PRESSRELEASE プレスリリース

第22007号

医療連携システム、医療プラットフォーム関連の国内市場を調査
―2035年予測(2020年比)―
■医療連携システム、医療プラットフォーム関連の国内市場 6,120億円 (30.9%増)
新型コロナの流行もデジタル化には追い風。電子カルテがけん引し拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、新型コロナウイルス感染症の流行により、医療現場のデジタル化や電子データによる共有化、オンライン診療ニーズの増加など、デジタル化が加速している医療連携システム、医療プラットフォーム関連の国内市場を調査した。その結果を「2022年 医療連携・医療プラットフォーム関連市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、医療情報のプラットフォームである、広域医療連携システム2品目、院内基幹システム23品目、地域包括ケアシステム7品目、電子お薬手帳・調剤薬局3品目、オンライン医療3品目、計38品目の市場動向や集まった医療情報の活用の方向性などについて現状を捉え、将来を展望した。また、医療情報を二次利用したシステムの市場については、「2022年 医療AI・医療ビッグデータ関連市場の現状と将来展望」で調査する予定である。

◆調査結果の概要

■医療連携システム、医療プラットフォーム関連の国内市場

 

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

広域医療連携システム

91億円

101.1%

105億円

116.7%

院内基幹システム

4,149億円

107.2%

4,889億円

126.3%

地域包括ケアシステム

302億円

110.6%

551億円

2.0倍

電子お薬手帳・調剤薬局

423億円

102.9%

469億円

114.1%

オンライン医療

41億円

128.1%

106億円

3.3倍

合 計

5,006億円

107.1%

6,120億円

130.9%

2020年は、新型コロナ流行の影響により市場の8割を占める院内基幹システムが落ち込んだことで、市場は縮小した。しかし、デジタル化ニーズが高まったことで地域包括ケアシステムやオンライン医療など、伸びたものも多かった。2021年は、院内基幹システムにおいて延期されていた案件の導入が進んでいることから市場が拡大し、前年比7.1%増の5,006億円が見込まれる。

2021年10月からはマイナンバーカードの健康保険証利用(オンライン資格確認)が開始され、今後は、電子処方箋の運用開始や電子カルテの標準化などが予定されていることから、医療機関でのデジタル化が一層進むとみられる。これにより、医療の効率化に加え、高度化に向けた医療情報のビッグデータとしての活用が期待される。医療プラットフォームとして電子カルテをはじめとしたシステムの需要が高まっていくことで、2035年の市場は2020年比30.9%増の6,120億円が予測される。

・広域医療連携システム

複数の市区町村を対象とする二次医療圏の中核病院を中心に導入されることが多く、病院間の連携を可能とする広域医療連携システムは、政府や厚生労働省の方針を受けた自治体の医療構想に基づいた需要がある。

病院の統廃合による需要低下や補助金打ち切りによる利用停止などが懸念されるものの、地域医療や救急医療の整備や効率化が推進されることで、長期的には市場は緩やかな拡大が予想される。

・院内基幹システム

病院および診療所に導入される医療ITシステムを対象としており、電子カルテが市場の約7割を占める。

2020年は新型コロナ流行の影響を受けた医療機関の経営状況の悪化や感染対策などに予算が割かれ、システムの導入が見送られたケースも多く市場が落ち込んだ。2021年はオンライン資格確認の開始に伴う顔認証付きカードリーダーの導入などによって市場拡大が予想される。

なお、電子カルテを起点にネットワーク化が進められており、情報公開、共有、共同利用の視点から病院と診療所の連携をさらに進展させることで地域医療の強化に繋げる流れが強まっている。将来的には電子カルテの普及に加え、2024年4月から医師の時間外労働時間の上限規制適用が開始されることから、タスクシェアリングなどが進み、ITシステムによる支援ニーズの高まりとともに、市場拡大が期待される。

・地域包括ケアシステム

かかりつけの医療機関を中心に訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどとの連携を可能とする地域包括ケアシステムの構築を政府が後押ししており、診療報酬や介護報酬での加点、補助金の支給などが行われていることから、市場が拡大している。

