PRESSRELEASE プレスリリース

第24072号

カーボンリサイクル・CO2削減関連の市場を調査
― 2050年世界市場予測(2023年比) ―
■CO2削減関連 198兆1,855億円(17.3倍)
市場規模が大きいCO2利活用製品がけん引。CO2分離技術関連品目も大きく伸びる

●CO2固定コンクリート 99兆730億円 (1,723.0倍)
使用可能範囲の広がりや、量産化によるコスト低下により採用が進む

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、2050年カーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギーの利用や省エネルギー施策によるCO2排出量削減に加えて、CO2を分離・回収してさまざまな製品や燃料に再利用するカーボンリサイクル技術の重要性が高まっていることを受けて注目される、CO2削減関連の市場を調査した。その結果を「カーボンリサイクル CO2削減関連技術・材料市場の現状と将来展望 2024」にまとめた。

この調査では、CO2分離技術[装置型、自然吸収型]12品目、CO2分離技術材料7品目、CO2利活用製品19品目の市場について、現状を捉え、今後の方向性を予想した。また、CO2発生量を捉えるためCO2原料ソース9品目の市場についても整理した。

CO2削減に向けての取り組みが各産業で進んでいるが、CO2多排出産業では一足飛びに脱炭素化を達成することは難しく、削減に向けた設備・技術を導入する際の経済的負担が課題となっている。それに伴い、企業が低炭素化を実現するために、CO2削減を進める移行(トランジション)段階に焦点を当て、長期的な戦略に基づいてCO2排出削減、カーボンリサイクルに取り組むための資金調達方法として、トランジション・ファイナンスなどの金融手法が整備されつつあり、CO2削減関連市場拡大の追い風となることが期待される。

◆調査結果の概要

■CO2削減関連の世界市場

CO2削減関連の世界市場

CO2分離技術[装置型]は、化学吸収、物理吸収、物理吸着、膜分離、固体吸収、DAC(Direct Air Capture)を対象とする。現状では、石油精製やアンモニア製造プロセスの脱炭酸工程や酸性ガス除去の目的で導入されているものが中心である。今後はCO2排出量削減目的での導入が進むとみられる。
化学吸収は脱炭酸工程や酸性ガス除去の目的で既に広く採用され、現状は3割強を占める。燃焼排ガス向けにも最適技術とされており、今後も需要増加が予想される。膜分離は2割強を占め、主に天然ガス精製やバイオガス精製で採用されている。固体吸収は、現時点ではまだ実証段階に至るケースは少ないが、発電所などの大規模施設での導入による今後の伸びが期待される。

CO2分離技術[自然吸収型]は、グリーンカーボンやブルーカーボンなど自然界植物を利用したCO2吸収であるが、ここではグリーンカーボン(バイオ炭)を対象とする。バイオ炭は技術的に確立していることから、土壌改良とCO2吸収(固定)を目的に国内外で安定的に伸びるとみられる。

CO2分離技術材料は、化学吸収液や物理吸収液、ゼオライト、高分子膜、PCP/MOFなどを対象とする。市場は分離技術の動向に連動するが、新設需要と劣化などによる交換需要で形成されている。
現状、化学吸収液が市場の7割程度を占めている。吸収液中の化学反応を利用した技術であるため、吸収液の熱劣化や酸化劣化の速度が速く、交換頻度が多い。今後は規模が大きい排ガス向けのプラントでの使用が増えるとみられ、安定した需要が期待される。高分子膜は天然ガス精製で利用が多く、交換需要による堅調な推移が予想される。

CO2利活用製品は、製造プロセス上発生するCO2を利用して製造する尿素が市場の9割弱を占める。コンクリートや、燃料・エネルギー用途のメタノール、メタン、e-Fuelなどが実証実験から実用化・普及へと進み、市場拡大に寄与すると予想される。
現状、尿素は肥料向けが中心で安定的な需要が予想され、既に製品化しており用途も幅広いことから、今後もCO2活用製品の主軸となるとみられる。メタノール、e-Fuelは輸送分野(船舶、航空機、自動車)における石油系燃料からの転換、メタンは天然ガスやLNGからの代替として技術開発や実証が進んでいる。これらは中期的な導入目標が掲げられており、2030年以降に普及フェーズを迎えると想定される。また、CO2固定コンクリートは、人口増加・都市化による開発案件が進む中、セメント・コンクリートの持続可能性も要求されているため、大幅な伸びが期待される。

■CO2分離、利活用の動向

カーボンニュートラルに向けた取り組みの活性化によって、CO2削減関連の世界市場は長期的に大幅な拡大が期待される。市場拡大に伴い、CO2分離量や利活用量も今後順調に増えると予想される。分離技術は既に実用化している技術であり、排ガス向けへの適用も実用化されている段階のため、2040年にはCO2排出量に対するCO2分離量の割合は10%を超えるとみられる。一方、利活用技術・製品は、研究開発の段階であるものが多いため、実証を経た実用化には時間を要するとみられる。CO2利活用量の割合は2040年では5%にとどまるものの、以降は順調な増加が期待される。

