PRESSRELEASE プレスリリース
欧州での燃焼機器規制を追い風に、25年に給湯機が3,070億円、温水暖房機が1,483億円
25年の 空調・給湯機器の世界市場 は 18兆6,494億円 (18年比 17.8%増 )
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、より安全で環境にやさしい次世代製品の開発の動きが見られる一方、2018年からオランダで新築住宅へのガス供給禁止、2020年からノルウェーで石油燃料使用禁止が予定されるなど、燃料規制が追い風となっているヒートポンプ機器市場を調査した。その結果を「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2019」にまとめた。
この調査では、ヒートポンプ機器をはじめとする空調・給湯機器全体の市場についても調査・分析したほか、キガリ改正発効で動き始めた採用冷媒の最新動向などについてもまとめた。
◆注目市場
1.住宅向けヒートポンプ式給湯機/温水暖房機の世界市場

給湯機の国内市場は2018年にガスとヒートポンプのハイブリッド機器が大幅に伸びたことから、台数ベースで前年に対し二桁増となった。2019年頃から2010年前後に大量導入された機種の更新時期に入り、2021年には最盛期であった2010年と同程度の市場規模になるとみられる。原子力発電所は随時再稼働し、ほかの熱源機器と比較しても圧倒的に効率が良いことから、中長期的にも市場拡大は続くとみられる。
海外市場は、中国と欧州がけん引している。両エリアともに燃料機器への規制等の政策による強力な後押しにより、今後も引き続き市場は拡大していくとみられる。今後の世界的な燃料価格の上昇も追い風となる。
温水暖房機の国内市場は燃焼式床暖房とランニングコストの違いを訴求点に、大手都市ガスエリア外から立ち上がってきた。エアコン機能付きが認知度を高めてきたこともあり、2015年以降市場は拡大を続けている。
2019年頃から更新時期に入るが、給湯機と異なり使用頻度が低く、更新需要は限定的と思われるため、当面は新築需要が中心となる。給湯機と同様に、中長期的には原子力発電所の再稼働や、他熱源機器と比較した効率の良さから、市場は拡大が続くとみられる。
海外市場はダイキン工業が2006年に製品投入した欧州を中心に拡大してきた。近年、中国需要は欧州を超える勢いで増加していたが、2018年をピークに縮小に転じた。一方、欧州は燃料機器への規制のインパクトは大きく、普及政策が整備された国から順に需要増加している。2021年以降、極端な政策誘導が落ち着いた中国の一部エリアで再び需要が増加し、市場は拡大すると予想される。
2.パッケージエアコン/ビル用マルチエアコンの世界市場
|
2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
|
2兆8,972億円 |
103.1% |
3兆8,875億円 |
138.4% |
パッケージエアコンは店舗やオフィス、工場、産業空調向けに設計されたエアコンである。ビル用マルチエアコンは主に中規模ビルに使用され、室内機ごとに個別運転が可能なエアコンである。市場は海外市場が拡大をけん引している。
国内市場はパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンともに更新需要を中心とする成熟市場である。近年は東京五輪に伴う都市開発等による新築需要を中心に市場が拡大しているが、2020年以降は更新需要中心に戻り、縮小が予想される。品目別にみると、パッケージエアコンは学校向けと、従業員の職場環境改善ニーズから工場向けが増加している。学校向けは2018年の猛暑で普通教室17万室分の大型補正予算が組まれており、2019年は増加している。2020年以降も設置しきれなかった分と、特別教室や体育館への波及等が期待されるが、需要は徐々に落ち着くとみられる。ビル用マルチエアコンは中央熱源器からの切り替えに加え、ビル用マルチエアコンの更新需要や都市開発等による新築需要が重なり、2019年の出荷は15万台が見込まれる。今後も更新や新築需要は期待されるが、需要の中心であった他熱源からの切り替えは減少することから、市場は微減が予想される。
