PRESSRELEASE プレスリリース

第22050号

リチウムイオン二次電池の世界市場を調査
―2025年市場予測(2020年比)―
■リチウムイオン二次電池 12兆3,315億円 (84.1%増)
変わらず市場をけん引するxEV用は9兆円超まで拡大
伸び率高いESS/UPS/BTS用は1兆円突破
■リチウム二次電池(コイン) 1,696億円 (2.7倍)
ワイヤレスイヤホンの普及、補聴器向けでの一次電池からのシフトにより、拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、環境保護の観点からxEVが普及し、それに伴い拡大するリチウムイオン二次電池の世界市場を調査した。その結果を「2022 電池関連市場実態総調査 上巻 電池セル市場編」にまとめた。

この調査では、リチウムイオン二次電池をはじめとする二次電池と一次電池の市場、主要応用製品5品目における電池需要を捉えた。

◆注目市場

■リチウムイオン二次電池(LIB)の世界市場

 

2021年見込

2020年比

2025年予測

2020年比

xEV用

8兆1,780億円

184.2%

9兆3,890億円

2.1倍

小型民生用

1兆7,319億円

96.6%

1兆8,455億円

102.9%

ESS/UPS/BTS用

6,027億円

129.5%

1兆 970億円

2.4倍

合 計

10兆5,126億円

157.0%

12兆3,315億円

184.1%

LIBは二次電池の中で最もエネルギー密度が高く、小型化や高出力化に対応できる電池として、ニッケル水素電池や鉛蓄電池などから需要がシフトしている。EV最大の生産地・需要地である中国を中心とするEV需要の増加によりxEV用が伸びていることから、2021年の市場は前年比57.0%増の10兆5,126億円が見込まれる。

2025年の市場は12兆3,315億円が予測される。EVの開発計画が多数あり、自動車メーカーによるEVの販売目標の上方修正もみられることから、今後もxEV用が市場をけん引すると予想される。また、ESS/UPS/BTS用も二桁増を続け、2025年には1兆円突破が予測される。

[xEV用]

Teslaをはじめとする自動車メーカーのEV生産の拡大、環境規制と導入インセンティブによるEVの販売増加により、2021年の市場は前年比84.2%増が見込まれる。特に、中国における補助金政策の延長や、トラック・バスやタクシーなどの公共用車両でのEV導入がけん引している。また、フードデリバリーサービスでの利用が急増しているE-Bike/Scooterでは、需要の中心である中国で国家標準が改定され、バッテリーを含む車両重量が55kg以下と定められたことで、鉛蓄電池より重量が軽いLIBへシフトしている。

EVの開発計画も多数あり、自動車メーカーによるEVの販売目標の上方修正がみられることから、今後も市場は拡大していき、2025年の市場は2020年比2.1倍の9兆3,890億円が予測される。

[小型民生用(シリンダ型/角型/ラミネート型)]

2020年は、巣ごもり需要から電動工具や園芸工具が伸び、テレワークの普及からノートPC向けが伸びたことで、市場が拡大した。2021年はシリンダ型で前年に大きく伸びた反動がみられたが、2022年以降は再び拡大が予想される。

電池種別では、シリンダ型は電動工具や園芸工具、電動アシスト自転車などのモーターを駆動させるパワー用途が伸びている。また、コンシューマ・エレクトロニクス製品では、モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンでの需要も好調である。ラミネート型はコンシューマ・エレクトロニクス製品が中心で、スマートフォンやワイヤレスイヤホン向けが伸びており、ワイヤレスイヤホン向けでは小型化が進展している。角型はラミネート型へのシフトがみられる。

[ESS(電力貯蔵システム)/UPS(無停電電源装置)/BTS(無線基地局)用]

LIBは競合となる鉛蓄電池と比較すると長寿命であり、省スペース化が可能である。現時点では、UPSやBTSでは鉛蓄電池が主流であるが、ESSでは入出力特性に優れるLIBの採用が進んでいる。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電の増加により、家庭での発電電力の自家消費、発電事業者による系統安定化など幅広い用途で導入されており、市場は米国、中国、欧州での需要がけん引している。

