PRESSRELEASE プレスリリース
●軟包装用インキ 125万トン(10.6%増)
~新興国を中心に食品包装など、生活日用品に使用される軟包装の需要増加に伴い伸びる~
●UVインキ 21万トン(16.7%増)
~環境負荷低減を目的に溶剤インキからの切り替えが進むなど市場が拡大~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、世界的に環境調和型インキの需要が高まっている機能性インキの世界市場について調査し、その結果を「2020 機能性インキ市場の全貌」にまとめた。
この調査では、印刷インキの市場を調査し、印刷方式別、用途別、材料別にも分類・分析し、今後の方向性を多角的に捉えた。またインキ材3品目、版・印刷機8品目の動向も明らかにした。なお、一部の品目は国内市場のみ算出した。
◆注目市場
●軟包装用インキ【用途別】
2019年 |
2023年予測 |
2019年比 |
113万トン |
125万トン |
110.6% |
食品や日用品などに使用されるプラスチックフィルムによる軟包装向けのグラビアインキとフレキソインキを対象とする。
市場は2017年以降、欧米の堅調な需要に加え、中国、東南アジア、インドといったアジアの経済成長に伴う軟包装のニーズの高まりにより拡大してきた。2019年は世界的に景気が減速したものの、アジアや南米などの新興国を中心に食品包装や化粧品包装など、生活日用品に使用される軟包装の需要が増加し拡大した。2020年は世界的な新型コロナウイルス感染症の影響により、伸びが鈍化するとみられる。2021年以降、アジアや南米などの新興国で生活水準が向上することで軟包装の需要が増加するため、市場拡大が予想される。
●UVインキ【材料別】
2019年 |
2023年予測 |
2019年比 |
18万トン |
21万トン |
116.7% |
UVインキは溶剤インキと比較すると高価だが、生産性や環境対応に優れており、オフセットやフレキソ、スクリーン、インクジェットの各印刷方式で用いられている。硬化に用いるUV光源はメタルハライドランプが主流であるが、省エネで長寿命のLEDランプの採用が拡大している。LEDランプは照度が低いため、感度を高めた高感度UVインキが用いられている。
日米欧などの先進国で高付加価値化への取り組みとして省エネオフセットUV印刷機の導入が進んでおり、高感度UVインキの需要が大幅に増加している。環境負荷低減を目的に溶剤インキからの切り替えも進んでいる。先進国では印刷に対する付加価値向上が求められていることから今後も市場は拡大すると予想される。また、新興国でも経済成長に伴い、付加価値向上のためUVインキの採用が増加するとみられる。
●バイオマスインキ(国内市場)【材料別】
2019年 |
2023年予測 |
2019年比 |
10,100トン |
15,100トン |
149.5% |
米ぬかを原料としたライスインキと米ぬか以外の生物由来原料を用いたインキの国内市場を対象とする。
日本有機資源協会によるバイオマスインキの認定数は増加しており、ライスインキはセブン-イレブン・ジャパンなど大手小売・流通の食品包装での採用により注目され、インキメーカーからの認定申請が相次いでいる。
海洋汚染問題を背景とした脱プラスチックの流れによりバイオマスインキへの注目度は高まっており、2019年の市場は拡大した。2020年も紙袋などで需要が増加している。バイオマスインキの需要は一過性のブームに終わると懸念されているものの、資源の有効活用や環境負荷の低減といった環境価値を一般消費者に訴求できることから今後も市場拡大が予想される。
●IR透過インキ【用途別】
2019年 |
2023年予測 |
2019年比 |
130トン |
143トン |
110.0% |
スクリーンインキのうち、IR(赤外線)透過型を対象とする。赤外線を用いた家電のリモコンやモバイルの受光部などにおいて、主に機械部分を隠す目的で使用される。
近年、スクリーンインキは中国を中心にスマートフォンなどのモバイル端末向けで伸びており、これに伴いIR透過インキの市場も拡大している。2020年は世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で、使用している製品自体の市場が縮小しているため、微減するとみられる。2021年以降、中国や東南アジアなどにおいて家電・モバイル端末向けでスクリーンインキの需要が増加し、IR透過インキの市場も拡大するとみられる。また、将来的には自動車分野において、自動運転化の進展によりセンサーの搭載点数が増加することから需要増加が期待され、中国や欧米を中心に市場は拡大するとみられる。
◆調査結果の概要
■機能性インキの世界市場【印刷方式別】
|
2019年 |
2023年予測 |
2019年比 |
オフセットインキ |
128万トン |
112万トン |
87.5% |
グラビアインキ |
100万トン |
110万トン |
