PRESSRELEASE プレスリリース

第22036号

産業施設におけるエネルギー消費実態を調査
―電化技術・CN(カーボンニュートラル)燃料普及想定時(2019年度比)―
■鉄鋼業におけるエネルギー消費量             2,969,073TJ  (8.3%減)
高炉から電気炉への移行などで、エネルギー消費量削減
●輸送用機械器具(自動車)のCO 2 排出量         764万t-CO 2     (40.2%減)
鍛造や熱処理、塗装乾燥、洗浄などのプロセスで、蒸気や燃料から電力に移行し、CO 2 排出量削減

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、CO2排出削減に関する具体的な方向性として「電化」、熱需要に対しては「水素化」「CO2回収」が示されたのを受けて、エネルギー消費量やCO2排出量の削減ポテンシャルが注目されている、産業施設におけるエネルギー消費量を調査した。その結果を「産業施設におけるエネルギー消費の実態総調査 2022」にまとめた。

この調査では、食料品製造業4業種と飲料・たばこ・飼料製造業2業種、繊維工業、パルプ・紙・紙加工品製造業、化学工業3業種、石油製品・石炭製品製造業、プラスチック製品製造業、ゴム製品製造業、窯業・土石製品製造業、鉄鋼業、非鉄金属製品製造業、一般機械器具製造業、電子部品・デバイス・電子回路製造業、輸送用機械器具製造業を対象に、産業施設におけるエネルギー消費とCO2排出量の実態を捉え、将来を展望した。また、製造業20業種262工場のエネルギー管理等指定工場に対するアンケートを実施し、個別施設の低炭素社会の実現に向けた取り組みや新型コロナウイルス感染症の影響なども明らかにした。

◆調査結果の概要

■主要20業種におけるエネルギー消費量とCO2排出量の削減ポテンシャル

 

2019年度

電化技術・CN燃料普及想定時

2019年度比

エネルギー消費量

8,362,222TJ

7,674,344TJ

8.2%減

CO2排出量

28,983万t-CO2

26,444万t-CO2

8.8%減

最終エネルギー量の約94%を占める、製造業主要20業種を対象とする。2019年度のエネルギー消費量は8,362,222TJであった。また、CO2排出量は、28,983万t-CO2であった。

2050年のカーボンニュートラル(以下、CN)に向けて方向性を具体化した「2050 カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、製造業に対しては「電化」「水素化」「CO2回収」の方向性が示された。現状「水素化」や「CO2回収」は実施のハードルが高いものの、「電化」に関しては非鉄金属製品の溶解やプラスチック製品の成形予熱など既に一部プロセスで主流であり、その他でも実用化・商用化が進められていることから、短中期的には脱炭素に向けて中心的な役割を担うとみられる。

系統電力のCO2排出係数を「2030年度におけるエネルギー需給の見通し(資源エネルギー庁)」で示されいている目標値に基づいて試算した場合、今後、電化技術・CN燃料の普及が進むことで、エネルギー消費量は2019年度比8.2%減の7,674,344TJ、CO2排出量は2019年度比8.8%減の26,444万t-CO2になると予測される。

■エネルギー多消費業種におけるエネルギー消費量の削減ポテンシャル

 

2019年度

電化技術・CN燃料普及想定時

2019年度比

鉄鋼業

3,236,155TJ

2,969,073TJ

8.3%減

有機化学

2,263,987TJ

2,226,746TJ

1.6%減

石油製品・石炭製品

851,754TJ

814,747TJ

4.3%減

総エネルギー消費量が50万TJ超級のエネルギー多消費型に分類される鉄鋼業や有機化学、石油製品・石炭製品といった業種を対象とする。

これらの業種は、共通して燃料系エネルギーを原料とし、製品生産量に直結してエネルギー消費量が膨大なため、2019年度の電化技術の普及率は1割未満である。

鉄鋼業は石炭系燃料のコークスを原料や熱源として使用するためエネルギー消費が最も多い。現在主流の高炉から電気炉へ移行することで、今後、電化率が4割弱になるとみられる。また、水素還元製鉄やアンモニア燃焼の実証実験が始まっておりCN燃料の導入も進み、電化技術・CN燃料普及想定時にはエネルギー消費量は2019年度比8.3%減が予測される。

