PRESSRELEASE プレスリリース

第23047号

感光性樹脂材料とその原材料の世界市場を調査
―2027年予測(2022年見込比)―
■感光性樹脂材料の世界市場  50万4,220.2トン(17.1%増)
半導体向けや有機EL向けなど電子材料が全体をけん引
●有機EL用シール材(UV硬化型)の世界市場  91.0トン(82.0%増)
スマートフォンでプラスチックAMOLEDの採用が増え、封止材として需要が増加

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、新型コロナウイルス感染症流行による市況悪化や、半導体市場の変調により見通しが不透明ではあるものの、半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)、印刷、建築、自動車など幅広い分野に使われ、中長期的に需要の増加が予想される感光性樹脂材料とその原材料の市場を調査した。その結果を「2023年 光機能材料・製品市場の全貌」にまとめた。

この調査では、感光性樹脂材料26品目、原材料19品目について用途、参入企業、価格、技術などの視点で最新の動向を調査し今後の市場を展望した。また、高機能材料市場におけるカーボンニュートラル対策の現状や技術的な課題などの最新動向もまとめた。

◆調査結果の概要

●感光性樹脂材料の世界市場

※UV硬化塗料・コーティング材(化粧品容器用)、同(建材用)、感光性樹脂版(レタープレス)は含まない

2022年は、UV/EB硬化型インキ、印刷面用UV/EB硬化型ニスなどの印刷関連材料は伸びたが、それ以外の分野が前年を下回り、市場は前年比2.8%減の43万488.7トンが見込まれる。原材料価格高騰により前年から続いて値上げが行われたことで金額ベースでは拡大するとみられる。

今後は半導体向けの半導体用フォトレジストや再配線形成材料、有機EL向けの有機EL用絶縁膜材料、有機EL用シール材(UV硬化型)などの需要が増加し、電子材料がけん引して市場は拡大していくとみられる。

電子材料は、半導体関連の半導体用フォトレジストや有機EL向けが拡大する一方、FPD関連のTFT形成用レジストなどは前年までの巣ごもり需要の一服や、需要の先食いに伴うLCDパネルの在庫調整で苦戦したため、2022年は縮小するとみられる。

2023年は苦戦していたFPD関連のレジストの需要が回復に向かい、各品目が伸びることで市場は拡大するとみられる。規模の大きい半導体用フォトレジストは成長が続くが、スマートフォン市場の停滞などによる需要減退のため成長は鈍化すると予想される。

塗料・コーティング材は、規模の大きいUV硬化塗料・コーティング材(エレクトロニクス用)がフィーチャーフォンやスマートフォンの出荷台数減少の影響で苦戦し、2022年の市場は前年を下回るとみられる。

今後はUV硬化塗料・コーティング材(自動車用)やフィルム用ハードコーティング材の伸びが予想される。UV硬化塗料・コーティング材(エレクトロニクス用)は5G通信への切り替え需要や折り畳み型スマートフォンへの関心の高まりで伸びるが、2020年代半ばごろからはスマートフォン市場の飽和により再びマイナスに転じると予想される。

印刷関連材料は、世界各地の経済成長や人口増加に伴って紙パッケージやシール・ラベル、サイン・ディスプレイなどで需要が増加している。2023年は欧州や北米経済の減速が伸びを阻害するとみられるものの、拡大が続くと予想される。

3Dプリント用UV硬化型樹脂は医療・歯科や産業機械、自動車といった幅広い分野で需要増加が予想されるほか、UVナノインプリント材料はMRスマートグラス向けなどXR(AR/VR/MR)関連で大幅な需要増加が期待される。

粘接着剤は、LCD(液晶ディスプレイ)やスマートフォン、タブレット端末向けが主体であるため、2022年はこれらの需要が減少したことによって市場は縮小するとみられる。2023年以降はLCD市場の回復や車載関連での需要増によって拡大していくとみられる。

