PRESSRELEASE プレスリリース

第26092号

国内の医療用医薬品市場、2035年は11兆円超に
― 2035年予測(2025年比) ―
■国内医療用医薬品市場 11兆4,077億円(117.9%)
開発中のADC(抗体薬物複合体)や二重特異性抗体などの発売、市場浸透など
オンコロジー領域がけん引し市場拡大が続く

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 代表取締役 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、自己免疫疾患・アレルギー・呼吸器、中枢神経・希少疾患、糖尿病・代謝・腎、オンコロジーの33疾患領域を含む国内の医療用医薬品市場を調査した。その結果を「2026年版 医療用医薬品フォーキャストデータ」にまとめた。

この調査では、国内の医療用医薬品市場について、モダリティ・作用機序別に現状を把握し、開発品や政策の動向、パテントクリフ、グローバル動向なども加味して2035年まで展望した。

◆調査結果の概要

■国内医療用医薬品市場(メーカー出荷ベース)

国内医療用医薬品市場(メーカー出荷ベース)

2025年は、後発品への切り替えが加速しているが、糖尿病治療剤の伸長、希少疾患治療剤やADC(抗体薬物複合体)の処方浸透など近年発売された新薬が市場をけん引し、前年比2.1%増で拡大した。

2026年は、「アクテムラ」(中外製薬)などの大型製品にバイオシミラーが登場するが、自己免疫疾患・アレルギー・呼吸器疾患領域で、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎などへの処方拡大を中心に生物学的製剤やJAK阻害剤が伸びている。また、オンコロジー領域では免疫チェックポイント阻害剤やADCがけん引し、市場拡大が期待される。

2030年にかけて、後発品への処方シフトや薬価改定の影響を受けつつも、直近で発売された新薬の処方浸透が進むことに加え、IgA腎症や代謝機能障害関連脂肪性肝疾患といった未充足の医療ニーズに対応する新薬の登場が、市場拡大に寄与するとみられる。

2030年代に入ると、2025年の市場をけん引した「キイトルーダ」(MSD)などの製品に後発品の登場が予想されるが、現在フェーズⅡ、フェーズⅢで開発中のADCや二重特異性抗体などの発売、市場浸透が期待されるため、新薬の発売が順調に進めば、後発品や薬価引き下げなどの影響を受けつつも2035年まで市場拡大が続くとみられる。

◆注目市場

1.炎症性腸疾患治療剤【自己免疫疾患】

炎症性腸疾患治療剤【自己免疫疾患】

市場は潰瘍性大腸炎、クローン病治療に適応を持ち処方される製品の実績を対象とする。患者数の増加や診断率の向上、難病医療費助成制度による治療アクセスの確保が寄与したことや、軽症患者を対象とした5-ASA製剤やステロイド製剤のほか、中等症以上の患者や既治療例を対象とした複数の作用機序を有する新薬が発売されたことで、市場は拡大傾向で推移している。

2025年は、「ステラーラ皮下注45mg」(ヤンセンファーマ)が大幅な薬価引き下げとなった影響を受け、一時的な市場縮小となった。2026年は、JAK阻害剤の処方拡大や、IL-23p19阻害剤の処方浸透が寄与し、市場は拡大するとみられる。

2027年から2030年は、2025年発売のS1P受容体調節薬の伸長のほか、軽症寄りの中等症患者には「ジセレカ」(エーザイ)を中心とした処方拡大が予想される。また、「トレムフィア」(ヤンセンファーマ)を中心としたIL-23p19阻害剤の伸びが市場をけん引するとみられる。2030年前後に複数の抗TL1A抗体製剤が発売予定であり、「レミケード」(田辺ファーマ)に匹敵する高い有効性が期待されるため、重症患者を中心に治療方針を大きく変える可能性がある。

2031年から2035年は、新薬開発・発売のほか、異なる抗体製剤を組み合わせた併用療法の研究が進み、治療効果を高める増強療法を軸とした新規治療法の登場が予想される。将来的には非専門医による治療介入や安全性の高い経口剤や注射製剤の使用の早期化で、治療の幅がさらに広がるとみられる。2035年までに特許切れとなる新規薬剤は少ないと予想されることから、今後も市場拡大が続くとみられる。

2.認知症・MCI治療剤【中枢神経】

認知症・MCI治療剤【中枢神経】

市場は認知症およびこれから認知症に至る可能性のあるMCI(軽度認知障害)治療に適応を持ち処方される製品の実績を対象とする。

2024年から2026年は、既存薬はジェネリック医薬品への切り替えが進んでいるが、抗アミロイドβ抗体薬の「レケンビ」(エーザイ)、「ケサンラ」(日本イーライリリー)の伸長がけん引し、市場は拡大している。抗アミロイドβ抗体薬は、エビデンス構築が進んだことや、参入企業のMRのプロモーション活動によって採用施設数が増加していること、上位企業による早期発見のための疾患啓発活動が奏功しMCI患者の受診・治療率が向上していることなどにより、伸びている。

2026年5月に「認知症疾患診療ガイドライン」が9年ぶりに改訂され、抗アミロイドβ抗体薬などについての治療方針が定まった。また、2026年後半に処方判断における血液バイオマーカーが保険適用になるとみられ、従来のPET検査や脳脊髄液検査などと比べて患者と医療機関の負担が小さいことから、処方のすそ野が広がることで、2027年の市場は大幅な拡大が予想されている。

