PRESSRELEASE プレスリリース

第22113号

熱可塑性エラストマー、合成ゴム 環境対応の機運が高まる世界市場を調査
―2027年予測(2021年比)―
■熱可塑性エラストマー、合成ゴムの世界市場  2,396万トン(21.1%増)
合成ゴムの主用途である自動車の生産台数の増加に伴って拡大
●S-SBRの世界市場【合成ゴム】  174万トン(32.8増)
世界的なEVシフトにより低燃費・高性能タイヤ用途の需要が増加

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、自動車部品を中心に使用され、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けた落ち込みから自動車生産台数が回復することにより、需要増加が期待される熱可塑性エラストマーと合成ゴムの世界市場を調査した。その結果を「2023年 高機能エラストマー&ゴム市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、熱可塑性エラストマー15品目、合成ゴム12品目、応用製品3品目について各品目の市場動向をまとめた。また合成ゴムでもリサイクル材料やバイオマス原料の活用機運が高まりつつあることから、リサイクル品/バイオマス品の現状や課題点、新規開発動向についても整理した。

◆調査結果の概要

■熱可塑性エラストマー、合成ゴムの世界市場

 


2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

熱可塑性エラストマー

480万トン

103.0%

577万トン

123.8%

合成ゴム

1,565万トン

103.4%

1,819万トン

120.2%

合 計

2,046万トン

103.4%

2,396万トン

121.1%

※市場データは四捨五入している

2020年の市場は新型コロナ流行の影響による世界的な生産活動の低迷を受けて縮小した。2021年は経済活動の再開によって需要が増加したことから、市場は前年比8.8%増と拡大した。また資源価格の高騰や物流のひっ迫によって製品価格が上昇した。2022年も同様の状況が続いており、市場は伸び悩んでいるものの、前年比3.4%増が見込まれる。

熱可塑性エラストマー(TPE)は、アスファルトや樹脂の改質剤、粘接着剤、各種成形品向けコンパウンドなどさまざまな用途に使われている。TPEのうちTPS各種(スチレン系のSBS、SIS、水添スチレン系エラストマーなど)は粘接着剤向けや日用雑貨品向けなどが多いことで需要が底堅く、中国や北米での需要増加によって伸びている。またオレフィン系各種やポリエステル系エラストマーなどは自動車の各種成型部品向けが多い。市場は新型コロナの影響から回復しつつあるが、2022年は自動車の生産台数が当初の計画を下回るとみられ、回復のスピードは鈍化するとみられる。

合成ゴムは自動車用タイヤが主な用途である。2021年は経済活動の再開により自動車やタイヤが増産されたことで合成ゴムの需要も増加した。特に低燃費タイヤに用いられるS-SBRの需要が旺盛である。世界的な自動車生産台数の増加や経済成長によって、合成ゴムの需要増加が期待される。2022年は原材料不足に加え輸送費や燃料費の高騰もあって需給バランスが不安定であり、製品価格が上昇しているが、2023年以降は需給バランスが安定することで製品価格が低下し、経済成長による需要増加に合わせて市場は拡大するとみられる。

◆リサイクル品/バイオマス品の動向

■リサイクル品

TPEは合成ゴムと比較してリサイクル性に優れており、ポスト・インダストリアル・リサイクル(PIR)材、ポスト・コンシューマ・リサイクル(PCR)材の利活用や再生事業者との連携などを通じて、リサイクル品の開発や製品化の機運が高まってきている。

合成ゴムは一般的にリサイクルが難しいとされ、ゴムメーカー(サプライヤー)からリサイクルグレードとして供給されることはほとんどなく、サーマルリサイクルを除き廃ゴムを活用してゴムを再生・製造するケースは限られる。現在スチレンモノマーやブタジエンモノマーを廃プラスチックから再生し合成ゴムの原料に活用する動きがあり、事業化が目指されている。

■バイオマス品

TPEは欧州の参入企業を中心にマスバランス方式を採用したエラストマー製品の開発・製品化が進んでいる。マスバランス方式はバイオマス原料と石油化学品などを混合して製造した製品のうち、バイオマス原料の使用量に相当する分をバイオマス原料100%、残りを石油化学品由来100%とみなす方式である。バイオマス原料への転換は技術的に困難であり、設備投資などの負担もあるが、マスバランス方式の導入によりハードルを下げ、バイオマス原料の使用を促進する効果があるとされる。2020年代に入り日本でもマスバランス方式を導入したバイオマス由来成分を配合した製品・グレード群が登場している。