●原材料の世界市場

※水系UV樹脂、光増感剤、オキセタンは含まない

モノマー・オリゴマー市場は塗料やレジストなどで使われるアクリレートモノマーの規模が大きい。2022年はニスやインキ向けが増加したが、ディスプレイ市況の悪化でレジストを始めとした電子材料向けが減少したため、市場は一時的に縮小するとみられる。

メタクリレートモノマーやエポキシアクリレートは電子材料向けが多く、今後はエレクトロニクス関連での需要増加によって伸び、アクリレートモノマーもインキなどでの需要に支えられて市場拡大が続くとみられる。

レジストポリマー市場は中国のパネルメーカーの工場稼働率低下によりFPD向けのg/i線レジスト用ポリマーの需要が減少したため2022年は縮小したが、2023年以降はFPD向けが上向き、拡大していくとみられる。

EUVレジスト用ポリマーは市場規模が小さいものの、価格が高いことから金額ベースの市場の伸びに貢献している。EUVレジストのユーザーが微細化を進めているため、今後はEUVレジスト用ポリマーが最も伸長するとみられる。

添加剤市場は光重合開始剤がほとんどを占める。光重合開始剤は主にインキや塗料・コーティング材に用いられ、これらは世界各地で需要が増加していることから今後も伸びが続くとみられる。また市場規模の小さい光酸発生剤も各種レジストの伸びに伴い、中長期的に伸長していくと予想される。

◆注目市場

●有機EL用シール材(UV硬化型)【感光性樹脂材料/電子材料】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2022年見込比

50.0トン

111.1%

91.0トン

182.0%

有機EL用シール材は酸素や湿気に弱い有機EL素子に対して、外部からのガス・水蒸気の侵入を防ぐ役割を果たす重要な構成材料である。プラスチックAMOLEDパネルの大手企業が存在する韓国のほか、中国の需要も大きい。

有機EL用シール材の使用は、スマートフォン向けディスプレイで採用が増えているプラスチックAMOLEDの標準的な封止手法となっており、2020年代の半ばから後半にかけてスマートフォン全体のうち4割程度がプラスチックAMOLEDに切り替わると予想されるため、プラスチックAMOLED向けの増加により市場が拡大していくとみられる。また、Appleが2020年代半ばから折り畳みディスプレイ搭載のスマートフォンを市場に投入するとの見方もあり、拡大を後押しすると期待される

●3Dプリント用UV硬化型樹脂【感光性樹脂材料/印刷関連材料】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2022年見込比

1,970.0トン

107.7%

3060.0トン

155.3%

STL方式やマテリアルジェットモデリング方式の3Dプリントで採用されているUV硬化型樹脂・インキを対象とする。通常、3Dプリンターメーカーが専用品または認定品として販売している。3Dプリント用UV硬化型樹脂を用いた3Dプリント成形品は寸法精度、高精細、意匠性などの特徴を有することから、工業部品の試作品、治具、歯科材料などで使われている。

2022年は、工業、自動車産業の回復に加え、歯科材料における需要が堅調であるため、市場は前年比7.7%増の1,970.0トンが見込まれる。特に歯科材料では3Dプリント成形品が、精度の高さに加え、作業時間・コストの削減にも繋がるため、欧米で広く使われていることから、メーカーも需要増加を受けて用途に適した樹脂の開発に注力している。

2023年以降も、医療・歯科や産業機械、自動車、航空宇宙などの分野で金型製作・精密材料加工の需要が増加することによって市場は拡大が続くとみられる。

●再配線形成材料【感光性樹脂/電子材料】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2022年見込比

260.0トン

104.0%

459.0トン

176.5%

半導体向けの材料であり、フリップチップパッケージやWLP(ウエハーレベルパッケージ)、PLP(パネルレベルパッケージ)においてバンプ用パッシベーション層および再配線用絶縁材料として、主に感光性のポリイミドやポリベンゾオキサゾールが使用される。

