PRESSRELEASE プレスリリース

第21101号

ファインセラミックス材料・製品の世界市場を調査
―2026年世界市場予測(2020年比)―
■ファインセラミックス材料 366.0億ドル(29.0%増)
5G通信やxEVの普及によって放熱部材関連が拡大
●酸化アルミニウム(アルミナ) 53.4億ドル(28.7%増)
産業分野で広く使用され、耐火物向けは横ばいも、自動車関連がけん引

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、半導体産業の活況や5G通信関連の普及により安定的・着実な需要が期待されるファインセラミックス材料・製品の世界市場を調査した。その結果を 「2021年 ファインセラミックス材料・製品市場の展望」 にまとめた。

この調査では、ファインセラミックス材料16品目と機能材料5品目、ファインセラミックス製品5分野19品目の市場動向を捉えた。

◆調査結果の概要

■ファインセラミックス材料の世界市場

 

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

酸化物系

315.9億ドル

112.3%

361.6億ドル

128.6%

非酸化物系

2.9億ドル

111.5%

4.4億ドル

169.2%

合 計

318.8億ドル

112.3%

366.0億ドル

129.0%

2020年の市場は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、上期に多くの産業分野で生産活動が低迷したことによりファインセラミックスの需要が減少した。下期には各国の産業が回復に向かったものの、上期の落ち込みの影響が大きく、前年比2.5%減となった。市場の6割以上を占める酸化チタンが自動車や建築物の一時的な需要減少により、単価が低下したことも影響した。2021年は自動車や半導体などの需要回復による市場拡大に加え、原料価格や船賃の高騰から値上げされた材料が多いことから、前年比二桁増が見込まれる。

今後は、5G通信やxEVの普及によって放熱部材関連の需要増加が期待されるほか、塗料・インキなどで汎用的に使用される酸化チタンが新興国の経済発展を背景に堅調に伸びていき、2026年には2020年比29.0%増の366.0億ドルが予測される。なお、酸化物系と非酸化物系では、酸化物系の比率が高いものの、非酸化物系は放熱部材や半導体での採用が多いことから、高い伸びが期待される。

■ファインセラミックス製品の世界市場

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

320.7億ドル

111.5%

426.2億ドル

148.2%

2020年は、テレワークの普及や巣ごもり需要の増加、5G通信の商用化により、電子部品や半導体・FPD製造装置部品を中心に市場が拡大した。2021年は、引き続き電子部品や半導体・FPD製造装置部品が好調である。今後はIoTや5G通信の進展により通信機器だけでなく自動車や民生機器でも半導体や電子部品の需要が増加することに加え、環境対応の進展により自動車・機械部品が伸びることで、2026年には2020年比48.2%増の426.2億ドルが予測される。

電子部品では、積層セラミックコンデンサー、チップ抵抗器、水晶振動子・水晶発振器が電子機器に欠かせない部品であることや、自動車電動化や車載電装品の増加により自動車1台あたりの搭載数が増え、伸びていくとみられる。

半導体・FPD製造装置部品では、5G通信の普及に伴い通信量が増えることで半導体、特にエッチングプロセスの多い3D NANDの需要が増加しており、今後も高い伸びが予想される。

環境対応を背景に自動車排ガス浄化用フィルター、産業機器のキーパーツであるベアリング用セラミックボールなど自動車・機械部品の需要も増加している。

◆注目材料市場

●酸化アルミニウム(アルミナ)

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

45.7億ドル

110.1%

53.4億ドル

128.7%

産業分野で最も広く使用されるセラミックスであり、耐火物・陶磁器などの原料となる汎用アルミナ、電気絶縁性を有する低ソーダアルミナ、低摩耗性や機械的強度の高い易焼結アルミナ、樹脂のフィラーとして使用される球状アルミナ、リチウムイオン二次電池部材やLED用サファイア基板に用いられる高純度アルミナ、吸着剤や乾燥剤などに使用される活性アルミナを対象とする。

2020年の市場は、新型コロナの影響で耐火物、自動車部品向けを中心に縮小した。下期には各国の産業が回復に向かい、2021年から2022年にかけては、5G通信やxEVの普及、主要用途である耐火物向けの回復および放熱基板や放熱フィラーなどの伸びにより、大幅に拡大するとみられる。一方で、カーボンニュートラルの取り組みとして、大手鉄鋼メーカーが減産の方針を打ち出していることから、耐火物向けが頭打ちになることも想定され、長期的には市場の伸びは緩やかになるとみられる。

用途別では、自動車部品向け、自動車触媒用担体向け、自動車の電装化やドローンなど新規デバイスの普及によるエレクトロニクス向けなどが伸びるとみられる。

●窒化アルミニウム

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

5,890万ドル

112.4%

8,040万ドル

153.4%

熱伝導性、電気絶縁性に優れており、放熱や吸熱を目的とした材料に使用される。

2020年の市場は、放熱基板向けが減少したが、半導体産業の活況を受けて半導体製品装置部品向けが増加したことで、全体としては5%程の縮小にとどまった。2021年以降は、自動車向けの回復、5G通信やxEVなどの普及によって市場は拡大し、特に放熱フィラー向けが好調に推移するとみられる。

