PRESSRELEASE プレスリリース
●全固体電池 8兆7,065億円(299.2倍)
2020年代後半からxEVで需要が本格化。硫化物系が市場拡大をけん引
●ナトリウムイオン二次電池 1兆3,473億円(4,491.0倍)
性能向上と生産体制の強化により用途が広がり、大幅に市場拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、酸化物系疑似固体電池やナトリウムイオン二次電池の実用化、日本自動車メーカーによる硫化物系全固体電池の量産化に向けた取り組み、エネルギー密度向上によるドローンなどへの採用の期待から注目が集まる次世代電池の世界市場を調査した。その結果を「2025 次世代電池関連技術・市場の全貌」にまとめた。
この調査では、固体電解質を採用したリチウムイオン二次電池であり実用化が進む全固体電池4品目、資源戦略の観点から資源量が豊富な元素を用いたポストリチウムイオン二次電池5品目、リチウムイオン二次電池とは異なる材料や電池構造を持つ新型二次電池9品目の市場動向を明らかにし、次世代電池の材料、アプリケーション、製造プロセス、企業・研究動向なども総合的に分析した。
◆注目市場
●全固体電池の世界市場
難燃・不燃で安全性が高く、高電圧化やパッケージ簡素化による容量増加や、超急速充電へ対応できることなどから注目が集まっている。
現状、市場は約99%を酸化物系、1%を高分子系が占め、硫化物系はわずかである。xEV向けを中心に酸化物系が増加しているため、2024年の市場は前年比4.0倍の1,158億円が見込まれる。
2020年代後半から、xEV向けで硫化物系の採用が本格化し、市場拡大に貢献すると予想される。また、既存LiBと比べて重量あたりのエネルギー密度が高まることや、量産化に向けた生産体制の強化などによって、xEVだけでなくドローンや医療機器、AGV、ESS、IoTセンサーデバイス・バックアップ電源など採用が広がるとみられ、2045年の市場は2023年比299.2倍の8兆7,065億円が予測される。
[硫化物系]
現在は、市場規模は小さいが、大型ではxEVでの採用に向けて固体電解質の量産体制を増強している。一方、固体電解質の必要量が少ない小型ー中型では、半導体装置向けの生産が進んでいるほか、FA化を背景に好調な多軸ロボットのメモリバックアップ向けを想定した量産化が始まっている。
2020年代後半からは、日本、韓国、欧州メーカーにおいて一部のxEV向けを対象に、大型の量産が始まり需要が本格化するとみられる。また、中型は電動二輪車やドローン、AGVなど、小型は耐熱性・長寿命が求められるインフラ監視デバイスや車載機器、医療機器での採用が進み、用途の多様化が予想される。
2030年以降は、正極・負極活物質に新規材料を用いた第二世代の全固体電池が量産化され、xEVの航続距離延長などが可能になるため採用の増加が期待されるため、将来的には酸化物系の市場を上回るとみられる。カーボンニュートラル実現に向け、xEVでの採用車種の増加や商用車への実用化、電動航空機、船舶、産業車両などへの展開も想定され、大幅に伸長するとみられる。
[酸化物系]
製造プロセス別に、バルク型、薄膜型、積層型に分けられる。また、酸化物系固体電解質に高分子系固体電解質や電解液、イオン液体などを組み合わせた疑似固体電池も対象とする。
2024年の市場規模は1,143億円が見込まれる。疑似固体電池の開発・実用化が進展しており、現状では市場の9割強を占める。既存LiBの製造プロセスから大きな変更なく量産化が可能であり、中国や台湾メーカーの動きが活発である。
2020年代は、中国メーカーによるxEVなどモビリティ向けの量産が進むとみられる。既存LiBと比較して安全で、セルやパックベースのエネルギー密度向上が実現できるため、電動二輪車や長距離航続を実現するEVでの採用が予想される。また、積層型が耐熱性・長寿命性などにより、IoTセンサーデバイスやバックアップ電源などで普及するとみられる。