2022年は、スマートフォンなど用途先の需要停滞によって市場の伸びが抑制され前年比4.0%増にとどまると見込まれる。なお、原材料価格高騰による単価上昇により金額ベースは10%以上の成長になるとみられる。

2023年は、下期には各種電子機器の需要回復が予想されるため、市場は拡大が予想される。長期的にも、先端パッケージの需要増加に伴って伸長し、2027年は2022年見込比76.5%増が予測される。

●アクリレートモノマー【原材料/モノマー・オリゴマー】

2022年見込

2021年比

2027年予測

2022年見込比

28万4,500.0トン

97.0%

32万1,600.0トン

113.0%

官能基にアクリロイル基を持つモノマーであり、アクリレートモノマーに光重合開始剤などを加えたアクリレートモノマー化合物はインキや塗料、レジストなどの幅広い用途で用いられている。

2022年は、前年から継続してユーザーの在庫積み増しにより、上期は需要増が続いた。しかし、下期は一定の在庫が積みあがったことに加え、中国でのロックダウンや欧州の経済停滞によって市況が大幅に悪化したため、市場は前年比3.0%減が見込まれる。一方、販売価格が上昇したことで金額ベースでは拡大するとみられる。

2023年は、民生機器をはじめとした各種製品の需要が徐々に回復し、市場は前年を上回ると予想される。なお原材料価格や物流費の低下によって販売価格が低下し、金額ベースはマイナスになるとみられるが、今後市場は金額、数量ベースともに拡大が予想される。

現在、植物由来の原料を用いたアクリレートモノマーの開発が進められている。コスト面の問題から採用は限定的であり、将来的にも石化由来製品との価格差が縮まることは困難とみられるため、市場拡大にはインクジェットインキや3Dプリント樹脂向けなど、付加価値の高い用途での採用増加が必要となる。

◆調査対象

感光性樹脂材料

電子材料

・半導体用フォトレジスト

・ブラックレジスト

・有機EL用シール材

 

・バッファーコート膜材料

・カラーレジスト

(UV硬化型)

 

・再配線形成材料

・有機EL用絶縁膜材料

・ドライフィルムレジスト

 

・TFT形成用レジスト

 

・液状ソルダーレジスト

塗料・コーテ

・UV硬化塗料・コーティン

・UV硬化塗料・コーティン

・フィルム用ハードコーテ

ィング材

グ材(自動車用)

グ材(化粧品容器用)

ィング材

 

・UV硬化塗料・コーティング材

・UV硬化塗料・コーティン

 

 

(エレクトロニクス用)

グ材(建材用)

 

印刷関連材料

・印刷面用UV/EB硬化型ニス

・3Dプリント用UV硬化型樹脂

・感光性樹脂版

 

・UV/EB硬化型インキ

・UVナノインプリント材料

(フレキソ・液状)

 

・UV/EB硬化型インク

・感光性樹脂版

・感光性樹脂版

 

ジェットインキ

(フレキソ・固体状)

(レタープレス)

粘接着剤

・UV硬化型接着剤

・OCA

・OCR

原材料

モノマー・

・アクリレートモノマー

・ポリエステルアクリレート

・脂環式エポキシ

オリゴマー

・メタクリレートモノマー

・シリコンアクリレート

・ビニルエーテル

 

・ウレタンアクリレート

・ポリマーアクリレート

・オキセタン

 

・エポキシアクリレート

・水系UV樹脂

・アダマンタン誘導体

レジスト

・g/i線レジスト用

・KrFレジスト用ポリマー

・EUVレジスト用ポリマー

ポリマー

ポリマー

・ArFレジスト用ポリマー

 

添加剤

・光重合開始剤

・光酸発生剤

・光増感剤

※網掛けの品目は日本市場のみを対象とする。下線付きの品目は市場規模を算出していない。


2023/04/21
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。