米国ではカリフォルニア州で新築住宅での太陽光発電システムの設置が義務化されたことや、カリフォルニア州以外でも電力安定化や再生可能エネルギーの変動吸収などを目的とした発電事業者によるESS設置が義務付けられたことから、需要増加が期待される。また、中国では、BTSでも環境配慮・廃棄の観点から鉛蓄電池からLIBへの置き換えが加速している。欧州では、原子力発電所の閉鎖が予定されるドイツで家庭用電気料金が上昇しており、家庭用ESSが伸びているほか、イギリスでは家庭で5,000kW以下のESSを導入すると売電できる制度が2020年に開始され、今後の伸びが期待される。

米国、中国、欧州でESSの設置が進むことでESS/UPS/BTS用LIBの市場は拡大を続け、2025年には1兆円を突破すると予測される。

■リチウム二次電池(コイン)の世界市場

2021年見込

2020年比

2025年予測

2020年比

840億円

131.7%

1,696億円

2.7倍

コイン型のリチウム二次電池を対象とする。電圧、材料、内部構造などが異なるが、サイズや特徴が類似するコイン型のLIBも含む。

これまでの主な用途はノートPC、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどであり、機器の需要減少により、市場は低迷していた。2017年よりワイヤレスイヤホンで採用され、2019年に発売されたApple「AirPods Pro」で高単価電池が採用されたことから、ワイヤレスイヤホンの伸び以上に拡大しており、2020年には市場が前年比9.0倍と大幅に拡大した。2021年も市場は拡大を続けており、2025年には2020年比2.7倍の1,696億円が予測される。

今後もワイヤレスイヤホン向けが市場をけん引するとみられる。また、ウエアラブルデバイスで採用が期待され、ノイズキャンセリング機能や無線機能を搭載したデジタル補聴器では、高性能な反面、アナログ補聴器と比較して消費電力が大きく、現在使用されている空気亜鉛電池(一次電池)から、繰り返し利用できるリチウム二次電池(コイン)へのシフトが予想される。

◆調査結果の概要

 

2021年見込

2020年比

2025年予測

2020年比

二次電池

14兆7,953億円

141.8%

16兆6,556億円

159.6%

一次電池

1兆2,189億円

102.5%

1兆3,635億円

114.7%

合 計

16兆 141億円

137.8%

18兆 191億円

155.0%

※市場データは四捨五入している

二次電池は、xEV用LIBが市場拡大をけん引し、2020年には10兆円を突破した。2021年もLIBがけん引しており、市場の7割程度をLIBが占めるとみられる。引き続きxEV用が大きく伸び、2025年の市場は2020年比59.6%増の16兆6,556億円が予測される。

鉛蓄電池は、2019年時点で二次電池市場の4割程度を占めたが、LIBの大幅な伸びにより比率が低下している。2020年は自動車生産台数の大幅な減少がマイナス要因となったが、公共交通機関ではなく自家用車での移動が多くなったことでリプレース需要は旺盛であった。ニッケル水素電池は、LIBと比較し、低コスト、出力特性の高さ、安全性に対する高い信頼性などの観点から、HV向けが堅調である。

なお、市場拡大をけん引するのは自動車などの大型用途であるが、小型用途ではワイヤレスイヤホンの普及によりリチウム二次電池(コイン)が大きく伸びている。

一次電池は、アルカリマンガン乾電池が市場の7割程度を占めている。新興国の一部や途上国でのマンガン乾電池からアルカリマンガン乾電池へのシフトにより拡大し、2025年の市場は2020年比14.7%増の1兆3,635億円が予測される。このほか、リチウム一次電池はIoT関連需要で伸びが期待される。しかし、空気亜鉛電池は補聴器や集音器で二次電池へのシフトが急速に進んでおり、減少するとみられる。

◆調査対象

二次電池

・鉛蓄電池

・ニッケル水素電池(大型)

・ニッケル水素電池・ニカド電池(小型)

・リチウム二次電池(コイン)

 

LIB

・小型民生用

・xEV用

・ESS/UPS/BTS用

一次電池

・アルカリマンガン乾電池/アルカリ

・酸化銀電池

ボタン電池/マンガン乾電池

・空気亜鉛電池

 

リチウム一次電池

・二酸化マンガンリチウム電池(コイン)

・塩化チオニルリチウム電池

・二酸化マンガンリチウム電池(シリンダ)

 


2022/05/16
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