110.0% |
フレキソインキ |
67万トン |
72万トン |
107.5% |
スクリーンインキ |
6万トン |
7万トン |
116.7% |
インクジェットインキ |
4万トン |
5万トン |
125.0% |
合 計 |
305万トン |
305万トン |
100.0% |
※市場データは四捨五入している
2019年の機能性インキの世界市場は305万トンとなった。オフセットインキの市場規模が最も大きく、全体の42.0%を占め、次いでグラビアインキが32.8%、フレキソインキが22.0%を占める。スクリーンインキやインクジェットインキは、市場規模は小さいものの需要が増加している。今後はグラビアインキやフレキソインキ、スクリーンインキ、インクジェットインキが伸びる一方、オフセットインキが縮小することから市場は横ばいで推移するとみられる。
オフセットインキの主要用途は商業印刷や新聞・出版印刷などである。近年は新聞や出版関連市場が縮小していることから需要は緩やかに減少している。多くの国・地域においてモバイル端末の普及と文書の電子化が進んでおり、今後も市場縮小が続くと予想される。
グラビアインキは軟包装向けが大半を占め、食品包装などパッケージ需要に市場が連動する。2017年以降、中国を中心としたアジアにおいて生活日用品に使用される軟包装の需要が増加したことで市場が拡大している。2020年は世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により需要の伸びが鈍化するとみられるものの、2021年以降は中国や東南アジア、インド、南米といったアジアや新興国の経済成長に伴い、市場は拡大するとみられる。
フレキソインキは主要用途が段ボールや軟包装である。北米や欧州、中南米におけるパッケージ向けで伸びている。一方で、欧米ではフレキソ製版の表面処理技術が向上したことでインキ使用量が減少しているほか、小ロット多品種向けのデジタル印刷と競合している。今後は新興国を中心に経済成長に伴う段ボール需要の増加などにより市場が拡大するとみられる。しかし、インキ使用量の減少技術の普及やデジタル印刷との競合により、2015年以前のような伸びは期待できない。
スクリーンインキは主要用途が工業向けやシール・ラベルである。工業向けが好調で、スマートフォンを含めたモバイル端末の大型化により需要量が増加している。2021年以降、普及率の上昇によりモバイル端末向けの伸びは鈍化する一方、大型ディスプレイの採用や快適性を高める空間作りが進められている自動車分野での需要増加が期待される。
インクジェットインキは主要用途がセラミックタイルやサイン・ディスプレイ向けである。市場は2017年から2019年にかけて伸長した。溶剤インキは横ばいであったが、UVインキが伸びている。UVインキは有機溶剤を使用しないことから環境対応に優れており、需要が増加している。
◆調査対象
インキ材 |
・樹脂 |
・溶媒 |
・顔料 |
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印刷方式別 |
・オフセットインキ |
・フレキソインキ |
・インクジェットインキ |
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・グラビアインキ |
・スクリーンインキ |
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注目用途別 |
・軟包装用インキ |
・建材用インキ |
・シール・ラベル用インキ |
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・紙用インキ |
・紙おむつ用インキ |
・IR透過インキ |
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材料別 |
・水性インキ |
・UVインキ |
・バイオマスインキ |
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版・印刷機 |
・オフセット印刷機 |
・フレキソ版 |
・インクジェット印刷機 |
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・グラビア印刷機 |
・インクジェット印刷機 |
(テキスタイル) |
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・フレキソ印刷機 |
(サイン・ディスプレイ) |
・インクジェット印刷機(ラベル) |
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・スクリーン印刷機 |
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※網掛けの品目は国内市場のみ算出している