PRESSRELEASE プレスリリース
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、国内の人口減少と超高齢化による新設住宅着工戸数の減少や将来的なストック住宅数の減少、世帯構成の変化による住宅に対する顧客ニーズの多様化など、様々な環境の変化への対応に迫られる住宅業界のビジネストレンドと参入企業の事業戦略を調査し、今後の方向性を示した。その結果を「2018年版 住宅ビジネス/新築・リフォーム企業戦略の現状と将来展望」にまとめた。
この調査ではハウスメーカー、デベロッパー、住設建材メーカー、エネルギー会社、不動産管理会社、インターネット仲介事業者、民泊事業者など計50社について、建築やリフォーム、買取再販といった住宅事業や、ハウスクリーニング・家事代行、見守り・セキュリティ、カーシェアリングといった住宅関連サービス、サービス付き高齢者住宅や民泊といった派生事業への取り組み状況について幅広く調査・分析した。
住宅業界全体を把握できるシリーズとして、住宅の内外を構成する住設建材の市場も調査しており、その結果は「2018年版 住設建材/システム関連市場・技術の現状と将来展望」にまとめ、5月21日にリリースしている。
◆注目市場
買取再販住宅国内市場
不動産仲介とセットでリフォーム・フルリノベーションを行っている住宅を買取再販住宅と定義した。なお、工事額は再販にともなうリフォーム・リノベーション費用を対象とする。
中 古住宅の流通戸数は増加しており、近年では集合住宅の中古物件の流通が活発化している。その中でも中古住宅を買い取って原状回復リフォームや機能向上リフォームを実施した住宅を再販するケースが増加している。
水廻りや内装を中心とした部分的なリフォームから、フルスケルトン状態にして給配水管も含めて行うリノベーションまで幅が広い。新築に近い仕様で住宅を購入できることから、一次取得層の購入や、独身世帯やシニア世帯の住み替えなどのニーズを獲得しており、今後も拡大が予想される。
◆調査結果の概要
1.新築住宅トレンドと参入企業の方向性
新築住宅販売を中心に事業展開する企業は、新築住宅の新商品開発の中軸に据えるコンセプト開発や、異業種の技術を活用したIoTやAIなど最新技術の採用を進めている。また、今後増えていく共働きやシニア世帯などをターゲットに絞った提案が増えている。
【戸建住宅トレンド】
A.省エネ・ZEH
B.多層階建/併用住宅
C.ハイグレード/リーズナブル
D.共働き/シニア世帯向け住宅
E.自由設計、大空間住宅
A、Bは、ZEHが国の政策により普及が進められており、多層階建が都市部の土地の有効活用、併用住宅が賃貸や店舗などとの併用による固定資産税などの軽減措置といった制度によるメリットもあり、ハウスメーカーが対応商品を拡充している。また、C〜Eなど顧客の世帯特性やニーズに合わせた開発といった、カスタマイズ色が強い提案が増えている。集合住宅では、共有部でのセキュリティ向上、電力見える化サービスや一括受電サービスなどによる省エネ性の向上、太陽光発電システムや全館空調システムなど戸建住宅での採用が多い設備の採用による物件価値の向上などもみられる。
2.ストック住宅トレンドと参入企業の方向性
リフォームやリノベーションをはじめとするストック住宅向け事業を展開する企業は、リフォームやリノベーションを施した買取再販、住み替えサポート、サブリースなどにビジネスチャンスを見出し、不動産関連事業の幅を広げている。
中古住宅の流通戸数も増加するなか、物件情報を仕入れて販売するのみであった不動産仲介事業者による中古再販、物件開発・不動産流通・不動産管理などのグループ会社間での分業から情報共有によるワンストップでのストック住宅向け事業の展開など、事業形態が変わりつつある。また、民泊事業などでの非住宅用への転用などの拡大により、増加の一途をたどる空き家や空室物件のリフォーム・リノベーションも期待され、ストック住宅を活用した住宅ビジネスの拡大が予想される。
一方で、中古住宅に対するエンドユーザーの不安緩和のために、住宅性能や劣化状況、補修状況などのインスペクション情報の見える化、データの蓄積による住宅価値情報を扱うビジネスも活発化するとみられる。
3.グローバル戦略
日系企業が進出しているのは主に、中国・台湾、東南アジア、オセアニア、北米などであり、特に東南アジアへの進出が多い。高層マンションや賃貸住宅の開発プロジェクトへの参画を中心に、東南アジアやオセアニアでは集合住宅と、商業施設やホテルを合わせた複合開発が目立っている。
4.住宅ビジネストレンド
新築住宅販売、物件管理、リフォームなどそれぞれが独立するのではなく、企業グループや他社との相互送客を含めたワンストップビジネスの展開加速、新築住宅販売からリフォーム需要発生までの期間に顧客との接点を長く深く維持できる住生活サービスなどの拡充が、住宅ビジネスのポイントとなっている。
近年増えているIoTサービスやIoT対応設備の共同開発といった異業種との協業をはじめ、自社にはないリソースを他で補うことで、各社住宅ビジネスの多角化を進めており、その範囲は住生活支援サービス、サービス付き高齢者住宅事業、民泊事業、海外事業など多岐にわたる。
◆調査対象
事業者戦略編 | 新築・リフォーム事業者:6社(積水ハウス、積水化学工業、大和ハウス工業など) |
新築事業者:12社(トヨタホーム、三井ホーム、東急不動産など) | |
リフォーム事業者・リノベーション事業者:25社(LIXIL、大阪ガス、ヤマダ電機、住友不動産など) | |
インターネット仲介事業者:2社(ホームプロなど) | |
民泊事業者:3社(エボラブルアジアなど) | |
サブリース事業者:2社(アパマンショップホールディングスなど) | |
住宅ビジネストレンド分析 | 新築住宅トレンド(住居形態別〔戸建、マンション、賃貸〕新築住宅販売実績・販売エリア特性、スマートエネルギー化〔ZEH対応、HEMS、太陽光発電システム、蓄電池システム採用〕の動向、AI・IoT技術の対応状況など) |
ストック住宅トレンド(リノベーション、中古住宅流通、空き家関連ビジネスなど) | |
その他住宅ビジネストレンド(サブリース、民泊など) |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。