海外市場はオフィスビルや店舗、ホテルといった本来の需要先だけでなく、大型住宅などでも空調効率や快適性の良さから需要が高まっており拡大している。地域別にみると、北米や欧州は更新需要を中心とする成熟市場である。北米ではパッケージエアコンに分類されるユニタリーエアコンが広く普及しているが、近年は効率の良いビル用マルチエアコンへの期待感が急速に高まっている。一方、欧州では冷媒規制の影響により、新築はチラーに需要を奪われている。中国やその他アジアでは新築を中心にパッケージエアコン、ビル用マルチエアコンともに需要が旺盛である。
3.輸送用冷凍・冷蔵ユニットの世界市場
|
2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
|
5,527億円 |
104.0% |
7,223億円 |
135.9% |
輸送用冷凍・冷蔵ユニットはトラック等のシャーシに冷凍機・コンテナを架装・設置し、冷凍(冷蔵)品を定温維持する装置である。冷却方式はエンジン式(蓄冷式含む)、サブエンジン式、電動式に大別される。
国内市場は2017年の燃費規制に向けた駆け込み需要が一段落し、2019年以降縮小するとみられる。しかし、安定した更新需要に加え、近年の宅配市場拡大に伴う需要増を受け、縮小は小幅となる。中長期的には、2025年頃に燃費規制と騒音規制の強化時期が重なり、需要増加が期待される。特に、現状のエンジン式やサブエンジン式では規制へ十分に対応しきれないため、単価の高い電動式の需要増加が期待される。
海外市場はコールドチェーン(低温を保つ物流方式)の整備とともに拡大している。欧州と北米が市場の中心であるが、今後は中国やアジアの新興国でコールドチェーンの整備が進むことで年率5%程度の拡大が予想される。
2025年頃に騒音規制や燃費規制に対応するため、欧州や北米から、その他エリアの順に電動式への切り替えが進むとみられる。なお、燃費規制は日本ではトップランナー制度により強制力があるのに対し、海外では強制力がないのが主流のため(特に大型車向け)、罰則規定のある欧州の小型車を除き、日本と同レベルの電動化が進むかは不透明である。また、騒音規制は米国が加盟国の対象外であることから、当面は欧州中心の影響に留まる。
◆調査結果の概要
1.空調・給湯機器の世界市場
|
2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
|
15兆8,874億円 |
100.3% |
18兆6,494億円 |
117.8% |
ヒートポンプ機器をはじめとする空調・給湯機器の世界市場は、2025年に2018年比17.8%増の18兆6,494億円が予測される。
ルームエアコンやパッケージエアコン/ビル用マルチエアコンは、日系メーカーがインバーター機種や新冷媒R32採用機種等の高効率で環境負荷の低い製品を武器に市場をけん引している。一方で、これらの機器はコモディティ化が進み価格競争が激化したため、日系メーカーは新興国などの新市場の開拓(グローバル展開)が求められている。しかし、中国・韓国メーカーの汎用品機種との差別化や、日本とは異なる空調・給湯文化が根付いた地域での対応など、課題は多い。また、ターボ冷凍機やチリングユニット、冷凍・冷蔵ショーケースなどといったヒートポンプ機器は、冷媒規制や省エネ志向等から技術開発によって既存製品に置き換わる新製品開発が求められている。排熱回収ヒートポンプは、開発段階にある次世代製品の一つである。市場は小規模であるが、潜在市場は大きく、将来の拡大が期待される。
2.ヒートポンプ機器の冷媒