2020年は、高齢者施設において、非接触による業務ニーズが高まったことと、導入のための補助金が支給されたことで、見守り機器の導入が進んだ。今後も高齢者人口の増加に伴い見守り機器を中心にITシステムの需要増加が予想される。2021年は、新型コロナの流行によりワクチン接種予約/管理システムが全市町村の7割強の自治体で採用されたことで特需がみられる。

・電子お薬手帳・調剤薬局

調剤薬局に導入されるITシステムを対象としており、調剤薬局向けレセプトコンピュータが市場の7割以上を占める。

2020年よりオンライン服薬指導、薬剤交付後の服薬フォローアップが制度化されたことで、これに対応する電子お薬手帳が伸びている。また、今後電子処方箋が開始されることで、調剤薬局向けレセプトコンピュータのシステム改修や新製品投入が進み、市場をけん引していくと予想される。

・オンライン医療

オンラインによる診療や服薬指導のシステムは、2010年後半から地域の医療格差をITで解決する取り組みとして導入が推進されてきた。新型コロナへの対応として規制が緩和されたことで、2020年に市場が急拡大した。2021年はオンライン診療への取り組み意欲が高い医療機関への導入が一巡したことや、対面診療と比較した際の診療報酬の低さなどから、市場の伸びは鈍化している。しかし、将来的にはウェアラブル端末をはじめとするIoT機器の活用により、行うことができる診療・診断行為が増えることで、オンライン診療などの利用増加が期待される。

電子処方箋システムは2023年1月より運用開始が予定されており、オンライン診療とオンライン服薬指導の円滑な連動のために早期の普及が求められている。将来的には電子処方箋を起点にオンライン医療や連携が進展していくと期待される。

◆注目市場

●病院向け電子カルテ、クラウド型電子カルテ

 

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

病院向け電子カルテ

2,227億円

104.9%

2,750億円

129.6%

クラウド型電子カルテ

72億円

114.3%

400億円

6.3倍

電子カルテをプラットフォームとするネットワーク化が進められていることから、普及が進み市場は拡大していくとみられる。

病院向け電子カルテはオンプレミス型を対象とする。

2020年は新型コロナ流行の影響もあり、病院への訪問営業が難しくなったことから、新規導入が停滞し、市場は縮小した。

大規模病院での導入率は高く、リプレース需要が中心である。また、データの移行などから他ベンダーへの切り替えも起きにくい。中小規模病院は導入率が低く、新規導入が中心であり、参入企業は中小規模病院向けの展開を強化している。今後は、中小規模病院を中心に導入が増えると予想されるが、安価なクラウド型の導入も進んでおり、市場の伸びは鈍化するとみられる。

クラウド型電子カルテはSaaSやASPで提供される電子カルテを対象とする。

オンプレミス型と比較し、初期導入費が安価で、院内にサーバーを置く必要がなく導入時の作業が簡易なため、診療所や中小規模病院を中心に選ばれており、市場が拡大している。

中小規模病院では補助金が導入を後押ししている。診療所は、無床診療所を中心に導入増加が想定されることから、今後も伸びるとみられる。クラウド型はタブレット端末などを用いて院外でも利用可能なことから、在宅医療が普及することでニーズは高まっていくと予想される。

●オンライン資格確認システム(顔認証付きカードリーダー)

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

131億円

70億円

2021年10月から開始されたオンライン資格確認(マイナンバーカードの健康保険証利用)で利用される顔認証付きカードリーダーを対象とする。

2021年の市場は、オンライン資格確認の導入促進を目的に、顔認証付きカードリーダーを無償提供する「加速化プラン」が3月まで実施されたことで、大きく伸びた。2022年、2023年の市場は2021年と比較すると大幅に縮小するものの、2023年3月末までシステム導入の補助金制度があるため堅調な推移が予想される。2026年以降はリプレース需要が中心になるとみられる。

●病院向け勤怠管理システム(医師の働き方改革対応型)

