PRESSRELEASE プレスリリース

第22121号

自動車向け二次電池の世界市場を調査
―2050年予測(2021年比)―
■駆動用二次電池の世界市場 63兆5,971億円( 8.7倍)
欧州、北米、中国が拡大けん引。欧州・北米ではリチウムイオン電池の生産体制強化も進む

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、各国で強化される燃費規制や排出ガス規制への対応のため、EVシフトの加速が予想される中、メーカーが積極的な投資を進めている自動車向け二次電池の世界市場を調査した。その結果を「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2022 電動自動車・車載電池分野編」にまとめた。

この調査では、自動車市場と自動車に搭載されるリチウムイオン電池(LiB)や次世代電池(全固体電池など)といった二次電池の市場を明らかにし、EVシフトを加速させる世界各国の補助金政策、燃費規制などもあわせて整理した。

◆調査結果の概要

■自動車向け駆動用二次電池の世界市場

 

2022年見込

2021年比

2050年予測

2021年比

日本

5,911億円

188.5%

3兆4,721億円

11.1倍

欧州

4兆4,104億円

2.1倍

19兆8,909億円

9.4倍

北米

2兆 104億円

197.5%

16兆8,733億円

16.6倍

中国

6兆8,568億円

196.4%

12兆9,820億円

3.7倍

その他

8,160億円

2.1倍

10兆3,787億円

26.1倍

合 計

14兆6,847億円

2.0倍

63兆5,971億円

8.7倍

※エリア別市場は需要地(電池の販売先となる自動車の生産地)で区分した
※市場データは四捨五入している

米国カリフォルニア州のZEV規制や中国のNEV規制など各国で強化される燃費規制や排出ガス規制、欧州各国などのガソリン/ディーゼルエンジン搭載車両の販売禁止措置への対応のため、主要自動車メーカーはEVを中心とした走行時の環境特性に優れる自動車の積極的な販売・投入を進めている。今後、xEVの需要増加に伴い、駆動用として自動車に搭載される二次電池市場は急拡大が予想される。

駆動用二次電池市場は、中国、欧州に次いで、2021年に北米が1兆円を超える市場となった。2022年の市場はxEVの伸びに伴い、前年比2.0倍の14兆6,847億円が見込まれる。市場はEVの普及がいち早く進んでいる中国がけん引しており、2025年には中国市場は10兆円を超えるとみられる。EV向けLiBを中心に今後も旺盛な需要が期待され、2035年は2021年比5.0倍の36兆6,037億円が予測される。

長期的には、xEVの生産拡大が予想されることから電池メーカーが積極的な投資を進めている欧州や北米がけん引し、2050年の市場は2021年比8.7倍の63兆5,971億円が予測される。電池種別には、LiBがけん引しているが、2035年以降、次世代電池の採用が本格化し、2050年に向けて次世代電池の比率は上昇していくとみられる。

[エリア別動向]

日本では、EVよりもHVの比率が高く、二次電池市場は現状では限定的である。長期的には、政府が乗用車における新車販売でのxEV化を目指す方針を示している。日本で生産される輸出向け自動車も含め、HVやPHVなどのエンジン搭載車向けを中心に駆動用二次電池市場の拡大が予想される。

欧州では、2025年以降PHVを含むエンジン搭載車両の販売禁止を計画するノルウェーをはじめ、主要国においてxEV化が加速することで、主要自動車メーカーによる欧州でのxEVの生産が進むとみられる。これにより二次電池市場は大きく拡大し、2035年には最大の需要地となり、2050年には20兆円近い規模が予測される。

北米では、xEVの投入モデルが少ないピックアップトラックの需要が大きいことから、現状では日本や欧州に比べxEV化率が低く、マイルドハイブリッド自動車(MHV)、HV、PHVを欧州や日本などから輸入している。長期的には、Teslaに加え、大手自動車メーカーがEV生産を計画していることから、2050年には15兆円を超える規模まで市場拡大が予測される。

中国では、補助金やナンバープレートの優遇発行などの支援政策によってxEV最大の需要地となっており、二次電池市場の拡大をけん引している。中国LiBメーカーがセルtoパックやセルtoシャシーといった電池のモジュールレス化、セルの大型化によるパック加工コストの低減などの取り組みを強化しており、コスト低下が進んでいくとみられる。

その他には、ASEAN・東アジア、インドなどが含まれる。ASEAN・東アジアはタイやインドネシアでxEVが量産されている。また、インドでは、小型自動車に強い日系メーカーが生産体制を整えており、中期的には南アジア向けや中東向けのxEV生産のハブとして機能することが期待されている。このため、長期的には二次電池市場の大幅な伸びが予想される。

■自動車向け補機用二次電池の世界市場

2022年見込

2021年比

2050年予測

2021年比

2兆896億円

107.4%

1兆9,376億円

99.6%

補機用電池は、内燃自動車(ICEV)、アイドリングストップ自動車(ISSV)および12V系MHVはスターター始動用、48V系MHVやHV、PHV、EVおよびFCVには電池システム(ECU)起動用として搭載される。

新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、2020年は自動車の需要が大幅に減少したが、以降回復に向かっていることから、2021年の市場は拡大し、2022年は前年比7.4%増の2兆896億円が見込まれる。

電池種別では、主流の鉛電池は新車向けが他電池の採用などにより減少していくものの、信頼性や低価格性などから更新需要を一定規模維持していくとみられる。LiBは、現時点での採用は限定的である。しかし、欧州ELV指令における鉛電池の適用免除の審議結果次第であるが、需要急増も想定される。2020年代後半からの本格的な市場立ち上がりを見据え、メーカー各社が生産能力の増強を進めていることから、EVなどでの採用が進むことで大幅に伸び、今後の市場をけん引していくとみられる。

電池容量は、スターター始動用でICEVは500Wh程度であり、ISSVや12V系MHVはそれより1割~2割程度増える。また、LiBは低温始動性を確保するために更に大容量であり、主流である鉛電池と互換性のある作動電圧範囲が要求される。ECU起動用では、EVで100WhのLiBの搭載が始まった。スターター始動用ほどの容量が必要なく、EVの普及により今後自動車1台における搭載容量は低下していくとみられる。

将来的には、新興国を中心とした自動車需要の増加が予想される一方で、これまでけん引してきた中国などの需要が落ち着くことで、2050年にかけて自動車生産台数の伸びは鈍化していくとみられる。また、2030年以降拡大が期待されるLiBの量産体制の構築や安価な正極活物質の採用によるコスト低減、EVの増加による補機用で必要とされる電池容量の低下などにより、長期的には市場縮小が予想される。

◆調査対象

自動車向け二次電池市場

駆動用電池搭載車両

・MHV(マイルドハイブリッド自動車)

・EV(電気自動車)

〔12V系、48V系〕

・FCV(燃料電池自動車)

・HV(ハイブリッド自動車)

・HV/PHVトラック・バス

・PHV(プラグインハイブリッド自動車)

・EVトラック・バス

補機用電池搭載車両


2022/11/17
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