PRESSRELEASE プレスリリース

第20037号

空調 ・ 熱源関連ビジネス市場を調査
―2030年度予測―
空調 ・ 熱源関連ビジネスの国内市場は2兆6,250億円。
フロー型ビジネスは縮小するものの、ストック型は拡大し、 2018年度比 4.6%増 

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、システムを設計・施工して終わりのフロー型ビジネスから、その後の保守メンテナンスや遠隔モニタリング、節電アグリケーションなどといったストック型ビジネスまで手掛けるかたちへ移行している、国内の空調・熱源関連ビジネス市場を調査した。その結果を「2020年版 空調・熱源システム市場の構造実態と将来展望」にまとめた。

この調査は、空調・熱源関連ビジネス市場をフロー型とストック型のビジネスタイプ別に分析したほか、産業施設やオフィスビル、商業施設など需要分野別に、また、空調系サブコンや電気系サブコン、メンテナンス会社、エネルギーサービス会社など業態別にも分析した。ビジネスタイプ別市場分析では空調・熱源関連ビジネス市場のサービス分野への広がりを展望し、需要分野別市場分析では需要分野ごとの空調・熱源システムの技術トレンドや市場動向をまとめた。また、業態別市場分析では空調・熱源関連ビジネスへの関わり方・提案特徴・ビジネスの特徴/戦略を整理している。

◆調査結果の概要

■空調・熱源関連ビジネスの国内市場

 

2018年度

2030年度予測

2018年度比

フロー型

1兆8,700億円

1兆8,000億円

96.3%

ストック型

6,393億円

8,250億円

129.0%

合 計

2兆5,093億円

2兆6,250億円

104.6%

空調・熱源システムにかかわるビジネスはフロー型とストック型の2つのタイプに分けられる。フロー型ビジネスは、顧客接点が一時的で建設需要に応じてその都度売上が得られる空調システムの施工(空調施工エンジニアリング)を対象としている。空調施工エンジニアリング市場は、近年は東京五輪関連の大型案件・新築特需により活況であったが、中長期的には改修需要を取り込みつつも人口減少による新築需要の低迷のため縮小していくと予想される。空調施工エンジニアリングの一部で、各種設備に計器を装備して中央監視システムを構築する空調計装エンジニアリングは、計画的な改修を実施する傾向のある大型案件の改修需要を主に取り込んでいる。また、設備の管理点数の増加もあって単価上昇も期待される。空調施工エンジニアリング市場が縮小していく状況においても、横ばいを維持すると予想される。

一方、ストック型ビジネスは継続的な顧客との接点を持ち、月額や年額のサービス料に応じて長期的な売上を得られる空調遠隔モニタリングや空調保守メンテナンス、空調リース、節電アグリゲーション、オンサイトエネルギーサービス、XaaS(空調・熱源関連)を対象としている。ストック型ビジネス市場は、特に人材不足を背景としたアウトソーシングニーズの高まりにより拡大しており、空調・熱源関連ビジネス市場における構成比も上昇していくと予想される。

ストック型ビジネスの内訳をみると、空調遠隔モニタリングや空調保守メンテナンスは建物ストック件数が減少しているものの、ビル管理の常駐人材不足からニーズが高まっている。特に、空調遠隔モニタリングは現状導入比率が低いことから、今後市場拡大する余地が大きい。節電アグリゲーションは再生エネルギー電源への関心が高まる中、太陽光発電による電気のみを利用した電力料金メニューの開発には節電電源が必要であり、また、高度経済成長期に建設された火力発電所が退役する時期を迎える時には、より一層需要が増加するとみられ、長期的には市場拡大が予想される。オンサイトエネルギーサービスや空調リース、XaaSは十数年にわたって契約するビジネスである。オンサイトエネルギーサービスやXaaSは設備をサービスとして契約したいニーズを取り込み市場拡大しているが、バックファイナンスを手掛ける空調リースは、近年契約時における大企業のオフバランスが原則廃止となったことや、銀行から低金利による融資が受けやすくなっていることから、新規契約獲得に苦戦している。

◆注目市場

1.空調施工エンジニアリング

2018年度

2030年度予測

2018年度比

1兆8,700億円

1兆8,000億円

96.3%

近年市場は東京五輪関連の需要により拡大し、2018年度は前年度比8.1%増の1兆8,700億円となった。業態別にみると空調系サブコンがシェア8割以上を占める。空調系サブコンに次ぐのが電気系サブコンやメンテナンス会社である。

需要分野は、1案件あたりの設備投資額が大きい産業施設の市場構成比が最も高い。次いで高いのはオフィスビル、業務施設の順である。

今後は首都圏を中心とした再開発需要や、東京五輪により後回しになっていた案件の顕在化、新冷媒への切り替えやバブル期に建築された建物の設備更新などによる改修需要の増加を受けて、微減ながらも底堅い需要が予想される。

