PRESSRELEASE プレスリリース
セルラーLPWA52億円、エッジデバイス向け加速度センサ39億円(77.3%増)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、本格化するIoT社会に備えて実証実験が進むエッジデバイスの国内市場を調査した。その結果を「IoTを支えるエッジデバイス関連市場の現状と将来展望 2018」にまとめた。
この調査ではセンサなどで検知した情報を、無線通信を用いて伝送し、情報をネットワーク上に集約するシステムを構成する情報収集デバイスをエッジデバイスとし、デバイスを構成するコンポーネントを通信、センサ、電源、その他に分類して調査・分析した。また、それらを利用した応用製品8市場を捉えることで、エッジデバイス市場を包括的に把握し、将来を展望した。
◆エッジデバイス国内市場
エッジデバイス市場は少量多品種の市場であり、現在多くの実証実験(PoC)が進行している。2018年には一部のデバイスで量産化の体制を整える動きがみられる。市場は業務産業分野を中心に拡大していくとみられるが、デバイス単体では利幅が少ないことから、デバイスメーカーは高付加価値な川下のソリューションビジネスへの進出を図る。また、業務産業分野のみでは市場規模が小さいことから、個人・家庭分野への本格的な進出を見据えている。
通信デバイスは新規の通信規格対応機器が多いことから、Wi-FiやBluetoothといった汎用規格と比較すると単価が高い。今後対応機器の普及に伴い、量産体制が整うことでさらなる価格低下が期待されている。市場は堅調に拡大するとみられ、2030年は2017年比2.2倍の127億円が予測される。
センサデバイスでは主に半導体式MEMS技術を用いた小型化、高精度、低消費電力化が進んでいる。また、通信、電源技術の進展により新たなソリューションの用途が開拓されており、市場が拡大している。今後は価格の低下に伴い、数量ベースの伸びに対して金額ベースの伸びは鈍化するため、センサメーカーはソリューション提案に注力している。
電源デバイスの割合が最も高く、2030年は218億円が予測される。通信における低消費電力化に伴い、普及が進むエネルギーハーベスティングデバイス(EHD)の需要増加が、拡大に寄与している。EHDは、ほかのデバイスと比較して単価が高いことから、市場拡大するとみられる。
1.セルラーLPWA
2018年見込 |
2030年予測 |
2017年比 |
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セルラーLPWA |
僅少 |
52億円 |
― |
セルラーLPWAは通信キャリアがサービス提供を行うIoT向けに開発された無線通信技術を利用した低容量、低消費電力、長距離を実現する通信規格である。低消費電力に特化したNB-IoTと、ほかのIoT無線と比べると消費電力は高いもののハンドオーバーが可能で通信速度も速いLTE-Mを対象とした。また、市場はこれらの通信チップを搭載した製品を対象とする。
2018年はKDDIやSoftbankなどの通信キャリアがサービスを開始し、LoRaやSigfoxといった競合サービスと同様に低料金で利用できるため、市場は大幅に拡大していくとみられる。既存携帯電話通信網を応用できることから、全国を一元的にカバーする必要性のあるソリューションでの需要が高い。移動体にも対応可能なため、定点観測のみならず、トラッキングなど幅広い用途での採用が期待される。
2.加速度センサ
2018年見込 |
2030年予測 |
2017年比 |
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加速度センサ |
224億円 |
195億円 |
85.5% |
(エッジデバイス向け) |
24億円 |
39億円 |
177.3% |
物体の加速度を計測するセンサで、民生、産業、車載用途を対象とした。また、他の機器やシステムと有線、無線問わず通信ネットワークで繋がるものをエッジデバイス向けとした。
民生用が縮小する一方、車載用と産業用が拡大している。民生用はスマートフォン向けが中心であるが、スマートフォンは海外製造委託が主流になっており国内生産が減少している。車載用はエアバック向けが圧力センサの代替により縮小する一方、ブレーキ制御やカーナビ/IVIシステム、ADASなど新たに搭載されるシステム向けが伸長している。産業用は圧電式やサーボ式の高価格なセンサが、自動車・鉄道試験、地震検知、インフラモニタリングなどに使用されている。近年は低価格な半導体式の導入が進んでいる。