ヒートポンプ機器に使用される代表的な冷媒は、フルオロカーボン(フロン)やCO2、アンモニア、ブタン、イソブタン等である。フロン系冷媒はモントリオール議定書発効以降、オゾン破壊係数による規制が設定され、CFC(クロロフルオロカーボン)からHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)へ、さらにHFC(ハイドロフルオロカーボン)へと変遷してきた。近年は地球温暖化係数(GWP)による規制が始まっており、一部の機器ではフロン系でHFO(ハイドロフルオロオレフィン:1234yf、1234ze等)、ノンフロン系でHC(ハイドロカーボン:イソブタン、ブタン、プロパン、シクロプロパン等)や自然冷媒(CO2等)など、GWPの低い新冷媒への移行が既に進んでいる。
1)エアコン※1の採用冷媒動向(台数(ユニット)ベース)

エアコンは低GWP対応に合わせてダイキン工業がR32を推進しており、微燃性に対する許可が出た国から採用が進む。R290を推進する中国政府の動向次第で大きくトレンドが変わる可能性もあるが、安全性の問題から中国政府はR290に対して許可を出しづらい状況である。
パッケージエアコンでもR32機種が登場してきており、将来的には主流になるとみられる。一方、ビル用マルチエアコンはR32機種が発売されているものの、安全性が懸念されることからいまだ各国で規制緩和に向けた議論が行われている状況である。欧州では新Fガス※2規制によって、現行冷媒であるR410Aなどの価格が急上昇してきていることから規制緩和が進み、2025年時点ではR32採用機種が市場に投入されているとみられる。
※1:ルームエアコン、パッケージエアコン/ビル用マルチエアコン、ガスエンジンヒートポンプエアコン
※2:HFC(ハイドロフルオロカーボン)、PFC(パーフルオロカーボン)、SF6(六フッ化硫黄)
2)カーエアコン※3の採用冷媒動向(台数(ユニット)ベース)

欧州のMAC指令を皮切りに、R134aからHFOであるR1234yfへの移行が進んでいる。主要な自動車メーカーはCO2への切り替えを検討していたが、技術的な難易度が高かったためR1234yfに移行することとなった。ただし、一部メーカーはCO2を採用している。
※3:カーエアコン/電動自動車用カーエアコン
3.ヒートポンプ機器のコンプレッサー
■コンプレッサーの採用方式別動向(台数(ユニット)ベース)

コンプレッサーは冷媒を圧縮し循環させる、ヒートポンプのサイクル中で重要な役割を果たすコンポーネントである。2019年の市場は2億2,445万台と見込まれる。ロータリー式が市場の52.7%、レシプロ式が30.1%を占める。ロータリー式はエアコン向け、レシプロ式はカーエアコン向けが中心となっている。
2025年の市場は2億4,384万台と予測される。ロータリー式はツインロータリー式の能力向上により大容量化対応が進むことや、インドや米国のルームエアコン市場の成長により伸長する。一方、レシプロ式はカーエアコンの小型化、電動化要求に対応ができず縮小する。スクロール方式はカーエアコン向けが大きく伸びるとともに、ビル用マルチエアコンや温熱供給ヒートポンプ向けも伸びる。スクリュー式は冷凍や温熱発生ヒートポンプ向けがけん引する。
◆調査対象
|
住宅分野 (7品目) |
電気式 |
空調/暖房 |
ルームエアコン、住宅向けヒートポンプ式温水暖房機、地中熱利用ヒートポンプ |
|
給湯 |
住宅向けヒートポンプ式給湯器、電気温水器(貯湯式/瞬間式) |
||
|
燃焼式 |
空調/暖房 |
住宅向け燃焼式温水暖房機 |
|
|
給湯 |
住宅向け燃焼式給湯器 |
||
|
業務・産業分野 (10品目) |
電気式 |
空調/暖房 |
パッケージエアコン/ビル用マルチエアコン、チリングユニット、ターボ冷凍機、蒸気/熱風発生ヒートポンプ |
|
給湯 |
業務用ヒートポンプ給湯器、排熱回収ヒートポンプ |
||
|
燃焼式 |
空調/暖房 |
ガスエンジンヒートポンプエアコン、吸収式冷凍機(冷温水発生器)、蒸気ボイラ(貫流ボイラ) |
|
|
給湯 |
業務用温水ボイラ |
||
|
その他 (5品目) |
冷凍・冷蔵 |
冷凍・冷蔵ショーケース、自動販売機 |
|
|
輸送・移動体 |
カーエアコン、電動自動車用カーエアコン、輸送用冷凍・冷蔵ユニット |
||
※網掛けは国内市場のみ調査・分析
