PRESSRELEASE プレスリリース

第21043号

5兆円規模まで拡大する燃料電池システム世界市場 (2030年度予測)
~スタックの多用途展開により、多様なモビリティの電動化の進展に期待~
―2030年度市場予測(2019年度比)―
トラック・バス用 1兆6,028億円(33.8倍) /FCV 2兆1,110億円(44.7倍)

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、直近ではトラック・バス用の大幅な伸び、燃料電池車(FCV)での新型車種の発売があり、今後はモビリティのゼロエミッション化の実現に向け各国で普及が期待される燃料電池システムの世界市場を調査した。その結果を「2020年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめた。

この調査では、燃料電池システム市場を用途別、エリア別、タイプ別に捉え、PEFCとSOFCのスタックや主要部品についても現状を把握し、将来を予想した。

◆調査結果の概要

■燃料電池システムの世界市場

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

3,278億円

122.1%

4兆9,581億円

18.5倍

2020年度の市場は前年度比22.1%増の3,278億円が見込まれる。

最も規模が大きいのは産業・業務用であり、市場の30%以上を占める。米国では導入による法人税の控除が受けられること、韓国では発電事業者が一定割合を再生可能エネルギーや燃料電池などの新エネルギーで発電することが義務付けられていることから、普及が進んでいる。2020年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響により施工が遅れたことで減少するが、2021年度は施工の遅れが解消されることに加え、韓国では堅調な需要が続き、米国では控除終了前の駆け込み需要が想定されることから、伸びが予想される。

家庭用は日本を中心に普及している。日本では新型コロナウイルス感染症流行の影響により2019年度末の導入が滞ったが、2020年度に実績が上乗せされ伸びている。しかし長期的には、補助金の減額などにより、伸びは緩やかになるとみられる。

最も伸びが高いのはトラック・バス用であり、前年度比71.3%増が見込まれる。長距離・大型車両は燃料電池の導入メリットが大きいことに加え、トラック・バスは決まったルートを移動することが多いことから水素インフラの整備を効率的に進められるため、モビリティの中でいち早く普及していくと予想される。

燃料電池システムはスケールメリットによるコスト削減の余地が大きく、2025年度からは各用途で普及に伴うコスト低減により徐々に補助金依存からの脱却が進み、2030年度の市場は2019年度比18.5倍の4兆9,581億円が予測される。

長期的にはFCトラック・バスに加え、FCVがけん引するとみられる。モビリティのゼロエミッション化を実現する手段の一つとして、各国の長期的な普及政策により水素インフラの整備とともに、急速な拡大が予想される。また、スタックの多用途展開による多様なモビリティの電動化の進展も期待される。

■燃料電池システムの注目分野市場

[トラック・バス用]

 

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

全体

812億円

171.3%

1兆6,028億円

33.8倍

 

アジア

630億円

155.6%

1兆2,390億円

30.6倍

 

欧州

108億円

2.9倍

2,190億円

59.2倍

※アジア、欧州は全体の内数

2020年代に欧州で引き上げられるCO2排出規制への対応を見据え、複数のメーカーが大型FCトラック・バスの開発を進めている。FCVより先にFCトラック・バスの普及を進めている中国と欧州のウェイトが高い。

FCバスは、日本を含め世界各国で運用が始まっている。欧州では10ヵ国が参加するフリート実証が進んでおり、北米ではカリフォルニア州が2040年度までに州内の路線バスのゼロエミッション化を目標としている。

大型トラックは商用車のCO2排出量の6割を占めており、欧州の規制強化により大幅な低減が必要となることから、FCトラック化が進められている。

中国ではスタックを調達してシステム化するFCシステムメーカーが10社以上あり、徐々にスタックの国産化が進んでいることから、今後も市場をけん引していくとみられる。なお、日本でもFCトラック・バスの普及に向け実証規模の拡大やメーカーの新規参入が増えており、市場拡大の環境が整いつつある。

[燃料電池車(FCV)]

 

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

全体

570億円

120.8%

2兆1,110億円

44.7倍

 

日本

30億円

88.2%

4,038億円

118.8倍

 

アジア

393億円

137.9%

6,794億円

23.8倍

※日本、アジアは全体の内数

FCVは、乗用車を対象とする。

2020年度は、日本では東京五輪の開催延期に伴うFCV採用の先延ばしにより減少するが、韓国で補助金などの導入支援を追い風に「NEXO」(現代自動車)の販売が伸びており、市場は拡大するとみられる。

2020年12月には混載ラインでも生産可能な新型「MIRAI」(トヨタ自動車)が投入されており、2020年代前半には新型「MIRAI」の欧州展開開始、現代自動車による日本展開開始、欧州や中国の自動車メーカーによるFCVの投入などが予想され、市場は拡大を続けるとみられる。一方、燃料電池や高圧水素タンクが高価であること、インフラ面では水素ステーションの整備が課題となっており、まずは社用車や公用車、タクシー、カーシェアリングなどフリートユーザーの採用が先行するとみられる。

2025年度以降は、世界的な脱炭素化の動きと環境規制などの各種政策に加え、先行してトラック・バスの普及を進める中国も含め、FCVの量産技術・量産体制が確立されることにより、徐々にスケールメリットが現れ始め、政府の補助金や支援策から自立した市場が形成されていくとみられる。なお、日本では、HVとの価格差を現状の300万円程度から、2025年度頃に70万円程度まで縮小するという目標値が掲げられている。

■燃料電池スタックの世界市場

 

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

PEFC

282億円

121.6%

7,749億円

33.4倍

SOFC

129億円

81.6%

282億円

178.5%

合 計

411億円

105.4%

8,031億円

20.6倍

燃料電池スタックの世界市場は2020年度で411億円が見込まれる。

PEFCは、市場が家庭用から立ち上がったが、現在ではFCV、トラック・バス、フォークリフトなどモビリティ分野が中心である。トヨタ自動車や現代自動車などFCVの量産化を進めるメーカーが、燃料電池スタックの用途開拓を進めており、今後はトラック・バスやFCV向けの拡大とスタックのコスト低減が進むことで、その他のモビリティ分野での採用も広がるとみられる。

中国では、中核技術の獲得のために外資系企業との合弁が行われていたが、部品の品質や部材メーカーの技術力が向上したことで、中国のスタックメーカーやシステムメーカーは、中国製部品による内製化を進めている。

SOFCは、発電効率の高さから定置分野を中心に採用されている。一方、モビリティ分野では、作動温度が750℃から1,000℃と高温なため、研究開発レベルにとどまっている。量産技術の確立やセルスタックの設計、材料開発によりコストの低減が図られており量産メーカーは限定的であるものの、今後600℃前後の低温作動化が可能となるメタル支持型スタックの量産化が進むことで、参入プレイヤーの増加が期待される。

◆調査対象

燃料電池システム市場

 

 

・産業・業務用

・燃料電池車(FCV)

・産業用車両

・ポータブル/バック

・家庭用

・トラック・バス用

・その他駆動用

アップ用

スタック部品市場

 

 

PECFスタック

・電極材

・電解質

・セパレーター

・GDL

SOFCスタック

・電極材(アノード)

・電極材(カソード)

・電解質

・金属インターコネクター

(金属IC)


2021/04/13
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。