2026年中に、「レケンビ」が自己注射可能なオートインジェクター製剤としても発売が予想され、維持療法でも用いられるとみられる。また、2028年頃には認知症の周辺症状を適応として、新薬が発売されることで治療の選択肢の広がりが期待される。さらに、2030年頃には抗タウ抗体薬の発売で軽度から中度の認知症患者を中心に処方が増加するとみられ、市場拡大が予想される。

2031年から2035年は、MCI治療として抗アミロイドβ抗体薬が中心になり、認知症治療として抗タウ抗体薬や新規作用機序の新薬がシェアを競い合うとみられる。現在フェーズⅡ段階にある多くの開発品が発売され、中長期的に市場の活発化が予想される。

3.肥満症治療剤【代謝】

肥満症治療剤【代謝】

市場は肥満症治療に適応を持ち処方される製品の実績を対象とする(適応外処方の製品は除く)。

2024年に「ウゴービ」(ノボ ノルディスク ファーマ)が発売されたが、適応外処方の懸念から認定施設での処方となった。2025年には、「ゼップバウンド」(田辺ファーマ)の発売や、最適使用推進ガイドラインの要件を満たした施設の増加などにより「ウゴービ」の処方が増えたため市場は大幅に拡大した。2026年も2剤が市場をけん引し拡大が続くと予想される。

2027年から2030年は、各社より複数の新薬発売が予想されていることから市場は大幅に拡大するとみられる。

2031年から2035年は、大手企業の参入が予想され、企業間のプロモーション競争や患者の掘り起こしなど市場活性化につながるとみられる。GLP-1関連製剤がけん引して市場拡大が続くことが予想される。

4.固形がん治療剤【オンコロジー】

固形がん治療剤【オンコロジー】

市場は固形がんに適応を持ち処方される製品の実績を対象とする。主に免疫チェックポイント阻害剤、分子標的治療剤の普及に伴い市場は拡大を続けてきた。

2024年から2026年は、肺がんをはじめとする複数のがんにおいて、免疫チェックポイント阻害剤の「キイトルーダ」(MSD)、「オプジーボ」(小野薬品工業)が1次治療から周術期まで幅広いステージでの処方が進んでいる。また、ADCの「エンハーツ」(第一三共)が既存の化学療法を置き換え始めているなど、従来の細胞障害性抗がん剤から免疫制御とADCへと治療の中心がシフトしている。

2027年から2030年は、がん免疫療法はPD-1/PD-L1単独阻害の段階から、複数の免疫抑制経路を同時に制御して効果を高める次世代型免疫療法への移行が予想される。LAG-3やTIGITといった新しい標的との併用療法の開発が進み、奏効率の向上や既存薬で効果が不十分だった症例への対応が進むと予想される。2030年頃には、1つの薬剤で2つの標的を狙う二重特異性抗体が、肺がんなどの標準治療になることも期待される。

2031年から2035年は、免疫チェックポイント阻害剤、ADC、二重特異性抗体、細胞治療など複数のモダリティを組み合わせた治療が主流になると予想される。臓器別ではなく、遺伝子変異などの分子異常やバイオマーカーに基づく治療の選択が主流となり、コンパニオン診断やリアルタイム遺伝子解析など診断技術とセットでの治療が進展するとみられる。現在の主力である免疫チェックポイント阻害剤は、バイオシミラーの発売やADC、二重特異性抗体との競合により伸びが鈍化する可能性がある。一方、DXd系ADCは乳がん、肺がん、消化器がん領域を中心に、早期治療から維持療法まで適応範囲を広げ、市場拡大に寄与するとみられる。

◆調査対象

自己免疫疾患/アレルギー/呼吸器
・全身性エリテマトーデス治療剤(CLE含む)
・ループス腎炎治療剤(全身性エリテマトーデスに起因する腎炎)
・関節リウマチ治療剤
・炎症性腸疾患治療剤(潰瘍性大腸炎、クローン病)
・アトピー性皮膚炎治療剤
・乾癬治療剤
・蕁麻疹治療剤
・その他皮膚治療剤(脱毛症、多汗症、結節性痒疹、白斑)
・喘息治療剤/COPD治療剤
・間質性肺炎治療剤(特発性肺線維症含む)

中枢神経/希少疾患
・抗うつ剤(抗不安剤・アルコール依存症治療剤含む)
・統合失調症治療剤(双極性障害治療剤含む)
・抗てんかん剤
・認知症/MCI治療剤
・片頭痛治療剤
・睡眠障害治療剤
・多発性硬化症治療剤
・重症筋無力症治療剤
・筋ジストロフィー治療剤
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)/多巣性運動ニューロパチー(MMN)治療剤
・血友病治療剤
・血小板減少症治療剤(免疫性血小板減少症(ITP)/血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)含む)
・発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療剤
・甲状腺眼症治療剤(バセドウ病眼症)
・強皮症治療剤

糖尿病/代謝/腎
・糖尿病治療剤
・肥満症治療剤
・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患治療剤
・心不全治療剤
・慢性腎臓病(CKD)治療剤
・IgA腎症治療剤

オンコロジー
・固形がん
・血液がん


2026/8/24
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