2030年以降は、疑似固体電池から酸化物系全固体電池の開発・量産化にシフトし、xEV向けの有力次世代電池として採用が進むことから、2045年は2023年比104.4倍の2兆8,820億円が予測される。
[高分子系]
量産性に優れ、早期に市場が形成された。xEVの小型乗用車やバス向けで採用がみられる。産業用車両やESSでも実用化されており、2024年の市場は15億円が見込まれる。一方、室温でのイオン伝導性が低く加温が求められることや、4V級正極活物質を使用すると充放電サイクルが劣化するため、酸化物系に比べて市場の伸びが小さい。
2020年代は、乗用車では高級車やスポーツカーで実用化が始まり、大型車や中型車への普及が予想される。乗用車以外では、台湾電池メーカーが電動二輪車向けの開発やサプライチェーン構築に取り組んでおり、インドネシアをターゲットとする製品開発が進展している。
固体電解質のイオン伝導性や各イオンが運ぶ電流の割合であるイオン輸率、耐酸化性などの課題はあるが、2030年以降は性能改善とともにEVやESS、産業用車両で実用化が加速し、北米や欧州を中心に生産増加が予想される。また。酸化物系と同様に既存LiBの製造プロセスから大きな変更なく生産が可能であるため、2045年に向けて伸長が予想される。
●ナトリウムイオン二次電池(SIB)の世界市場
既存LiBと同様の構造でありながら、レアメタルフリーで資源リスクやコストの低減ができるため優位性がある。なお、NAS電池は対象外とする。
2021年以降、参入メーカーが増加している。中国電池メーカーによるESSや小型EV、電動二輪車向けの生産が活発化しており、市場は大幅に拡大している。
2020年代は、LiBを下回るコストと層状酸化物系やポリアニオン化合物系を使用した正極材料による性能向上を実現することで、鉛蓄電池やLFP採用LiBの代替が期待され、順調に市場は拡大するとみられる。用途別では、ESSやバックアップ電源、小型EV、電動二輪車、電動工具を中心に普及が予想され、特に中国電池メーカーの取り組みが積極的で、GWh/年規模の生産体制強化が進んでいる。
2030年以降は、サプライチェーン強化を背景にインドや欧米でも伸長が予想される。エネルギー密度200Wh/kg以上かつ鉛蓄電池並みのコストを達成し、産業用車両や一部三元系採用LiBとの代替も始まるとみられ、2045年の市場は2023年比4,491.0倍が予測される。
◆調査結果の概要
■次世代電池の世界市場
現在の市場は、酸化物系、高分子系の全固体電池が中心である。xEV向けが多く、一部ESS向けもみられる。既存LiBの製造プロセスから大きな変更なく生産できるため、一部で代替が進んでおり、2024年は1,218億円が見込まれる。
2020年代後半に、xEV向けとして特に注目されている硫化物系全固体電池を採用した車両の発売が予想され、2030年に向けて普及が加速することから、以降は硫化物系全固体電池が市場拡大をけん引するとみられる。また、ほか次世代電池では、性能向上と生産体制の強化によってナトリウムイオン二次電池が大幅に伸長すると予想される。
◆調査対象
次世代電池 ※下線の品目は市場規模を算出した全固体電池
・硫化物系
・酸化物系
・高分子系
・その他
ポストリチウムイオン二次電池
・ナトリウムイオン二次電池
・カリウムイオン二次電池
・マグネシウム二次電池
・フッ化物イオン二次電池
・その他イオン二次電池
新型二次電池
・金属空気二次電池
・全樹脂電池
・クレイ型電池
・イオン液体採用電池
・高濃度電解液採用電池
・リチウム硫黄電池(Li-S電池)
・Si系負極採用電池
・金属Li負極採用電池
・バイポーラ型電池
次世代電池材料
・電解質
・正極活物質
・負極活物質
・セパレータ
・バインダ
・集電体
次世代電池応用製品
・自動車
・定置用電力貯蔵システム
・小型民生用/その他用途
次世代電池参入事業者
・電池材料メーカー
・電池メーカー
・大学・研究機関