PRESSRELEASE プレスリリース
●自己免疫関連治療剤 1兆1,267億円(27.7%増)
生物学的製剤やTYK2 阻害剤の開発や適応拡大で成長
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、生物学的製剤やJAK阻害剤の新薬発売、既存治療剤の適応拡大で好調が続く自己免疫関連治療剤や、免疫疾患治療剤、消化器科疾患治療、整形外科領域、皮膚科領域、アレルギー疾患治療剤・呼吸器疾患治療剤の医療用医薬品市場を調査した。その結果を「医療用医薬品データブック 2024 No.1」にまとめた。
この調査では、対象とした5分野の最新の市場をまとめるとともに、各分野の中で自己免疫疾患に対する品目を自己免疫関連治療剤として集計、分析し将来を展望した。
◆注目市場
●自己免疫関連治療剤(生物学的製剤やJAK阻害剤など)
全身性エリテマトーデス治療剤(SLE)、炎症性腸疾患治療剤、関節リウマチ治療剤、強直性脊椎炎治療剤・若年性特発性関節炎治療剤、アトピー性皮膚炎治療剤、乾癬治療剤、脱毛症治療剤、喘息治療剤・COPD治療剤を対象とする。近年は「リンヴォック」(アッヴィ)、「オルミエント」(日本イーライリリー)などのJAK阻害剤の発売や、治療剤の適応拡大で市場成長が続いている。
炎症性腸疾患領域でTYK2阻害剤の開発が進んでいることや、喘息・COPD領域で「デュピクセント」(サノフィ)がCOPD適応となったこと、グラクソ・スミスクライン、アストラゼネカなどが新たな生物学的製剤の開発を進めていることが好材料であり、適応拡大や開発中の新薬の上市により、今後も市場拡大が続くとみられる。懸念事項としては、関節リウマチや炎症性腸疾患領域で、バイオシミラーが発売される事による影響などがあげられる。
市場は患者数が多い関節リウマチ治療剤と喘息治療剤・COPD治療剤の規模が大きい。関節リウマチ治療剤は、2020年にバイオシミラーや薬価引き下げの影響で縮小したが、生物学的製剤やJAK阻害剤の好調により2021年以降は拡大してきた。将来的には生物学的製剤でもバイオシミラーが登場するとみられ、2029年以降は縮小していくと予想される。
喘息治療剤・COPD治療剤は、生物学的製剤の「ヌーカラ」(グラクソ・スミスクライン)や「デュピクセント」の伸びによって近年拡大が続いている。 アトピー性皮膚炎治療剤は2018年の「デュピクセント」発売以降、生物学的製剤やJAK阻害剤などの新薬発売が活発で拡大している。これらの治療剤は、外用副腎皮質ステロイド剤が中心であった市場に対し、新たな治療選択肢として需要を獲得してきた。今後は薬価の高い生物学的製剤やJAK阻害剤の開発品が控えており、成長が続くとみられる。
◆調査結果の概要
●皮膚科領域
2018年のアトピー性皮膚炎治療剤「デュピクセント」の発売以降、生物学的製剤やJAK阻害剤などの新薬が発売され、市場をけん引している。アトピー性皮膚炎治療剤は、それまでは外用副腎皮質ステロイド剤が中心であったため、新たな選択肢として需要を獲得している。アトピー性皮膚炎治療剤や乾癬治療剤の開発品が複数あり、生物学的製剤やJAK阻害剤などの発売や適応拡大により、今後も市場成長が続いていくとみられる。
●アレルギー疾患治療剤・呼吸器疾患治療剤
喘息治療剤・COPD治療剤と抗アレルギー剤で市場の8割を占める。喘息治療剤・COPD治療剤では複数の適応症を持つ「ヌーカラ」や「デュピクセント」などの生物学的製剤が市場をけん引している。抗アレルギー剤はスギ花粉の飛散状況に影響され、2024年は新型コロナウイルス感染症の第5類移行から初めての花粉症流行シーズンとなり、需要の揺り戻しが期待される。
●免疫疾患治療剤
規模の大きい免疫抑制剤が、薬価引き下げやジェネリック医薬品への移行などで縮小していき、2033年は2023年比8.6%減の587億円が予測される。一方、全身性エリテマトーデス治療剤が新薬の発売、参入企業による患者の掘り起こしで拡大しており、今後も好調が予想される。全身性エリテマトーデス治療剤は開発品も多く、2025年以降は複数企業が新規参入するとみられ、動向が注目される。
●消化器疾患治療剤
「ネキシウム」(アストラゼネカ)、「レミケード」(田辺三菱製薬)、「ヒュミラ」(アッヴィ)などの先発品がジェネリック医薬品の影響を受けており、2023年の市場は縮小した。炎症性腸疾患領域でJAK阻害剤や生物学的製剤が伸びることで2025年以降市場が拡大するとみられる。しかし2030年以降は「ステラーラ」(田辺三菱製薬)など既存有力製品のバイオシミラーが登場し、市場は縮小に転じると予想される。
●整形外科領域
規模の大きい骨粗鬆症治療剤の、「エディロール」(中外製薬)や「フォルテオ」(日本イーライリリー)がジェネリック医薬品の影響で減少している。2023年は関節リウマチ治療剤の「リンヴォック」などJAK阻害剤の伸びなどから市場が拡大したが、2024年は再び縮小するとみられる。
◆調査対象
自己免疫関連治療剤(生物学的製剤・JAK阻害剤など)※各分野のうち、以下の品目の集計
・全身性エリテマトーデス治療剤(SLE)
・炎症性腸疾患治療剤 (潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病)
・関節リウマチ治療剤
・強直性脊椎炎治療剤・若年性特発性関節炎治療剤、
・アトピー性皮膚炎治療剤 (外用副腎皮質ステロイド剤含む)、
・乾癬治療剤
・脱毛症治療剤
・喘息治療剤・COPD治療剤
免疫疾患治療剤
・免疫抑制剤
・全身性エリテマトーデス治療剤(SLE)
消化器科疾患治療剤
・消化性/薬物性潰瘍等治療剤・H.pylori関連剤
・胃食道逆流症等治療剤
・過敏性腸症候群治療剤・機能性ディスペプシア治療剤
・炎症性腸疾患治療剤 (潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病)
・腸疾患治療剤・便秘症治療剤・消化器官改善剤
・その他肝疾患治療剤(肝性脳症治療剤含む)
・膵疾患治療剤・胆道疾患治療剤
整形外科領域
・関節リウマチ治療剤
・強直性脊椎炎治療剤・若年性特発性関節炎治療剤
・骨粗鬆症治療剤
・変形性関節症治療剤
皮膚科領域
・アトピー性皮膚炎治療剤 (外用副腎皮質ステロイド剤含む)
・乾癬治療剤
・脱毛症治療剤
・外用抗菌剤(にきび、爪白癬処方分は除く)
・にきび治療剤
・爪白癬治療剤
・皮脂欠乏症治療剤・皮膚軟化剤
・その他皮膚治療剤(鎮痒剤、痔疾患治療剤、皮膚潰瘍治療剤、褥瘡治療剤、多汗症治療剤)
アレルギー疾患治療剤・呼吸器疾患治療剤
・抗アレルギー剤(点眼剤、外用剤は除く、アレルゲン免疫療法剤含む)
・特発性肺線維症治療剤
・喘息治療剤・COPD治療剤
・その他呼吸器疾患治療剤(鎮咳・去痰剤、呼吸促進剤、禁煙補助剤)