合成ゴムでもバイオマス品が増加している。日本市場ではバイオマスナフサやバイオマスブタジエンなど、上流原料を海外市場から調達し生産したマスバランス方式に対応したグレードが登場している。

リサイクル品、バイオマス品ともに、100%石油化学品よりもコストがかかり、コスト転嫁の余地が少ない用途ではブランドオーナーなどの意識により採用が左右されることや、トレーサビリティの確保について整備が必要であることが今後への課題として挙げられる。

◆注目市場

●スチレンブタジエンゴム(SBR)【合成ゴム】

 

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

E-SBR

601万トン

102.0%

676万トン

114.8%

S-SBR

137万トン

104.6%

174万トン

132.8%

合 計

738万トン

102.5%

850万トン

118.1%

天然ゴムの代用として開発された合成ゴムであり、製造方法の違いによりE-SBR(乳化重合スチレンブタジエンゴム)とS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)に分けられる。用途は自動車用タイヤを主体とし、そのほかに工業用品樹脂改質で用いられる。タイヤは生産本数のうち多くがリプレイスメントタイヤであるため、市場は自動車生産台数の影響を受けにくいという特性がある。近年はS-SBRが低燃費・高性能タイヤに使用されて伸びている。

E-SBRは主に汎用タイヤに使われるほか、履物、ベルト、ホースなどの多用途で用いられている。タイヤ向けは自動車のEVシフトにより細かいポリマー設計が容易で高性能化が図れるS-SBRへの切り替えが進むため、日本市場は2025年ごろからマイナスに転じると予想される。世界市場は海外において低燃費タイヤと並行して汎用タイヤ向けも増加するとみられ、堅調な伸びが予想される。

S-SBRは低燃費タイヤ向けに使用される。近年欧米や日本、一部のアジア地域で急速に浸透したことから、E-SBRを上回るペースで伸びてきた。今後は世界的な脱炭素の流れを受けて低燃費タイヤの需要は中国やロシアなどへ普及していくとみられ、2027年の市場は2021年比32.8%増が予想される。S-SBRは日系メーカーが先行していたが、海外メーカーが低価格品を投入したことにより、特にローエンド市場は価格競争が激化している。今後は自動車の動力源や形態が増えることにより、多様化するニーズへの対応力やハイエンド品への開発が重要になるとみられる。

●架橋型オレフィン系エラストマー(TPV)【熱可塑性エラストマー】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2021年比

32万トン

103.2%

41万トン

132.3%

自動車部品および建築・土木分野での需要が多く、中でも自動車のウェザーストリップ(シーリング材)が主な用途であるため自動車生産台数の影響を大きく受ける。新型コロナの流行による経済の停滞から回復し、2021年以降は市場拡大が続いている。近年は成型加工性の向上やコストダウンのため、エチレンプロピレンゴム(EPDM)からの切り替えが進んでいる。今後、自動車生産台数が本格的に復調することにより市場はさらなる拡大が期待される。

世界市場では中国が最大の需要国であり、自動車生産台数の増加や建材用の需要増加によって拡大している。中国やインドにおいてエアバッグカバーの搭載率が上がっていることや、側部へのエアバッグ搭載を義務付ける法令が施行されたことで長期的に需要が増加していくと予想される。また北米ではEPDMからの代替や内装表皮材向けで切り替えの余地が残されており、今後の成長が期待される。

日本市場は主要用途である自動車部品用途でEPDMからの切り替えはほぼ完了しているため、自動車生産台数の動向に大きく影響される。自動車のほかには建材で目地などのシーリング用途で底堅い需要を獲得している。

◆調査対象

熱可塑性

エラストマー

(TPE)

スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロックコポリマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロックコポリマー(SIS)、水添スチレン系エラストマー(ニートポリマー)、水添スチレン系エラストマー(コンパウンド)、単純ブレンド型オレフィン系エラストマー(s-TPO)、架橋型オレフィン系エラストマー(TPV)、重合型オレフィン系エラストマー(RTPO)塩ビ系エラストマー(TPVC)、塩素化ポリエチレン系エラストマー(CPE)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPC)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)、α-オレフィンコポリマー、アクリル系エラストマー、バイオマス系エラストマー

合成ゴム

スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM・FEPM)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(TSU)

応用製品

タイヤ、EV用エラストマー・ゴム、医療器具

※網掛けの品目は日本市場のみを対象としている
※バイオマス系エラストマー、EV用エラストマー・ゴムは市場規模を算出していない


2022/10/28
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