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

11億円

183.3%

8億円

133.3%

2024年4月から適用される医師の時間外労働の上限規制に対応し、かつ自己研鑽などの私的時間の管理も標準機能とする病院向け勤怠管理システムを対象とする。

働き方改革を推進するための法律の整備により、2019年4月から医療施設でも勤怠管理や働き方改革が求められるようになり、本格的に市場が立ち上がった。

医師の時間外労働の上限規制が適用されることからニーズが急速に高まっており、2024年に向けて導入が進むと予想される。2025年以降は、リプレース需要が中心になることで、市場は縮小していくとみられる。

●オンライン医療関連

 

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

オンライン診療(遠隔診療)システム/サービス

27億円

117.4%

73億円

3.2倍

オンライン服薬指導システム

14億円

155.6%

33億円

3.7倍

オンライン診療(遠隔診療)システム/サービスは、医師や歯科医師がオンラインで施設外の患者に対して医師法などの範囲で診察や問診を行う、オンライン診療を支援するシステム/サービスを対象とする。遠隔画像診断などのような医師間でのシステム/サービスは含まない。

2015年に遠隔医療の要件が定められたことで市場が立ち上がり、2018年に一部疾患を対象に診療報酬が加算されたことで、保険診療によるオンライン診療が開始された。2020年は、初診診療の解禁と保険適用疾患の大幅な増加など、オンライン診療の要件が緩和されたことで市場が急拡大している。しかし、診療報酬が対面診療と比較して低いこともあり、オンライン診療の伸びは鈍化している。

現在、市場の拡大を阻害する要因の一つである対面診療と比較した際の診療報酬の低さが解消されれば、市場は拡大していくとみられる。

オンライン服薬指導システムは、薬剤師と患者をオンラインで結び、服薬指導を行うシステムである。

2019年9月の薬機法の改正に伴い市場が立ち上がり、2020年に新型コロナへの対応策として、9月の施行を前にオンライン服薬指導が可能となった。大手調剤薬局チェーンがニーズの受け皿となるために、全店舗での導入を進めており、市場は急拡大している。また、オンライン診療システムに紐づいていることから、異なるオンライン診療システムを導入する医療機関の患者に対応するため、調剤薬局が複数のオンライン服薬指導システムを導入するケースがみられることも、市場の伸びを後押ししている。

◆調査対象

広域医療連携システム関連

・広域医療/地域医療連携システム

・救急医療連携システム

院内基幹システム関連

電子カルテ

院内基幹システム

画像関連部門システム

・病院向け電子カルテ

・レセプトコンピュータ

・医療用画像管理システム(PACS)

・診療所向け電子カルテ

・オーダリングシステム

・放射線情報システム(RIS)

・精神科向け電子カルテ

・診療/検査予約システム

・循環器部門システム

・産婦人科向け電子カルテ

・オンライン資格確認システム

(Cardiology PACS)

・糖尿病特化型電子カルテ

(顔認証付きカードリーダー)

・内視鏡検査支援システム

・歯科向け電子カルテ

検査支援システム

その他部門システム

・眼科向け電子カルテ

・病理検査支援システム

・遠隔ICU支援システム/サービス

・クラウド型電子カルテ

(遠隔病理診断システムを含む)

・手術部門システム

 

・生理検査システム

・病院向け勤怠管理システム

 

・検体検査支援システム

(医師の働き方改革対応型)

 

 

・病院向け医薬品情報管理システム

地域包括ケアシステム関連

・地域包括ケアシステム/多職種連携システム

・電子クリティカルパス(電子パス)

・在宅医療(訪問診療)支援システム

・患者向け診療情報閲覧システム

・在宅/施設用見守り機器・システム

・ワクチン接種予約/管理システム

・ベッド一体型見守りシステム

 

電子お薬手帳・調剤薬局関連

・電子お薬手帳

・電子薬歴システム

・調剤薬局向けレセプトコンピュータ

(訪問薬剤管理指導支援・在宅医療業務システムを含む)

オンライン医療関連

・オンライン診療(遠隔診療)システム/サービス

・電子処方箋システム

・オンライン服薬指導システム

 


2022/01/21

上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。