◆注目市場

●CO2固定コンクリート【CO2利活用製品】

CO2固定コンクリート世界市場規模

コンクリートの原料となるセメントの製造工程で大量のCO2が発生することへの対応として、特殊混和材によるCO2吸収・固定化や、CO2を吸収させた骨材(CaCO3、バイオ炭)の使用などCO2固定技術を用いたコンクリートが製造されている。

国内では、2022年以降、ゼネコンなどにより開発・販売が積極的に行われている。製造時にCO2を固定する「CO2-SUICOM」(鹿島建設)、CO2由来材料使用の「T-eConcrete/Carbon-Recycle」(大成建設)や「クリーンクリートN」(大林組)、バイオ炭を使用する「SUSMICS-C」(清水建設)など、CO2排出が実質ゼロや大幅減少する製品が展開されている。
市場は本格化に向けて動いており、参入事業者はCO2固定量をさらに高める研究開発を進めている。今後、使用可能範囲の広がりや、量産化によるコスト低下により採用が進むため、大幅な市場拡大が予想される。自治体の建設案件でCO2固定コンクリートの利用が入札要件として追加されることや、炭素税の導入などの制度面が整備されることによる普及促進も期待される。共同研究・開発を含む企業・大学・研究機関によるコンソーシアム「CUCO」の取り組みや、環境省によるCO2固定コンクリートに対するJ-クレジット化の検討も進んでいる。

海外では、2020年頃から北米、豪州、欧州を中心に技術開発・採用が進んでおり、スタートアップ企業の取組も活発化している。グローバルセメント・コンクリート協会(GCCA)は、コンクリートにおけるCO2排出量の削減に野心的なロードマップを発表している。欧州委員会が「欧州グリーンディール」で持続可能なセメント慣行を推奨するなど、世界的に人口増加・都市化による開発案件が進む中、セメント・コンクリートの持続可能性が要求されていることから、堅調な市場拡大が予想される。

●DAC(Direct Air Capture)【CO2分離技術[装置型]】

DAC世界市場規模

DAC(Direct Air Capture)は、大気中の低濃度CO2をアミンや炭酸カリウム、分離膜などの材料を用いてCO2を回収する技術である。再エネを活用することでCO2を排出せず、地球上のCO2を大気から削減できることからネガティブエミッション技術(大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することでマイナスのCO2排出量を達成する技術)として注目されている。CO2回収能力が年間数十トン以上のプラントを対象とし、市場はCO2分離回収装置の建設費で捉えた。

日本では、現状、商用段階のDACプラントはないが、経済産業省の「カーボンリサイクル技術ロードマップ」で2030年にCO2分離回収システムの構築、2040年以降にDACの実用化が目標設定されていることから、今後の市場拡大が期待される。一部企業が2025年までに1トン-CO2/日を回収可能なモジュールを投入する動きや、2030年までにDACプラントの事業化を目指すなどの展開もみられ、2025年頃に市場が立ち上がり、2030年以降の本格化が期待される。
回収したCO2の用途は、CCS(CO2地下貯留)に向けた整備が進むものの、日本では地下貯留のポテンシャルが海外と比べて低いため、CCU(CO2回収・利用)として2030年までは農業分野や建築分野での利用が進むと予想される。

世界では、試験プラントを含めると現状30基弱のDACプラントが稼働しているが、商用プラントは4基の稼働となる。市場の中心は、欧州および米国でCCUS(CO2地下貯留・利用)技術の開発・実証・普及を目指した公的支援制度やプロジェクトが活発化している。特に米国は、2022年8月に成立した米国インフレ抑制法で、CO2回収1トンあたりの税額控除の増額とともに、適用されるDACプラント回収容量の下限も緩和した。米国を中心に100件を超えるDACプロジェクトが計画されており、徐々に稼働案件が増加、また、プラントの大規模化も進み、市場は拡大が続くとみられる。また、中東や中国がDAC利用のポテンシャルが高い地域として注目されている。

◆調査対象

CO2分離技術[装置型]

・化学吸収
・物理吸収
・物理吸着
・膜分離
・固体吸収
・冷熱利用
・DAC(Direct Air Captur)

CO2分離技術[自然吸収型]

・グリーンカーボン(植林・再生林)
・グリーンカーボン(バイオ炭)
・ブルーカーボン(海藻養殖)
・DOC(Direct Ocean Capture)
・風化促進

CO2分離技術材料

・化学吸収液
・物理吸収液
・ゼオライト
・その他吸収/吸着材
・高分子膜
・その他膜
・PCP/MOF

CO2利活用製品

・CCS
・EOR
・液化炭酸ガス・ドライアイス
・温室栽培
・尿素
・合成ガス(熱化学)
・メタノール
・メタン
・プロパン
・オレフィン
・BTX
・エチレングリコール
・ポリカーボネート
・ポリウレタン
・バイオ由来化学品(微生物、藻類)
・微細藻類由来バイオジェット燃料
・合成燃料(e-Fuel)
・CO2固定コンクリート
・炭酸塩

CO2原料ソース

・発電所
・鉄鋼
・セメント
・天然ガス
・石油精製
・アンモニア
・バイオガス
・バイオマス発電
・輸送


2024/8/2
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