有機化学は石油系燃料が主な製品原料であるため、電化技術の普及率は20業種の中で最も低い。また、電化技術・CN燃料普及想定時でもエネルギー消費の削減ポテンシャルは対象とした20業種の中で最も低くなるとみられる。

石油製品・石炭製品も燃料が製品原料となっており、電気ヒーター(抵抗加熱技術)が適用されると電化技術の普及率は2割強となり、エネルギー消費量の削減は2019年度比4.3%減が予測される。

◆注目市場

●輸送用機械器具(自動車)のCO2排出量削減ポテンシャル

2019年度

電化技術・CN燃料普及想定時

2019年度比

1,278万t-CO2

764万t-CO2

40.2%減

製造プロセスの内、鋳造や鍛造、塗装乾燥、乾燥で燃料や蒸気エネルギーの需要が高い。

CN燃料によるCO2排出削減効果は小さいものの、鍛造や熱処理、塗装乾燥、乾燥、洗浄では蒸気や燃料から電力へ転換可能なケースが多いため、今後の電化率は8割に達するとみられる。それにより、輸送用機械器具製造業のCO2排出量は2019年度比40.2%減の764万t-CO2が予測される。

●プラスチック製品のCO2排出量削減ポテンシャル

2019年度

電化技術・CN燃料普及想定時

2019年度比

1,265万t-CO2

774万t-CO2

38.8%減

プラスチック製品は電化率が5割強に達している。

燃料を直接燃焼して製造することが少ないため、CN燃料によるCO2排出量削減への効果は薄いものの、今後は、燃料や蒸気エネルギーの消費割合が多い加工や成型・押出、プレスの電化進展などによって排出削減が予想される。また、製造プロセス以外の電化でも減少するとみられ、CO2排出量は2019年度比38.8%減が予測される

―アンケート調査―

製造業20業種262工場のエネルギー管理等指定工場を対象に、脱炭素に向けた製造業の取り組みや課題についてアンケート調査を実施した。

■CO2排出削減に向けた製造業の取り組み (N=262/MA) 単位:%

CO2排出削減に向けて取り組みやすい照明や空調機器など「非生産プロセス機器での省エネ型機器導入」の割合が最も多かった。次いで、「生産プロセス機器での省エネ型機器導入」が5割を超えた。一方、「運転・運用の見直し」に関しては「非生産プロセス機器」よりも「生産プロセス機器」に対する見直しのほうが高い割合となった。

■CO2排出削減に向けた課題 (N=262/MA) 単位:%

CO2排出削減に向けた取り組みへの課題は「設備機器導入・更新に対する資金調達」と「排出削減方法に対する手詰まり感」とする認識が4割に達した。また、「課題解決のための取り組みに手間暇がかかる」との認識を、全体の4分の1が持っているのに対し、「特になし」とする回答も2割強となった。

◆調査対象

食料品製造業

・食料品(食材加工品)

・食料品(調味料)

・食料品(パン・菓子)

・食料品(調理品(中食))

 

飲料・たばこ・飼料製造業

・清涼飲料

・酒類

 

繊維工業

・繊維

 

 

パルプ・紙・紙加工品製造業

・パルプ・紙・紙加工品

 

 

化学工業

・無機化学

・有機化学

・医薬品

石油製品・石炭製品製造業

・石油製品・石炭製品

 

 

プラスチック製品製造業

・プラスチック製品

 

 

ゴム製品製造業

・ゴム製品

 

 

窯業・土石製品製造業

・窯業・土石製品

 

 

鉄鋼業

・鉄鋼業

 

 

非鉄金属製品製造業

・非鉄金属製品

 

 

一般機械器具製造業

・一般機械器具

 

 

電子部品・デバイス・

電子回路製造業

・電子部品・デバイス・電子回路

 

輸送用機械器具製造業

・輸送用機械器具(自動車)

 

その他の製造業

・その他製品


2022/04/11
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