エリア別の需要では、半導体製造装置部品や放熱基板は参入する日系メーカーが多いことから、日本の比率が高い。このほか、韓国、中国、欧州などでも一定の需要があり、近年は中国の比率が高まっている。また、用途別では放熱基板ではパワー半導体向けが主だが、近年はヘッドランプなどのLEDパッケージ向けが伸びている。

◆注目製品市場

●パワー半導体用セラミック回路基板

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

7.4億ドル

113.8%

14.8億ドル

2.3倍

セラミックス粉を成形、焼成したベア基板(白板)に金属板を接合し、エッチングにより回路を形成したセラミック回路基板を対象とする。耐熱性、絶縁性、強度に優れており、樹脂板や金属板では対応できない電圧負荷の高い用途で使用される。白板としてはアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素が用いられており、600Vまではアルミナ、それ以上では窒化アルミニウムが選択される傾向にある。

2020年の市場は、新型コロナの影響を受け産業機器や自動車などの産業分野で生産活動が低迷したことで、汎用的に用いられるアルミナ回路基板の需要が減少した一方で、窒化ケイ素回路基板の採用が増加したことにより、前年比6.6%増となった。2021年は産業の回復により自動車向けを中心に伸びていることに加え、電動車向けパワーカードでの採用増加により拡大するとみられる。

なお、自動車向けでは、セラミック回路基板の中でも特に耐ヒートサイクル性に優れる窒化ケイ素回路基板が伸びており、環境対策を目的に欧州、中国で電動化が急速に進んでいることから、今後、市場の拡大が予想される。

●エッジリング

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

2.2億ドル

122.2%

3.8億ドル

2.1倍

半導体製造のエッチング装置において、シリコンウエハーの固定に用いられているエッジリングのうち、ソリッドSiC製を対象とする。エッジリングの素材として主流なのは石英であるが、フッ素系プラズマエッチングプロセスの増加により、ソリッドSiCの採用が増えている。

2020年はパソコンやサーバーのSSD用に3D NANDの需要が増加したほか、3D NAND自体の高層化が進んだことでエッチングプロセスが増加し、消耗部品であるエッジリングの需要も増加した。

韓国系メーカーはソリッドSiCの採用が多いほか、エッジリングの交換を自動で行うエッチング装置が導入されはじめており、耐久性重視でソリッドSiCの採用が増えていき、今後の市場拡大が予想される。

●ベアリング用セラミックボール

2021年見込

2020年比

2026年予測

2020年比

2.0億ドル

117.6%

4.1億ドル

2.4倍

セラミックボールはセラミックを圧縮、焼成し、表面研磨して球状にしたセラミック製品で、ベアリング用を対象とする。ベアリング用ボールとしては鋼球の採用が多いが、腐食しやすい用途や絶縁性が求められる用途など過酷な使用環境下ではセラミックボールが採用され、特にスピンドルモーター向けが多い。また、素材としては、耐熱性、耐食性、高硬度、高速回転時の動力損失が小さいことから、窒化ケイ素が標準的に用いられている。

2020年の市場は、新型コロナの影響を受け上期はスピンドルモーター向けが減少し、下期は需要が回復に向かったものの上期に需要が減少した影響が大きく、苦戦した。2021年以降はEVの普及に伴うスピンドルモーター向けでの需要増加が市場をけん引していくとみられる。また、環境対策への注目が高まる中で、EVや風力発電などで採用機運が高まっており、長期的には省エネ対策やエネルギー効率向上を目的に航空機産業でも採用拡大が期待される。

ベアリングは世界各国で生産されているが、セラミックボールは環境対策分野で需要を増加させていることから、欧州の需要が大きい。また、日本は工作機械に用いられるスピンドルモーター向けが中心となっている。

◆調査対象

ファインセラミックス材料

酸化物系

 

非酸化物系

・酸化アルミニウム

・ニオブ酸カリウムナトリウム

・窒化アルミニウム

・酸化ジルコニウム(湿式)

・シリカ(非合成、合成球状)

・窒化ホウ素

・酸化イットリウム

・フュームドシリカ

・窒化ケイ素

・酸化セリウム(研磨材用)

・コロイダルシリカ

・炭化ケイ素

・酸化チタン

・石英ガラス(合成、溶融)

(ファインセラミックス用)

・チタン酸バリウム

 

・炭化ケイ素繊維

機能材料

・セラミック基複合材料

・低熱膨張セラミックス

・セラミックスコーティング材

・ゼロ膨張ガラス

・溶射材

 

ファインセラミックス製品

・積層セラミックコンデンサー

・GaNウエハー

・エッジリング

・チップ抵抗器

・エポキシ封止材

・ベアリング用セラミックボール

・水晶振動子・水晶発振器

・モールドアンダーフィル

・自動車排ガス浄化用フィルター

・セラミックパッケージ

・CMPスラリー

・水処理用セラミックフィルター

・パワー半導体用セラミック

・ハードディスク用研磨材

・SOFC電解質(シート)

回路基板

・露光装置用レンズ

・バイオセラミックス

・SiCウエハー

・静電チャック

 

※ニオブ酸カリウムナトリウム、石英ガラスはファインセラミックス材料の世界市場の合計に含まない


2021/10/22
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。