコストの高さから、2012年度、2013年度と実績はなく、2014年度になってFITを活用した案件が成立した。普及させるためには、FIT以外にも高効率のバイオマス利用に対する政策面でのバックアップが必要とみられる。
2.バイオガス発電機国内市場

バイオガス化(メタン発酵)のメタンガスや、バイオマスガス化の合成ガスなどに対応した発電機である。メタン発酵を行う消化槽を所有しているが、生成したメタンガスの有効活用ができていなかった、あるいは発電以外の用途で使用していた下水道事業者(自治体)が、FITを契機にバイオガス発電機の導入を進めたことで、2013年度より市場が急速に拡大した。また、プラントメーカーが主導しバイオガス発電機を設置、運営し、自治体などの事業者は設備投資を行わず設置場所の貸出しとメタンガスの販売を行うといった新たなビジネスモデルも登場しており、2015年度も拡大を続けると予測される。
◆バイオマス由来製品国内市場
2014年度見込 |
2020年度予測 |
13年度比 |
|
市場規模 |
1,789億円 |
3,567億円 |
2.4倍 |
バイオマスプラスチックが普及期に突入し、FIT案件の発電プラント稼働開始によるバイオマス由来電力の供給量増加で市場は拡大を続けるとみられる。バイオマス燃料は、バイオエタノールが利用目標量が設定されていることから拡大しているが、これ以外のバイオディーゼル、木質ペレット、バイオマス固形燃料などは広がりが限定的である。現在市場がない藻類利用のバイオ燃料やセルロースナノファイバーなどは開発が進み、2020年度までには市場が確立するとみられる。
1.バイオマス由来電力
2014年度見込 |
2020年度予測 |
13年度比 |
|
市場規模 |
808億円 |
1,550億円 |
2.3倍 |
RPS(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)とFITによって供給されるバイオマス発電による電力を対象とする。FIT開始により買取価格が上昇したことで、RPSからFITへの移行が進み、2013年度は市場が大きく拡大した。FITを契機として新たに建設された発電プラントの多くは5MW〜数10MWの大規模発電プラントが中心で、2014年度後半からの稼動開始が多いことから、2015年度以降供給量が急増すると予想される。
2.藻類利用製品(バイオ燃料)
2014年度見込 |
2020年度予測 |
13年度比 |
|
市場規模 |
− |
188億円 |
− |
クロレラやユーグレナなど、健康食品の原料として使用されている藻類も多いが、近年では油分を抽出し燃料化する技術が注目されている。試験的にジェット燃料や自動車燃料で利用されているが、ここでは商用化されたバイオ燃料を対象とする。藻類からのバイオ燃料生産は2020年を目標に、大量培養技術の確立や低コスト化を目指した研究開発が進められている。はじめは生産量も限定されるとみられ、当面は燃料の中でも高価格のジェット燃料向けが想定される。なお、自動車燃料向けとしては、一層の量産化とコスト低減を進める必要がある。
3.セルロースナノファイバー
2014年度見込 |
2020年度予測 |
13年度比 |
|
市場規模 |
僅少 |
1.5億円 |
− |
パルプの製紙以外の用途として、木質バイオマスの繊維分を化学的、機械的に処理し、セルロースナノファイバーを製造する技術の開発が進められている。現在は研究開発、実証段階のものが多いが、2015年度頃から市場が顕在化し、翌年度には製紙会社が実用化を図るとみられる。炭素繊維のようにフィラーとして他の樹脂との複合材用途のほか、シートやフィルム、機能性添加剤、原料によっては医療材料での使用も想定され、アプリケーションの広がりに対する期待が高い。
◆調査対象
| バイオマス利活用装置・プラント |
バイオマス直接燃焼ボイラ、バイオマスボイラ用蒸気タービン、バイオガス化(メタン発酵)、バイオガス発電機、バイオマスガス化・燃料化(Biomass to Liquid)、バイオエタノール化、バイオディーゼル化、藻類利用技術、ペレットボイラ、バイオオイル化、炭化・バイオマス固形燃料化(※下線は国内+日系企業の海外実績市場) |
| バイオマス由来製品 | バイオマス由来電力、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、藻類利用製品(食品等原料、バイオ燃料)、バイオマスプラスチック・バイオ化学品、木質ペレット、バイオマス固形燃料・炭化素材、木質由来材料(セルロースナノファイバー、リグニン製品) |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。