2.空調保守メンテナンス

2018年度

2030年度予測

2018年度比

4,522億円

4,700億円

103.9%

空調システムの定期点検や、不具合や故障に対応して整備・修理・部品交換などを行うスポット点検、技術者をユーザー施設内に常駐させる常駐設備管理などのサービスを対象としている。空調システムの省エネ性や快適性の維持・向上、耐用年数の延長、故障の予防などを目的に実施される。空調保守メンテナンスでは、ユーザーがメンテナンス会社に委託するケースや、空調システムを設置したエンジニアリング会社が直接行うケースがある。一方で、メンテナンス会社は空調保守メンテナンス案件を獲得するためにエンジニアリングビジネスを展開し、エンジニアリング会社は改修工事につなげるために空調保守メンテナンスビジネスを展開しており、ビジネス領域が重複してきている。

市場は空調保守メンテナンスの対象となるオフィスビルや商業施設が首都圏を中心に増えていることからわずかながら拡大している。2018年度の市場は、2017度比0.7%増の4,522億円となった。業態別にみると、空調設備や給排水設備などの設備管理や清掃、警備などを行うメンテナンス会社のシェアが高くなっている。次いでシェアが高い空調系サブコンは、自社で施工した案件の改修工事を受注するために顧客接点強化の一環として空調保守メンテナンス業務を展開している。ベンダー別にみると、メンテナンス会社の日本空調サービスやエレベーター保守会社の三菱電機ビルテクノサービス、空調系サブコンの高砂熱学工業、計装会社のアズビルなどが上位を占めるなど、業態はさまざまである。

需要分野は産業施設の市場構成比が最も高い。次いで高いのは業務施設、オフィスビルの順である。メンテナンス会社は各分野をターゲットにしているものの、空調系サブコンは産業施設、計装会社やエレベーター保守会社はオフィスビル中心の展開が特徴である。

今後も市場は微増ながらも安定した推移が続くとみられる。

3.オンサイトエネルギーサービス

2018年度

2030年度予測

2018年度比

1,360億円

2,000億円

147.1%

エネルギーサービス会社が顧客敷地内にエネルギー設備などを設置し、電気やガスなどのエネルギーを供給するサービスを対象としている。また、パフォーマンス保証を約束するESCO契約も含んでいる。

オンサイトエネルギーサービスは、初期費用がないストック型ビジネスであり、市場は契約件数の増加とともに拡大している。2018年度の市場は、1,360億円となった。業態別にみると、エネルギーサービス会社がシェア9割を占めている。エネルギーサービス会社は、ガス会社系列や電力会社系列であり、関電エネルギーソリューションや東京ガスエンジニアリングソリューションズ、日本ファシリティ・ソリューション、シーエナジーなどが展開している。計装会社ではESCOのパイオニア、アズビルが展開している。最近では需要の波が大きい建築ビジネスのストック型化を進めようと、一部の空調系サブコンや電気系サブコンもESCO方式の提案を行っている。

需要分野の特徴は、かつて燃料費が高かった時代に導入した、1案件あたりの規模が大きい産業施設の市場構成比が高い。外部委託ニーズのある建物稼働率の高い業務施設や、商業施設は、近年の有力需要先となっている。一方で、建物稼働率の低いオフィスビルの市場構成比は低くなっている。

2000年頃から始まったオンサイトエネルギーサービスでは、一般的な契約期間は約15年とされ、更新時期を迎えた契約の多くは更新しているが、一部では解約もみられる。一定数の解約を勘案すると今後の市場拡大のペースは、やや鈍化していくと予想される。

◆調査対象

分類

品目

ビジネス

フロー型

・空調施工エンジニアリング

・空調計装エンジニアリング

ストック型

・空調遠隔モニタリング

・オンサイトエネルギーサービス

・空調保守メンテナンス

(ESCO含む)

・節電アグリゲーション

・空調リース

(BEMS動向含む)

・XaaS(空調・熱源関連)

需要分野

・産業施設(工場・倉庫等)

・コミュニティ(DHC)

・コールドチェーン(貯蔵工程・

・オフィスビル

・データセンター

冷凍加工工程・流通工程)

・業務施設(病院・学校等)

・エレベーター

・農業分野(農業ハウス・植物工場)

・商業施設(店舗・宿泊施設等)

 

・住宅分野(全館空調システム)

業態

・空調系サブコン

・ゼネコン

・警備会社

・節電会社

・電気系サブコン

・メンテナンス会社

・ガス会社

・エネルギーサービス会社

・通信系サブコン

・エレベーター保守会社

・電力会社

・リース会社

・計装会社

 

 

 


2020/04/15
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