加速度センサの全体市場が縮小する中、伸びが期待されるエッジデバイス向けが注目される。エッジデバイスはカーナビ/IVIシステム、ブレーキ制御、通信機能付きのウェアラブル機器で主に市場が形成されている。今後は自動車のADAS、産業施設の故障予知、橋梁モニタリングなど用途が広がり、拡大するとみられる。
3.エネルギーハーベスティングデバイス(EHD)
2018年見込 |
2030年予測 |
2017年比 |
|
エネルギーハーベスティングデバイス(EHD) |
21億円 |
161億円 |
12.4倍 |
振動、自然光や照明光など、周囲の環境から採取できる微小なエネルギーを収集し、電力に変換する技術を用いたEHDは、発電量が微小であることからこれまではPoCが中心だった。しかし、EnOceanに代表される低消費電力通信の実現に伴い、低発電量でも対応が可能となり、EHDの利用シーンが増えたため、需要が急速に高まっている。現在は福祉施設のドアなどにおける相対運動発動デバイスや多用途に使用可能な光発電デバイスが中心となっているが、今後はスマートビルディング向けなど様々な用途で採用が期待される。
◆応用製品国内市場
エッジデバイスを利用した応用製品はコネクテッド/自動運転システムの割合が大きく、市場の半数以上を占める。加速度センサやイメージセンサが用いられることでセンサデバイスの拡大に寄与するとみられる。ただし車載分野は要求水準が高く、参入ハードルが高いため、ソリューション提案を進めるデバイスメーカーは車載分野以外の用途開拓を進めている。
1.工場向けソリューション
2018年見込 |
2030年予測 |
2017年比 |
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工場向けソリューション |
3億円 |
51億円 |
17.0倍 |
工場向けのIoTソリューションのうち、設備予知保全と積層表示灯監視を対象とした。設備予知保全は、近年注目を集めているソリューションで、製造装置の状態を監視することで故障などによる予期せぬ稼働停止を未然に防ぐことができる。現状では設備予知保全を行う装置の状態を把握するために、後付けでセンサを取り付ける必要がある。費用の関係から全ての機器に設置できなかったり、取り付けるセンサも精査が必要であるため、ソリューションベンダーによる試行錯誤が行われている。今後、製造装置に設備予知保全用デバイスがあらかじめ設置された機器が登場するとみられ、これにより市場は大幅な拡大が期待される。
2.防災用インフラ監視システム
2018年見込 |
2030年予測 |
2017年比 |
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防災用インフラ監視システム |
43億円 |
21億円 |
― |
土砂災害、水害を防止する目的でインフラを監視するシステムを対象とした。防災用インフラ監視システムは土砂災害防止のために活用される斜面変位監視と水害防止に活用される水位監視がある。土砂災害危険箇所などは日本全国で50万か所以上存在するが、簡易的な斜面変位監視すら行われないケースがほとんどであり、災害が発生した際の復旧工事時に導入されるケースや土木工事の際の作業安全管理に使用されるケースにとどまっている。現在はゼネコンなどの民間工事事業者や国土交通省や県などの一部に限定されているが、今後は広がりをみせ、市場は徐々に拡大するとみられる。
水害防止は、2017年に施行された「水防法等の一部を改正する法律」に基づき、対策が進められている。2018年度中に2,957箇所への水位計設置が予定されており、2018年、市場は急拡大する見込みである。2018年度から2020年度にかけて5,800箇所の中小河川に水位計が設置される予定であり、その後も電池交換や機器交換などで、一定の更新需要があるとみられる。
◆調査対象
1.エッジデバイス編
通信デバイス | Sigfox、LoRa、セルラーLPWA、Wi-SUN、EnOcean、Bluetooth Low Energy |
センサデバイス | 温度センサ、ガスセンサ/においセンサ、赤外線センサ、電流センサ、磁気センサ、加速度センサ、ひずみゲージ、イメージセンサ |
電源デバイス | エネルギーハーべスティングデバイス、一次電池(リチウム電池)、二次電池 |
その他デバイス | MCU |
2.応用分野編
個人・家庭 | ウェアラブル機器、ホームネットワークシステム、電力・ガス・水道検針システム |
業務産業 | 業務用屋内環境システム |
輸送 | コネクテッド/自動運転システム |
インフラ | インフラ監視(橋梁・トンネル)、防災用インフラ監視システム |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。